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最終話

 冷え切った体を暖めるため、何か温かいものを食べようということになった。そして、僕らは霜月さんの用意したこの季節らしい食べ物の準備をした。


 落ち葉を集めて、そこでたき火をする。確かにこの季節らしい光景だ。ただ現代社会ではこういうたき火も色々と規制が厳しそうだが、ここではそういう話は控えたい。なぜならこれはその月のイメージを重視するコメディだから、面倒な理屈は抜きでいいのだ。


「この季節にたき火は欠かせませんね。冷えた体が芯から暖まる」


 僕はそう言ってたき火に手をかざす。冷たくなった指先に感覚が戻ってくる。


「でも、たき火と言えばこれは欠かせませんよね」


 そう言って、霜月さんは木の枝を使い、落ち葉の中を探り始めた。そして、何かに突き刺し、それを取り出す。それは焼き芋であった。確かにこの季節にたき火だと連想してしまう食べ物かもしれない。


「甘くて熱くて、美味しいですね」


「それはそうよ。だって、私の月の食べ物ですもの」


 霜月さんはそう言ったが、別に焼き芋は11月に限った食べ物ではない。寒かろうが暑かろうが、食べたいときにいつでも食べられる食べ物の一つだ。ただ、イメージが重視のこのシリーズなのであえて反論はしない。


「散々、焦らせて終わりが焼き芋?なんかしょぼくない?私はこれでも人生の一大イベント、結婚式がオチだったのよ」


 水無月さんは焼き芋を食べながら、そう言い切った。確かに水無月さんのときは結婚式が最後にきたのだが、それは彼女の結婚式でもないし、オチという言い方も自分を卑下しているように聞こえる。まあ、彼女が自信を持ってそう断言できるのは悪いことではないかもしれない。そうでないとネガティブに走ってしまいがちだから。


「あら、別にそういうつもりではないのよ。私のラストはもっとスケールの大きなものよ。何しろ、この国が世界に誇るあることだから」


 何かスケールのでかそうな話が出てきた。先ほどまでの控えめな霜月さんとは別人のようだ。


「そうだ。これから、ご馳走してあげるわ。私の月が誇る世界的な味を堪能させてあげるわ」


 そして、僕らは自信満々の霜月さんと共にその世界的な味を堪能することになるのだった。



「あの、世界的な味ってこれですか?」僕は霜月さんに尋ねる。


「ええ、そうよ。世界でいち早くこの味を堪能できる。この国で、私の月にね」と霜月さん。


「まあ確かにこれもイベントと言えばイベントだけど、そんなに大騒ぎするものじゃないんじゃない?」そう言ったのは水無月さん。


 僕らは霜月さんが用意した赤い飲み物を飲んでいた。それはワインである。それもただのワインではない。この年に初めて開封されるボジョレー・ヌーボーである。そしてこのワインは日付変更線の関係で日本がいち早く飲めるのだ。だから、霜月さんの言っていることもまんざら嘘ではない。この時期に一応話題になることも事実だ。しかし・・・。


「イベントというには弱いかなぁ」


 僕がそう呟くと、霜月さんは少し眉を顰めて、ボジョレー・ヌーボーを一気に飲み干した。そして、僕らは街を見つめる。街はすでに来月の一大イベントクリスマスの飾りつけで華やかになっていた。


「師走が先走りしすぎているみたいだ・・・・」


 これでは霜月さんがイマイチ地味なのも仕方がないような気がした。

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