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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
セントルイナ大陸編
21/132

さよならコルオネイラ

 セントルイナ大陸の中央に位置し、王立研究所、魔術学園など様々な施設が集結する王都ルイーナ。大陸最大級を誇る広さに加え、豪華絢爛なルイーナ城、綺麗な街並みに美味しい特産物と観光地としても人気な場所である。

 特に観光名所として見られるのは街の中央に位置する巨大な噴水だ。小さなプールほどもある噴水から溢れる水は街に張り巡らされた水路を通って隅々にまで行き渡っている。

 また、街は特色別に第一区画から第八区画までに分けられ、全ての区画の接する中心にルイーナ城が建てられている。


 そんな街並みの南側、巨大な門を超えて第五区画に一台の馬車が入ってきた。簡素ながらも美しい見た目の馬車。門番の兵士は緊張しながらそれを見送った。

 そんな馬車の中で。

「はあ、やっと着いたかー。長かった……」

「正確にはもう少しかかるけど。私の別荘はここ第五区画の北西、第一区画にあるからね」

 疲れた顔のユクレステにアランヤードが苦笑して答える。

「分かってるよ。昔はよく遊びに行ったからね」

 学生時代を懐かしみながら窓の外を眺める。久しぶりに通る大通り、街の人は活気に満ち溢れ、ひと月前に旅立った時となにも変わっていない。

 たった一月で変わる訳もないのだが、なぜだか旅立ったのが大分昔に感じていた。

 そんな穏やかな気持ちで、

「うぅぅ……あ、主……私はも、もうダメだ……」

「はいはい、もう少しの辛抱だから。ガンバレガンバレ」

 絶賛車酔いで青い顔をしているユゥミィの頭をなでるのだった。


 ユクレステの仲間の一人であるユゥミィ・マクワイア。森の民でダークエルフである彼女は馬車に乗るのが初めてで、最初こそ高いテンションで騒いでいたのだが一時間と経たずにその顔は真っ青に変化してしまった。いくら他よりも広い馬車とは言え、彼女からしたらこれだけ狭い場所に長時間閉じ込められたのは初めてなのだろう。早々にギブアップし、身体を横たえユクレステの膝に頭を乗せて大部分の時間を過ごした。

 ちなみに御者はセイレーシアが務め、ユクレステの前には向かい合う形でアランヤードが。その隣にはミュウが座っていた。マリンは変わらず宝石の中だが。

「わ、私の亡骸は鎧と一緒に森の奥に埋めてほしい……家族には私の最後を語り継いで……」

「分かったから、無理して喋らない。もうすぐ着くから大人しくしてなさい」

 濡らしたタオルをユゥミィの目蓋の上に置く。気持ちいいのか、あー、と声を出しながら大人しくなった。

「やれやれ」

 窓の景色は街並みから緑の多い平野へと移動する。ちらほらと大きな屋敷がそびえ、その一番奥の場所を見つめる。

 馬車に揺られて五日間。ユクレステたちはようやくルイーナ国へとやってきたのであった。




 旅の再開は、大体一週間ほど前に遡る。


 コルオネイラでの大会を終えたユクレステたち一行は、当初の予定通りルイーナ国王都へと向かう手筈だった。その時には乗り合いの馬車で向かうつもりだったのだが、某王子様が是非一緒に行こうと申し出てくれたので丁度いいかとお願いした次第である。王族の乗る馬車なだけあってか一般の乗り合い馬車よりも大きく、また馬も立派な面構えをしていた。

