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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
セントルイナ大陸編
73/132

襲撃は業炎と共に

 事態が動いたのはそれから半日ほど経った頃だった。夕日が照らすジストの街に、狼の遠吠えが響き渡った。住人達はさほど気にせずに日常へと戻っていったが、それを聞いてむくりと立ち上がる者がいた。

「来たっぽいね。それじゃあ早速ブチのめして……」

『もちろんダーメ。ほらほら、そんな顔しないで。後ちょっとの辛抱だから』

「そんな事言われても……」

 ハア、と疲れたような吐息を漏らし、ディーラは恨みがましく視線を首に下げた宝石へと向けた。

「今朝からずっと言われた通りに動かされてチマチマした事やらされれば、だれだって嫌な顔の一つくらいするよ。あー、この辺一帯焦土に変えたい……」

『コラコラー、なに物騒な事言ってんのさ! 私たちの仕事はこれからが本番なんだから、シャキッとしなさい』

「はーい」

 仕方ない、とばかりに呻き声を上げ、面倒そうに羽を広げる。

「あーあ、早くご主人来ないかなぁ……ねえマリン、やる気を上げる裏技とかない?」

 どうしてもかったるさの消えないディーラは、なんとなしにマリンへと話を振った。彼女は困惑の表情を見せながらも、うーん、と考える。

『えー。そうだねー、自分にご褒美を用意するとか?』

「ご褒美?」

『そ、ご褒美。これが終わったらマスターになにかお願いするモノのことを考えるとちょっとやる気は上がるんじゃない?』

 ちなみにマリンは何度も強請ねだったものがあるが、未だに貰えたためしがない。当然だろう。流石に貞操をポイッと上げる訳にはいかない。

 マリンの例えはともかく、ご褒美か、と思案するディーラ。特に物に執着するような性格ではないため、色々考えてすぐ破棄する。

 欲しい、と言う訳ではないが、今日までお預けを喰らった身としては強い相手とり合いたいかな。そうすると、シャシャと同じ刀使いの少年との戦闘なんて良いかもしれない。

 うん、と頷きご褒美を設定しかけ、ふと別の思考がディーラの頭に浮かんだ。

(…………)

 脳内ではディーラとユクレステが仲睦まじく手を繋いだ姿が映っている。一瞬自分がなにを考えているのか理解できず、ぼーっと虚空を眺め、

「────ッ!? う、わ……」

 一体なにを考えているんだ、あんな甘ったるい微笑み、僕には似合わない。

 ぶるぶると頭を振って脳内の光景を振り払い、紅潮した頬に自分の手をあてがった。冷たい手の感触が嫌に心地良い。

 その様子を目ざとく見つけたマリンが言う。

『あっ! マスターの貞操は私がもらうんだからね!?』

「な、なに言ってんの? って言うか貞操ってなに? べ、別にご主人とその、手なんて繋ぎたい訳じゃない、し……」

 夕日に負けないくらい真っ赤になって顔から火を吹き出したディーラがそこにいた。もちろん、火属性の魔法が得意なディーラではあるが、今回は至って普通の比喩的表現である。



 マリン達の役割は、再三になるが襲撃を遅らせる事だ。阻止する事ではなく遅らせる、と言うのが重要となる。そのため、ディーラが出て行って攻撃魔法をブッ放すのはNGだ。そこでマリンが取ったのは、至って古典的な手段だった。

「あ、また落ちたみたいだね」

『はっはっはー! また一匹バカなウサギさんが掛かったかー!』

 民家の屋根の上から楽しげな声が聞こえ、同時にガランガランと遠くの方から音が鳴り響く。周りの人々が何の音かと首を傾げ、顔をそちらへと向けた。マントを目深に被った人物はそそくさと去って行く。

