奪られたくない
***BL*** 妹は、いつも僕の大事な人を奪うんだ。 ハッピーエンド
僕の妹は可愛い。
そして、いつも僕の好きな人を奪って行く。
*****
僕の初めての友達は、僕の家に遊びに来た日、妹を見るなり
「可愛い!」
と言って、妹から離れなくなった。
妹は本当に可愛い。ベビーカーに乗ってるだけなのに、知らない人にも
「可愛いわね」
と言われた位。
*****
初恋は小学生の低学年。1番仲の良い友達。いつも一緒に過ごし、登下校も放課後も一緒だった。
雨の日、僕は家で遊ぼうと誘った。
「おじゃまします」
と友達が玄関で言うと、母さんの後ろからピョコリと妹が顔を出す。幼稚園から帰ったばかりで、制服を着ていた。
「可愛い!」
妹を褒められて嬉しかった。
「みゆうもいっしょにあそぶ?」
と聞くと友達はすごく喜んだ。
妹も友達の事が気に入ったらしい。
僕の部屋で三人で遊ぶ。妹は友達にべったりとくっ付き、友達も妹を気に掛けた。
僕が話し掛けても妹を優先した。
夕焼けチャイムが鳴り、友達が帰る時
「みゆうちゃん、バイバイ」
と手を振って帰った。僕の名前は呼んでくれない。
次の日の朝、友達が僕を迎えに来た。
インターフォンを押し、誰かお休みかな?と思っていたら友達だった。
「迎えに来たよ」
いつもより少し早くて、僕はまだ準備が出来て無かった。
妹が幼稚園の制服で出迎える。
「みゆうちゃん、おはよう」
と挨拶をする声が聞こえた。二人で何かを話している。
「ごめんね、おまたせ」
と靴を履き、玄関を出ようとすると妹は友達に抱っこをせがみ、ハグをしてから家を出た。
「みゆうちゃん、可愛いね!」
友達は妹にメロメロだった。学校に着くまで、ずっと妹の事を聞かれた。
彼とは進級して、クラスが離れてから疎遠になった。正直僕はホッとした。
*****
小学6年生の時、隣の席になった背の高い子を好きになった。
その頃、すでに二歳下の妹は学校で有名人だった。
多分、校内で1番可愛いと思う。
僕が好きになった子は、小学生の低学年から塾に通い、ちょっとズレてる感じの子。だから、僕の妹を知らない。そこも僕から見たらポイントが高かった。
「お兄ちゃん!」
友達と帰っていると、後ろから声を掛けられる。
妹だ。
僕は隣にいた友達を見る。
ああ、ダメだ。彼は妹を見て、びっくりしている。
「可愛い、、、」
僕の恋は終わった。
*****
中学生の時、部活の先輩が好きだった。と、言っても好きの手前。良い人だな、、、と思ってたんだ。
その頃、妹は小学校の五年生。中学でも可愛いと評判だった。
僕の周りには、妹を紹介して欲しいヤツ等が集まる。
先輩は、僕を見つけると声を掛けてくれるし、妹の話しは全然しない。
優しくて、格好良くって、年上で、、、。
体育祭の時、妹は友達と見に来ていた。
案の定、数人の男子に囲まれている。
「お兄ちゃん!」
先輩と二人で歩いていると、妹に呼ばれた。妹は小走りで近寄り、先輩に挨拶した。
「こんにちは!兄がお世話になってます!」
ふはっ!