 馬を見ながらユクレステは隣に立つ少年へと視線を向けた。


「へぇ、じゃあ今度はゼリアリスに行くつもりなのか?」

「まあな。正確には、ゼリアリスより南にある迷いの森、その最深部にある遺跡の発掘だ。鼻の利く冒険者を御所望なんだと」

「なるほど。確かにそれなら風狼は適任……いや、適狼だな。でも遺跡、かぁ……そんなのあったかな」

「なんでも王族しか知られていないルートらしいぞ。これ以上ないってくらい怪しさ大爆発だな」

「なんでそれで行こうとしてるんですかねぇ。俺なら絶対に行かない」

 凶悪な笑みを浮かべるウォルフを呆れた眼差しで眺め、ため息一つ。

「一応言っておくけど、気をつけろよ?」

「なんだ? 人の心配か?」

「心配にもなるだろ。結局謎はまだ解けてないんだから」

 魔物だけの闘技大会。企画したのはロイヤード本人であるのは確認済みだ。しかしその設営やスケジュール管理、大会に関しての運営は彼とは別の意思が介在していた。特定しようにも運営スタッフは数多く、一人を確定しようにも難しいだろう。

 分からないものほど怖いものはない。ユクレステはその奇妙な感覚に背を震わせていた。

「……まあ、考えていたって仕方ないことなど山とある。障害となるならその時にでも排除すればいいことだ。違うか?」

「そういうの、脳筋っていうんだぞ?」

 はぁ、と吐息し、気を取り直して顔を上げた。

「ま、そっちの方が楽かな」

「ああ、それに確実だ。……と、そろそろ馬車が出るか」

 リンゴンと鐘の音が響き、馬車の一つが揺れる。ウォルフはそちらを眺め、荷物を背負った。

「歩いて行かないのか?」

「ここで時間を喰ったからな。それに、臨時収入が入ったから懐に余裕がある。たまには楽をするのもいいだろう」

 大会の優勝者であるウォルフとその仲間たちには、僅かながら賞金が出た。本来それを渡すはずのロイヤードは早々に強制送還されたため、アランヤードからの手渡しとなったが、金であることには変わらない。ホクホク顔で受け取っていた。

 ちなみに、準優勝であるユクレステたちへの賞金は別途用意しているらしい。

「ウォルフ!」

 馬車に乗り込もうとしているウォルフに向かってユクレステが声を上げる。顔だけを出しながら、お互いの視線が交差した。

「ミュウのこと、ありがとう。今度会う時にはもっと強くなってるだろうから、覚悟しとけよ!」

 その声に、ふっ、と楽しげな笑みを見せた。

「ああ、楽しみにしている」

 そう言って馬車の奥へと引っ込んで行った。馬車は動き始め、その馬車に続くように三匹の風狼が付いて行く。一度こちらを振り返り会釈したように見えたのは、ユクレステの錯覚だろうか。

「あ、ご主人さま……ウォルフ様、は?」

「ん、もう行ったよ。今度はもっと強くなって会おうってさ」

「あ……はい!」

 ミュウに笑いかけながら去り行く馬車を見送った。


 それから数十分後。今度は彼らがコルオネイラを旅立つために馬車の停留所に集まっていた。立派な体格の馬が二頭、巨大な馬車に繋がれている。荷物は既に押し込んでおり、ミュウの大剣やユゥミィの鎧も鎮座している。

「おぉう……これが馬車か……噂に聞いていたがなんと立派な!」

「これが一般的なサイズじゃないからな? こんなの使うのは王家や貴族の中でも稀だよ。うちの馬車はもっと小さいし」

 かぶり付いて馬車を見ているユゥミィを宥め、ぐるりと周りを見渡す。ミュウは緊張した面持ちで立っており、セイレーシアンは既に馬車に待機済みだ。マリンは早々に寝やがり、後一名はまだ来ない。

「アランの奴、どうしたんだ? 遅刻なんてらしくない……セレシア、なにか知らない?」

 手綱を持ち直していたセイレーシアンに尋ねる。

「文が届いたそうよ。その返事を書いてて、遅れてるんでしょ」

 そう言って伸びをした。


 ジッと彼女を見つめる。長く赤い髪を二つに分けて結んだ、いわゆるツインテールと呼ばれる髪形だ。目尻は鋭く上がっていてウォルフと同じような三白眼。一見すると酷くキツい印象を与える彼女だが、実際はそこまでひどくはない。

