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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
セントルイナ大陸編
12/132

ナイト志願のアーチャー

 コルオネイラの街に来て四日ほど経っただろうか。最近はミュウの特訓をしていたりと、色々と忙しい日が続いていた。今日も朝から剣の稽古をしていて、ふと気付いたのだ。

 そう言えば、そろそろ所持金が危うい……?

 いや、盗賊たちからの戦利品のおかげでだいぶ懐は温まっていたのだが、あれから杖を直したり剣を買ったりと、結構な額の買い物を続けていたためだいぶ目減りしてしまったのである。今取っている宿も、マリンの我がままのせいで風呂付のお高い部屋に泊まっている。そのくせ、ギルドには少しも顔を出していないときた。

 なるほど、金が無くなる訳だ。

 どんな時でも手放さない財布の中身に呆然としながら、ユクレステはため息を吐いた。


 そんな訳で、ユクレステはギルド、コルオネイラ支部の前まで来ていた。今頃マリンとミュウは二人で魔法の勉強をしていることだろう。同じ魔物の方が教えるのが楽かもしれない。

 仲間のことを思い出しながら、あちこちに視線を向かわせる。

 目の前にはギルドの看板。その隣には、テラス席のあるお洒落なカフェがある。

「…………ま、まあちょっと休んでからでいいかな」

 キョロキョロと視線を泳がせた後、ユクレステはギルドに入ることなく隣のカフェへと入って行った。こうして、またも財布から小銭が飛んで行くのだった。


 テラス席からは道行く人々を眺めることができ、ユクレステの視線は忙しなくそんな彼らへと注がれていた。

「うわ、オオトカゲに一角狼、グリーンスライムなんかまでいるぞ」

 その理由は通行人が連れている魔物の姿にあった。近隣に生息しているような魔物から、遠方にしか生息しないような魔物が首輪や刻印を身体に着け、大人しく主に従っている。恐らく彼らも今回の大会の参加者なのだろう。

 ユクレステがこうして魔物に目を引かれるのも、大会に向けての情報収集なのかもしれない。

「うっは、マジでか? 悪魔族のグレムリン種、エルフ族なんかもいる! あー、生きててよかったー」

 ……。

「おお、グリフォン! って、あれ王国兵の紋章? ってことはあれ、王国近衛のグリフォン隊か? 仕事サボってなにやってんだか……。おおっ、あっちにはキマイラが――!」

 ユクレステ・フォム・ダーゲシュテンは少し変わった趣味がある。いわゆる、モンスターマニアと呼ばれる類のものだ。こうしてギルド(仕事)を後回しにしてまでモンスターウォッチをするくらいには、モンスター好きなのである。

 紅茶とクッキーを頬張りながら、幸せそうに道を眺めるユクレステ。かれこれ三十分はそうしていただろうか。

「やー、今回ラッキーだな、こんな時に来られて。閣下には感謝しないとな、なに企んでんのか知らないけど」

 ユクレステは今回の大会、何事もなく終わるとは思っていなかった。

 ロイヤード・アレイシャークティアラ・モーディナリディアナ・ルイーナ十二世。やたら長い名前を好み、物好きかつ変人な王族の一人だ。一度彼と関わったことのあるユクレステは、この人物が素直に大会だけを開催したとはとてもではないが思えないのである。

 とは言え、一冒険者風情の出来ることなど限られているため、彼の出来得る最善の行動を起こすに留めておいた。

 そんなことより今は金である。

 いい加減モンスターウォッチングを終え、ユクレステは席を立った。ちょうどその時である。

「もし、そこな御仁」

 声が聞こえてきた。周囲にはだれもいないため、自分に言ったのだろう。ユクレステは訝しみながら、声のした方向へと向き直った。

「はい? なんですか?」

 そこにいたのは、まさに騎士のような人物だった。白く美しい甲冑に身を包み、ミュウの持つものと同じくらいに巨大な剣を背に携えている。声から分かっていたが、どうやら女性らしい。フルフェイスの兜を身に着けているため詳細な情報は分からないが、十分に若いだろう。

 そんな女性が、凛とした声を上げて言った。

「頼む、起き上がらせてはくれないだろうか?」

 仰向けに倒れた姿のままで。

 なるほど、そこでようやくユクレステは納得した。

「は、はぁ……分かりました」

 これもまた、厄介事なんだろうなー、と。


 その人物の名はユゥミィ・マクワイアと言った。

 聞けたのはそれだけだ。正確に言えば、この名前一つを聞くために、全身甲冑を着た人物を三度起こし、前のめりに倒れ家屋にダメージを与えたことを謝罪するのに四度かかった。そんな彼女は現在、ギルドの休憩スペースでぶっ倒れている。

