第1話
できました(^o^)/
「………んぅ……ふぁ……朝だ……」
窓から差し込む朝日の眩しさに目が覚めた僕………フォルティアイナ・ハルシオンはゆっくりと普通の女の子より華奢だとよくいわれる自分の体を起こす。
ゆっくりと手を伸ばすと日焼けした事のない白い肌をした細い腕が見える。
「んぅぅぅぅぅ……はぁ、眠いなぁ」
眠い目を擦りながら僕は伸びをして眠気を覚まそうとするが眠気はどうにも晴れなかった。
しかし朝早くから農作業をする父さんの為にも朝食とお弁当を作らなくてはならないから二度寝はできないのだ。
「…………あぅ~……眠いよぉ~」
仕方なく僕は寝ている間解いていた腰まである長い茶色の髪をいつも通りに三つ編みにしてフラフラと安定しない状態で階段を下りる。
僕の住む家は木造の二階建てで、一階に居間とキッチンが繋がった部屋とトイレに玄関。
二階には僕と父さんの部屋がそれぞれ一つずつあり、物置となっている空き部屋が一つあるだけだ。
階段を下りきった僕はいまだにフラつく足に力を込めながら一歩一歩キッチンに向かって着実に歩みを進めていく。
「……………あふぁ……」
あくびがどうにも止まらない。
でも、早く準備しないと父さんが起きて来ちゃうから……………
そう思いながらキッチンと居間隔てる扉を開くと
「………むぅ?フォルテか…………今日も早いな」
父さん…………ウォーレス・ハルシオンがその筋肉質の大きな体を少し猫背気味になりながら椅子に座り、農作業で使う道具を整備していた。
「…………おはよう父さん………今日は早いんだね」
僕はそんな父さんの姿を見ながらそう声をかける。
父さんが僕よりも早く起きているなんてかなりにも珍しい事だったのですっかり目が冴えてしまった。
「それじゃあ朝ご飯作るね?」
僕はそう言ってエプロンを身に付ける。
このエプロンは前に父さんが買ってくれたピンク色でフリルがたくさん付いたエプロンだ。
僕としてはかなり不本意なんだけど父さんを含む村の人達いわくかなり似合っているらしい。
この前の誕生日の時だって…………
「フォルテ…………誕生日プレゼントだ」
「え!?わぁ~!!ありがとう父さん!!」
そう言って父さんから渡された袋を開けてみた。
「お前に一番似合う服を選んできた」
父さんからすればそのプレゼントは僕が喜ぶような物であると自信があったみたいなんだけど……………
「………………………」
僕は中身を見て沈黙してしまった。
だって…………
「父さん……………なんで……………なんで誕生日プレゼントが女の子用の服………白いワンピースなんだよぉぉぉぉぉ!!」
僕は思わず天に向かってそう叫んでしまう。
しかし父さんは
「着てみろ…………似合うぞフォルテ」
そう言って満足そう頷いていた。
なんて事があったばかりだしね…………
そんなこんなで今日もまた一日が始まる。
料理を作っている時に僕と父さんの間で会話する事は無いけれど、父さんが僕の為に刃こぼれした包丁や壊れかけの鍋をいつの間にか直したり買ってきてくれるのだ。
そんな事を一度も教えた事無いのにね♪
「……………フォルテ……今日からしばらく外に出るな」
「え!?なんで!?」
それは朝食を食べている際にいきなり父さんに言われたことだった。
父さんは眼帯のつけていない方の目で僕を見つめると
「…………軍が………"バイアス帝国軍"が近々この村を通過するらしい」
そう重々しく口を開いてそう言う。
僕はその言葉に驚き、体中の血の気が引いたような気がした。
"バイアス帝国"
第34代皇帝 ジャンハイド・ルミナ・バイアスを頂点とする世界を三分している三大強国の内の一つ。
国政の方針としては完全実力主義及び富国強兵の路線を敷いている為に、強引な徴兵制を行っている国なのだ。
しかもこの世界において男はとても貴重な存在である。
なぜなら長期に渡る戦争によって男達は戦場に駆り出されて死んでしまったからなのだ
故に男が多い国ほど栄えていると言われるほど男はかなり重要視されている。
その為、父さんが僕を女の子のように育てたのはそういった意味を込めてらしい。
僕からすればかなり迷惑な話なんだけどね…………
話は逸れたけどもし、僕が軍に見つかり男だとバレたら確実に連れ去られる可能性がある。
どうやら父さんはそれを警戒してそう言っているみたいだ。
「どうしても外に出たいなら服を着替えてからにするんだ………絶対だぞ」
父さんは額にシワを寄せながら心配そうに僕にそう言ってくる。
「………………分かった」
そういう理由なら仕方ない…………
そう思いながら僕は残った朝食を食べる。
話している間に冷めてしまった料理はどこか味気無く、美味しくなかった。
そうしてる間に父さんは食べ終わり道具を抱えてドアの方に向かって歩き
「フォルテ…………今日はライスの収穫する日だから遅くなる」
そう一言僕に言って農作業しに出て行った。
「……………いってらっしゃい……」
僕は先程父さんから聞いた話のせいで若干落ち込みながらそう言って父さんを見送る。
「はぁ………また女装しなきゃいけないんだね…………」
その呟きは僕一人しかいない居間の中で小さく消えていった。
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