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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
セントルイナ大陸編
66/132

到着と買い物

「ん、う……」

 誰かが自分の額に触れる感覚に意識を覚醒させる。胸に走る熱を感じながら目を開くと、そこには人魚の少女がいた。

「……なまぐさ」

「あ、それは流石に酷いよマスター。これでも匂いには気を使ってるんだから」

 頭の裏に感じる鱗の感触。どうやら、この人魚少女にひざ枕をされていたらしい。いや、こいつの膝がどこかは知らないが。

 立ち上がろうとするが、マリンに止められる。

「マスター、だいぶ血を失ってるみたいだからそんなに動かない方が良いよ。覚えてない? 私たち、あの太陽姫にボロ負けしたの」

「あー、そうだったっけ」

 朦朧とする意識を掘り起こし、先ほどまでの光景を思い出す。

 パーティーで挑んであっさり負け、その後挑発して怒り心頭になった太陽姫にザックリと斬り捨てられたのだ。そこまで思い出し、胸の傷に指を這わせる。血は既に止まっており、凸凹とした傷が残っているだけだった。

「これ、マリンが?」

「ううん。私が行った時はもう治ってたから、治してくれたんだと思うよ」

 それはありがたいが、ならもう少し手加減してくれてもと思わなくもない。傷の深さを再確認してため息を吐き、やれやれと空を見る。

「ユリトは、どうした?」

「気付いたらいなかったよ。一応、食料とかは律儀に置いていってくれたみたい」

「そっか」

 分かってはいたが、ユリトエスがいなくなったと知ると余計に周りが静かに感じられる。なんだかんだで、ムードメーカーだった。

 真上にあった太陽も、既に落ちているのか辺りは暗い。すぐ近くでたき火の火の粉が舞っており、いつの間にか夜になっていたようだ。

「……やられてから、どれくらい?」

「十時間くらい、かな。血の臭いが凄かったから急いで場所移動したんだ。獣でも寄って来たら困るから。皆はあっち。かなり疲れていたみたいだから、寝かしといた。ミュウちゃんなんかは、マスターが起きるまで起きてますって言って聞かなかったんだけどね」

