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non color  作者: ととり
色と出会いと
4/22

一言目は「苦労してるね」

ここで、私の交友関係について考えてみよう。






この 私立籐峰高校を選んだのには、いくつか理由がある。

そこそこの偏差値であること。運動部強豪校であること。施設設備が充実していること。学科数も豊富で、体育学科、芸術学科や音楽学科、医療専攻学科、進学校が進学校である所以の特進科、系列校には商業・工業科も有るらしいが、そこは割愛。普通科も成績順にクラス分けされて、掲示板にばん!と成績優秀者が羅列される。そんな競争、実力至上な学校である。






その分校則は緩めで、指定の制服はあるもののほぼ着崩して私服化している先輩方も珍しくない。自由という言葉に憧れを抱く私達の年代にはとっても魅力的な校風なのだ。





そして、ここが一番大事。






同中学校からの進学者が居ないこと。肝要です。

















何事もイチから始めるっていうのは労力がいるよね。これ、兄さんに同じ事言ったらばばくせぇ…って一蹴されたんだけれども。別にさ、友達100人計画とか画策してないから、程々でいいのだ。

問題点があるとしたら、私の見た目がちょっと、あの、近づきがたいらしいということだけで。






右隣、オレンジ。左隣、ノーマル女子。私は彼女にターゲットを定めた。よし。私は女優。これは学校生活の平穏のためよ!心もち目線に力を込めて、隣の席のセミロング女子(黒髪!)を覗きこみながら話しかける。






「ね、初めまして。よろしくねー」






にこり、と当社比150%の笑顔もつける。少し驚きの表情を浮かべた彼女は、それでもすぐに笑顔になってわー、と感嘆のような声とともに体をこちらに向けてくれた。






「よろしくねー。やっぱり美人さんだぁ…。綺麗だなーって思ってたんだけど、気後れしちゃって話しかけられなかったんだよね!あ、わたし江南 華浦えなみかほです。柳瀬さん、だよね?あ、お昼一緒にご飯食べない?お弁当持ってきてないから、購買行ってみたいんだけど、どうかな!?」





「あ、うん。わたしも購買行ってみたいな」



「だよねー!!購買毎日バトルらしいから行きたいと思ってたんだよね!」






きゃーと言って興奮のためか薄く染まる頬に両手を当てて足をパタパタさせて喜んでいらっしゃる。

てか、テンション高いなー。動作も大げさでちょこまか動く小動物っぽい。これが女子高生のあるべき姿なんだろうか。ちょっとついていけない感。とりあえず、話の流れでお昼ごはんのお仲間はゲットできたらしいので、良しとしよう。……なんだか不穏な言葉が聞こえたような気もするけども。





「わたしね、昨日バレー部の見学行ってみたんだけど、あ、中学の先輩が居てね、それで購買の必勝法とか色々教えてもらって!一緒に乗り込もうって誘っても中々みんな頷いてくれないからさぁ。もう、こうなったら絶対一人でも乗り込んでやるー!!って思ってたから仲間ができてよかったぁ」




「……うん」





うん。軽々しく頷いちゃいけないところだったらしい。とは言え、私はお弁当なんて持って来ることはないだろうから、どの道早かれ遅かれその、バトル?らしい購買に向かう羽目になっていたと思う。ここは下手な口答えをするよりは必勝法(?)を知っているらしい江波さんについていくのが賢い選択だろう。





「あ、もう一人誘うね。おーい!冶田くーん、いっくよー!!」




はったくん。誰。と元気にブンブンと手を振り回して知り合いを呼ぶ彼女を眺めていると、のそのそと近づく人影。



oh…。思わずイングリッシュになってしまうほど、私は狼狽えた、否心のなかでだけですが。




「江南さん…ちょっと、うるさい。もうちょっと音量抑えてくれないと、耳痛い」




私とそう変わらない身長の男子生徒。不快げに歪められた童顔が、その煌かしい白髪の下に隠れた耳を軽く押さえながら近づいてきたのだった。





誰、と言わんばかりの目線を向けられて、ぼんやりとその髪を眺めていたことに気がつく。気を引き締めるように表情筋に力を込めて笑顔を作る。




「初めまして、柳瀬 夕です。よろしくねー」




冶田 智雅はったともまさです。よろしくお願いします。」





乏しい表情に慇懃な態度でペコリとお辞儀される。…同級生ですよね?

その距離感の有る態度のまま、じっと目線を合わせて冶田くんは静止した。な、なんだよう。





「柳瀬さん、作る友達間違えましたね」




「えっ」




「江南さん、恐ろしくうるさいですよ。歩く公害。歩く迷惑収集器ですよ」






「え」「はぁーっ?人の友達にいきなり変なこと言わないでよ智くん!」「事実でしょう」「そんなことないし!勝手に人の悪口を言うのやめてって前から言ってるでしょ!」「嘘は言ってない」「もーそんなんじゃぁ友達できないんじゃなーい?」「余計なお世話」「心配してるんだよ」「はぁ、どうも」「もーいっつもそんな態度なんだからいい加減に」








「 あの 」






周囲からの目線が痛い。いくら昼休みでざわついているとはいえ、こんなところでテンプレートな会話をぎゃあぎゃあと続けていれば注目も集まってくる。あと、リア充爆発しろ。






「 いい加減にしませんか? 」




にっこり、微笑んで言う。





「「はい」」








同時に口をつぐんだ2人を胡乱な目で見つめる。幼なじみ同級生とか。ありきたりで乙だよ……。






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