 口調もキツくクールな物言いも多い彼女だが、実際はかなりの世話焼き気質である。特に昨晩は久しぶりにユクレステと再会したということもあってか、食事中にこれでもかと世話を焼いていたセイレーシアンだ。一々ひな鳥のように食事を食べさせたり、事あるごとに口の周りを拭いてくれたり、さらにはボロボロだった服の修復までやってくれた。その際下着まで直されていて若干恥ずかしかったのだが、セイレーシアン本人が黙々とやっていたためなにも言えずにいた。

 彼女がそこまで世話を焼くのはユクレステだけだろう、とはアランヤード殿下の言葉だが。

 そんな彼女と別れたのはつい先々月、魔術学園の卒業式の時だ。卒業後の進路が既に決まっていた彼女は一度実家に戻り、実の父親と殴り合った末に騎士となった。現在は近衛騎士の見習い、と言った立場にあるそうだが、実際は破天荒な王子のストッパー役なのだろう。学園時代にも彼女の容赦のないツッコミはある種名物化していたのだし。


「ん? どうしたの? 貧血でも起こしたの? あれだったら先に乗っててもいいのよ?」

 ボーっとしていたのを見られたのだろう。馬車から飛び降りたセイレーシアンは心配そうにユクレステの側に寄ってきた。額に手を当て、体温を測っている。

「はは、なんでもないよ」

「そう? 具合悪くなったらすぐに言うのよ? 貴方は昔からそういうの隠す人だから」

「……そうだったっけ?」

 彼女の手を優しく退かしながら、向かい合う。

 身長は……同じくらいか。元々背の高い子だったが、二か月前はまだギリギリ勝っていた。百七十センチほどのユクレステと同じくらいなのだから、女性としてはかなり背の高い方なのだろう。対してアランヤードは百八十を越していたはず。傍から見ればお似合いである。

「セレシア、さ。背、伸びた?」

「え? そうね、最近測ってなかったけど、騎士になってから少し伸びたかもしれないわね」

 騎士になると背が伸びるものなのだろうか。少しユゥミィの気持ちが分かった。いや、別に彼女は背丈が欲しくて騎士になろうとしているのではないのだろうけど。

「……せめてあと五センチ」

「ユクレ?」

「おーい! ごめん、少し待たせたね」

 そこでようやくアランヤードが到着した。さらさらの金髪に、高価そうな服に身を包んで、急いで来たためか額には汗が滲んでいる。

「アラン。遅かったな、どうしたんだ?」

「あ、こんにちは、アランヤード王子」

「お待ちしていました、アランヤード王子」

 彼の姿を見てミュウとユゥミィが頭を下げる。ユゥミィが畏まって頭を下げていたのを見て驚いたりしたが、よく考えれば騎士になるのが第一目標だっただけに王族への配慮は出来る子のようだ。

 アランヤードが二人に軽く手を振って応え、乱れた息を整える。

「ふぅ、ああ疲れた。セレシア、済まないけどタオルをくれないかい?」

「ええ、どうぞ」

 ポイっと放り投げる。

「…………えっと、一応私、王子様なんだけど」

「知ってるわよそんなこと。今さらなによ? 頭湧いてるんじゃない?」

「いやいや、流石にその態度はマズイんじゃない? 一応主君でしょ、セレシアの」

「それはまあ、そうだけど……なんかダメなのよね、私。なまじ学園で友達やってたせいか、今さらそういうことするの。流石に公の場では我慢するけど。あ、ユクレ、汗掻いてるわよ? 立ちっ放しは暑いわよね? 馬車に乗って。馬車中なら冷えてるし、少しはマシになるでしょう?」

