ふうふ
「全知全能の神なんていないのにゃ」
「そうなの?」
私は無宗教だから『へーそうなんだ』くらいで済むけど、人によってはかなりショックな内容なのではないだろうか。
「あ、地球はどうか知らないにゃ。地球の神は数が多いからにゃ。ただ俺様の知り合いの神にはいないのにゃ」
トラちゃんはよく地球に遊びに行くらしい。……猫会議か?
そういえば女神ちゃんが世界と世界を繋ぐ扉を閉め忘れたのも、トラちゃんが突然地球に遊びに行ったからだっけ。
おそらくトラちゃんがいないのに気付いて慌てて迎えに行ったんだろう。
「トラ様は地球に行きすぎですわ! いつも突然お一人で遊びに行かれて……。私、心配しておりますのよ!」
女神ちゃんが怒って唇を尖らす。
でも女神ちゃんって、ちょい垂れ目気味だからあんまり怖くないんだよね。まぁトラちゃんには効果があるみたいだけど……。
「わ、悪かったにゃ」と素直に謝っているトラちゃんの耳ががちょい下がってて可愛い。
それを見てほんわかしていると、ハリーが呆れたようにトラちゃんと女神ちゃんの仲裁に入る。
「おいおい、痴話喧嘩なら後にしてくれよな」
「そうだよぉ、夫婦は仲良くしなきゃ」
私もうんうんと頷く。そうそう夫婦は仲良く……。
「……え?」
なんか今凄いこと聞かなかった?
ふうふ? ふうふって何?
「ふ、ふうふ?」
「なんだ、お前ら言ってなかったのか?」
そうだったかにゃ? それどころではありませんでしたからね。まぁ確かにいちいち言う事でもねぇしなぁ。だよにゃあ……。なんて会話がとびかう。
『ふうふ』ってもしかしなくとも夫婦の事?
ちらっとゾフル君を見たのは脳が癒しを求めたからだが、ゾフル君は笑顔で爆弾を投下するタイプなのを私は忘れていた。
「二人は新婚さんなんだよぉ」
「マジか!」
死んでから一番驚いた!
種族全然違う……。あ、二人とも神族か! じゃあ、いいの……か?
え、ちょっと待て。そんな事より私、奥さんの目の前で旦那さんをモフモフしたの? いや、異性としては全く見て無いけどね。でも妻としては嫌だよね?
「……め、女神ちゃん、ゴメンね。その……まさかトラちゃんが旦那さんだったとは」
「いえ、気にしないでください。ハルさんがトラ様を異性として見てないのは初めから分かっていましたから」
よ、良かった、怒ってないっぽい。
まぁ普通そうだよね、トラちゃん見た目はにゃんこだもんね。
「でも次はありませんから」
「重々承知しております」
女神様はやっぱりちょっと怒ってらっしゃいました。
勿論、土下座しましたとも。
【後書き】
夫婦の予定は無かったのに…。
女神ちゃんが…。
もう少し説明っぽい話が続きます、ごめんなさい。
※ちなみにトラちゃんは猫会議に、迎えに行った女神ちゃんはついでに冷凍食品を買ってかえります。
女神ちゃんの最近のお気に入りは、たこ焼きだそうですよ。