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出来事

 皆様、本当に遅くなりました。すみません、取り敢えずどうぞ。

 朝焼けにはまだ早い時刻。そんな暗闇の中で一つの出来事が起きていた。

 片方は数メートル以上の斬撃、もう片方は一つの小さな球体。此の二つが一人の人物に向けて放たれていた。


「大人しくくらうっすよ終夜っち」


「これは終夜が悪いんだからね」


 容静と流星の二人がそれぞれの怒号を発し、終夜に言ってくる。だが終夜は流星の言葉がいまいち気に入らない、納得いかないまま二つの攻撃は終夜に当たった。

 攻撃が当たった瞬間、小さな黒い球体にはヒビが入り次の瞬間、とてつもない大爆発と轟音を巻き起こし、大斬撃は爆発と同時に終夜に当たった反動で幾重もの斬撃が全方位に散っていった。その大爆発は終夜達とメイのテントを軽く巻き込み、周囲にあった山の半分以上を爆発で覆い、幾重にも散った斬撃は木々をバラバラに切り倒す程の威力で、木々だけでなく地面やそこらの岩にさえ斬撃の跡を残した。

 二つの攻撃で起こった少しの時間は砂煙がもうもうと立ち込め、一寸先すら見えなかった。大爆発だいばくはつ大斬撃だいざんげきは一瞬にして惨状を生み出し消えていった。砂煙が晴れると、そこには惨状以上の光景が二つの攻撃により生み出されていた。


「······」


「······」


 大爆発の付近はあるはずのダンジョンを跡形も無く消し飛ばし、地面は一部分を残して円形にへこんでおり加えて幾重もの斬撃の跡形が残っていた。周囲の木々は爆発で一部炭に成り果て、形があった木々は範囲の全てが斬撃により切り倒されるかバラバラになっていた。周囲にあった山の一つは大部分が跡形も無くなり、一部分が丸みを帯びて尖っていた、山の跡形と言うべきものが残っていた。

 そんな光景を目の当たりにした容静と流星の二人は揃って唖然とし、正に言葉もなかった。そんな中で呆れる様な、賞賛する様な声が一人の人物から発せられた。


「派手にやったなーーお前ら、考えないで」


 二人は直ぐに声がした方向を向くと。一番深い跡形の場所から、体についた埃を落としながら上がって来る終夜を見つけた。終夜の体には所々傷痕があったが、そのどれもが浅い傷だけだった。最も、服はそれなりに破けたり焦げたりしてボロボロだったが。


「終夜っち」


「終夜」


 二人が終夜を見つけてすぐ、唯一何故か無傷のテントの内一つから二人の人影が出てきた。


「何があったんですか十六夜さん」


「何か凄く大きい音がしましたけど、皆さん」


 フェルは出て来たとたん、慌てて終夜に現状を問いただした。エルは対照的に落ち着いており、容静と流星にも現状を聞いた。


「何があったって言ってもな。どう思う、二人とも」


 終夜は容静と流星の二人に薄い笑みを浮かべながら問うが、もう一つのテントからあくびをしながら出てくる少女もといメイの登場で会話が途切れる。


「で、こんな夜に何をしている」


 急に出て来たメイはまだ寝不足なのか。ぼーーっとしていて、頭が上下にこくりこくりと動いている。


「何をって訳でもないが、周りを見れば分かるだろ」


 メイのうとうとしながらの問いに対し、終夜は両手を広げながら言葉を返す。

 終夜の動きに合わせて周りを見るメイ、メイのぼやけた視界は直ぐにクリアになり改めて視るとそこには。円形に深くへこんでいる地面とそこにいる、終夜容静流星の三人。更に周りを見渡すとすぐ近くにフェルとエル、そして遠くまで続いてる爆発の跡、その先にはバラバラに切り倒されている木々。更に周りを見れば、山の一部の様な欠けた跡が残っていた。


