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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
セントルイナ大陸編
68/132

狙われる理由

「ハッ、ハッ、ハッ――!」

 人混みを縫うようにフード付きのマントを目深に被った少女が駆けていく。

「まったく、しつこいにも程がありますわ……」

 額の汗を拭いながら前を向き、ハッと慌てて体を捻った。

「こんな人混みでも関係なしですか……そろそろ、あちらさんも焦れて来たようですわね」

 チラリと視線を先ほどまで自分がいた場所に向ける。鈍色に輝く投擲用のナイフが深々と地面に突き刺さっており、投げた人物の腕前を示している。

 事の発端はなんだったのか。それすら今一分からずにいる少女は、走りながら現実逃避気味に思考した。


 あれは、シャロン・フォア・ジルオーズが実家からジストの街にある本家に向かう道中での出来事だった。

 襲って来た魔物数体を惨殺し終えた彼女は、一休みするために木に登って目を閉じることにした。少し披露していたのもあってか、シャロンはスゥと眠りについた。それからしばらくして目が覚めると、彼女が寝床にしていた木の下に三人の人影が向かい合って座っている。その人影はなにかを話しており、話の内容をしっかりと聞いてしまったがために彼らに目をつけられてしまったのだ。


「まあ、勢い余って下の男性を踏みつぶして、大事そうにしていたものを引っ手繰ったのは悪かったとは思いますが……その程度で命まで狙われる事になるなんて……」

 およよ、と涙を拭く振りをする彼女の姿のなんと白々しい事か。と言うか、それだけすれば狙われるのは当然だと思うのだが。シャシャの実姉じっしなだけあって彼女もまた、ぶっとんだ思考の持ち主であった。

 長い袖の下に隠した小太刀に触れながら、シャロンはチラリと背後を見る。これで撒けたとは思わないが、攻撃の手が緩んだことに違和感を覚えたのだ。結果として、それが致命的な隙となった。

「…………!」

「くっ!」

 頭上から振り下ろされる巨大な棍棒がシャロンを掠める。咄嗟に横に転がったおかげで衝撃に巻き込まれるだけで済んだが、もし頭から喰らえば大怪我は免れないだろう。それでも死ぬとは言わない辺り、ジルオーズは伊達ではないのだろう。

 そして今度は横から壁越しに鋭利な槍が突き出される。二の腕を掠め、パッと血が飛んだ。

 周りからの悲鳴が聞こえ、シャロンはチッ、と舌打ちをする。人混みにまぎれれば手は出して来ないだろうと考えていたのが裏目に出てしまった。この状況で一般市民を盾にでもされたら厄介だ。

 その一瞬の逡巡が明暗を分けた。

「しまっ――!?」

 目の前に迫る棍棒。一瞬の隙をつき、それが突き出されたのだ。腹に重たい衝撃を浴び、大きく吹き飛ばされる。空中で体勢を直そうとするが、思ったよりも強い衝撃に動かせずにいた。壁が迫り、思わず目を閉じて衝撃に備える。

「…………あら?」

 だが固い壁の感覚はなく、柔らかいものに包まれる感覚がシャロンを満たした。目を開けば、そこには黒髪の少女が彼女を抱き止めていた。

「だ、大丈夫、ですか?」

「は、はい。問題ありませんわ」

 心配そうに可愛らしい声を発する。場違いなこの状況に、ポカンとした表情で頷いた。

「ちょ、ミュウちゃん大丈夫ッスか? って言うかあいつらは一体……って、え?」

 もう一人、少女の連れと思しき女の子が近付いて来る。シャロンはその姿を視界に入れ、今度こそ本気で呆気に取られた感情を形作った。

「……シャシャ?」

「シャロ(ねえ)?」

 片方の表情は、この上なく嫌そうなものに変化していた。



 そんなことがあり、その後はシャシャ達も交えての逃亡が始まったのだとか。しかし現在、シャシャとミュウの武器は預けてあり、丸腰では如何に彼女達の戦闘力が高かろうが徐々に追い詰められてしまう。

