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聖霊使いへの道  作者: 雪月葉
秘匿大陸編
107/132

交流

 五十階建てのビル、その最上階のワンフロア全てがエレメント社社長とその関係者の住居となっている。その一室にユクレステ達は呼ばれていた。時刻が丁度昼食時となったため、食事をご馳走してくれると言うのだ。どこかのバカ鳥のせいで食糧が無くなってしまった彼等としては嬉しい誘いである。

「いや、なんかすみません。なんでしたらこの鳥肉を提供しますから」

「ピィ、ピッピー!!」

「い、いいよ別に! 凄く嫌がってるみたいだし。あ、ほら来たよ。カラアゲちゃんのご飯は向こうだから」

 掴まえた手をグサグサとクチバシで攻撃してくるカラアゲを投げ捨て、待ってましたと言わんばかりにスプーンを手に取った。

「カボチャの冷製スープです。カボチャのアイスを崩して、ご一緒にどうぞ」

「おおー、兄様かっこいい!」

「は、ははは……」

 スープを運んで来たのは執事姿のミデュアだった。ユゥミィの尊敬した眼差しに若干居心地が悪いのか、ぎこちなく笑っている。やはり突然現れた妹にどう接して良いのか分からないのだろう。

 妹さんはまったく気にした様子はないが。

「さ、カラアゲ様はこちらのカボチャの種召し上がって下さい。美味しいですよ?」

「ピィ!」

 一方でシェルーリアはカラアゲに炒ったカボチャの種を与えている。同じ鳥だからか、仲は良好だ。

 彼女達を眺めながらスープを一口。中央に置かれたアイスと共に口に運び、ひんやりとした食感が心地いい。

「美味しい……」

「ふふ、そうでしょう? うちのシェフは優秀だもの。ね?」

 朝陽は意味あり気にミデュアへと視線を向ける。

「優秀かどうかは分かりませんが、お口にあえば幸いです」

「えっ? 料理ってミデュアさんが作ってるの?」

 行儀悪く音を立ててスープを飲んでいるマリンが驚いた顔を見せた。ダークエルフの青年は柔らかく微笑み、頷く。

「はい、アサヒ様のお口に入るものは大抵、私が調理させて頂いています。昔からの癖のようなものですね」

「癖?」

「アサヒ様は……その、偏食が過ぎるので。放っておくと肉しか食べないんですよ。ですので、私が栄養を考えてお出しするよう。ええ、私が仲間になるまで肉だけ過ごしていた方ですからね、はい」

 ディーラの疑問に律儀に答え、彼女の視線が朝陽へと向いた。

「……子供?」

「あ、あの時はまだ十六だったし! 実際子供だったし!?」

「だからって毎食一キロの肉を食べなくても良いでしょう? デザートには肉ケーキとやらも食べていて……。肉食動物ですかあなたは」

 呆れた風にため息を吐くミデュアの姿は、従者と言うよりも母のようだった。

「しょ、しょうがないじゃない。あの頃は肉なんてそんなに食べた事なかったんだもの」

 世界落ち(フォールアウト)下にあった日本では肉などは高級品であり、そう簡単に口に入るものではなかった。それがディエ・アースに来て食料は豊富にある。突然異世界へと投げ出された朝陽だが、食糧に事欠かないことを知り帰るのを躊躇してしまった過去すらあった。それも仕方ないよね、と同意を求める朝陽。しかし、ミデュアの厳しい顔を見てすぐに顔を背けた。

「……まったく。とにかく、ちゃんとお野菜を取って頂いて――」

「アサヒィ!」

「……はぁ、うるさいのが戻って来ましたね」

 勢い良く扉が開き、大きな音に皿がカタカタと揺れ、スープに波紋が走る。面倒臭そうにミデュアが視線をそちらに向けると、そこにはボロボロの服を着た少年が立っていた。赤みがかった黒髪に、額から一本の角が伸びている。

 彼は聖霊使い、月見里朝陽の仲間の一人である、クキと呼ばれる少年だ。

「それとおめぇら! 人が疲れて帰って来たと思うたらいきなし殴りよってからにぃ! しかもおめぇ! よくも叩き落としてくれたのぉ!?」

「ひぅ……!?」

 先日出会い頭に攻撃を加えて来たクキだが、再会はつい先ほど済ませていた。扉を潜って現れたクキに対し、有無を言わせずディーラがマウントポジションで殴り始め、最終的に押し切られる形でミュウが本気で殴り飛ばして開いていた窓から落としたのだ。五十階から落ちたにしては随分と軽傷で済んでいるのは流石である。

