スライムとは
お茶菓子をもぐもぐしながら気になっていた事を皆にきいてみる。
「そういえばスライムってどんなモンスターなの?」
私の知っているスライムはあくまでもゲームのスライムだ、転生するイシュハンメルのスライムが私の想像とはかけ離れている可能性もある。
そう思って聞いたのだが、見た目も強さも地球のゲームと同じ位だそうな。見た目はプルプルの突起がないタイプとの事。
同じ位か……。見た目がグロくないのを喜ぶべきか、変わらぬ弱さを嘆くべきか迷う。
「あ、サイズは?」
ゲームでもスライムのサイズって色々なんだけど?
「この位かにゃ?」
「いや、もうちょいでかくね?」
「いえ、この位なのでは?」
皆が手で大きさを表現してくれるけど、そもそも皆の体のサイズが違いすぎてよくわからん。
小さめの茶碗位かな? と思っていると、お菓子を食べ終わったゾフル君が教えてくれた。
「んとねぇ、コンビニのあんまんの大きさだよぉ」
ありがと、すっげー分かりやすい。
お礼にポケットに入っていた飴ちゃんをあげると嬉しそうに頬張った。
「じゃあ生態とかは? 集団で生活するタイプ? あれ? そもそも子供って産んだりするの? 細胞分裂的な増えかた?」
「スライムは分裂能力がありますが、今回は新たに産まれますので……。ハルさんの場合は発生ですね」
「発生……」
なんでもイシュハンメルでは、世界に満ちている魔力が一定以上溜まるとモンスターという形となって発生するらしい。
ある程度力のある大型のモンスターは自らの魔力により子供を産む事も出来るそうだが、その数はかなり少ないそうだ。
じゃあ、ある日突然世界に『こんにちは』するのか、私。
その瞬間に遭遇した人はビックリするだろうな……。いや、スライムだしそんなには驚かないのかな? ……ん? ちょっと待て。
「それ、発生した時にそばに敵がいたら瞬殺なのでは?」
「……」
「……」
「……」
「……目を反らさないで、そして誰かなんか言って」
「この飴ちゃん美味しいねぇ!」
それは今言わなくていい。
☆
転生先に敵がいたら瞬殺。
一気にテンションが下がった。
「あ~、まぁ。転生先は俺様がなんとかするにゃ。その位なら世界への影響も少ないはずだにゃ」
「そうだな、それに転生ポイントでスキルもある程度は選べるんだろ?」
そうだった! 転生ポイント!!
これによって私の来世ライフが大きく変わるのだ。
「その転生ポイントなんだけど、いくらもらえるの?」
「……1万ポイントだにゃ」
え!? 予定より全然少ない!?
チラリと隣を見ると申し訳なさそうに女神ちゃんがこちらを見ていた。
「すみませんハルさん。なんとか5万ポイント頂けるようお願いはしたのですが……」
「今回リーハは悪くないのにゃ。俺様も5万ポイントなら譲与しても良いと思ってたんだにゃ……」
そう言いながらトラちゃんはゾフル君に視線を向けた。
「うん、ぼくが反対したんだよぉ」
ゾフル君は笑顔で肯定した。
「でもねぇ、意地悪で反対したんじゃないんだよぉ」
「じゃあどうして?」
「んとねぇ、昔ね、ぼくの管理している世界に転生ポイントを沢山使って転生した子がいたんだけどね、転生後の体に対して持ってたスキルが多すぎたらしくてねぇ、エヘヘ、死んじゃったのぉ」
エヘヘて……。可愛く言っているからスルーしそうになったけど、言葉とのギャップがありすぎてホラーだから。鳥肌たったわ。
「あ~。まぁ分かりやすく言うと赤ん坊の体に強力な薬を使うようなもんだ。薬自体に害はねぇが、体が薬に耐えきれなかったってこった」
「じゃあスライムにとってそのギリギリのラインが1万ポイントって事?」
「そういう事だにゃ」
だったら仕方ない。
ポイントは欲しいけどそれによって自滅するのでは意味がない。私はどんなに短い寿命だろうが今度こそ生き抜いて天寿を全うしたいんだ。
でもスキルがないと生存確率は確実に下がる。スライムは弱い上にターゲットになりやすいモンスターのはずだ、天寿を全うするのはかなり難しそうだ。
「あれ?」
「どうしたにゃ?」
「スライムって寿命ないって女神ちゃん言わなかったっけ?」
来世の私にそもそも天寿は無いのか? え? って事は殺されるとかしか人生……。スライム生は終了しないって事?
サーと血が引く音が聞こえたような気がした。
「あ、すみません。正しくいうと『不明』なんです。寿命によって死んだスライムの前例があまり無いので……」
女神ちゃんが慌てて説明してくれた。
よ、良かった。とりあえず寿命はあるんだ。前例がほぼ無いってのは気になるけど、とりあえず良かった。永遠にスライムとかどんな拷問かと思った。
「俺様達にとってもスライムはまだ謎の多い生命体なんだにゃ」
「え、神様にも解らない事ってあるの?」
驚きである、神様って全知全能なんだと思ってた。