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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
セントルイナ大陸編
57/132

祭りの始まり

 滝が凍りつく。木々が静かに眠り、地面は真っ白な雪で埋め尽くされる。 

 山に静けさが訪れる時、産声を上げるものが存在した。

 ――ようやく、この時が来た。

 透き通るような怜悧な音が声となって響き渡る。変わらず氷河を称える洞窟の奥深くからの音に、そこに住む精霊達が湧きあがった。

 ――さあ、祭りの時間よ。




 白い煙が空に花を咲かせ、街の入り口には氷の門が作られている。その両脇にそびえるマイア・トーキー作の精霊像のせいでなにか特別な儀式でも行っているのかと錯覚してしまうが、別にそういったものではない。

 今日は待ちに待った祭りの日なのだ。


「…………」

「…………」

「…………」

 そんなおめでたい日にユクレステ達は宿の食堂でグッタリと突っ伏していた。眼の下に隈ができ、指先は霜焼けで赤くなっている。

 それでも彼らは皆、やり切った表情を浮かべていた。

「……間に合った、みたいだな」

「まだ分からないよ。持って行く途中でユゥミィちゃんが倒したりして……」

「ごめん、それホント洒落にならないから止めて。もしそんなことになったらあのドジっ子、火葬するから」

 ユリトエスの言葉に薄ら寒いものを感じたのか、ぶる、と体を震わせてディーラが言った。言葉には出さないが、この場に居る三人、同じ気持ちなのだろう。一応、念のためにとミュウやシャシャ、マリンが一緒に付いて行っている。彼女達は徹夜をしていないから、と言う理由もあるのだが。

 いや、眠たい目を擦りながら手伝います、と言われては格好つけたくなるではないか。

「……氷の精霊に会いに行くのは明日にしよう。別に一日二日しか入り口が開かないって訳でもないし」

「そだね……もしかしたら戦闘になるかもだし、体調を万全にして向かわないとね」

「……ねむい」

 喧騒が遠くから聞こえるが、のんびりとした空気は変わらない。ミュウ達が帰ってきたら朝食を取ってひと眠りしようと心に誓った。

 そんな時だった。

「ご主人さま……!」

「ごふぅ!」

 ユクレステの脇腹に小柄な体躯がタックルをかました。黒い髪の隙間からは涙で濡らした瞳が輝き、ひっしとしがみ付いて放さない。

「~~~~!?」

「ミュウ? どしたの?」

 痛みに声も出ないユクレステの代わりにディーラが眠たげな声を上げる。

「あうぅ……」


 泣くばかりで返事はなく、仕方なく少し待って現れたシャシャに問うた。

「で、なにがあったの?」

「いやぁ、それが……」

 げっそりと顔を青くさせたシャシャが嫌そうに顔を歪める。


 要は、今まで通りのことだった。氷像を会場の広場にまで届けに行ったミュウ達は、そこでアレを見てしまったのだ。マイア・トーキーの作品を。それがどうにも今まで見たどの作品よりも鮮烈なデザインをしていたらしく、視界に入ると同時に逃げ帰って来たのだそうだ。

「あれはもう、ヤバいッスよ。なんで他の人たちはあれを囲んで和気藹々としてられるのかが謎ッス」

「ご主人さまぁ……」

「あー、うん。お疲れ。そう言えばユゥミィは?」

「なんかあれの作者さんと話してたッス」

 以前会った時も意気投合していたから今回も作品の出来について話しているのだろう。

「んー、ミュウ?」

「ご主人さまぁ……」

 遊んでおいでと言ってもこの様子では離れないだろう。これからひと眠りと考えていたユクレステだが、抱きつきながら上目づかいでこちらを見上げて来るミュウの姿を見ていてはその選択肢もなくなる。