「で、まあ後はユー兄さん達と合流して今に至る訳ッス。なんかもう……身内が迷惑かけて申し訳ないッス……」

「そんなのは今さらだから別に良いんだけどさ……あ、そう言えばアミルさん。ウォルフはどうしました?」

「なんか部屋に戻ったわよ? 考え事があるとか言って。なにかあったのかしらね?」

 なにかあったのか、と言えば、彼女達の事が原因であるのは確かだろう。

 あの時、ジルオーズと言う名に過剰に反応し、逃げるように去って行った風狼の魔物使い、ウォルフ。その行動にある程度の予想がついているユクレステは、ふぅん、とだけ呟いて目下の厄介事に目を向けた。

「あら、シャシャ。あなたが身内をどうこう言うなんて、成長したのね。おねーちゃん嬉しいわ」

 汚れたマントを脱ぎ、ヒラヒラの洋服に身を包んでいる。上着の袖は異様に長く、ダラリと伸ばせば地面に付いてしまいそうだ。下はシャシャと同様にミニスカートで、この寒冷地域には少々似つかわしくないように思える。

 からかう様な視線をシャシャへと向けるシャロン。思わず舌を出して言い返した。

「そーいうシャロ姉はここ数年成長ないッスけどね。ハッ、シャシャよりもちっこいとか、姉としての威厳は皆無ッス」

「……あぁ? なにをバカな事を言っているのかしらねこの子は。いつまでも甘く見てもらえると思ったら大間違いですよ? 素っ首斬り落として鳥の餌にしてやりますわ」

 シャロンの口から低い声が漏れ出て、パッと腕を振って袖が捲れる。そこには既に二本の小太刀が握られており、今にも振り抜かれそうなまでに光を反射していた。

「ス、ストップストップ! えっと、それでシャロンさんは……」

「嫌ですわ、ユクレステ様。私の事はシャロン、とお呼び下さい」

「は、はぁ……」

 コロコロと笑みを浮かべるシャロンに思わずたじろぐユクレステ。先ほどまで怒っていたと思ったのだが、もう怒りは鎮まったのか声は優しげだ。ついでに小太刀も袖の下に戻り、剣呑な雰囲気も消えている。

 気を取り直し、再度確認するように問いかけた。

「シャロンは一体、なにを聞いたんだ? 追われていたのはそれが原因なんだろう?」

「恐らくは。それと、こちらの品も原因の一つかと」

 そう言って取り出したのは、灰色の石のようなものだった。宝石かと聞かれれば首を傾げてしまうような、そんな曖昧な輝きを放ったもの。それを見て、ん、と首を傾げるユゥミィとアミル。

「主、これ、私の鎧に似ていないか?」

「んー? なーんかどっかで見た事あるよーな……」

 後者の言葉は小さかったこともありそのまま消えていった。

 ユクレステはユゥミィの言葉に彼女の持つものを思い浮かべる。確かに、彼女が現在身に着けているペンダントの一つ、非晶流体金属の鎧に似てはいる。しかし、こちらはそれよりももっと重厚で、輝きも強い。一度思考し、諦めたように首を振る。

「確かに似てるけど……それだけだな。まあ、話の内容が分かれば答えも見つかるかもしれないし。シャロン、覚えている限りで良いから教えてくれないか?」

「ええ、分かりました。とは言っても、私もあまり詳しいところまでは……確かなのは、奴らがジルオーズの本家を狙っていると言う事です」

「ジルオーズ家を? それは、恨みとかそういう事で?」

「ふふ、まあ確かに人様に恨まれるのは力ある貴族の嗜みですからね。ですが今回の事はそれとは違うようです。彼らは、こう仰っていました。鍵はジルオーズにあり、例え如何なる犠牲を払おうと奪取せよ、と」

