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第三話 飛行艇のイベント

 飛行艇。

 金属の塊ともいえる機械。

 その機械はこのラスランの世界の中では異端に属する。オーパーツ。失われた遺産。

 飛行艇は今の時代のものではない。遥か昔の遺跡から発掘された。謎が多く、動力源に魔力が使われている以外分かっていない。

 しかし、操縦方法が簡単なため、発掘された飛行艇が使用されている。


 全長10メートル程度の大きさだが、中はそれ以上に広い。空間魔法によって広くなっているらしいが、これまた詳しいことは分かっていない。


「スゲェ……」


 アルタインは飛行艇を見てそう言い、飛行艇の中に入っても同じ事を言ったのだ。


「他に冒険者はいませんね」


 アリアは飛行艇の乗客を観察する。

 乗客は二人以外にもいるが、全員NPCキャラだと思われる。飛行艇に乗るだけあるので、NPCたちも金持ちだと分かる服装をしている。

 その中、質素なアルタインはかなり目立っていた。


「浮かんだけど、衝撃がない。スゲェー」


 アルタインは現実の飛行機とは異なる飛行艇を見て感激しているようであった。 


「特別イベントの発生は1%。何事もなければいいですけど」


「特別イベント?」


「飛行艇に乗ると発生するイベントです。イベントの種類も結構多いらしいので、全部は把握できていないとか……」


「そりゃあ、飛行艇に乗るにもお金が掛かるからなあ。イベントのために通いつめる物好きはあんまりいないだろう。で、どういうイベントが起こるんだ?」


「発生確率1%なので、期待しても……種類が多いですが、主に三系統に分かれるようです。飛行艇が魔物に襲われる。飛行艇内部に盗賊などの敵が現れる。飛行艇が墜落してしまい脱出などをする。前者二つは対処が楽ですが、後者は面倒らしいので遠慮したいです」


「へー、そういうイベントが起こるのか。まあ、どうせ起こらないよな。1%だし」


 アルタインはアリアから説明を受けると、肩をすくめた。

 どうせ、1%。そうそうイベントなんて発生……。


「動くなお前らっ! ここは我々闇の狩人、ダークパンサーが占拠した」


 どこにいたのか分からないが、剣や斧を持つ黒尽くめの集団が飛行艇の中に現れた。


「イベント発生ですね。これは、内部に敵が現れるイベント……闇の狩人。たしか、どこかでお尋ね者を捕まえろ的なクエストの目標です。世界観はやはり同一の様子ですね」


「マジか」


 アリアはいたって冷静だったが、アルタインは少なからず驚いていた。

 アリアのいっていた通り、闇の狩人、ダークパンサーは、討伐依頼でよく見かける裏組織の一つである。

 何度殲滅しても復活するので、密かに永遠の狩人(笑)と呼ばれていたりもする。


 一つ良かった点は、暗殺者の固有スキル偽装によって、二人はNPC化していた。

 よって、一目見ただけでは冒険者だと気付かれることはなく、盗賊たちも気付いていない様子である。


「取り合えず、制圧します。アルタイン……おやすみなさい」


「へっ?」


 アリアは美しい笑みをアルタインに送った。

 そして、懐からハープを取り出し、チリンと奏ではじめる。


『これから詠うのは、眠りし森の話』


 吟遊詩人の上位魔法。アリアのレベルなら、アリアの歌声は飛行艇全域に届く。


「そ、そこのお前何を……」


 盗賊たちもアリアの所業に気付くが、偽装によってそれが魔法だと気付くことはない。

 ハープを奏で、詠う美しいエルフの女性。その詠う光景は幻想的でどこか厳かであった。


『訪れるの 深き眠り。ララバイ』


 ハープの音とアリアの声が響く。

 無差別にかかる吟遊詩人の魔法。それは、アルタインにもかかる。

 アルタインのレベルが高かったのなら、抵抗可能だったかもしれないが、レベルが低いので他のNPC同様すぐに眠ってしまった。


 そして、飛行艇で立ち尽くすのはアリアのみとなる。


「あとは、盗賊の皆さんを縄で縛るだけですね」


 アリアはハープをしまい、にこやかにそういったのだ。

 残念ながら、その声を聞くものは誰もいなかったが。

どう見てもフラグでした。次回ブロードの話です。

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