「いや、平気だよこれくらい。あ、ありがと」

 ピンク色のハンカチで甲斐甲斐しく汗を拭き取るセイレーシアン。先ほどの対応とは雲泥の差だ。

「……まあ、君はそういう奴だよね。って、そうじゃない!」

 慌ててセイレーシアンとユクレステの間に割って入り。まだ綺麗なタオルをユクレステに差し出した。

「親友の汗は私が拭う! 君は引っ込んでいたまえ!」

「……ぁあ? そもそもそのタオルは私が持ってきたものでしょう? なら優先権は私にあるはずだけど? 勝手に人の間に入らないでくれない?」

「いいや、このタオルは我が国の物。すなわち私の物! ならば私が持っていて当然の物だ!」

「黙れバカ王子、いいからそこを退きなさいよ! 三枚に下ろすわよ!?」

「上等だ! 灰にしてあげようか!?」

「おーい、俺たち先に乗ってるからなー」

 突然始まった王子VS騎士のバトルを無視して馬車に乗るユクレステ+二人。楽しそうなユゥミィとは逆に、ミュウは心配そうにしている。

「あの、大丈夫なんでしょうか?」

「いつものことだから問題ないよ。普段は仲良いんだけどたまーに訳分からないことで喧嘩し出すんだよな、あの二人。お、涼しーい」

 馬車の中は先ほどセイレーシアンが言った通り冷えた空気が充満していた。氷魔法の応用だろう。ユクレステの持っている冷蔵保存出来る革袋と原理は似ている。すぅっと汗が引いて行く。

「あ、ご主人さま……」

「ん?」

 振り向くと白い手拭いがユクレステの頬を撫でていた。どうやら、ミュウの持っていたハンカチだろう。

「汗がそのままだと、風邪を引いてしまいますから……」

「ああ、ありがとう。ミュウ」

 礼を述べ、手を差し出す。段差はそこまで大したことはないが、女性ミュウをエスコートするのは主である自分の役目だ。

 おずおずと伸びた手を取り、馬車に乗せる。顔を赤くし頭を下げるミュウ。


「このっ、バカ王子がー!」

「黙れ不良騎士めー!」


 この後、馬車が出発するまで十分掛かったそうだ。



 馬車が出発して既に一時間。王家使用の特別馬車なため、従来の物よりも幾分かスピードは出ている。それでもルイーナまではまだまだ時間が掛かるだろう。窓から過ぎ去って行く景色を見ながら、ユクレステは膝に掛かる重みに息を吐いた。

「やっぱりダークエルフって馬車に弱いんかな?」

『個人差はあると思うけどねぇ』

 天井から掛けられたアクアマリンの宝石からの声が聞こえる。マリンがようやく目を覚ましたのだ。その代わりといっては何だが、今度はユゥミィが車酔いでダウン。今はユクレステの膝の上で苦しそうに唸っている。

「くっ、羨ましい……仕方ないさ、普段はこんなもので外に出る種族じゃないしね」

『王子様、心の声がダダ漏れだよ? まあいいけどさ』

 ミュウも船を漕いでいる状態で、こうして話をしているのはユクレステとマリン、アランヤードの三人だ。

「まあ時間はたっぷりあることだし、少し話をしようか」

 そう前置きをして、アランヤードは一枚の紙を取り出した。手紙、だろうか。

「それは?」

「王都からの報せさ。君に関係があるのが一つ、もう一つは……まあ、あまり関係はないね」

「ふーん、どんな話?」

「なに、ゼリアリスのお姫様が近々結婚するって話さ。私たちには関係ない話だよ」

 別にゴシップが好きと言う訳ではないが、へえ、と反応する。ゼリアリスの姫と言えばその筋ではかなり有名な女性だからだ。

「あの太陽姫がねぇ。ゼリアリスが保有する最高戦力、騎士の到達目標、最強の剣士。色々と話題に事欠かない人、だよな?」

『アラン王子も会ったことあるんだよね?』

「まあ、ね。一度うちの国に招待したことがあって、その時にね。すぐに帰って行ったけど、それでも彼女が凄いってことを知るには十分だったよ」

 はは、と乾いた笑いを上げながら頬を掻く。

「まずうちに来て何をしたかと言うと、騎士の訓練の視察。その時に模擬戦ってことでセレシアが相手をしたんだけど……」

「……どうなったんだ?」

 セレシアはまだ年若いとは言っても剣の腕はかなりのものだ。魔法を放つのは不得手ではあるが、魔力をつかって体力や身体能力を底上げする技術もあってか単純に近接戦闘ではトップクラスの実力者である。