 声真似をしようとしたのか、若干低い声を頑張って出している。

「そして、彼らが大事そうにこれを持っていたので、少し拝借させて頂いたと言う訳ですわ」

「いや、なぜそこで盗むという行為に走る?」

「敵対するというのならばなにをされても文句は言えないものですよね?」

 だから盗んでやったと言うシャロンに、若干冷や汗を流した。自分よりも年下の癖に、やたらと攻撃的である。第三者の視点から見れば、背が低く物腰も柔らかなため、シャシャよりもずっと女性らしいのだが。

「シャロ姉は外面が良いッスからね。お淑やかに振る舞っているッスけど、実際はシャシャよりも攻撃的ッス。うちの姉妹で一番の危険人物ッスね。ま、剣の腕はシャシャの方が強いッスけど!」

 小声で教えてくれたシャシャをニコニコと眺めているシャロン。恐らく、聞こえているのだがあえて静観しているのだろう。

「まあ、確かに剣の腕自体は負けますけれど……殺し合えば負けるつもりはないですけれど、ね」

 くすり。その小さな笑みにゾッとした。


「あー! 思い出した!」

 唐突に考え事をしていたアミルが大声をあげた。どうしたのかと視線を向けると、灰色の石を指差している。

「それ、前にゼリアリスで見た事あるわよ!?」

「ゼリアリス、ですか……」

「そうよ! ……って、どうかしたの?」

 胸元を押さえるようにしたユクレステに疑問の視線が飛ぶが、なんでもないと首を振る。実際は、ゼリアリスと言う名前に敗北の記憶が甦ったのである。胸の傷は塞がっているのだが、それでもジクジクとした痛みがフラッシュバックする。

 そっと側に寄るミュウを安心させるように笑いかけ、アミルに続きを促した。

「それで、ゼリアリスのどこで見たんですか?」

「前に仕事を受けた時にちょっとね。あ、でも少し違うかも。こっちの方が大きいし、それにあっちはペンダントだったもの」

『と、なると似た物ってことかな?』

「そう考えるのが妥当じゃない? あの時は確か……鍵って呼んでたわね。名前の通り、遺跡の入り口を開くための鍵」

 鍵。それは賊も同じことを言っていた。しかし。

「でもそうなると可笑しくないか? 奴らは鍵と言う物を狙っていたのだろう? 既に持っていたものを奪おうとしていたのか?」

「ユゥミィ、多分違う」

 ユゥミィの疑問に首を振るディーラ。早々にベッドに倒れ込んだと思っていたディーラだったが、ちゃっかり話は聞いていたようだ。

「違う? それは、どう言う事だ?」

「……あ、あの。もしかして、鍵というのは複数あるのでは?」

 控えめなミュウの言葉にユゥミィは、あ、と声を上げる。

「多分、そうなんだろうな。ゼリアリスにもあったものが別の場所にないとは言い切れない。それに、遺跡を開く鍵であるならばシンイストに……と言うよりジルオーズにあっても不思議じゃない」

「どう言う事よ?」

「簡単な事ですよ。シンイストには天上への草原がある。あそこは草原、なんて名前が付いているが実際は巨大な遺跡群だ。それに、天上への草原に入るためには普通の方法では入れないって聞くしな」

 天上への草原は大きな崖に阻まれ、一つの道以外からの進入は不可能なのだ。その道も普段は暴風と竜巻によって自然の壁となり、生身での通過はこれまた不可能。年に数度、風が収まる日に突破するか、もしくは、

「ジルオーズならその風を収められる、って言う噂があるくらいだ。もしかしたら、それが《鍵》の効果なのかもしれない」

 どうなんだ、と言う意味を込めて視線をジルオーズの二人に送る。

「うーん、申し訳ないッスけどシャシャは分かんないッス。あそこに行く時は本家の人が最初に行って、シャシャ達は少し時間を置いて入るッスから」

「シャシャの言う通り、それを知っているのは本家の方だけかと」

 申し訳なさそうに頭を下げるシャシャと、少しだけ困った風なシャロン。この様子を見るに、二人が知らないと言うのは本当なのだろう。

 さてどうしたものだろう。目を閉じ頭を動かすユクレステに、マリンから声が掛けられた。

『ねえマスター。これ、かなり高い確率で厄介事みたいなんだけど、関わる気なの?』

「そのつもりだけど?」

「えぇー!?」

 当然のように言ってのけられた答えに声を上げたのは、嫌そうな顔をしたシャシャだった。それも当然だろう。この厄介事に身を置けば、高い確率でジルオーズ家と関わる事になる。ジルオーズ家が嫌で外に出たシャシャにとっては、御免被りたい事態だ。

