第一話 アサシンギルド
「貴方もですか?」
そこで、アルタインは自分が一人ではないことに気付く。
「貴方もログアウトできないのですか?」
「……じゃあ、あんたもか?」
「はい……異世界トリップ? そういえば、昔こんなゲームがありましたね。オンラインゲームの世界に行ってしまうゲーム」
「そんな設定ありきたりだ……俺はアルタインだ。あんたは?」
「私はアリア。気を悪くしたら、すみません。私は暗殺者ではありませんが、同じような感じなので」
女性のフードが外される。綺麗な金髪に青い瞳、とがった耳。エルフという種族の特徴。ラスランでは、人間以外にもいくつかの種族を選ぶことができる。
特徴を挙げるならもう一つ、とても綺麗な少女であった。見た目の年齢は人間で言う十代半ば頃。その割に、落ち着いた口調は、寿命が長いエルフに合っている。十代中ごろの容姿なら実年齢は百歳以上だろう……勿論なかの人はただの人間で男か女かは置いとくが。
「同じようなもの?」
「私の職業は吟遊詩人です」
「吟遊詩人……あったなそんなもの」
アルタインの記憶に微かにある情報。
魔法使いに属する転職職業で……たしか、使い勝手の悪さはラスランナンバーワン。正式オープン前のベータ版のときから、地雷と判明している職業。
その悪名は暗殺者以上。プレイヤーもかなり少ない……そもそも、アルタインは初めて吟遊詩人を見た。
「それでは行きますよ」
「お、おいっ! どこに行くんだよ」
「情報を集めます。貴方も来ますねアルタイン」
アリアは命令口調でアルタインに言い、背を向ける。
何をどうして良いのか分からないアルタインは取り合えず、アリアの後を追うことにする。
「あんた冷静だな」
「……冷静が一番です」
人ごみを避け、裏道を駆ける二人。
大通りでは大きな怒声が聞こえ、あちらこちらで人々……アルタインとアリアのようなプレイヤーたちが混乱していることが伺える。
そんな中、冷静なアリアといることで、アルタインもどうにか心を静めることができた。
「屋根を通ります」
アリアは小さくそういい、跳躍をして一発で屋根に上がってしまう。
続けてアルタインも下位スキルである跳躍を使って屋根に上がった。
「魔法使い系にはなかったよな? 跳躍」
「跳躍ブーツ……マジックアイテムです」
アリアは自分のブーツを見せてネタ晴らしをする。
吟遊詩人は純粋な魔法使い系……後衛キャラなので、身体能力は高くない。
アリアはマジックアイテムで身体能力を上げていたのだ。
「……それって、結構高価だよな? あんたレベル結構高いのか?」
「あんたはやめてください。私の名前はアリアです。こちらの方が年上なので……そういう設定ですけど」
アリアは少し目を細めてアルタインを見ずにそう言ったのだ。
アルタインの言葉遣いが少し気になっているように見える。
「わ、悪い。俺の口調もそういう設定だ。そういうことにしといてくれ」
「59レベルです」
「はいっ!? 5、59レベルっ!? 何だそれ。廃人じゃん」
アリアは自分のレベルを告げると、アルタインは目を丸くした。
アルタインは15レベル。15レベルは転職可能レベルで、15レベルになるには100時間のプレイ時間を目安にしてもらえば良い。
だんだんとレベルを上げるために必要な時間は増え、廃人といわれる……一日中ネットゲームをしているような人たちのレベルは五十前後だと言われている。
その中で59レベル。きっと、日本サーバーの中でも指折りのプレイヤーだろう。
「地雷職で59レベル。あんたすげぇー」
「アリアです」
「……アリアスゲー」
「……こんなに高くなったのは理由が別にありますから。急ぎますよ」
器用に屋根を渡る二人。
アルタインは妙に興奮しながら、歩みを進める。
「やっぱいいなー。感激……」
「どうかなさいましたか?」
「い、いやー。こういう風に屋根の上を走るのが夢だったんだ。スタイリッシュに」
アリアはアルタインの言いたいことが良く分からず、首を傾げるだけだった。
「で、どこ向かってるのか?」
「行けば分かります。もうすぐ着くので」
アリアはそれ以上何も答えないので、アルタインは静かにアリアの後を追うことにする。
ラスランの都市の造りはかなり細かい。今のところ必要性のないように感じるほど広い。
しかし、生身で都市を歩くと、このぐらいの広さがあるとちょうどいいだろうっとアルタインは思ったのだ。
「ここです」
屋根に一角だけ開かれた場所がある。そもそも、屋根の上からしかいくことができないように仕組んでいるように思えた。
その場所を見て、アルタインの頭の中に一つの言葉が思い出される。
「……暗殺者ギルド」
「正解です。ここはアサシンギルド。貴方が所属するギルドです……入るかどうかは貴方次第ですが」
綺麗に着地し、小さく呟くアルタイン。
ギルド……職業の組合。そこに入ると、色々な恩恵を得られたりする。
そして、アルタインは暗殺者に転職後、この暗殺者ギルドを探そうと思っていた。
普通のギルドは表立って存在しているが、この暗殺者ギルドは表側になく隠れて存在している。
アサシン最初の仕事は暗殺者ギルドを探すことだとアルタインは心に決めていたのだ。
「どうしてあんたはここの場所を?」
「知り合いなんですよ。中に入ります。どうせ、一人しかいないと思いますが」
「勿論一人しかここにいない。同志は皆、忙しいからな」
別の男の声が聞こえてくる。
「アリア久しいな。そして、ようこそアルタイン。アサシンギルドへ」
白い民族衣装を着た大柄な男。日焼けした褐色の肌、表情はアサシンギルドにいるとは思えないほど良い笑顔を浮かべていた。
「私はバスラ……ここの団長をやらせてもらっている」
「っ!? し、失礼しました。マスター……すでに、名前を知られているとは光栄です」
アルタインはバスラに頭を下げて、手を組む。
「顔を上げなさい。我々は同志になろうとするものはすでに調べている。二週間ほど前から、君の報告を受けている。困難な試練を乗り越えたが、これからが大事だ。頑張りたまえ」
「はっ! 有難きお言葉です」
そんな二人のやり取りをアリアは冷ややかな表情で見ていた。
「アリア……そんな目で見ないでくれ。こういうロールなんだから」
「そうだ、そうだ」
「本題に入りたいのですが、いいでしょうか?」
「満足、満足……この現象だな。今現在ログインしている同志から情報を集めた……間違いなく我々はラスト・ランドの世界にいる」
バスラはマジメな顔になり、二人に告げた。
「ど、どうやって?」
「アルタイン。それは誰にも分からない。分かっているのはこれは、クエストだ。きっと、世界を救えば元に戻るだろうという落胆的な考えが生まれる」
「他には何かないのですが?」
「奥に行こう。茶の一つは出す」
二人はバスラの案内によって建物の中に入っていく。