先輩が笑った。
「しっかりした挨拶!可愛いなぁ!」
そう言って僕の肩を抱いた。
「次のリレー、アンカーで走るから応援して!」
「はいっ!お兄ちゃんのお友達だから応援します!」
「先輩な。二個上」
「ごっ、ごめんなさい!」
妹が赤面して謝る。
「俺、若く見られたよ」
と、肩を抱いたまま言われた。
僕は愛想笑いしか出来ない。
はは、、、。
先輩は卒業しても、時間があれば部室に顔を出していた。
僕達が引退するまでそれは続いていた。
先輩が遊びに来るのが嬉しかった。
その頃には先輩の事が好きになってたんだ。
受験が終わり、後輩達が送別会を開いてくれた日。妹が校門で待っていた。
僕は、珍しいなと思った。
違う、、、僕を迎えに来た訳じゃない。妹は僕の後ろに向かって手を振っていた。
「心優!」
先輩と妹は、いつの間にか付き合っていた。
僕はまた失恋した。
**********
高校は家から遠い所にした。妹の噂は、他の中学に通う生徒の間でも有名だった。
塾に通う様になり、他の学校の生徒とも交流があったから。
だから、僕は妹の噂が無い所に行きたかった。
夏過ぎの文化祭で、妹は先輩と二人で来た。母さんが教えたんだ、、、。
先輩は高校三年生、妹は中学二年。まるで保護者と子供に見える。
来る事を知らなかった僕は、無視をした。
妹の周りはザワザワして、先輩が横を歩いていても
「やば、可愛い」
「隣にいるの兄弟かな?」
「恋人だろ。ほら、手を繋いでる」
「めちゃくちゃ可愛い」
と聞こえて来た。
「お兄ちゃん!」
僕は隠れた。
「神宮寺!」
先輩に名前で呼ばれ、心優が妹だとバレた。
「神宮寺の妹?」
「え?そうなの?紹介して欲しい」
ヒソヒソ、ザワザワ聞こえて来る。
「神宮寺!当番だろっ!」
同じクラスの友達に呼ばれて、妹と先輩に気付かないフリをした。
*****
「お前の妹、可愛いじゃん」
クラスの皆んなに言われた。
「彼氏がいるよ」
「そんなん、関係無いよ」
「ワンチャンあるかも知れないだろ?」
「紹介はしないよ。妹の彼氏、僕の先輩なんだ。トラブルはごめんだよ」
*****
高校三年生で同じクラスになった倉田くんは、一年生の時も同じクラスだった。
あの頃は少し話す位。今は休み時間を一緒に過ごしている。
妹は地元の高校に入学した。自転車で通える距離。良かった。電車通学の僕は、同じ電車に乗りたく無かったから。
*****
高校三年生になり、勉強不足だった僕は、倉田くんと一緒に勉強をする様になった。
夏休みには学校に通い、三年生に開放された自習室に一日中いる。
昼御飯には持って来た弁当を、二人で食べる。普段は食事禁止だけど、夏休みの間は自習室も飲食可能になる。
時間を知らすチャイムも鳴るから、都度休憩を入れられる。たまに先生が顔を出して
「分からない事あったら聞いていいぞ」
と勉強を見てくれる。
学習室を使うメンバーは、8月に入ると固定されて来た。自然に仲良くなって、生徒同士教えあったりする。
僕の高校三年生の夏は、勉強ばかりだったけど、充実していて楽しかった。
*****
夏休み最後の日。倉田くんと待ち合わせをして映画に行く事になった。
「夏休みの終わりに、映画に行こうよ」
と誘ってくれたんだ。すごく、嬉しかった。
倉田くんは背が高くて、勉強を教えるのが上手い。僕が分からないでいると、気にして声を掛けてくれる。
一緒にいて、気を使わなくて楽だった。
映画館は、僕の家と学校の真ん中位の距離にある。電車で七つ離れた駅。
9時過ぎに待ち合わせて、映画のチケットを買い、ファストフード店で時間を潰した。
映画の後、ショッピングモールを見て回る。
「お兄ちゃん!」
ギクっとした。振り返ると妹と先輩がいた。
「朝早くから出掛けたから、珍しいなって思ってたんだ。お友達?」
「あ、、、うん」
「紹介して!」
「同じクラスの倉田くん。えっと、妹の心優と、彼氏の高須先輩です」
「こんにちは」
高須先輩はちょっと機嫌が悪かった。、、、何で?