 今はもう横になって眠っている。目の横には涙の跡が覗き、心配かけてしまったようだ。

 皆の無事を確認し、ハァ、と吐息した。

「……強かった。それも桁違いに」

「うん、だろうね。見てたけど、私もそう思ったよ」

「もしマリンが戦えていたら、どうだったかな?」

「多分、無理だよ。もしここが海でも、彼女を止められるとは思えない。マスターのマリンちゃんでもね。まあ、本気の人魚姫ちゃんなら分からないけど」

 ウィンクをしながら冗談めかして笑うマリンの姿に、クスリと笑みを見せる。額の薄くなった傷を指でなぞりながら、マリンが言った。

「ねえ、マスター。負けて悔しかった?」

「どうかな? あんまりにも強過ぎて、分からなかったって言うのが正直な所だな」

 剣の一振り魔法の一声、全てが脅威だった。最善の一手を取ろうとも余裕でその上を行く彼女を、どう止めれば良いのか。どう対策すれば良いのか。ユクレステには分からない。

「でも……」

 ふぅ、と息を吐いて皆を見る。健やかな寝息を立てる仲間達の姿に、微笑みが湧いた。

「勝たなきゃいけない時が来たら、次は負けない。そうだろ?」

 ニッ、と笑うユクレステの姿は、負けたからといって陰るような柔なものではない。それを知っているからこそ、マリンは満面の笑みで彼を抱きしめた。

「さっすがマスター! そのふてぶてしいまでの強気、惚れ直しちゃうよ!」

「むぐぅ! マリン、胸、苦しい……!」

 ギュウ、と胸に抱かれたユクレステはその豊かな双丘に挟まれ、息が出来ないともがく。

「ん……ご主人さま!?」

 ドタンバタンと暴れていると、その音に気付いたのかミュウ達が目を覚ます。二人の戯れごとに気付いていなかったミュウが突撃するようにユクレステへと抱きついた。

「ご主人さま、目が覚めたんですね! ……よかった、です……!」

 涙交じりのミュウの声に、思わず漏れる苦悶の声を押し隠す。せっかく心配してくれているのだから、これ以上気を使わせる訳にはいかないという、安い男のプライドだ。

「主! 無事だったか!」

「ユー兄さん、大丈夫ッスか? 結構血を流してたと思うッスけど……流石はユー兄さん、頑丈ッスね!」

「シャシャ、あの血の量は頑丈云々で片づけられないと思う。……でも、ご主人が無事で良かった」

 ホッと安堵の息を吐く仲間達に、思わず顔が綻ぶのが分かる。これほどまでに心配してくれる仲間達がいるのを、素直に嬉しく思った。

「……ああ、ありがとう」

 心から出た言葉に、皆が笑みを浮かべるのだった。



 ガラガラと乗り合い馬車の走る音が聞こえる。男の声にボーっとした意識を呼び起こされ、外を盗み見た。

「あ、ユー兄さん、そろそろ着くみたいッスよー」

「お、本当だ」

 刀の手入れをしていたシャシャがそう言ってニコリと笑った。確かに、馬車が向かう方向には木で出来た柵と門が見える。ようやく、次なる街。シンイストへとやってきたのだ。


 太陽姫の襲撃という事以外に大した問題もなく、ユクレステ達はシンイストまで辿り着いた。そもそも、それだけでも十分に異常事態だと言われればそれまでだが。

 馬車を降りたユクレステ一行は、取りあえず宿を取って自由行動となった。それと言うのも、ユクレステの格好に問題があった。クリストの街で急ごしらえのローブを購入したユクレステだったが、アリスティアに氷漬けにされ、大量の血痕で白いローブが真っ赤に染まってしまった。流石にそんなものをいつまでも着てはいられないと、今度はちゃんとした魔法店でローブを購入しようとしているのである。なにせ、クリストで購入したのはなんの魔法効果もない、ただのお洒落用のローブだ。せめてある程度の防御効果のあるローブを購入したい。それで言えば、以前持っていた物はそれなりに良い品であった。防御効果に加え、魔力を多少軽減し、ある程度の耐寒性能が備わっていた。だがそれも今ではアリスティアのお気に入りとなっており、この前見た時などボロボロだったローブが新品と見間違うほどに修復されていた。なんでも、知り合いの服飾職人に修繕を頼んだのだとか。

 少し勿体なかったかな、と思ってみたり。

「あ、それじゃあシャシャもちょっとお買い物行ってきて良いッスか? ミュウちゃんと一緒に」

「えっ? 私も、ですか?」

 グイと腕を引っ張られ目を見開いているミュウ。今初めて聞いたのだろう。

「うん! イヤだったかな?」

「そ、そんなことないです!」

「ああ、行ってらっしゃい。どこ行くんだ?」

 女の子なのだから、洋服とか、髪飾りとか。そんなところだろうか。

「鍛冶屋ッス!」

 ああそうだった。この子は普通の女の子じゃなかったのだ。良く良く考えれば、シャシャにピッタリな場所ではあるが……出来ればミュウにはもう少し華やかな場所に行って欲しかった。

 ズーン、と若干沈んでいると、今度はディーラが服の裾を引っ張った。

「ご主人、僕も付いていって良い? 欲しいものがあるんだけど……」

「ディーラが? 珍しいな」

 基本的に物ぐさな彼女は買い物というものが苦手なのだ。じっくり商品を見るのが嫌いで、即断即決、男らしい買い方とも言える。そんな彼女が、欲しい物があると言って来た。これに応えねばマスターではないだろう。手持ちにはまだ余裕はあるので、二つ返事で了承した。

 ついでにと、小さな巾着袋に小銀貨を十枚入れてミュウへと手渡した。

「あ、あの、これはなんですか……?」

「なにって……ミュウのお小遣い。今まであげてなかったからね。丁度良いかなって。なんか買いたかったらそれで買うんだぞ? 一応、一万エルは入ってるから」

「そ、そんな……受け取れません、こんな大金……」

 案の定というか、恐縮して返してくるミュウ。確かに子供のお小遣いとしたら多いかもしれないが、ミュウの働きから言えば少ないくらいなのだ。ミュウにはクリストの街で幾つもギルドの依頼を任せていたので、これではヒモになってしまう。十二歳の女の子のヒモになるのは、流石に勘弁してもらいたい。

 その後も頑なに拒否するミュウをなんとか説得し、彼女の荷物に紛れさせることに成功した。

「それじゃあ行ってくるッス!」

「あの、行ってきます」

 元気に手を上げて走り去って行くシャシャを見送り、それじゃあとディーラを見る。

「行くか。マリン、悪いけどユゥミィのことお願いするな?」

「はいはーい。お土産よろしくー」

 ベッドに腰掛けて本を読んでいるマリンにユゥミィの事を頼み、宿の外へと出た。

 ちなみにユゥミィ、またも馬車で脱落していた。



 シャシャに連れられてやって来た場所は、沢山の武器が並べられた武器屋だった。以前、ゼリアリスで武器屋に入った事のあったミュウだが、そことはまた違った品ぞろえに息を吐いた。