「よしよし、じゃあご飯食べたら一緒に祭りを回ろうか? 手を繋いでいてあげるから、恐くなんかないだろう?」

 学生時代、貫徹三日は当たり前だった時期もある。つい先日も一週間ほぼ不眠不休で解読をしていたのだ。まだまだいける。

 ニコリと笑みを浮かべてミュウの頭を撫でた。

「……はい、ご主人さまと一緒なら……」

「シャシャも! シャシャも一緒に行くッスよ!」

 はいはい、とミュウの肩に手を置きながら元気よく手をあげるシャシャ。少し照れたようなミュウの表情を見て、気合を入れて目元の隈を引っ込める。

「……ご主人も良くやるよ」

「ユッキーのやせ我慢もここまでくると異常だよねー。ああ、やっぱりあの噂は本当だったんだ」

「噂って?」

「ユクレステ・フォム・ダーゲシュテンはモンスターフィリアかつロリータコンプレックスである、ってとある筋からの調査結果が……」

「おいそこのダメ王子、それどこ情報だコラ?」

「はいはい、朝食出来ましたよー」

 聞き捨てならない話が耳に飛び込んでくるのと女将さんが朝食を運んで来たのは、ほぼ同時だった。



 朝食を終えたユクレステ達は、祭りを見て回る者、惰眠を貪る者の二種類に分かれることになった。

 前者は先の会話からユクレステ、ミュウ、シャシャ。それに加え、合流したユゥミィだ。後のユリトエス、ディーラ、マリンは今頃温かなベッドで体を休めていることだろう。

 出店のようなものが幾つかあり、他には街のあちこちで自作の絵画を飾っている家も幾つかあった。他にも広場や至るところに氷の彫像や雪で出来た像などが並び、芸術の街という名に相応しい光景だ。


「うーむ、素晴らしい! ここのお祭りは面白いな、主!」

 特に楽しそうに見て回っているのがユゥミィだった。絵の一つ一つにかぶり付く様にして眺め、うんうんと頷いている。

 正直、あまり芸術的感性を持ち合せていないユクレステには訳分からない絵の方が多かったのだが。

「楽しんでるならなによりだよ、うん」

「あはは、ユー兄さん目が泳いでるッスよー?」

「……仕方ないだろ、俺には絵の良し悪しなんか分からないんだから。シャシャもそうじゃないのか?」

「うーん、確かにシャシャも絵とかには疎いッスけど……あ、これなんか良いと思うッスよ?」

 指差した先には子供が絵の具を塗りたくったような絵が飾られている。

「……なに、これ?」

「スノウティアの花畑ッス」

 問題の答えを聞いてもう一度じっくりと眺める。スノウティアとは白く小さな花弁が特徴の花のことだ。だが現在視界一杯に入ってくるのは、べったりと塗られた白と水色。全く分からない。

「……ユゥミィ、これはなに?」

「なにって、スノウティアの花畑ではないか。ほほう、なるほど、良い色使いだ」

「そうッスよね? シャシャもこの感じは結構好きッスねー」

 ユゥミィとシャシャの会話を聞き流しつつも再度凝視。どうしたって花には見えない。

「あ、あの、わたしもよく分からない、ですから……」

 ミュウにフォローされた。もう少し芸術とやらを勉強しようかな、と思うユクレステであった。



 一通り見て回り、ユゥミィ達が作成した氷像が置かれている広場へと移動した。このクリストの街の祭り。正式にはアリスティア祭と呼ばれているのだが、その最大のイベントがこの氷像である。