「大体、なんで窓が開いとるんじゃ! いつもは締めきってるじゃろうに!」

「あ、それ開けたの私ー。壁壊されたりしたら嫌じゃん?」

「やっぱおめぇかアサヒィ!?」

 スープを食べ終わり、前菜のラタトゥイユのパイ包みをパクリ。美味しそうに頬を緩ませている。

「落ち着きなさい、クキ。それに、あまりいたいけな女性を恐がらせるような真似をしてはいけないと、常日頃から言ってあるでしょう? あなたはただでさえ顔が恐いんですから」

「なんじゃとぉ!? 大体ミデュア、ワシは野菜が好かんと言っとるじゃろう! 肉食わせぇ、肉!」

「なぜ私があなたの食事の要望を聞かなくてはいけないのですか? 大体、ムダ飯喰らいに食事を用意するのも嫌なのに。あなたは素直に牛丼でも食べていなさい」

「なんじゃとぉ!?」

 激しい言い争いを始めた仲間たちを見ながら、アサヒはカラカラと笑って見せた。

「あはは、ごめんねー、騒がしくて」

「いや、別に構いませんよ。仲が良いようですね」

「まーね」

 後ろで嫌そうな声が聞こえてくるが、気にした様子もなく話を続ける。視線はスープを飲みほしたミュウへと向けられていた。

「それにしても、ミュウちゃんだっけ? 見かけの割に凄いんだね。いくらクキが軽いからってあんなに吹き飛ばせるなんてさ」

「え、えと……ご、ごめんなさい」

「それに良い子だ! 私の知り合いなら間違いなく追い打ちをかけるだろうに、素直に謝ってる!?」

 それは一体どんな交友関係を持っていたのかと。シェルーリアのため息からなんとなく想像できるが。

「アサヒさんの交友関係は気になるけど、ミュウちゃんは私たちの良い子担当だからね。欲しいって言っても上げないよー?」

「はぅ……」

「そっか、それは残念」

 ミュウの隣に座るマリンが抱きつきながらそう言った。少し残念そうに口元を緩め、言葉を続ける。

「それにしても……ミュウちゃんってなんの種族なの? エルフ系にしては耳は短いし、妖精ともちょっと違う様な……」

 悩む朝陽に、どう言ったものかと思案する。異常種イレギュラーは過去にも当然おり、忌諱するものは多くいた。彼女達がそうだとは思わないが、それでも伝えるのは躊躇われる。

「……えと、わたしは、ミーナ族です」

「ミュウ?」

 どうしようかと悩んでいると、微笑みながらミュウが声を発した。ユクレステは心配そうにそちらを見るが、その儚くも力強い微笑みを見て言葉を引っ込める。

「ミーナ族、ですか? ですが、ミーナ族は皆金色の髪のはず……」

「力もそんなある種族とは違ったはずじゃろ?」

 シェルーリアとクキが疑問に首を傾げ、ミデュアも同様に。ただ一人、朝陽は神妙の表情でポツリと呟いた。

「もしかして、非種族?」

 その一言に彼女の仲間たちはハッと息をのんだ。ミュウはなにを言われたのか分からずに首を傾げているが、ユクレステは固い声を朝陽へと向けた。

「アサヒさん。ミュウは俺たちの大切な仲間だ。あなたがミデュアさん達を家族と言ったように、俺も仲間たちをそう思っています」

 チラリとミュウを覗き見て、微笑む姿を視界に入れる。

「だから、この子を可笑しな目で見ないで下さい。この子は、ただ少し他と違うだけの異常種イレギュラーなんですから」

 真剣な眼差しで見つめて来るユクレステ。それを真正面から見つめ返し、他の仲間たちを盗み見る。飄々としながらも慈愛の眼差しを向ける人魚、例え兄と敵対しようと覚悟を決めているダークエルフ、悪魔族の少女は既に臨戦態勢だ。