 彼が去った場所には深さ三メートルほどの穴が出来ており、中には鉄鍋や音の出るオモチャが大量に敷き詰められていた。

 この落とし穴、提案者は何を隠そうマリンだった。フィルマの情報やフウの野生の勘を元にジルオーズの屋敷への侵入経路に罠を張ったのだ。先ほどのような落とし穴から、踏むと水が出て全身びしょ濡れになる罠や、鳴子のようなものまで様々なものを作り上げた。人の目を気にするはずの侵入者ならば、住民からの視線が向くのは避けたいはず。そこを見抜いたマリンの作戦は上々の戦果を上げていた。賊がジストの街に現れてから既に一夜が明け、太陽は昇り切った位置にある。その時間まで見事に襲撃させなかったのは十分な戦果と言えよう。

「やれやれ。なんで悪魔族である僕まで穴掘りしないといけないのやら。こんなとこご主人に見られたら……あれ? 嬉々として穴を掘る姿しか浮かばない?」

 よくよく思い返せばあのご主人様もこんな小狡い戦法が得意だったっけ、とスコップを持ったユクレステを幻視して声を漏らす。

『それにしても良いよね、人が地面に落ちて行く様を見るのって!』

 流石に性格悪過ぎではないだろうか。ディーラとしては憐憫れんびんを誘う光景にしか見えないのだが。

 呆れの込められた視線が宙をさ迷い、それにしても、と思考する。

「一体今日で何回目だろうね? ユゥミィ並に学習能力ない奴ら」

襲撃者がジストの街に入ったとの報告があってからすでに半日強。その間に罠に嵌まった回数は三桁を超えている。そこまで無数に罠を張り巡らせたマリン達も驚愕に値するが、そのことごとくに掛かる彼らも別の意味で感嘆の声が出てしまう。穴に落ちる姿がいっそ芸術的なのだ。

 ハッキリと相手の姿を確認した訳ではないが、そこまで無能と言う訳ではないはずだ。シャロンを襲った腕前は一流のものであったし、対面せずとも感じたプレッシャーはディーラにとっても十分に脅威と呼べる代物だった。それがこうまで幼稚な罠にかかりまくる姿を見ていると、異様なまでの違和感を覚える。

「気のせいだと良いんだけど……」

 ひとちながら足元のヒモを引っ張った。遠くで小規模の爆発が起こるのをしり目に、チラリと屋根から身を乗り出して罠に掛かった人物を眺める。

 ガタイの良い男だ。顔を隠すためにフード付きのマントを目深に被り、そのせいで余計に目立っているようにも見える。服の上からでも分かるほどに隆起した筋肉が実力を表しているかのようだ。

 一言で言えば、強い。

 ディーラから見てもそれは明らかで、だからこそそれほどの相手が何度も何度も罠に掛かっている姿が信じられないでいた。

「――――ッ!?」

 瞬間、背に悪寒が走った。獣の勘のような不確かなものだが、それはディーラが良く知り、信頼するだけの戦闘での勘。バッと身を隠し、舌打ちを一つ。そこへマリンが心配したような声を出した。

『どしたの?』

「気付かれたっぽい。目が合った」

『ホント? あそこからここまで結構距離あったけど……』

 信じられない、と言った声音で呟かれた言葉に、ディーラはコクリと返事をする。

 一度引くべきかと思案し、マリンの意見を聞くために視線を傾ける。だがその刹那、ディーラは翼を羽ばたかせ空へと飛んでいた。

「チッ」

 舌打ち一つ、先ほどまで居た屋根にナイフが突き刺さっている。それを確認し、両の爪を光らせ白刃を受け止めた。

「こ、の――!」

 ブン、と力任せに弾き飛ばし、後方へと飛翔する。ディーラに剣を振り下ろした男は空中で体勢を直しながら民家の屋根へと着地する。即座に体を捻り、流れる動作で懐から数本のナイフを投擲した。