「······どうしてこうなった」


 唖然としていたメイはようやく絞り出した言葉を言うと。次の瞬間、強烈な魔力を纏いこの惨状を作った人物を探す。


「お前達、一体誰がやった」


 メイが強烈な魔力を纏い、容静達が気圧けおされている中で一人の人物が手をあげた。


「これかそれなら俺がやった」


 終夜は手をあげながら言うと。次の瞬間メイの強烈な攻撃が終夜に向かっていった。メイが纏っているのはただの魔力だが、それでも身体能力は数倍は跳ね上がっている。

 メイは終夜に向けて渾身の打撃を放つが、終夜は片手で受け止めて見せた。


「落ち着けってギルドマスター、それとやったのは俺じゃない」


「何だと、なら一体誰が」


 落ち着いたのかメイは急に質問すると、終夜は後ろにいる二人を指差した。そこには、申し訳なさそうにしている容静と流星の姿があった。


「ギルドマスター。すみません、これは自分と」


「俺っちの二人がやったことっす」


 流星と容静は開口一番に謝ると、二人揃って頭を下げた。それを見たメイは······


「謝罪は受け入れる。けれど、事の理由が聞きたい。後十六夜は謝らないでいていい、さっきの詫びとしてね」


「······そうかい」


 メイは謝罪を受け入れたが理由を求めた。それはつまり、終夜の名が原因と言う事情を伝えなければならないと言うことだ。

 容静は交信の能力を使い終夜に確認する事にした。名前をだしていいのかと。終夜はいいぞと容静に念話で返答を返した。確認を得た容静は流星にも能力を使い、大丈夫と伝えた。


「事の理由については俺っち、いや、俺から伝えます。この惨状についてはまずすみません。原因は十六夜、いや、正確には終夜の名前が原因です」


「終夜、十六夜が名前······ではない、のか」


 容静は何時もの口調を止め、真面目な態度で非を詫び原因を話した、名前が原因と。流星も口を開き肯定したあと、メイに謝った。


「はい、間違いありません。すみません、ギルドマスター」


 メイは終夜が十六夜の本当の名前、と言うことは理解した。が、これ程の惨状を流星と容静の二人で生み出した事に、多少の考えを巡らせていた。

 その時、容静がいきなり耳に手を当て誰かと話し始めた。声は出ていない事からメイは念話での会話と思い、少し待った。終夜と流星は大方誰か分かっていたが。


「あいつから何だって」


「天心っち達がここに来るそうっすよ終夜っち」


 容静は終夜に返答を返すが、今度はメイと流星から質問が飛んだ。


「容静、お前は念話が使えるのか」


「そうっすよメイっち、念話だけでなく魔法も使えるっす」


「それよりも、天心達はどうやって来るの容静」


「それについては何も言ってなかったすよ流星っち」


 天心達が来る事は分かったが、どうやって来るんだと頭をひねっている三人、ではなく五人。終夜は既に分かっているみたいだが。

 すると突然光が生まれた、けして大きい光ではないが中が見えない程度には大きい光だ。光の中からは四人の人影が出て来た。天心、日影、火鈴、涙の四人である。

 四人は終夜達がいる場所に来たと同時に驚いていた。四人同時に何があった、どうしてこうなったと言う言葉が飛んだ。そんな四人に向かって終夜が話し始める。


「派手な登場だな日影。後、終夜でいいぞ」


「まだスキル、能力に慣れてないんだよって。何だ結局ばれたのか」


「そんな感じだ」


 そんな二人の会話を聞いた天心達三人は、終夜と言う名前に疑問が浮かび首を傾げた。そして、天心は疑問を口にした。


「十六夜、終夜って誰のことだ」


「ん、そう言えばお前らにはまだ話してなかったか」


 終夜と天心が話している中で天心の疑問が聞こえたのか、火鈴と涙も会話に混ざり聞いてきた。 


「ええ、私達にも教えてくれる」


「お願いします」


「俺の本当の名前が終夜ってだけだ」


 終夜が答えた瞬間、三人のいや、正確には二人の人物が固まった。火鈴と涙の二人だ。


「貴方の名前は、終夜だったと言うこと」


「つまり、十六夜さんの名前は偽名だったんですか」


「偽名と言うよりはあだ名に近いが、終夜が名前なのは確かだ」


 それを聞いた二人は唖然とし、二人だけで向かい合って話し始めた。周りを無視して。一方容静は、天心と日影の二人に対して会話を進めていた。


「偽名で名乗ったんすよ天心っち、日影っち許せないっすよね」


 容静は向こうの会話から戻って来た天心と、日影の二人に同意を求めたが、天心から返ってきた言葉は予想外の返答だった。


「いや、特には」


「俺は知ってた。悪いな容静」

 

 天心と日影の返答を聞いた容静は数秒間固まった後、天心にすごく焦った形相で迫り理由を問いただした。


「どうゆうことっすか二人共」


「どうと言ってもね、僕は受け入れるだけだし。逆に容静は難しく考え過ぎてるんじゃない」


「俺も天心の言う通りだと思うぞ容静。そもそもの話、この事以上の何かかしらも何回かあっただろ。今更、こんな事で喚いても仕方無いだろ」


「確かに難しく考え過ぎてたかも知れないっすね。天心っち、日影っちありがとっす」


 容静は二人に礼を言うと、終夜に近ずき何時もの会話を始めた。いつも通りの光景だった、それを見ていた二人は声を潜めて話す。


「言いくるめるのが相変わらず上手いね日影。だから終夜も名前を明かしたんじゃない」


「まぁ、どっちでもいいことだろ。それよりも早く行こうぜ」


 日影の案に乗った天心は皆が居る方向に歩き始め、日影は走って向かって行った。天心は日影が照れてる顔を思いながらゆっくりと歩いて行った。

 日影が照れてる理由は簡単だろう。その証拠は名前を自分と容静に伝えず、流星と日影の二人だけに教えた。何を思っていたのかは兎も角、それはつまり信頼されている証拠になる。信頼している友達から信頼されていた、友達関係でこれ程嬉しいことは無いだろう。