 その状況を見て、アサヒは苦笑する。

「もちろんだよ、ユクレ君。それにミュウちゃん」

 朝陽は謝罪しながら言った。

「ごめんね、誤解させるような事を言って。非種族って言うのは、今キミが言ったみたいにその種族の中で少しだけ違う子の事を言うの。今では異常種イレギュラーって言うみたいね。私たちはそう言う子を良く知ってるもの。変な目で見る訳ないじゃない」

 仲間たちへと目配せをする。その内の一人、クキが声を上げた。

「通りでとんでもねぇパンチじゃと思ったわ。じゃけど、一々ンな事でたまげるかい。……ワシだっておめぇらの言う、異常種イレギュラーじゃけぇ」

「えっ……?」

 彼の話に目をパチクリと瞬かせ、ミュウは驚きの表情を向けている。どこか照れくさそうに顔を背けるクキに代わってシェルーリアが言った。

「クキは大鬼オーガ族の異常種イレギュラーなんですよ」

「オーガ族? そのチビ助が?」

「おめぇもチビじゃろぉが!」

 ディーラの驚きの言葉に反応してジロリと睨みつける。だが彼女の疑問も最もなのだ。大鬼オーガ族とは子供でも二メートルもの巨体を有した戦闘系種族。大人になれば三メートルは超えるだろう。それに比べ、目の前の少年は150センチ程度しかない。

「なるほど、だからあの怪力か……ミュウの一撃を軽く返す訳だ」

 普通の大鬼オーガ族であってもミュウの力ならば引けは取らないはずだ。それをああも簡単に弾いた純粋な彼の力は、確かに異常種イレギュラーの特徴でもある高い戦闘能力を表している。

 納得してクキを眺め、次いでミュウを見る。ホッとしたような表情に、こちらも気付かれないように吐息する。

「すみません、勝手に早合点してしまって。それに、言いたくないような事を言わせてしまって」

 素直に頭を下げ、謝罪する。向かう先は朝陽と、クキ。しかし気にした様子のないクキはふん、と顔を背けた。

「別に気にせん。それに、おめぇは本気であいつのために怒っておった訳じゃしな。その心意気は、嫌いじゃねぇ」

「そうだよ、ユクレステ君。私たちのいた時代、異常種イレギュラーはひどい扱いを受けていたの。それは、今も変わらない?」

「……生まれてから十年以上、実の親から監禁されていたと聞きます」

「そっか。……キミみたいにどんな子にも優しく出来る魔物使いは、信頼出来るよ。この子たちも、色々あったから」

 クキもシェルーリアもミデュアも、彼女の視線をただ受け入れている。

「兄様も、なのか?」

「……まあ、ね。でも、今ではもう気にしていないよ」

 ユゥミィの疑問をはぐらかしながら答え、ミデュアはユクレステに深々と頭を下げた。

「ミデュアさん?」

「あなたのような心優しい人が私の妹の主になって頂き、どれだけ感謝してもしきれません。どうか、これからもその心を忘れずにいて下さい」

 どこまでも真っ直ぐな若草色の瞳に見つめられ、少々気圧されながらもしっかりと頷く。見れば、どこか彼等の空気が和らいでいる気がした。




 食事を終えたユクレステ達は、クキの案内によって大きなテレビのある部屋に招かれていた。そこにはテレビの他に大きな棚が並べられ、ギッシリとなにかの箱が敷き詰められている。

「せっかくこっちに来たんじゃけぇ、まずはゲームでおもてなしが流儀じゃ! さあなにをやる? 格闘? レース? スポーツもあるぞ!?」

「ゲ、ゲーム? それってやっぱりバトル?」

「ああいえ、ご安心下さい。そう言った暴れるようなものではありませんので」

 以前、ゲームと称してセイレーシアンに氷像と対決させられた思い出が甦ったが、どうやらクキの言うゲームとは言葉通りの物なようだ。

 シェルーリアの説明によると、テレビゲームなるものがこの世界では流行っていて、コントローラーを動かしてテレビに映ったゲームを進めて行くのだと言う。さらに補足情報によると、クキはこちらの世界に来て五年、見事にゲームにハマってしまい、この部屋にある物は全て彼の所有物なのだとか。

