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第一話

霜月さんの寂寥


 11月。紅葉した木々から枯葉が舞い落ち、街を覆う。葉が散った樹は枝だけが残り、どこか寂しい気分にさせる。そして、心と体を冷たい北風が吹きぬける。


 もう、今年も残り僅かだと感じさせる月でもある。そんな11月の擬人化した女性、霜月さんが今回の主人公である。


「この葉がすべて落ちたときに私は終わるのね・・・・」


 その声に僕は振り返る。落ち葉が舞う街路樹の下に彼女はいた。霜月さんである。コートを着てマフラーを巻いた彼女は寂しそうに空を見上げる。どこかその寂しそうなたたずまいには色気もある。初めて会ったわけではないが、前回はハロウィンの仮装した姿だったので、こうして素顔を見るのは初めてである。


「そんな悲観的にならなくても、別に死んでしまう訳じゃないんでしょ?」


「でも、私の出番は終わる。静かに誰にも気づかれないうちに・・・・」


 僕は絶句した。今回は思った以上にネガティブな月らしい。やっぱりこの肌寒さと枯葉に覆われた街路がそういう心境に刺せるのだろうか?しかし、僕はそれほど悲観的に考えてはいなかった。なぜなら・・・・。


「月の中で一番ネガティブなのは私だと思っているからじゃないでしょうね?」


 そう言って登場したのはお馴染みの水無月さんである。水無月さんは6月の擬人化した女性。梅雨とか祝日がないこととかで性格がネガティブになっている。だから霜月さんとネガティブ同士になってしまうのだが、そこで僕はあることに気づいた。


「そんなに落ち込むことはないじゃありませんか。だって、霜月さんは祝日があるでしょう?おまけに二日も。10月の神無月さんも羨ましがっていたじゃないですか?」


「ああ、そういうこともあったわね。でも、私の月の祝日は何故かハッピーマンデーじゃないのよね。平日に当たるのよ」


 僕はすぐにカレンダーを確認した。確かに文化の日は金曜日、勤労感謝の日は木曜日、月曜が休みでなく三連休ではない。文化の日はそれでも金土日で三連休とは言えるが、土日月の三連休と比べると休みの印象は薄い。


「まあ、それでもいいんだけどね。別に特にイベントがあるわけでもないし。来るべき年末のイベント三昧のための中休みみたいなものかしら。だから、勤労感謝の日というのはちょうどいいところにあるわけよね」


 彼女はそう言うと微かに微笑んだ。その笑みもどこか寂しそうだ。そんな僕を冷たい北風が吹きぬける。


「そんなことはありませんよ。もう少し明るく行きましょう。そうだ。何か温かいものでも食べましょう」


 僕はそう提案した。霜月さんはそれに小さく頷いた。


「それなら、ちょうどいいものがあるわ。私の季節に相応しい温かい食べ物がね」


 霜月さんはそう言って、微かに微笑んだ。


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