007 1章02 「歪な教育」
辛く苦しかった出産を終え、俺はこの世界に生まれ落ちた。
とはいえ赤ん坊の身では情報収集と簡単な魔法の訓練しか出来ない。
あと困ったことに母親の乳の出が悪かった。
これは彼女のせいではなく、オウトのせいだ。
奴は自分以外の者に最低限の食事しか与えなかったのである。
グラスはオウトに奴隷刻印を施されているため逆らえない。
アインは身体能力的にはオウトより上だが栄養不足と魔法が使えないため反撃できない。
ツヴァイは魔法こそ覚えているが回復魔法と生活魔法そして土木魔法しか使えない。
何よりアインとツヴァイは幼少の頃より刷り込まれたオウトに対する恐怖がある。
結果、畑仕事や狩りは3人がするのに満足な食事が出来ない有様だ。
その間オウトは何をしているかというと、小屋…いや、家で木製の短冊に魔法の短杖をペンにして何やら書き物をしていた。
気になったので千里眼と高位鑑定を使うと、それは「教育計画」だった。
しかしそれは教育とは言えないただの拷問手書きだ。
なぜそれで子供が乗り越えられると思うのか?
(いや、ただバカなだけか。)
バカに殺された兄弟達を思うと悼たまれなかった。
さらに調べていくと、奴は空間魔法「空間収納」を覚えておりそこに短冊や短杖、ナイフを入れていた。
「鑑定」「上位鑑定」の上の「高位鑑定」だから出来る芸当である。
短冊の中には魔法の手引きや幾つかの魔法、それに畑や小屋の作り方、狩りの手引きなど役に立つモノもあったが、それらは全てリューカの書いたものだった。
オウトの書いたものは、暗殺者育成と称した拷問の数々、自分がいかに偉大で今の境遇が間違っているかという愚痴、さらに復讐を果たして王となったらどんな暮らしをするかという妄想。
つまりはゴミだった。
死ぬか殺すかしたら薪にしようと思った。
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1か月が過ぎた。
普通の生後1か月なら首が座るかどうかくらいだが、俺はここで覚えられる魔法は全て覚えた。
文字も覚えた。
しゃべれないが言葉も覚えたので魔力操作のトレーニングとグラスに施されている魔術刻印の解析をしていた。
魔力操作は魔力を使って手を作り物を掴む。
虫やネズミのような小動物を捕まえては「超強奪」でスキルやステータスを奪っていった。
蛇足ではあるが「高位鑑定」や「超強奪」のように下位スキルがある場合、上位スキルを使っても下位スキルに熟練度が入るようだ。
しかも上位スキルの熟練度は下位スキルには倍で入るので、「超強奪」を使うと下位の「強奪」には2倍、その下位の「盗む」には4倍の熟練度が入る。
さらに「早熟」で熟練度が入るのが増えるので鑑定系と強奪系はほぼMAXだ。
また、見ているだけでも「千里眼」と「高位鑑定」を使っているので「狩り」「解体」「畑仕事」に熟練度が入ってくる。
スキルの習得と熟練度上げはステータスの補正にも関わってくるので積極的にやっていきたい。