「大丈夫ですか、ユウミイさん? 水でも持ってきましょうか?」

「いや、結構。別に疲れている訳でもないのでな。ああ、それと私はユウミイではなく、ユゥミィだ。以後間違えんように」

「いや聞き分けられねーって。ってかどっちもそう変わらないし」

 声からして疲れているという訳ではないのだろう。むしろケロッとしている。そんな彼女を遠巻きで盗み見る冒険者たちを羨ましそうに眺めながら、ユクレステはユゥミィを無理やり立たせる。大柄という訳ではないのだが、全身甲冑のせいかとても重い。身長も鎧込みでユクレステと同じくらいだが、それでも押し上げるのに苦労した。

「んのっ! ほら、そこの椅子に座って下さい! てか自分で動け!」

「ん、いや、楽だからついな。スマンスマン」

 一苦労の末に木製の椅子に座らせる。直後にバキッと音と立てて椅子が砕けた。

「おお」

「おお、じゃねー! ああすみません! 弁償します! 弁償しますからそんな目で睨まないで下さい! ほら、財布出せ!」

「ん? 生憎私は金を持っていない。スマンが払っておいてくれ」

「ちょ、えぇえええー!?」

 キツイ視線で睨みつけてくる受付のおっさん。結局、ユクレステの財布がさらに薄くなってしまった。

 なんとかユゥミィを人形のように壁際に座らせて置き、椅子に座って彼女を見下ろしながら会話をすることにした。

「で、あんた一体何者で、なんで俺に声かけたんだよ」

 もう他人に使うような敬語は捨て去り、普段の言葉づかいで尋ねた。視線は冷たく、まるで氷のようだ。

 そんなユクレステに少しも怯えず、全身甲冑の少女の声が聞こえる。

「うむ、それなのだが、その前に一ついいだろうか?」

「……なんだよ?」

 先ほどの件もあり、若干引き気味だ。正直これ以上関わり合いになりたくないというのが本音である。それでも返してしまうのは、彼の性格故だろうか。

 嫌そうながらも答えたユクレステに、ユゥミィはこう言った。

「お腹が空いた。なにか食べさせてくれぬか?」

「……」

 ふぅ、と一息。なんだろうか、この穏やかな気持ちは。怒りと言う感情は一周回るとこれだけ晴れやかな気持ちになるのだろうか。新発見だ。

 ニコニコと笑いながら、ユクレステは口を開いた。

「ガン・ウィンド!」

「いたっ!?」

 怒りが多量に込められた風の銃弾がフルフェイスの兜に当たり、少女の声が上がる。

「ウィンド・スピア! ウィンド・ソード! 破砕ブラスト!」

「ちょっ、まっ、痛い痛い! 本気で痛いから止め――」

 必死に制止の声をかけているが、もはやそんな雑音は聞こえない。ユクレステは杖を取り出し、怒りを魔力に込めて発散した。

「突風なる翠の弾丸――バレット・ストーム!」

「イヤァアアー!」


「ふぅ、スッキリした」

「ゴメンナサイ調子に乗りました誠に申し訳ございません」

 うつ伏せに倒れた姿勢で全身甲冑がなにかを言っている。

 とりあえず謝罪を受け取ったことだし、許してやることにする。個人的にもう少し痛めつけたりしたかったが、それではギルドの人に怒られてしまう可能性があるのでこのくらいで勘弁してやろう。

 それにしても、

「随分頑丈なんだな、その鎧。結構本気でやったのに傷一つ付いてないし」

「ふ、ふふふっ! それはそうだろう! なにせこれは我が家の家宝なのだか――」

「ええい鬱陶しい」

「あぅ!」

 ガンと兜を殴りつける。殴った拳の方がダメージがあるだろうが、その際の衝撃でユゥミィも黙らせられた。

「ってかあれだな。いつまでもその鬱陶しい兜被ってるんだよ。取って顔見せろ! 碌に話も出来ない!」

 拳を擦りながら彼女の全身を眺め、兜を引っ掴む。

「あ、ちょっ! それはダメだ! それだけは勘弁してくれ!」

「うっさい! まともに動けないくせに偉そうにすんな!」

 バタバタと手足を動かしているが、満足に引きはがすことも出来ない。そうこうしているうちに、ユクレステが兜を引っこ抜いた。

「あっ!」

 ようやく声がクリアに聞こえる。同時に、ユゥミィの顔が露わになった。

 兜を取った際に勢いよく髪が流れた。森の木々のような深い緑色の髪が肩ほどにまで流れ落ち、サファイアのように蒼い瞳がユクレステの姿を捉える。整った顔立ちをしており、間違いなく美しいと言えるだろう。変わった点はと言えば、肌の色と、耳の形だろうか。