 店の奥の鍛冶場から鉄を打つ音が聞こえる。

「……凄いです。あれってシャシャちゃんが使っている武器ですよね? 沢山あります」

「そッス。ここは東域国から来た刀匠さんのお店ッスからね。シャシャ達ジルオーズの分家連中はここで見合った物を作って貰うんスよ」

「じゃあ、シャシャちゃんの刀も?」

「へへ、正解ッス。シャシャの愛刀もここで作ってもらったッス」

 得意気に自分の刀を取り出し、鞘を撫でる。シャシャはカウンターの前まで行くと、大きな声で店員を呼んだ。

「サイトーさーん! ちょっと良いッスかー! 刀を研いで欲しいんスけどー!」

 奥の方でガシャンという音がした。大きな声に驚いて、なにかを落としてしまったのだろう。それからバタバタと足音が近づいて来た。

「たく、うるせぇぞ糞餓鬼。そんな大声出さなくても聞こえてるっての」

 暖簾を潜って現れたのは、四十くらいの男だった。ガッシリとした体躯に、右目に切り傷、後頭部にまげを結った東域国風の男だ。

 男の様相に思わず驚き、ミュウはシャシャの後ろに隠れてしまう。男は気にした風もなくシャシャの刀を受け取った。

「……大分無茶させやがったな? 一応手入れはされているようだが……なにを斬った?」

「リーンセラで氷の精霊を斬って、主精霊ともやり合って来たッス」

「ほう……」

 シャシャの言葉を素直に受け止め、刀身を睨みながら楽しそうに声をあげる。

「精霊殺し、なるほど、やるじゃねぇか。思ったよりも成長しているみてぇだな、ジルオーズの糞餓鬼」

「あははー、サイトーさんにそう言われると照れるッス。でもシャシャはもうジルオーズに帰る気が無いからその呼び名はイヤッスよ?」

「あん? 本当にジルオーズを出てくのかよ。まあ良いさ。俺の楽しみは自分の作った物がどこまで斬れるのかを試すことだからな」

 凶悪犯と見間違いそうになるくらいに凄絶な笑みを浮かべ、チン、と鞘にしまった。そこでようやくミュウに視線が行き、訝しげな声が上がった。

「……っ!?」

「……おい、糞餓鬼。このちっこいのはなんだ? てめぇの連れか?」

 目が合った。が、すぐに隠れられた。親指でミュウを指差し、問う。

「そッスよ。シャシャの大事な仲間ッス。ほら、ミュウちゃん。サイトーさんは顔は恐いッスけど基本的に良い人だから大丈夫ッスよ。急に噛みついたりはしないッスから」

「てめぇ、良い度胸じゃねぇか」

 怒りマークを張りつける凶悪顔の男が悪い奴な訳はない、とか言っている。見た目で判断してはダメなのだろうと無理やり納得し、シャシャの後ろから出て来たミュウはビクビクしながら頭を下げた。

「ミュ、ミュウです……よろしくお願いします」

「あ、ああ。マコト・サイトーだ。……驚いた。糞餓鬼の連れにしてはかなりまともな奴じゃねぇか」

「それ、シャシャの事をまともじゃないって言ってるんスか?」

「試し切りだとか言ってうちの従業員を襲うような奴がまともな訳ねぇだろ、カス」

 ここでもシャシャは色々やらかしていたようだ。苦笑いを浮かべるミュウはチラリと横を向く。

 刀と呼ばれた武器が所狭しと並べられており、その光沢は吸い込まれそうになるほど神秘的な輝きを放っていた。ほう、と感心したようなため息を吐きながら横を向く。

「ん? おい、ちびっ子」

「は、はいっ!?」

 いきなり声をかけられ、ビクッと背筋を正す。その間にも、マコトの視線はミュウの背中に向けられていた。

「なんスかサイトーさん。ミュウちゃんに惚れたッスか? でも残念でした、ミュウちゃんにはもう心に決めた人が」

「黙れ糞餓鬼。俺はロリコンじゃねぇし、そもそも俺は巨乳好きだ。てめぇらみてぇな絶壁に興味はねぇ」

「……殺るッスよ?」

「だー! 良いからどけっ! 俺が興味あるのはそのでっかい剣のことだ! ちょっと見せてみろ!」

 冷たい目のシャシャを一方的に退けて、ミュウが背負っていた大剣をカウンターの上に置かせる。ふむふむと声をあげながら眺め、手に取った。

「……! かなり重いな。やっぱアダマン鉱石の大剣か」

 両手で持ち上げながら隅々まで眺め、ミュウへと手渡した。

「ちびっこ、これはてめぇの武器なんだよな?」

「は、はい……。ご主人さまが、買って下さった物、です……」

「じゃあちっと振ってみろ」

「えっ? は、はい……」

 言われるがままに剣を構え、グッと振りかぶる。振り下ろした際にビュウ、と風圧が生まれ、大剣は少しのブレもなくピタリと止められる。

「へぇ……武器に振り回されてねぇな。ただの格好つけとは違うみてぇだ」

「そりゃそうッスよ。こんな重い武器、かっこつけ目的で持ち運べる訳ないじゃないッスか」

 もう下ろして良いのだろうか。キョロキョロと二人を見ながらも大剣は動かずに止まったままだ。マコトが下ろして良いとジェスチャーをしたのでカウンターに置く。

「ま、剣としては出来そこないだがな。これじゃあ大根だって切れやしねぇ。だが、武器としたらかなりのもんだ。重さがあるからな。頑丈だし、単純な鈍器としちゃあ最高だ。ただ……」