 前からの三本のナイフを弾き、後方から飛来した二本のナイフを掴み取る。掴んだナイフを一本ずつ前と後ろに投げ、ディーラはふん、と鼻を鳴らした。

「なるほど、曲芸師は二人居た訳か。通りで、ナイフの量が多かった訳だ」

 常人よりも高い視力を持った悪魔族の瞳には、二人の男の姿が見えていた。小柄で、腰に二本の剣を差した二人の人物だ。ディーラからのナイフを避けたからかフードは外れ、顔が確認できる。二人とも瓜二つの顔で兄弟なのだろうと予想する。そしてなによりも特徴的なのが、その二人に共通する瞳だった。

 濁ったような光が瞳の奥に見え、それを見たディーラの胸中に不快感が生まれる。

「マリン、どうする? ここで、やる?」

 だがすぐにそれを振り払い、マリンへと問う。今ならばまだ二人を相手にするだけで済むが、すぐにでも先ほどの大柄な男がやってくるだろう。目の前の二人ならばどうにでもなるが、あの男も同時にとなると流石のディーラでも簡単にはいかない。

 それを推しての言葉に、マリンは逡巡し、判断を下した。

『……オーライ。ちょっと計画が前倒しになりそうだけど、仕方ないか。ディーラちゃん、良く聞いて。もうすぐマスターが着くみたいだから、先にやっちゃおう。出来るだけ、ド派手にね』

「へぇ。ド派手に?」

『そ、ド派手に』

 お許しが出た。それも、かなりディーラ好みの。

 眼下の二人からナイフが投擲されるが、そんなもの片手間に処理し、凄絶な笑みを浮かべ腰のベルトから魔晶石を抜き放つ。ナイフのような赤い刀身がキラリと妖しい光りを放ち、周囲の空間が歪む。圧倒的なまでの熱量が空気を浸食し、陽炎が立ち昇った。

 街の住民が驚きに悲鳴を上げている。それすらも、余興を前にした役者には心地良いものでしかない。

 そして、紡ぐ。

「気炎を吼えし屈強なる炎の精霊、力強き杯を満たす力の根源、全てを壊し、今解き放て――」

『あ、そだ。ついでにジルオーズの屋敷も混乱させといてってさ』

 了解、と心の中で返し、下降する。一人の男が双剣を抜くが――――そんなもの、見る事すら値しない。

「ザラマンダー・バスター」

 魔晶石を前面に押し出し、魔法を解き放つ。解放された力は魔晶石によって何倍にも増幅し、極炎の光となってジストの街を両断した。

「――っ!!」

 二人の男は咄嗟に隣の屋根へと移動したおかげで無事だったが、彼らのほうったナイフは赤い光りに呑み込まれ消え去る。そのまま突き進んだ魔法の光は、ジルオーズの屋敷の結界に激突し、消滅する――――かに見えた。

 その光景を眺めていたディーラは、ニヤリと笑みを浮かべてさらなる魔力をつぎ込んだ。結果、

「い、け――!」

 収束していた赤い光りは再び力を取り戻し、喰らい尽くすように結界もろともジルオーズの屋敷の門を破壊する。幸い、屋敷自体には大きな被害は出てはいないが、それでも炭になった部分は出ているだろう。

 周りのざわめきが最高潮に達した時、宝石の中からマリンが声高らかに叫ぶ。

『さあ、休んでいる暇はないよ。ボサッとしてたらジルオーズの鍵も私たちが頂くからね、君たちが持ってた鍵と同様に!』

 その言葉に今まで少しも表情を変化させずにいた二人の男が初めて動揺の色を見せた。



 二人の男にギロリと睨まれながらも、余裕の表情で見返すディーラ。表情に変化が現れた事に感心をしながら、黙って警戒を続ける。

 元々ディーラは口下手なのだ。それも明確な敵と舌戦を繰り広げる趣味はない。気分が高揚して相手と力を認め合う事はすれど、状況の確認のためだけに言葉を交わすなどバカげている。そう言った事は、全部彼女に任せればいいのだ。

『ふふ、ねえ気付かなかった? シンイストの街で君たちに返したアーリッシュの鍵。あれ、偽物だよ。本物は私のマスターが大事に持ってるから。運が良かったよー、ちょうど手元に似た感じのペンダントがあってさ、それを渡して騙くらかしたって訳。ウソだと思うんなら見てみればいいじゃん』

