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期待と失望

「戦争に負けたらこの国も隣国も終わり。

 戦争に勝ったらお前は隣国の王太子に輿入れ」


 彼は淡々と続ける。


 私は、言葉を失う。


「お前は、隣国の王太子のものになる」




 彼の言う事を、理解したくない。


 だって、隣国の王太子のものになんかなりたくない。そんな方法で、此処から出たい訳じゃない。




「そうなったら、俺はお前には会えない」




 彼以外は、嫌。




















「…どうして、今更。どうして、私なんかっ!」


 どうして、今更王族扱いするの?


 どうして、私を正妃に望むの?


 どうして、私を放っておいてくれないの?


 どうして、私と彼を引き離すの?


 どうして、どうして!























「ティーナ」


 耳を塞ぎ、錯乱する私を、彼が呼ぶ。彼が付けてくれた、私の名前。


「落ち着け」


 目の前が暗くなり、温もりに包まれる。


 優しい声が。甘い香りが。包み込んでくれる温もりが。撫でてくれる手が。


 彼の全てが、私を落ち着かせる。




 私には、何もなかった。趣味も、友達も、家族も。ただ、毎日を無為に過ごすだけ。


 変えてくれたのは、彼。


 なのに、今更。


 今更、王族だからと言う理由で、誰かに嫁がなければならないの?


 彼以外は嫌なのに。


 今まで私を王族として扱った事などないのに。


 私を、王族だと認めなかったくせに。


 何時かは、王族だと、家族だと、認めてもらえると思っていたのに。


 家族の温もりを知る事が出来ると思っていたのに。


 結局、そんなのは夢物語で。私は政治の駒でしかなくて。




「っ――――!」


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