 芸術家達が氷の主精霊であるアリスティアに感謝を示し作られた氷像の中で、一番美しい物を決めてアリティアの洞窟に納めるのだ。

 アリスティア。別名、美と氷河の精霊。その名の由来の通り、美しい物を好むと言われている。


「そして前回! 私の作品が見事に一番に輝き、精霊様の御許に納められているのだ!」

 ズラリと並べられた氷の像を眺めながら、興奮して喋るマイアの話を耳に入れていた。

「前回はどのような作品を作られたのだ?」

「ふっ、それは内緒さ。ただ、私の情熱と美への願いを込めた作品だったと言っておこう。そう、今回の作品も前回のものと比べ遜色の無い出来だ!」

 ちょび髭を弄りながら尊大に胸を張る彼の姿に、焦点の合わない視線だけでツッコミを入れる。

 それは一体どんな悪魔像だったのか、と。

 右手にはミュウが縋りつくようにして抱きついており、顔を服に押し当ててギュッと眼を瞑っている。背中にはシャシャが隠れている気配を感じ、目の前のものから必死に逃げるようにしていた。

 今年のマイア・トーキーの作品。

 一言で言えば、裸婦だった。

「なぜ、こんな……」

 ゲフッ、と血を吐くように声を絞り出す。聞こえていたのか分からないが、得意気な説明は続いていた。

「美とはなにかを考え、思い至ったことがあるのだよ、同士ユゥミィ!」

「ほほう、それは?」

 くわっ、と目を見開き、上半身の服を脱ぎ捨てながら言う。

「美の神髄は生物の原初にあると!」

 果たしてそれが一体裸となにが関係があるのだろうか。マイアはズボンに手をかけながら叫び続けた。

「生物は全て裸で生まれて来る。体も、そして心も! 無垢な心を表現する、それが私の最大の課題だった! それを成すために――――全てをさらけ出す必要があるのだ!」

「あんたはさらけ出すな! 服を着ろー!?」

 寸での所でユクレステが止めたが、あのままだったならば一体どうなっていたことか。危うくミュウに粗末な物を見せるところだった。

 未だになにかをぶつくさ喋っているが、そちらはユゥミィに任せるとして。

 目の前の異様を見上げた。

 高さは五メートルはあろうかという巨体。会場である大広場の一角を占拠するほどに巨大な氷像は、件の精霊像だった。それが布のような持ち、しなを作り、己の体を堂々と晒している。

 ブタのようなひん曲がった顔が艶めかしい表情を作り、ドラゴンのような足を組み、六つの乳房を垂らした恐ろしい物体。なるほど、ミュウが泣いてしまうのも納得だ。事実、ユクレステも僅かに涙目である。

「ミュウ、こっち行こう。ほら、他の像でも見てみよう」

「は、はい……!」

 歯を食いしばるように返事をするミュウ。どれだけ嫌なのか。

「で、でも他の作品はまだ分かるッスよね! あっちの怪獣がシャシャは好きッス!」

 出来るだけ視界に入れないように顔を背けながら、シャシャがマイアの像の二つ隣を指差す。そこには一見竜のような姿の氷像があった。三メートル程で、二足歩行のトカゲのような作品だ。タイトルは、ヒョジラ。口から冷気光線を出す怪獣なのだそうだ。

 広場の隅に移動し、ようやく目を開けたミュウは目の前の氷像を見てホッと息を吐いた。

「……ユゥミィさんの、とても綺麗です」

「ああ、本当にな」

そこにあったのは太陽に照らされて光を放つ騎士の像。両手で持った剣を胸の前で掲げ、直立している。

 他と比べても遜色の無い出来であり、贔屓目に見ずとも良く出来た作品だ。

「やー、最初はどうなることかと思ったッスけど、間に合って良かったッスよねー」

「それもこれも、主達が手伝ってくれたおかげだな」

 話に入って来たユゥミィが自分の作品を見つめながら笑みを作る。

「お話は良いのか?」

「うん、良く出来ていると褒めてもらったところだ」

 チラリとユクレステを見て、照れたように頬を緩めた。なにを言いたいのか察したユクレステは、クスリと微笑み手を伸ばした。

「そうだな。とっても上手だと思うよ。きっとユゥミィの見据えてる夢は、これくらいに力強いんだろうな」

 子供にするように頭を撫で、ユクレステの笑みが向けられる。それが嬉しいのか、笑みを一層深めて頷いた。

「ああ!」


 それからしばらく経ち、広場に人が集まって来た。これから審査員による投票が行われ、優勝に選ばれた作品をアリティアの洞窟に奉納する事になっている。そうしてこの祭りは終わりを迎え、次の一年を待つのだ。