「おまえ、エルフだったのか? いや、もしかして……」

「うぅ……だから止めてって言ったのに……」

 彼女の耳は、人間のそれとは違って尖った形をしていた。ミュウのよりもずっと長く、尖った耳。それは、エルフ族である者の特徴だ。

 だが彼女はそれだけではなかった。

「その肌の色……もしかして、ダークエルフ、か?」

 エルフよりも浅黒い肌の色を持つ種族、それがダークエルフだ。エルフとダークエルフの違いは原則的には存在せず、精々が肌の色程度だ。少し前にはダークエルフはエルフと対立関係にあったらしいのだが、今では仲良く森で暮らしている。

 森で暮らすはずのダークエルフは、エルフ以上に人里に現れない。それが、こうして目の前にいるのだ。モンスターマニアであるユクレステは、ここで一つの行動をとった。

「へ、へぇええええ。おまえダークエルフだったのか、そっかそっかー! あ、なんか食べる? お腹空いてるんだったっけ? よしよし俺が奢ってあげよう。おじさんなんか美味いもん持ってきてー!」

「えぇ!? なんか急に対応が変わったぞ!?」

 レアなエンカウントが発動したこのチャンス逃さないように、ユクレステは精一杯の笑みを浮かべた。

「まま、座って座って。あ、ちょっと待って、顔拓取っていい? ダメなら手でもいいけど」

「嫌だよ! なぜ顔面真っ黒にならないといけないんだ! って言うかちょっと色々待ってくれ!」

 兜を取られた時点で諦めたのか、ユゥミィは鎧に魔力を通わせる。すると突然、鎧が光を発した。

「な、なんだ?」

 光はユゥミィを包み込み、鎧のパーツが一つずつ外れていく。ユクレステが手に持った兜も光を放ち、手から離れた。

 そうして気付けばユゥミィの隣には騎士甲冑が鎮座していた。この間わずか三秒。それだけの時間で鎧の着脱を完了してしまったのだ。

「今の、なんだ?」

 鎧を脱いで今の彼女はどこから出したのかマントを羽織った姿で椅子に座っている。冒険者風の姿で、いつ服を着替えたのかと問い詰めたい。

「ん? 知らないのか? 変身チェンジの魔法だ」

変身チェンジ? なんだそれ? そんな魔法、初めて聞いたぞ?」

 言葉の感じからして無属性魔法だろうか。だがそんな魔法は聞いたこともなく、習った覚えもなかった。

変身チェンジは自分が装備しているものを即座に変更する魔法だ。そうだな、知らないのも無理はないか。私の里に伝わる秘伝の魔法だからな」

 なるほど、その土地にしか伝わっていない魔法なのだろう。エルフの里など、あまり他の種族と関わらずにいた里ならば、特に珍しいことではない。今までにも何度かそういったことを目にしてきたユクレステは一人納得する。

「鎧など着るのが面倒なものでもこれ一つで着用出来るからな、重宝している。……だが本当の使い方は別にある」

「本当の使い方?」

「そうだ。この魔法はな……」

 一呼吸溜める。

「変身ごっこをする時に使うのだ」

「はぁ?」

 いかにも自信満々に言ってのけた言葉は、正直どうでもいい答えだった。期待していただけに、脱力してしまう。

「ふふふ、こうして皆で集まってな、腰に手を当てポーズを取り、変身チェンジ! と言って格好いい服に着替えるんだ。そういう遊びが昔から行われていてな、里の子供たちは何より先にこの魔法を覚えるのさ」

 その表情を理解していないのか、なおもユゥミィの話は続いている。

 いやだから、正直どうでもいいのです。

「うん、話を戻そう。だからまず落ち着け」

 とりあえず黙らせ、なんの話だったのかを思い出す。彼女がダークエルフだと言うことは分かった。では、そのダークエルフがなぜこんの所にいるのだろうか。

 思い当たるのは一つしかないが。

「もしかしてユゥミィも大会に参加するのか?」

「うむ、その通りだ」

 ユクレステの言葉に、よくぞ聞いてくれたと頷いた。

「私は昔から騎士になることを目指していたのだ。この大会で良い成績を残せば騎士に登用されると聞いてな、居ても立ってもいられず里を飛び出してきたのだ!」

 そんな話は初めて聞いたのですが。

 自信満々に言ってのけるユゥミィに意見する気力もなく、ユクレステは頷いておく。

「はー、で、なんであんな所で行き倒れてたんだ?」

「無論、鎧が重たかったからだ! 里からは引きずってここまで持ってきたのだが、流石に街の中でそれは情けないだろう? だから着こんだまではいいのだが……思いの外重くてな、倒れたら立ち上がれなくなってしまったのだ」