 ほら見ろ、この性悪人魚、こんなにもイキイキと喋っている。不安を助長させるような嫌らしい言葉遣いで、結果的に真実なのだが嘘だとも取れる言い方。本当に、あの主人にそっくりだ。

 目配せをした男が懐に手を入れる。待っていたとばかりにマリンがキーワードを発した。

解錠アンロック!』

「グッ――!?」

 唐突に彼の手に持った灰色の石が姿を変え、百キロ超過の重鎧に変化する。そんなものが片腕一本で支えられるはずもなく、バランスを崩した男と一緒に屋根から落下した。

『ディーラちゃん、ゴー!』

「……まあ、なんとなくそう来るとは思ってたけどね。燃えろー、ブレイズ・カノン」

 やる気のない声と共に炎の砲撃が鎧に着弾し、男は即座に離脱する。その隙を狙いディーラは地面に降り立ち炎の中の鎧に触れた。

施錠ロック。一応これ、ユゥミィの宝物だからね。いつまでも預けとく訳にはいかないんだ。返してもらう」

 灰色の石に戻った鎧を回収し、再度空へと飛び上がった。

「悪いけど、キミ達じゃあつまらない。さっきの大男を出しなよ」

 凶暴な笑みを浮かべて催促するように指を向ける。既に臨戦態勢だった男たちは虚ろな瞳のまま、その異様な迫力に気圧された。

『待って、ディーラちゃん! ロウちゃんの遠吠えが聞こえる……多分、フィルマちゃんの方でなにかあったんだ。私たちはそっちに行こう!』

「えー。せっかくやる気になったのに……」

『いーから。もうすぐマスターが来るだろうからここは任せてあっちに行くよ。もしかしたらあっちの方が面白いかもしれないし』

「どうかなぁ。今まで見た中だとあの大男が一番強そうだったんだけど」

『上手くやったらマスターからご褒美貰えるかもしれないよ?』

「うっ……! ま、まあ仕方ないね。それが僕の仕事みたいだし」

 その言葉に、先日の妄想が思い出され途端に顔を赤くする。不承不承と言ったていで頷きながらも、どこか昂揚した気分だ。

 チラリと敵を見て、チョイ、と指を向ける。

「ザラマンダー」

 スゥ、と男の足元に円が描かれ、間髪入れずに火柱が上がった。無事に回避をしていたようだが、その頃には既にディーラは彼らを見ていない。羽を動かし、空を移動している。

 後に残された二人の男は、感情の見えない瞳でそれを見送った。



 轟音と共に赤い光りが街を貫いた。それを成したのが、つい先日出会った悪魔族の少女のせいだとは露とも知らず、学友と一緒になって身を竦める。

 フィルマが顔を上げ、慌てて学園の外に飛び出すと周りの教員達も同様に慌てふためいていた。

「せ、先生! どうされたのですか!?」

「あ、ああ、フィルマ君か。いや、私にもなにがなんだか……向こうの方でなにかが光ったと思うんだが……」

 この学園は街の外れに位置しており、教員達ですらこの事態を正しく把握出来ていないようだ。

 だがフィルマは事前に情報を知っていたため、漠然とながら現状を理解していた。ディーラ達が行動を起こしたのでは、と考え、屋敷に戻りたい衝動に駆られる。今戻れば、ヴィルフォルマに会えるのではないか、そう思ってしまったのだ。

「ダメ……今行けばお兄様の邪魔をしてしまう。そしたら、もう……」

 十年分の思いが胸の内から込み上げて来る。必死に押さえつけながら屋敷がある方向を見つめた。校舎が邪魔になって様子は分からないが、もしかしたらそこに兄はいるのではないのか。