 審査員は街の人間の二十名と、芸術家五名。並べられた五つの氷像を見比べる彼らを、ユゥミィは祈るようにして見つめていた。

「ユッキー、間に合った?」

「ああ、ちょうど今から評価だ。ディーラも来たんだ?」

「ふぁ……ま、ね。僕も手伝った訳だし、どんな感じなのかは見ておきたいから」

『うーん、どうなるかなぁ。……取りあえず、あれには負けて欲しくないかな』

 マリンの言葉は精霊像に向けられているのだろう。

 ユリトエスとディーラ、ついでにマリンが合流したことにより一行が勢ぞろいだ。

「で、ユゥミィはどう思ってるの?」

「む、そうだな……私は、マイア殿の作品が選ばれると思うな」

「…………」

 ディーラの質問にあっさりと応えるユゥミィ。その瞬間、皆が凄く嫌そうな顔をした。

『えっと、理由は?』

「……初めに言っておくが、私の作品が劣っているから、とかそういう理由じゃないぞ? なにせあれは自信作だからな」

「じゃあ、なんで?」

 首を傾げるユリトエス。ユゥミィはジッとマイアの作品を見つめ、吐息する。

「彼の作品には息吹が感じられるんだ。外見上の美醜びしゅうなど問題にならないほど、情熱が注がれている。どこまでも自身の才能を信じ、どこまでも自分の想いを込めた作品。その一点を見れば私の思いは遠く及ばない。なぜなら私の作品は、芸術ではなく私の夢を込めたものなのだからな」

 だから叶わない。そう言い切るユゥミィの瞳は、少しの悔しさと、それを超える尊敬の光が宿っていた。

 ユクレステは彼女を見つめながら、こう思う。

(あ、別に美しいとは言わないんだ)

