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フェルとエル

 終夜と容静が話し始めた頃とほぼ同時刻、こちら側でも話し合いが始まっていた。

 フェルとエルの二人はテントの一室。エルの部屋で互いに向き合い、どちらも緊張している中で話し合いを始めた。


「エルさん。記憶がどれくらい思い出しましたか」


「まだそれ程思い出せません。あの、フェルシアさんは十六夜さん。十六夜さん達とはどういった関係なのでしょうか」


 フェルは寝間着に似た服装をし、エルはフェルに似た服を貸して貰っている。どちらもピンクと水色の柄が入っている。


「エルさん。まさか」


「いえ、そういう事ではないです。ただ」


 フェルがエルに問うと、エルは如何にも狼狽ていた。本人は隠しているつもりでも、フェルには一目瞭然だった。


「エルさん。その気持ちは私には隠さなくてもいいです、分かってますから。でも、十六夜さんは過去に色々あったと言っていました」


 フェルは、一言目はゆっくりといい、二言目は少し語調を強めてエルに言った。エルにはその一言で、フェルの意志が伝わった。エルは隠している事を白状することに決めた。


 テントの一室には重い空気が漂っていた。


「······フェルシアさん。実は、私は記憶をほとんど思い出しています。隠していて、すみません」


「その言葉は十六夜さんに伝えてください。記憶の事は、最初に十六夜さんが気づいて私に任せてくれました。同じ女性の私の方が、十六夜さんが話しやすいからと言って」


 最も、十六夜はフェルシアに完全に任せた訳ではなかったが。


「十六夜さんが」


 エルは十六夜に対して驚きを隠せずにいた。あの時、十六夜達を騙せたとエルは思っていたが、違ったのだ。

 十六夜は最初から気付いていた。本当はあの場でエルの嘘をばらすつもりだったが、運が悪いことにメイが一緒にいた。流石の十六夜も、メイが敵になるか、其れとも味方になるかが分からず、フェルにぼかしながら事情を説明し任せた訳だ。


「エルさんは、十六夜さん、流星さん、容静さんの事を本当はどう思っているんですか?」


「十六夜さんについては、記憶の事があっても最初と同じです。流星さんと容静さんは分かりません」


「エルさん。エルさんの過去を、教えて貰えませんか」


「私の過去ですか」


 エルはフェルに全てを隠さずに話す事にした。フェルとエルは二人で、まるで親友のように夢中で話していた。


 エルは、自分が王女だった事をフェルに伝えた。そして王女の立場にいた頃の過去は全部と言っていい程思い出していた。だが、自分が封印されていた理由の事は何一つ思い出せなかった。

 フェルとエルの二人は、互いの過去について話し合う程に、一晩で仲を深めていた。加えて、どちらも話している内に最初の緊張は何時いつ)しか消え失せていた。


 二人は夢中になって話し合っていたが、次の瞬間。耳を塞ぎたくなる程の轟音が二人を襲った。堪らず二人は耳を塞ぎ、アイコンタクトを互いに取り外へ出た。

 そこにあった景色は、あるはずだったダンジョンが跡形も無くなり、周りの地面は円形にへこみ木々はバラバラになっている惨状の光景だった。



 

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