「シャシャ、あなたは愛するおねーちゃんを助けたいとは思わないんですの?」

「え、当たり前じゃないッスか。むしろ喜んで死地に送り出したいくらいッスよ?」

「上等ですわ。取りあえず素っ首寄越しなさい」

 なに言ってんのこの人、と言った感じの視線にキレたシャロンが小太刀を抜いている。まあまあと諌めるユクレステ。

「ユー兄さん、本気なんスか? そんな、出会って間もないシャロ姉のために面倒を受ける必要なんてないッスよ。それともユー兄さんは小さい女の子が好きなんスか? やっぱり」

「小さい? 小さいぃい!? 私は少々小柄なだけですわ!」

「シャシャ今やっぱりって言ったか? 人を変態呼ばわりしないでくれない!?」

『ま、実際変態さんではあるんだけど……』

 ボソリと言ったマリンの声は聞かないようにして。

「コホン。とにかく、ジルオーズに関わるのは決定事項だから」

 別段、シャロンを思っての事ではない。ただ単に、ユクレステ達がジルオーズと接触しなければならない理由わけがあるためだ。

「良いか? 俺たちは風の主精霊に接触したいんだ。そのためには、天上の草原に行く必要がある」

「そっか。天上の草原に行くためにはジルオーズに道を開いてもらわないといけないんだ」

 得心がいったと納得顔のディーラ。その通りだと頷き、シャシャ達を見る。

「その鍵ってやつが天上の草原への道を開くために必要なのだとしたら、俺たちはそれを阻止しなければいけない。じゃなきゃ、風の主精霊の下には辿り着けないんだから」

 目的はあくまで主精霊と会う事。そのための障害となるのならば、先ほどの襲撃者も対処しなければならない。

「んー、良く分かんないんだけど、あんたらも物好きねぇ。ま、あたし達は関係ないから遠慮させてもらうけどねー」

「そうですか。えぇ、そうですね。……あ、そうだ。ちょっとウォルフと話があるんで行ってきますね。晩飯は外の屋台で良いですから」

「はっ? 買って来いと?」

「あれれー? 奢ってくれるって聞いたはずなんだけどなー、もしかして嘘だったんですかー?」

「わ、分かったわよ! 買って来てあげるわよ!」

「わー嬉しいなー。ユゥミィ、荷物持ちに付いてったげて」

「へっ? 私がか? まあ、別に構わないけど……」

 棒読みに少しの疑問を浮かべているアミル。ユゥミィを連れだって扉を潜って行った。

 パタリと扉が閉まったのを確認し、よっ、と掛け声一つ声に出して立ち上がる。

「あの、どちらへ?」

「あー、ちょっと世間話をしに。シャロンはここに居て下さい。ディーラ、いざとなったらよろしくな」

「ん、りょーかい」

 だらけたディーラの声を背に、ユクレステは部屋を出た。向かう先は、現在一人で部屋に籠もっているであろうウォルフの部屋。

「さ、て……。上手く話に乗ってくれると、楽で良いんだけど」

 いざとなれば対ウォルフ用の懐柔策もある。気楽とは言えないまでも、そう気張る程でもないだろう。



 ドアを潜ると、そこには鋭い切っ先が目の前にあった。

「うおぉおお!?」

「なんだ、お前か」

 間一髪、迫る刀を屈んで避ける。髪が数本犠牲になったが、幸いにも怪我はない。ユクレステは相手を非難の視線で睨みつけた。

「い、いきなりなにすんだよ!?」

「ふん、ノックもせず勝手に人の部屋に入って来るからだ」

 言っている事は正しいのだが、その際の対応に刀を抜くのはやり過ぎではないだろうか。こちらとしても非があったために強くは言えないが、口を尖らせるくらいはしてもいいだろう。