 ふらふらと体が勝手に動き出す。だがそこへ一つの声が掛けられた。

「ああフィルマ! 無事だったか!」

「えっ!?」

 息を切らせて現れたのは、つい先日アーリッシュ国から帰って来たばかりのヴァセリアだった。よほど急いで来たのか、呼吸を落ち着かせるのに少しの時間が掛かる。

「ヴァセリア兄様、学園にいらしたのですか?」

「ふう、はあ……ああ、ここに資料を取りに来ていてね。そんな時に轟音が聞こえたんだ」

 そして校内にいる身内が心配になって探したのだと言うヴァセリア。

「とにかくここも安全とは限らない。すぐに離れよう」

「は、はいっ!」

 スッと手を差し出す。フィルマはそれを取ろうとして、

「屋敷は危険だな。鉢合わせになって襲われるのは困る」

「え?」

 ヴァセリアの独り言にピタリと手を止めた。

 恐る恐る兄を見上げ、彼の表情を見る。一見すれば優しげな表情だ。しかし、どこかに違和感を覚えてならない。

 フィルマは疑問をもって言葉を発した。

「ヴァセリア兄様は、なぜ屋敷が襲われると知っているのですか?」

「……なにを、言っているんだい? 屋敷の方から爆発があったんだから、襲撃されているのはジルオーズの本家に決まっているだろう?」

 確かにその通りである。敵の狙いはジルオーズで、そのため屋敷に攻撃を仕掛けるのは分かっていたことだ。計画ではその予定だったのだろう。

 だが、今やスケジュールは大幅に狂っているのだ。

「違い、ます。巨大な魔力は屋敷ではなく中心街の方から発せられました。それにあれは、爆発ではなく砲撃魔法によるもの」

 外にいれば……いや、室内にいても分かる程の赤い閃光。見逃すには少々大き過ぎる。

 疑念は確信に変わり、手を引っ込めて震える声で言った。

「……ヴァセリア兄様。もしかして賊の手引をしたのは……あっ!」

「――チッ、なにをやっているんだ、あのバカ共は」

 グイ、と無理やり手を引っ張られる。突然感じた痛みに小さな悲鳴を上げ、兄の顔を見た。

 優しげな表情は引っ込み、憎々しげに歪んだ顔は今までフィルマが見た事もないものだった。

「貴様もなぜこの事を知っているのか気になるが、もう関係ないか。優しい兄の仮面はここまでだ。一緒に来てもらうぞ、フィルマ」

「――っ、やぁ!」

 強い力で抱き寄せられ、フィルマの腕に鳥肌が立つ。信じていた兄の突然の豹変振りに、思考がまったく着いていかない。ただ恐怖に固まり、声も満足に出せずにいる。

「――オォオオン!!」

「ガっ!?」

 その瞬間、突風が吹き荒れた。咆哮と同時に吐き出された風の塊がヴァセリアを吹き飛ばす。近くにいたフィルマも巻き込まれてしまうが、その心配もすぐに消え去った。

「えっ……? 風、狼……?」

 魔除けとしてこの街で人気のある種族、風狼がバランスを崩したフィルマを支えている。驚きに声を詰まらせる彼女に、心配するなと一吠えした。

「な、なぜだ……? なぜ風狼が!?」

「あ……もしかして、あなたは……」

 力強く優しげな双眸に引き込まれ、その奥に見た事のある光が宿っているのに気付いた。過去に見た、優しい兄の瞳。

 フィルマの言いたい事を察してか、風狼のロウは彼女に目配せをした後守る様に立ちはだかる。

「――――ォオオ!」

「クソッ、なんなんだこの状況は……! ええい!」

 苛立たしげに呻くヴァセリアは距離を取りながら懐に手を入れた。それを臨戦態勢と取ったのか、ロウは低く唸りながら深く身を沈める。

「高々犬っころが、私の邪魔をするなぁあああ!」

 怒声が校舎に響き渡り、同時に轟音が生み出された。

総合評価が800を超えました! つい先日ようやく400を超えたばかりなのに……たったの二日で倍に……ランキング、恐ろしい子……!

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