 一通りの会話が終わった頃を見計らい、ギルドマスターことメイが大きな声を出す。


「あーー、諸君。私や何人かはまだ知らない顔があるから自己紹介をお願いしたい」


 メイが言った一言により、すぐに自己紹介が始まった。

 この場に居るのは、終夜、天心、流星、容静、日影の男性五人と、フェルシア、エル、火鈴、涙、メイの女性五人の計十名。

 自己紹介は一人一人前に出て、自分の事を多少喋る事普通の自己紹介だ。


「まずは俺からだな。皆知ってると思うが改めて、刻天終夜(こくてんしゅうや)だ。趣味は、そうだな暇潰しと言った所か。後、こいつはサリネな、こいつも宜しく」


「キュ」


 終夜とサリネについては多少外野も騒いだが、今は自己紹介の途中なので外野も強くは言わなかった。次は天心だ。


「僕は白陽天心(はくようてんしん)。得意な事はまとめ役で趣味は、言うほどの事はないかな」


 多少締まらなかったが、次は流星の番だ。


「僕と言うより俺は、いや私はうーん。取り敢えず名前は。無明流星(むみょうりゅうせい)と言います、皆さん宜しくお願いします。趣味は、修業。かな」


 最初の二人と比べるとぎこちなかったが、それでも確かに自己紹介を終えた。次は容静だ。


「俺っちの名前は神賀容静(しんがようせい)。趣味はオタク全般、以上っす」


 かなり早口で喋った容静、あまり慣れてないとしても一応自己紹介はした以上、次は日影に移った。


「俺の名前は幻界日影(げんかいひかげ)。まぁ、宜しく頼むわ」


 何とも軽く自己紹介をこなした日影。次は女性陣の自己紹介に移った。


「なら私から。私の名前はフェルシアと言います。種族はエルフですが、ただのエルフではなくハイエルフと人間のハーフエルフになります。これから宜しくお願いします」


 フェルシアの声は周りによく響き渡り、自己紹介の鑑の様だった。次はエルの番になった。


「私の名前はエル・ミリアです。ある事情で、過去の記憶が余り確かではありません。ですが基本的な事は大丈夫なので、皆様宜しくお願いいたします」


 落ち着いた口調で自己紹介を終えたエルの次は、火鈴の番だ。


「やっと私の番ね。私の名前は東空火鈴とうくうかりん宜しく」


 一番簡素な火鈴の自己紹介の次は、涙の番になる。


「えっと、私の名前は蒼透涙そうとうるいと言います。よ、宜しくお願いします」


 かなりあやふやな自己紹介だったが、次はメイの番になった。


「私の名前はメイと言う。終夜達が向かっているツヴァイと言う街にある冒険者ギルド。そこのギルドマスターをやっている。宜しく頼むよ、諸君」


 何とも威厳を含んだ言葉に、メイを除いた全員が笑っていた。


「おい、なんだよメイ。その言い方凄く笑える」


 サリネも終夜と同じ考えのようで、仰向け状態で笑い転げていた。


「僕もだよ終夜。あの姿を見てこれは、笑える」


 終夜、流星、容静、フェルシアの四人は盛大に笑っていた。それに比べて、天心達とエルは何なのかよくわからずにいた。


「さてと、取り敢えず此処に集まったのが全員か。朝も更けてきたことだし、朝焼けでも見てみるか」


 終夜の言葉を聞いた全員はほぼ同時に東を見た、そこに映っていたのは。バラバラに切り倒された木々と、壊れた山の様な跡の向こうから、輝きながら出て来た朝焼けだった。


 そんな壮大で綺麗な景色を見ながらも、皆の頭の隅にはある事がよぎった。

それは、この場に居る全員が感じた事だった。此処に居る者達とは長く、深い付き合いになるだろう、と。互いが、全員の顔を見ながら。





 改めて、かなり間が空いてしまいました。本当にすみません。本来ならこのページまで書く予定だったのですが、あれやこれやで遅くなってしまいました。

 次の展開もあり、これからも続いていくので、破茶滅茶苦茶な異世界冒険をどうぞ、宜しくお願いします。

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