クラス替え
春休みに入ってからというもの、私は、彼とのデートとバイトを両立していた。
今日は、春休み最終日。
彼と映画の帰りにこの間のカフェで、まったりとした時間を過ごしていた。
このカフェの経営者が、紫音くんのお姉さんだとは・・・。
だから、この間も閉店時間だったのにも関わらず、使えたわけだ。
「今年は、梓と同じクラスになれたらいいなぁ・・・」
と、突然、紫音くんが言い出した。
「なんで?」
「だって、今年は、一大イベントの修学旅行があるだろ。同じクラスだったら、必ず同じ班になれるしな・・・」
嬉しそうに話す。
そんな彼に。
「そう簡単にはいかないんじゃないの?紫音くん、人気者だから、私よりも他の子達が、率先して手を挙げるんじゃないの?」
苦笑しながら言う。
「そうかもしれないけどさ、俺としては、梓と一緒がいい」
真顔で言う。
もう・・・。
何て、返せばいいのよ・・・。
「梓?」
「うん?」
「梓は嫌なの?」
「嫌じゃないよ。ただ、恥ずかしいっていうか・・・」
「そっか。梓は、恥ずかしがりやだもんな」
彼は私の頭に手を置く。
う・・・。
そうだよ。
「でも、梓は、俺のだもんな。誰にもやらない」
って・・・。
それって・・・。
「紫音。その独占欲丸出しは、やめなさい!」
綺麗なお姉さんが言う。
エッ・・・。
誰?
「煩いなぁ。いいだろ。梓は、俺のだ」
紫音くんが食って掛かってるけど、私は、ハテナを飛ばしてる。
そんな私に気付いたお姉さんが。
「ごめんね。私、紫音の姉で香音です。よろしくね」
私の疑問を香音さんが、吹き飛ばした。
「田口梓と言います。よろしくお願いします。」
私は、頭を下げた。
「あら、可愛い。梓ちゃん。紫音に何かされたら、相談しにおいで・・・」
ニコニコ笑顔で言われました。
「あっ、はい」
頷く私に。
「相談なんて、しなくていいよ」
紫音くんが不貞腐れてた。
翌日。
制服に着替え。
「行ってきます」
家を出た。
今日から新学期。
少しだけ、ウキウキとしながら学校に向かう。
クラス替え、どうなってっんだろう?
朋子と同じクラスだったらいいな・・・。
学校に着き、掲示板を見る。
2ーBのところに自分の名前、そして朋子の名前もあった。
そのまま視線を下げていく。
藤堂有美の名前も・・・。
そして、彼の名前もあった。
何これ・・・。
これって、何かある一年?
とりあえず、教室に向かった。
教室に入って、出席番号で指定された席に座る。
暫くして。
「おはよー、梓。今年もよろしくー!」
後ろの席に座る朋子。
「こっちこそ、よろしく」
私は、朋子の方を向いて、話し出した。
「あいつも、一緒だったね」
朋子が言う。
「うん」
「何、嬉しくないの?」
私は、首を横に振る。
「じゃあ・・・」
「単に喜べないんだよ。あの人も一緒だから・・・」
私が、言うあの人に思い当たったのか、朋子も頷く。
「嵐の前触れか・・・」
朋子が呟いた。
私も、頷く。
ハァーーー。
二人で、溜め息をついていた。
「梓ー!」
教室に入って、来るや背後から、抱きつかれた。
「キャーッ!」
何さ。
クラスの女子が、黄色い声をあげてるし・・・。
物凄い視線の数が、私たちを見てる。
「おはよう。紫音くん」
私は、顔があげられない。
「おはよ。朋ちゃんも」
「おはよう。って、早く離れなさい、流崎。梓が、恥ずかしさに耐えられなくなってる」
「なんで?って、その前に。昨日、言った通りになった。一年間よろしくな、梓」
「・・・う・・・うん・・・」
「ほら、早く、離れる」
「やだ。梓は、俺のだもん」
って・・・。
クラス中に宣言されてしまった。
もう・・・。
やだ。
恥ずかしすぎるよ。
顔があげられない。
「梓から、離れなさい!」
朋子の語尾が、強まる。
「チッ・・・。仕方ないな・・・」
って言ったかと思ったら、“チュッ“って、頬に柔らかいものが当たる。
私が、顔をあげると。
「梓。もう少し、下向いてた方がいいよ。そんな顔、誰にも見せたくない」
紫音くんが言う。
その言葉に朋子も頷いていた。
顔が暑い。
朝から、紫音くんにしてやられるとは・・・。
「田口さん。ちょっといいかしら・・・」
始業式も終わり、今日は、授業もないので、教室にいるのはまばら。
そんなときに声をかけられた。
「何でしょ?」
「率直に言わせてもらいます。流崎くんと別れてください。あなたが、並ぶより、わたくしの方が、会いますでしょ!」
って・・・。
しかも思いっきり指を指されてます。
人に指を指すのは、どうかと思いますが・・・。
確かに、そうかもしれません。
私となんて釣り合っていないと、自分でも思ってますよ。
「そうですね。・・・ですが、紫音くんが許してくれるか・・・」
「でしょ。だから・・・」
「何してるん?梓、帰ろ」
背後から、抱き締める人が・・・。
「流崎くん・・・。この際だから、言わせてもらいます。田口さんと別れて、私と付き合いなさい!」
って・・・。
言っちゃったよ。
しかも、上から目線だ。
一番、紫音くんが嫌いなことだ。
「誰が、梓と別れるかよ。それに、人に頼まれて、別れるのって、ちがくねぇ」
紫音くんが私の前に立ちはだかる。
紫音くん・・・。
さっきまで居なかったよね。
一体いつ戻ってきたんだろう?
紫音くんに守られながら、顔を出すと有美さんの顔が歪んでいた。
「藤堂。俺が、梓の事が好きで、一緒に居るんだよ。お前がとやかく言う必要ない。って言うか、一度でも梓に何かしたら、俺が許さないから、覚えておけ」
紫音くんが釘を指す。
「流崎くん・・・」
有美さん、紫音くんの事、本当に好きなんだ。
「梓、帰るよ」
紫音くんが私の鞄を持って背中を押す。
「う・・・うん・・・」
桜並木の道を二人並んで歩く。
「紫音くん。あんなこと言ってよかったの?」
「いいの。梓は気にしすぎ。俺は、本当の事言ったまでだし」
スッキリした顔をする。
「ありがとう」
私は、小声で言う。
「うん?何か言った、梓」
紫音くんが立ち止まって私を見る。
「何でもないよ。大好き、紫音くん」
紫音くんの首に腕を回して、軽く唇を重ねた。
今年は、何かと騒動が起こりそうだと、今から心配事が増えた。
紫音くんの梓好きを発揮できてたでしょうか?
これからのイベントで、書いて欲しいストーリーとかありましたら、教えてください(*≧∀≦*)。