「シェルさんはやらないんですか?」

「ワタシは、手が翼ですから」

 しょんぼりとしている所を見ると、彼女もやってみたいのだろう。流石に足で操作する訳にもいかず、クキがやっているのを隣で見るだけで我慢しているそうだ。

 結局四人対戦の格闘ゲームをする事にしたらしく、絨毯の上に座布団を敷き、手始めにミュウ、ディーラ、ユゥミィがコントローラーを握った。

「へへっ、対人戦は久し振りじゃのぅ! ミデュアは下手くそじゃしナハトは出張ばっかりで相手してくれんし、まあアサヒとは良くやるんじゃが……」

「あっ、こらバカ鬼!」

「ふふふ、アサヒ様? 後ほどお話がありますので、覚悟していて下さいね?」

「うげー」

 ヒョイと顔だけ出したミデュアが不敵に笑い、去って行く。食事の後片付けも彼の仕事なのだ。

 やがてテレビ画面に色がつき、壮大な音楽と共にタイトル画面が映った。

「おおっ! やっぱりてれびと言うのは面白いな! アサヒ! 私これが欲しい!」

「んー、私のお古で良ければ今度あげるよ。お仕事をちゃんとやってくれたら、だけどねん」

 いつの間にか仲良くなっていたユゥミィ達の会話を聞き、ユクレステはそう言えばと疑問する。

「あのー、結局仕事の打ち合わせはいつするんですか? 食事の後って話だったと思うんですけど。――あ、始まった。ここでキャラクターを選ぶのか?」

「本当はそのつもりだったんだけどね。クキが始めちゃったからしょうがないよ。ま、時間はあるし、今は遊んでおきなさい」

 画面は代わり、キャラ選択画面になる。コントローラーを動かしながらどれにしようか悩むミュウに、クキが解説を始めた。

「ほうじゃ! ちなみにワシのオススメはその剣士タイプのキャラじゃな。初心者にはちょうどええと思うぞ? ぷっ、悪魔っ子はそんな最弱キャラか!? 勝負にならんのぅ!!」

「初めてやる相手になにを言ってるのさ。で、ユゥミィは?」

「この騎士みたいなやつだ! きっと強いぞ!」

 キャラ選択が終わり、バトル開始の合図が出る。それを眺めながら、ユクレステは歓声をあげた。

「おー、凄い凄い。こういうゲームならアリスとも穏便に遊べたんだけどな」

「アリス? ねえ、それって……」

 上げられた名前に思い当たるものがあるのか、朝陽はチラリとユクレステを見た。思い出されたのは生まれたばかりの少女の姿。ミデュアとシェルーリアが形作り、朝陽と聖霊が生み出した精霊の少女だ。

「ええと、はい。氷の主精霊、アリスティア……様の事です」

「アリスちゃん……懐かしいですね。あの子は、今も元気でいますか?」

「それはもう。危うく氷像にされて山奥に飾られる所でしたよ」

「そ、そうなのですか……」

 ハッハッハッ、と軽く笑いながらもその表情は引きつっていた。シェルーリアに慰められどうにか落ち着きを取り戻したユクレステは、アリスティアを思い出す。

「あの子は今もあなたの願い通りにいますよ。三百年、リーンセラを守っています」

「……そうだよね。そう、お願いしちゃったんだもん。あの子は真面目だから、きっと頑張ってくれてる。それは、分かってる事なんだけどさ……」

 言い淀む朝陽。ユクレステは、そこへ声をかけた。

「一つだけ、確認させてもらっても良いですか?」

「……なにかな?」

「アサヒさんは、アリスをどう思っているんですか?」

「どうって……?」

「あいつ、あれで結構寂しがり屋じゃないですか? 泣いていましたよ、あなた達に置いて行かれて、邪魔だと思われたんじゃないかって」

 周りを凍てつかせる程の感情を爆発させて泣いていた。邪魔になったんじゃないのか、いらなくなったんじゃないのか。そんなはずないのに。

 分かっている。朝陽は元よりこの世界の人間だと言う事も。セントルイナにいたのは事故によるもので、いずれは帰らなければならなかったと言う事は。それでも、言わずにはいられない。あの子の代わりではないけれど、確認したかったのだ。

 僅かに瞑目し、朝陽を口を開いた。

「もちろん、あの子は私にとって大切な子よ。私たち全員の子供だと言っても過言でもない。でも、あの子にはこっちの世界は辛過ぎる。……精霊を形作るのはなにか、知ってるでしょ? 特にあの子は」

