リーハちゃん
「では、ハルさんのスキルはこれで決定ですわね。……トラ様、お願いします」
私がサインした書類を纏めると、女神ちゃんはトラちゃんに視線を送る。
トラちゃんは女神ちゃんに無言で頷き返すと、私の側に来て右手をひょいっと挙げた。
「なに? にくきゅう自慢? かわいいよ?」
「違うにゃ! ……おでこだすにゃ」
……はっ!
もしかしてその可愛らしいにくきゅうを私のおでこにペタするのですか!?
私はいそいそと床に横たわった。
「な、なんで床に寝転がるのにゃ!?」
「なんでって……。トラちゃん私の事踏んでくれるんでしょ?」
準備はできてるぜ! OK! カモン!
「全然違うにゃ! リーハぁ!!!」
しっぽを膨らませたトラちゃんが半泣きで女神ちゃんに救いを求める。
「ハルさん、あまりトラ様を苛めないでくださいね」
にっこり笑顔の女神ちゃん。
あ、はい。すみません、調子にのり過ぎました。
「冗談、冗談」と言いながら起きあがり正座をしておでこをだす。目も閉じてみた。
ぷに。
ゆっくりと目を開ける。
勿論トラちゃんは女神ちゃんの後ろに避難済み。
(…………ちっ)
「それで今の何だったの?」
特に変わった感じはしないけど。と、おでこを触りながら呆れ顔のハリーに聞いてみた。
「転生ポイント……。スキルの譲与だ。あと祝福も入ってたな。良いのか?」
前半は私に、後半はトラちゃんへの問いかけのようだ。
問いかけられたトラちゃんは女神ちゃんの後ろから顔を覗かせながら答える。
「今回の事は俺様達のミスだからにゃ」
二人の会話についていけず、疑問符を飛ばしている私にトラちゃんが説明してくれる。
「特殊スキル『ノーダメージ』をつけたにゃ」
「特殊スキル? 『ノーダメージ』?」
なにそれ? なんかチートっぽいんですが。
「特殊スキルは1日の使用回数が決まっているスキルの事ですわ。『ノーダメージ』はどんな攻撃でも一度、必ず防ぐスキルですわね」
「ただし使用回数は1日1回だにゃ」
驚いたなんてもんじゃない、使用回数があるとはいえかなりのチートスキルだ。
「良いの?」
頷くトラちゃんを見ていたら女神ちゃんが答えてくれた。
「このくらいは、させて下さい」
女神ちゃんが困ったように微笑む。
私には知るよしもないが、神様には神様の決まりがあるはずだ。ミスのお詫びという事もあるだろうけど、無理してるんじゃないかと少し心配になる。
けど、それと同時に“嬉しい”と思った。
だって無理してでも力になってもいいと思ってくれたって事だから。
だから。
「ありがとう」
お礼を言った。
女神ちゃんが嬉しそうに笑ってくれた。
【後書き】
次話にて転生します。
(注意:スライムになるのはまだです。)
神様達とのお別れの話なので、寂しくなるのが苦手な方はスルーでお願いします。
ちょこっと笑いは入れるつもりですが、別れは別れなので…。