「ったく、これがアミルさんだったらどうしてたんだよ……」

「無論、同じ対応をするが? あいつも最初はノックもせずに入って来ていたからな。その度に情けない悲鳴を聞かされた」

「かわいそうに……」

 優しい、という言葉をその少女から聞いた気がするのだが、この対応でそんな言葉が出せるとは驚きである。あの少女、恐らく菩薩かなにかなのだろう。

 室内に一人でいるウォルフに、そう言えばと問いかけた。

「あのわんちゃん達はどうしたんだ? 是非とも、もふらせて欲しいんだけど」

「外だ。どうやら故郷が近いためかテンションが高くてな。今日は自分たちだけで過ごすらしい」

 それは残念だ、と犬派のユクレステが呟く。いないのならば話に集中出来るのでそれでも構わないのだが。

「風狼の故郷って事は天上への草原、だっけ? ……なあ、ウォルフ。あいつらってどうやって外に出たんだ?」

 まずは軽く探りを入れるように尋ねる。しかしそれが気に食わなかったのか、不機嫌そうに顔を歪めた。

「……なにが言いたい? 簡潔に言え。腹の探り合いなど真っ平御免だ」

「はは、早速バレてーら。ま、俺も長ったらしい口上は苦手だし、そっちの方が良いか。……単刀直入に言う。俺は天上への草原に行きたい。手を貸してくれないか?」

 ユクレステの言葉に、若干瞳が揺れた。それでもポーカーフェイスは崩さず、顔を背ける。

「下らん。オレにとってなんら意味の無いことにわざわざ時間を割くはずがないだろう? そもそも、この時期は天上への草原へは入れないはずだ」

 暦上、春と夏の数日しか天上への草原への道は開かれない。一般的な情報に、うんと頷いた。

「ああ、そうだ。だから、おまえに頼んでるんだ」

「なに?」

 今度は目に見えるほどに動揺が見える。本人は必死に隠そうとしているのだろうが、傍目から見ればウォルフはとても分かりやすい。少なくとも、ユクレステには彼の考えが幾らか理解出来ていた。

「天上への草原に入るもう一つの手段。それがなんなのかは知らないけど、その手段を持つジルオーズ。その本家の人間である、おまえなら――」

 刹那、ユクレステは後方に跳びコクダンの杖を取り出した。眼前にはウォルフが短刀の切っ先をこちらに向けている。

「剣気一刀――閃迅」

「ほんっと口より先に手が出るんだなおまえらは! ストーム・エッジ!」

 鋭い斬撃を風の刃で押し止めながら、涙目でユクレステが叫んだ。思えば、シャシャも出会いは闇討ちからだった。シャロンも、賊相手の初対面は踏んづけて盗んだそうだ。ジルオーズ家は危険人物しかいないのかと内心涙ながらにそう思う。

「なぜオレがジルオーズの人間だと分かった!?」

「あ、速攻で認めてくれるんだ。ちょろい……じゃなく。ってか、割とバレバレだと思うぞ? シャシャ達を見てのおまえの挙動不審はちょっと見てて不安になるレベル」

「クッ、やはりあの分家のガキ共のせいか!」

「いや、だから問題があったのはあなたのポーカーフェイス……まあいいや。とにかく、一旦剣を置いてくれ。別におまえがジルオーズだからってなにも……いや、状況によってはなにかするのか? あ、いや。多分乱暴な事はしないからその殺気もしまってくれ。ミュウ達が不安になって来ちゃうぞ?」

 特に殺気に敏感な悪魔族の少女がいるので、本気で止めて欲しい。嬉々として窓から火属性魔法を撃ち込むディーラの姿が幻視した。

 必死の説得に渋々ながら刀を収めるウォルフ。それでも鋭い視線は終始こちらを向き、この敵意を解くのに説明が必要そうである。



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