「おまえ騎士志望なんじゃないのか?」

 自分の鎧で起き上がれなくなるとは思いもしなかった。いや、そもそもダークエルフのくせに騎士になろうというのも変な話である。

「ダークエルフって元々筋力はあんまりないだろ? 魔法や弓においては達人級の実力があるっていうのは聞いたことあるけど、鎧を着込むほどの力はないんじゃなかったか?」

「うむ、おじい様にもそう言われた。しかし、そんなことは関係ないのだ!」

 バン、と机を強く叩き、自分の手の方がダメージを受けたのか涙目になって手を押さえている。

「わ、私の騎士にかける思いは凄いぞ! 騎士になるための修行を何年も続けてきたのだからな!」

「例えばどんな?」

「え? えっと……」


『騎士たるもの魔法のエキスパートでなくてはならない! さあユゥミィよ! 精霊上級魔法を習得するのだ!』

『分かりましたおじい様! ……出来ました!』

『早くね!?』


『騎士たるもの弓の扱いに秀でていなくてはならない! さあこの弓を持って今夜のおかずを狩ってくるのだ!』

『分かりましたおじい様! ……狩ってきました!』

『早っ!? ってか多っ!?』


『騎士たるもの好き嫌いがあっては務まらない! さあワシの嫌いなレバーを食べるのだ!』

『はいおじい様! ご馳走様でした!』

『早い! って、ワシの好物まで食われとる!?』


「とかそんなような修行を続けたのだ。結果、上級魔法も完璧、弓の扱いも里一番の騎士になったという訳だ」

 自慢げにそうのたまうユゥミィだが、恐らくそれは騎士の修行ではない気がする。騎士に必要なのは剣の扱いに体力、後は若干の回復魔法だろうか。間違っても上級魔法の習得は騎士になるのに関係はない。

「あー、そうなんだ。ところで里を出ることってちゃんと家族の人に言っておいたのか?」

「いや? おじい様からのお墨付きをもらったその晩に里を出たから言っていないな。まあ騎士である私にはそんなこと関係ないだろうがな」

 彼女の祖父も騎士を間違えていたのだろうか。いや、多分、騎士という言葉をエサにエルフの修行をさせていたのだろう。

「この鎧は我が家に伝わる家宝でな。私が一人前の騎士になったら譲ってくれるとおじい様が言ったのだ」

 まさか本当に持っていかれるとは思っていなかっただろうに。まあ、少しは同情するが、自業自得な気もする。

「一応言っておくけど、騎士っていうのは剣術を主とした王国の兵士のことで、その中でも特に優れた人たちのことだぞ? 分かってるか?」

「無論だ。だからこそこうして大会に出場し、優勝して登用してもらおうとしているんじゃないか」

「いやそもそも、そんな話聞いたことないから」

 賞品が出るとは今まで何度も聞いてはいたが、騎士に登用されるなんて話は初耳だ。というか、出場するのは全て魔物なのだからそんなことはあり得ないだろう。つまり、彼女は嘘の情報を得ている、もしくは、勘違いしている。

「なんだ、知らないのか? 以前この街に来る道中で聞いた話だぞ。まあ当然か、なにせその情報を得るのに全財産を使ったのだからな」

 それは騙されているのではないか?

「まあいいや。賞品の話はまだどこも憶測ばっかりだし、騎士登用される可能性もあるだろうし……。で、おまえの主人マスターはどこにいるんだ? 大会登録にでも行ってるのか?」

「マスター? なんだそれは?」

「……は?」

 ユクレステが尋ねたのは極自然な流れだったはずだ。大会に参加するには、登録を済ませなければならず、登録をするためには魔物の主人が受付に行かなければならない。事実、ユクレステもミュウの主人マスターとして登録済みである。

 だがユゥミィは首を傾げている。マスターと言う言葉も分かっていないようだ。

「ちょ、ちょっと待って……おまえってギルドで待ち合わせに来たんじゃなかったの?」

「待ち合わせ? いや、この街に知り合いはいないぞ。金に困った時はギルドに行けばいいとおじい様が言っていたのを思い出したから来ただけだ」

 いやそれも可笑しいのだが。ギルドを使用できるのはギルド登録を済ませた冒険者だけ。つまり、先にゼリアリスのギルド本部での登録が必要なのだ。今までの話からそれを行ったとは思えない。例外として、魔物の主人マスターが登録してあれば、仲間にしている魔物でも仕事クエストを受けられるが、それもいないと言う。

 つまり、このユゥミィと言うダークエルフの少女。

「……一文無しで、しかも大会出場資格もなし、と」

 なにしに来たんですか、と思わず言ってしまいたい衝動に駆られる。確かに、ダークエルフは人里離れた場所にいるため、世の情勢に疎いと言う傾向はある。しかし、それをしたって、

「世間知らずにも程があるだろ……」

 大きなため息を吐くユクレステを不思議そうに眺めながら、ユゥミィは好奇心に満ちた視線をあちらこちらに向けていた。

 今からこの少女に現実を突き付けなければならないと思うと、胃の辺りが沈んで行くような幻覚を覚えるユクレステであった。

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