 ジロリとミュウを眺め、その視線から逃れるようにシャシャの後ろに避難する。

「おうちびっ子、もしかしてだが……てめぇ、軽いと思ってねぇか?」

 マコトの言葉に唖然とするシャシャ。次いで笑う様に言った。

「へっ? なに言ってるッスか。こんな重いのが軽いなんてある訳が」

「あ、その……はい」

「ない――ってぇえええ!?」

 その言葉はすぐに驚愕のものへと変わってしまったが。

 恥ずかしそうに俯くミュウを見開いた目で見つめ、バッ、と大剣を見る。持ってみるが、軽くなったとかではなさそうだ。

「少し前から、なんだか物足りなくて……前まではそんなことなかったんですけど」

「……成長してるって事なんだろうが、これ買ったのはいつだ? そんな前って訳でもないんだろ?」

「えぇと、一月と、少しです」

 ゼリアリスにいた時のことを思い出しながら答える。マコトはふむ、と考えるように顎に手を添える。

「随分とまあ期待株と一緒にいるじゃねぇか。えぇ? 糞餓鬼?」

「もちろんッスよ。ミュウちゃんは強くなると思うッスよ?」

 一度は彼女と戦い、勝ったことのあるシャシャだ。その時にも彼女の才能に触れているため、自身満々に答える。

「本当ならちびっ子になんか良いもん売りつけるべきなんだが……悪ぃな。俺の店にこいつ以上に重量のある武器はねぇんだ。うちは刀専門店だからな」

「い、いえ、そんな……。その、この剣も使いなれてますから」

 それにせっかくユクレステが自分のためにと買ってくれたものなのだ。そう簡単に手放す気はない。

「ただまあ、重さをどうにかしようってんなら出来なくはないがな」

「そうなんスか?」

「ああ。重み石って鉱石で作られたリングを剣に取り付ければ十倍までなら調整可能になる。本来は建築用の土台に使ったりするんだが……まあ付けられないこともないだろーな」

 ふむふむと説明を聞いていたシャシャがそれなら、と片手をあげた。

「じゃあそれも付けて欲しいッス」

「あいよ、えーっと、刀の手入れに重み石のリング、それから取り付けで……ま、十万エルにまけてやるよ」

「え、あのっ、シャシャちゃん、わたしは別に良いですから……!?」

 そんなもんかと財布を取り出すシャシャに、慌ててミュウが止めに入った。内訳がどうかは分からないが、それなりの値段を取られているのは確実だ。わざわざシャシャに払ってもらう訳にはいかない。しかしシャシャは相変わらずにっこりと笑って強引に押し通す。

「まあまあ、これでもシャシャは小金持ちッスから、そんな気にしないで欲しいッス。それに、これからもっと強くなる子に投資しておくのは基本ッスから」

「なんの基本だ、なんの……。ま、諦めな。この糞餓鬼は一度決めたら梃子てこでも動かん。大人しく奢られるのが吉だ」

 あうあうと呆気に取られるミュウをよそに、話は纏まって行く。結局、夕方また取りに来いと言い渡され、店を閉め出されたのだった。

「さーて、時間までなにしてるッスかねー。宿に戻るのもあれだし、せっかくだから市場でも見に行くッスか?」

「……あ、あの!」

 時間の潰し方を考えていたシャシャへミュウの声が投げかけられる。首を傾げながらそちらに顔を向けるシャシャに、何と言おうか数秒考える。謝るのは、違うと思うし、それならどうすればいいのか。ふと、主の顔が浮かび、コクンと頷いてから言った。

「ありがとう、ございました」

 ミュウの言葉にポカンと呆気に取られ、シャシャはクスクスと笑って応えた。

「どう致しましてッス」



 二人の少女がマコトの店から出て十分後。今度はそこに、一人の男が訪れた。店の中でシャシャの刀とミュウの大剣を奥に持って行かせたマコトが、入り口の方へ視線を向ける。

「客か? らっしゃい、今日はなにをお探しだ?」

 不躾な言葉にも不快な色を一切示さず、客の男は腰の刀を差し出した。

「こいつを研いでもらいたい。頼めるか?」

「っ! こいつは……てぇ事は、てめぇは……」

 まじまじと男の顔を眺めるマコトに、男は苦笑する。結局、深くは追及せずに、男の刀を預かった。また明日取りに来い、と言って。

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