 見当違いかとは思うが、そんなことを考えていた。

 そう言われると確かにユゥミィは一度として彼の作品を美しいとは評していなかった。つまりはそう言う事なのだろう。

 なんとなく、ホッとしたユクレステだった。

「あ、決まるみたいだよ?」

 投票も終わり、後は得点を発表するだけとなった。審査員長らしき老人が一枚の紙を眺め、声を張り上げる。

「それでは、アリスティア様にお供えする、ほまれ高き作品を発表します!」

 シン、と静まる広場に老人の声だけが響く。

 数秒。

「――優勝は……」

 ゴクリ、とだれかの喉が鳴る。緊張の面持ちで、最後の言葉を待った。

 その時、


 ――つまらない。


 身も凍るような声が聞こえた。

「っ、いけない!」

 刹那で反応したユゥミィが咄嗟に駆けた。

解錠アンロック変身チェンジ!」

 胸元からペンダントを取り出し、鎧に変化させ装着する。そのまま、マイアの前に出る。見上げるようにして前を向けば、彼の作である精霊像が野太い腕を振り上げていた。

「同士ユゥミィ!?」

 腕がユゥミィに叩きつけられ、衝撃に揺らぐ。氷像はさらに踏み込み、今度こそマイアを叩き潰さんと振り下ろした。

「させない! 精霊の大いなる木々、雨風凌ぐ術を授けよ――フォレスト・ウォール!」

 ふらつきながらもなんとか呪文を発動させ、氷の腕を防いだ。

「ユゥミィ! 無事か!?」

「な、なんとか……」

 主の言葉に虚勢を張った声を出す。内心、心臓バクバクで涙目だが兜のお陰で見られる事はないのだろう。

「あ、主! 後ろ!?」

「――っ、なっ!?」

 ユゥミィの悲鳴に反応して背後を振り向くと、そこには怪獣の氷像が大口を開けて立っていた。口腔からは冷たい光が宿り、一瞬後には青白い光線が吐き出された。

「ご主人さま!?」

 側に控えていたミュウが急ぎ大剣を抜き放ち、盾のようにして光線を防ぐ。大剣の表面とミュウの右腕氷が張り付いていた。

「ミュウ!」

「平気、です……!」

 ガン、と左手で氷を叩き割り、大剣を構え直す。その先には、審査中の四体の氷像がこちらを見下ろしていた。

「な、な、なんなんですかこれはー!?」

「っ、十中八九、精霊の仕業……」

「ディーラさんまた凍ってるッスよ!?」

 苦しそうに白い息を吐くディーラの尻尾は既に霜が降りていた。ローブを捲れば翼も凍り付いていることだろう。今までよりも特に強い冷気に背を震わせながら、くうを睨んだ。

「くっ、なにがどうなってるのだ!?」

「なにが? そんなもの、見れば分かるだろうに」

 混乱中のマイアの言葉に、苛立ちを隠そうともせずに吐き捨てる。睨む先には済んだ空気しか見えない。しかし、そこにいるという事は理解出来た。

「……撃滅の大いなる焔、その灼熱の切っ先を構え、向かう全てを焼き潰せ」

 呪文を唱え、魔力を集中させる。しかし思ったように集まらず、その両手には悲しくなるほどの魔力しか現れない。

「――ザラマンダー・ファランクス」

 普段の半分も顕現しない焔の槍。せめてもと腕を振り上げ、視線の先に投げつけた。

「い、けぇ!!」

 中級程度にしか見えない焔の槍は勢いを付けて空を駆け、その中空で――氷塊に変わった。

 ――ふぅん、炎を操る子がいます?

 再度、音がした。声にしては澄み切った、冷たい氷のような声。

『……ここで、来るんだ』

 マリンの声が聞こえる。しかしそれを拾った者は果たしてどれだけいただろうか。すくなくとも、マイアやこの街に住んでいた者達は聞こえていなかっただろう。なぜなら、目の前の存在を思考に入れる事だけで手一杯だったのだから。

「まったく……とても、生意気」

 その存在は、空気から染み出す様にジワリと姿を表し、氷塊となった焔の槍を弄りながら温度のない声を発した。

「チッ、やっぱダメか」

「無理すんな。ちょっと下がってろ、ディーラ」

「だ、だれッスか? アレ」

 ユクレステは自らを一歩前に出し、代わりにディーラを後ろに下げる。彼を追うようにして踏み込んだシャシャと共に対峙した。

「……初めまして、で良いのか? いや、今まで散々ちょっかい出してたとは思うけど……」

 思えばこの感覚は同じなのだ。氷の獅子が襲ってきた時と。アリティアの滝の前で氷像に襲われた時と。怜悧な視線と、騒ぐ氷の精。その大元が、目の前にいた。

「見てはいました。直接顔を合わせるのは、初めて?」

「それでは、改めましょうか」

 小首を傾げるその仕草に思わず笑ってしまう。どれだけ人のようにしても、その存在感に圧倒されるのだ。

 ユクレステは居住まいを正し、深々と頭を下げた。

「初めまして、氷の主精霊、アリスティア様。お目に掛かれて光栄です」

 その一言で発生した背後の喧騒など気にする事もせず、ユクレステは覚悟の眼差しで精霊を見据える。

「……私を前にしても、変わらないのです?」

「ええ、変えません。あなたは俺の三歩目ですから」

 笑みを浮かべるユクレステを上から下まで観察し、空中に腰掛ける精霊はその姿勢のまま首を斜めに倒す。

 しっかりとユクレステの目を見つめ、氷のような声音でこう告げた。

「おまえ、生意気ですね」

 ニコリと、可愛らしく微笑んだ。

精霊との戦闘、前哨戦の開始です。

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