「人の信仰、でしたよね?」

 シルフィードの言っていた事を思い出しながら答える。

「そう。精霊を当然として、精霊に対して感謝の念を忘れない純粋な人間、それがこっちの世界にはほとんどいないの。もしこの世界で精霊が存在するとなったら、なにか別の形を取らないと不可能。でも、あの子はまだ生まれたばかりでその応用も出来ない。だから、置いて行くしかなかったんだ。リーンセラの事もあったしね」

 その言葉にウソはないのだろう。朝陽は自嘲するような笑みを浮かべた。

「そう、ですか。分かりました。あの子を想ってくれているだけで、十分です。帰ったら、伝えておきます」

「……うん、ありがとう」

 彼女ならばそう言うだろうと予想はしていた。それでも緊張していたのかホッと安堵の息を吐き、ユクレステは柔らかに笑う。

「ユクレさん……ワタシからも、お礼を言わせて下さい」

「お礼なんて……そんな大したもんじゃないですよ。お互いに情けないとこ見せて、腹割って話しただけですから」

「ふふ、そうですか。それでも、やはりありがとう、と。あの子が、いじっぱりなあの子が自分の胸の内を明かせるような人が現れて、ホッとしました。少し素直じゃない所がありますから、アリスちゃんは」

 シェルーリアはユクレステにソッと手を重ね、感謝の言葉を伝えた。特別な事をしたと言う認識の無いユクレステは照れくさそうに頬を掻いた。

 するとニヤリと朝陽が笑みを深め、

「でも、そっかー。良く考えればあの子も三百歳以上にはなってる訳だし、恋心が芽生えても可笑しくはないんだよね。それが人間で、しかも私の後継狙ってる人って言うのは……うーん、おねーさん運命感じちゃうな」

 からかうようにそう言った。

「いや、別に恋心関係ないでしょう。どこかでアサヒさんを重ねて見てるだけじゃないですか?」

「分からないよー? あの子昔から綺麗なものや可愛いものが好きだからね、キミも結構可愛げあるし、割とストライクなのかもよ?」

「可愛いて……アサヒさんに言われてもなぁ。実年齢、俺とたいして違わんでしょう?」

 ちなみにユクレステは現在十八歳と八ヶ月程。それに対して朝陽はと言うと。

「って言っても私も二十二だし、ユクレ君は十五、六でしょ?」

 彼女の言葉にピシリと固まった。震える声で反論する。

「い、いや、俺は十八なんですけど……もう四カ月すれば十九だし」

『えっ?』

「……えっ?」

 朝陽とシェルーリアが同時に声を上げ、思わずユクレステも同じ言葉を口にしてしまう。彼女達の顔には驚きが浮かんでおり、まじまじとユクレステを眺めた。

「十八、って……ホント!? うわ、てっきり十代中頃かと思ってたわ」

「ええ、本当に。……あ、ユクレさん、お若く見えるのですね」

 慌てて取り繕ったように言うシェルーリア。朝陽は終始へぇ、と感心したような声を上げている。

 確かに、ユクレステは同級生達と比べ少々童顔だ。そのため、今までも度々年齢より下に見られる事はあった。父であるフォレスは儚げな風貌ではあるが、背は高く成熟した容姿をしている。どうやらこの童顔は母方の家系らしい。

「……なんか納得いかないんですけど」

 そもそも年齢と外見が一致しないのは魔物で慣れているだろうに。そこまで驚かなくても良いだろう。

 内心思いはするが、口にはしないユクレステであった。


 ちなみに、対戦の結果はと言うと。

「ちょ、待てや!? なんでそんなハメ技……ギャー! 一撃必殺がクリーンヒット!?」

「ま、待てディーラ! 私の騎士がそんな悪魔っぽいキャラに負けるなんて許せな――あー!? 吹っ飛んだー!?」

「僕たちの勝ち、だね。ナイス、ミュウ」

「はいっ、ディーラさんもお上手でした」

「次私やりたーい! ほらほら鬼っ子くん、交代だよ交代! ふふふ、人魚族のゲームマスターと呼ばれていたマリンちゃんの実力、見せてあげるよ!」

 いつの間にかチーム戦に移行しており、ディーラ、ミュウチームの圧倒的勝利となっていた。

もう一つの小説を進めていたため、随分と遅くなってしまいました。よければそちらもよろしくお願いします!

次回はもう少し早めの更新を目指します!

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