 そんな彼女と打ち合い、結果、

「二十打ち合えなかったよ。多分、切り札を切っても勝ちは拾えないだろうね」

「……そんなにか」

『それはまた……おっそろしい子もいたもんだね』

 勝てないまでも、良い試合が出来るだろうと踏んでいた。それはアランヤードだけではなく、他の騎士たちも同じ考えだっただろう。だが実際は負け。それも、大が付く程の圧倒的な力量を持っての負けである。

「一時期は私に婚姻の申し込みが来てたんだけど、断ったよ。最もあれは親御さんが必死に嫁ぎ先を決めようとしていたらしいけど」

「まあ、尻に敷かれるのが目に見えてるのに結婚する人もなぁ。特に王族貴族はプライド高いの多いし」

 外見を見ればだれもがうっとりと顔を緩ませる程の美貌だ。しかしそれを補って余りある程に強い。この場合、強過ぎるのが問題なのだろう。御し切れればいいが、そうでなかった時が恐ろしい。

「確か、アーリッシュの新国王、レイサス王が結婚相手だそうだ」

『アーリッシュ? なんだっけ、最近聞いたことがあったような……』

 んー、と考えるような声が宝石から聞こえて来る。ユクレステが補足するように言葉を足した。

「賢国アーリッシュ。ゼリアリスとは隣国で、迷いの森を有する二国のうちの一つだ。様々な遺跡が眠る土地だな」

「そう言った土地柄、冒険者の国であるゼリアリスとは昔から仲が良かったみたいだよ。特に先代の王とゼリアリスの現国王とが仲良かったらしくて、その縁もあって今回の婚約に至ったらしい」

 さらに言えば、太陽姫もレイサス王は憎からず思っているらしく、なるべくしてなったと言えるだろう。

「残念だったな、せっかくの美人と結婚出来る機会がフイになって」

「はは、私には荷が勝ち過ぎてるよ。それに私はもっとお淑やかな子が好みさ」

『そんなこと言ってー、本命はもっと違うんじゃないのー? 例えば、目の前にいる……』

「いやーあはははははは!」

 爽やかに笑い飛ばし、もう一つの話題へと移る。

「さて、もう一つの話なんだけど……朗報だよ」

「朗報?」

 無事話題を逸らせたことに安堵しながら、便箋を手渡した。

「君が探していた聖霊使いの手記。ようやく貸出の申請が通った。期限は私達がルイーナに着いてから一週間。その間だけ、君の手元に来るそうだ」

「えっ?」

 アランヤードの言葉を頭の中で再度理解し、便箋に書かれた文字を読み進めて行く。

 最後まで目を通し、一呼吸。

 次いで、

「えぇえええええ!?」

 その声の大きさにユゥミィとミュウが目を覚ますのだった。



 そうして辿り着いたセントルイナ大陸中心の街、ルイーナ。この五日間、今か今かと待ち望んだ瞬間がついに来たのだ。水路を流れる水を見て、水を湛える噴水を見て、学園に向かう制服姿の少年少女たちを見ながら楽しみで張り裂けそうな胸を抑えつける。

 聖霊使いへの一歩。なにが書かれているのかだれもが分かっていないその書物をようやく紐解くことが出来るのだ。楽しみで楽しみで仕方がない。

「ようやく二つ目……か」

 自らのメモ帳に視線を落とし、聖霊言語を頭に叩き込む。ある程度の読み、意味は理解している。あとは実際に読み解くだけだ。ユクレステの視線の先に大きな屋敷が映るまで、何度も何度も読み込んでいった。

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