スキル
「ハル! 決まったぞ!」
「これでばっちりですわ!」
ちょい興奮気味の二人から渡された紙には私のスキルが書かれていた。
『索敵(level2)』
『逃走(level8)』
『鑑定(level10:最大値)』
『収納(level2)』
「『索敵』と『逃走』と『収納』はいいんだけど、『鑑定』のレベルだけ最大値なのはどうして?」
私の問にハリーが待ってましたとばかりに答える。
「スキルレベルが低いと使用者と対象との間に力の差があった場合『鑑定』出来ねぇ事があるからだ。だがスキルレベルが最大値なら力の差に関係なく『鑑定』が可能になる! 『鑑定』のレベルをもう少し抑えて別のスキルを、とも思ったが『鑑定』はレベルが上がりにくいからな。初めから最大値にした」
「イシュハンメルでも『鑑定』のスキルレベルが最大値の存在は数えるくらいしかいないにゃ。生れた時から『鑑定』のスキルを持っていても1レベルも上がらない事もざらだにゃ」
私と一緒にスキルの書かれた紙を覗き込んでいたトラちゃんも賛成の様だ。女神ちゃんもハリーとトラちゃんを肯定するように何度も頷いている。
なるほど、『鑑定』は皆がオススメするスキルって事ね。
「僕も持ってるよぉ、実ってる果物で一番美味しいのがどれか分かるんだぁ」
それ重要。
転生後は強制的に自給自足だからね。サバイバルにはもってこいのスキルだ。
しかし、さすがだなお菓子を食べる係君。
君は私の坪を的確についてくる。飴ちゃんをあげよう。
「あと気になるのは『収納(level2)』かな? これは私も欲しかったスキルだからあるのはいいんだけど、どの位収納可能なの?」
「んとねぇ、ミカン箱3つ分」
飴玉を食べながら教えてくれるお菓子を食べる係君。
持ってけ泥棒、飴ちゃん全部あげちゃう。
それだけ収納出来れば十分かな。
収納中は時間経過が緩やかになるらしいし――止まるわけではない――ひとり暮らし用の小さい冷蔵庫だとでも思えばいいだろう。
女神ちゃんとハリーの考えてくれてたスキルは全て必要なものだ。全く問題はない。
ただ、私にはどうしても欲しいスキルが一つだけあった。
「出来れば『錬金術』のスキルが欲しいんだけど……。なんとかならないかな?」
「『錬金術』ですか? ……そうですね。『逃走』のレベルを5にすれば『錬金術(level1)』なら取得可能になりますが」
「『逃走』のレベルを落とすのか? あんまりオススメしねぇが……。理由を聞いてもいいか?」
私は頷いた。生存率が下がってでも『錬金術』のスキルが欲しい理由はたった一つ。
「料理がしたいから」
「「「料理?」」」
おお、ハモった。
若干一名もごもご言ってて聞こえなかったが……。
あげた飴ちゃん全部一気に口に入れるからそんな事になるんだぞ。え? 全部一気に食べたらフルーツポンチ味になるかと思ったって? それでどうだった?
……そうか、よく分かんないのか。分かんなかった事が分かって良かったね。
なでなで。
「そういえば料理が趣味と仰っていましたわね」
そうなんだよね、異世界の食材とか興味ある。
勘違いしないでもらいたいのだが、別に野草などに詳しい訳ではない。そこは私の唯一自慢出来る事になるであろうチートスキル、『鑑定』を使うつもりだ。
「料理がしたいのになんで『錬金術』なんだにゃ?」
「だよな? 『錬金術』ってポーションとか作るスキルだろ?」
おや、メンズは知らないみたいだ。
「『錬金術』を応用して料理が出来るみたいなんだよね」
そう言いながら女神ちゃんが表紙を飾っている雑誌を開く。
【『錬金術』でレッツ簡単クッキング! ~これで意中の男神をゲット!~】
【『錬金術』で作る調味料etc.】
【『錬金術』を使った今冬オススメの鍋料理10選】
雑誌を見たときから欲しいと思ってたんだよね。
「そ、そうか。だがよ、生存率を下げてまで得る必要あるのか?」
「分かってないわね、ハリー」
フッと鼻で嗤うワタクシ。
ちょっとイラッとした顔をするハリネズミ。
だが言わせてもらう!
「どんなに辛い事があっても美味しいご飯を食べれば元気が出る! 元気があれば生きる力が湧く! 即ち! 生きる事は食べる事! 食べる事は生きる事!」
「うおおおおおお~!!!」
コツメカワウソが叫び声を上げながらソファーの上に立ち上がった! 怖い!!
「そうだよね! どんなに頑張って生きていても、そこに美味しいご飯がないなら死んでるのとおんなじだよねぇ!!」
そこまでは言ってない。
――が、あえて乗る。
「分かってくれるかい! お菓子を食べる係君!」
「分かる! 分かるよぉ! ハルぅ!!」
ひしっ! っと抱き合うコツメカワウソと人間。フリーズしたハリネズミ。美少女の後ろに隠れるしっぽが膨らんだにゃんこ。そのにゃんこをよしよしと宥める美少女。
よぉし、これで全アニマルのもふコンプ。