「ねえ!ご飯食べた?一緒に食べようよ!」
「、、、」
僕は嫌だった、、、。今度は、倉田くんを取られてしまう、、、。でも、はっきり嫌とは言えない。
「心優、お兄さんの邪魔したらダメだよ」
「え?どうして?良いじゃ無い、皆んな一緒の方が楽しいよ」
まだ、高校一年生の心優は物怖じしなかった。高須先輩は倉田くんを警戒したんだ。
「早くフードコート行こうよ」
「ハンバーグ食べるんじゃ無かったの?」
高須先輩が言う。
「だって、お兄ちゃん達高校生だから、フードコートの方が良いでしょ?」
にっこり笑う。そりゃあ、フードコートの方が財布に優しいけど、、、。
心優は、フードコートで四人席を見つけると、さっさと座り
「お兄ちゃんと恭弥さんは先に買って来なよ」
と言う。
「たまにはゆっくり話したいんじゃない?」
と親切そうに笑う。
高須先輩が
「心優は?一緒に買いに行こうよ」
と誘っても
「私、ポテトとコーラで良いよ」
立ち上がる気配も見せない。
僕は諦めて、何を食べようか考える。
「倉田さん、座って?学校でのお兄ちゃんの事、聞かせて下さい」
「え、、、っと、、、」
倉田くんは困っているみたいだった。
「僕が先に買って来るよ。待ってて」
と声を掛けて歩き出す。椅子を引く音が聞こえた。
倉田くんも、妹の事が好きになるんだろうな、、、
なんて考えた。
「神宮寺」
僕は高須先輩に呼ばれた。
「はい?」
先輩を見ると、妹と倉田くんを見ている。
二人は仲良く話しをしている様だった。
楽しい気持ちがどこかに行ってしまう。
「神宮寺は何食べる?」
「そうですね、、、さっき映画館でポップコーン食べたし、あんまりお腹は空いて無いんです」
「じゃ、心優がポテトとコーラって言ってたから、ハンバーガーで良いか、、、」
「はい」
僕達は、広いフードコートの一番右端まで歩いて行った。
*****
僕はコーラだけ買った。
倉田くんと妹の元に戻ると、倉田くんが立ち上がり、妹も立ち上がる。
二人で何かを買いに行った。高須先輩が僕の正面に座った。
妹と倉田くんが歩くと、みんなが振り向いた。身長の高い彼。
「あの二人、お似合いだな、、、」
僕は高須先輩を見た。
「先輩とだってお似合いですよ?」
本当だ。本気でそう思う。
だから、僕は高須先輩を諦めた。妹と先輩が付き合ってると知った時、ああ、僕じゃあダメなんだなって、早く忘れようって思ったんだ。
「ありがとな」
高須先輩は無感情で言った。視線が二人を捉えて離さない。
妹が倉田くんに触れる。
嫌だ、、、。
次の展開が目に見える。倉田くんに妹の連絡先を聞かれ、きっと二人はどんどん仲良くなって行くんだ。
**********
私は小さな頃から、お兄ちゃんの友達が欲しくなった。理由は分からない。
一番最初は、まだ幼稚園の時。
お兄ちゃんが連れて来た友達が格好良くて、優しくて、私を可愛がってくれた。
小学生になってからもそうだった。
今、付き合っている恭弥さんもお兄ちゃんと仲が良かった。
お兄ちゃんの横に立つ人は、みんな格好良い。
恭弥さんも格好良いんだけど、四つも年上だと「アレも駄目、コレも駄目」と意外とうるさいんだよね。子供扱いして、塾の帰りが遅いと「女の子なんだから気を付けて」とお父さんみたい。
遠くの大学に行けば良かったのに、、、。別れ話は面倒だもの。
でも、倉田さんが気になる、、、。
私は倉田さんに着いて行った。ドーナツ屋さんに並ぶ。
トレーとトングを持ち、彼がドーナツを一つ取ってから声を掛ける。
「倉田さん、私の分もお願いします。お金払いますから」
一々並び直すのが面倒だから、と言う風に。
「どれが良いの?」
聞いてくれた。優しい。
「えっと、、、」
私の分をトレーに取り、他に二つ選んでいた。レジでコーヒーを頼み、お金を払う。
「現金で細かいのが無いので、スマートフォンで送金しても良いですか?」
私達は少し離れた場所で、SNSに送る為に連絡先を交換し、すぐに支払った。
「別に良いのに」
と言ってくれたけど
「お金の事だから」
微笑んだ。
嘘、連絡先を交換したかったの。
倉田さんが前を歩く、お兄ちゃんと恭弥さんが何か話している。
初めて二人を見た時も、あんな雰囲気だった。
恭弥さんが優しい顔をして、お兄ちゃんが恥ずかしそうに笑う。
私は多分、お兄ちゃんが好きになる人を好きになるんだ。
お兄ちゃんはまだ、誰かと付き合った事が無い筈。もし、恋人が出来たら、私は、お兄ちゃんの恋人を奪ってしまうかも、、、。
「お兄ちゃんと恭弥さんって、昔から仲が良いんですよね。今も何だか付き合ってるみたい。お兄ちゃん、恭弥さんの事、好きなのかな、、、」
わざと倉田さんに言う。彼が二人を見つめる。
倉田さん、私を見て?私の方が可愛いよ?
倉田さんがお兄ちゃんを好きなら好きな程、私は叶わぬ恋をしているみたいで、更に彼を好きになる。
倉田さんがお兄ちゃんの横に座る。私は恭弥さんの隣。
お兄ちゃんも恭弥さんも、彼がドーナツを四つも買って来てびっくりしている。
倉田さんは私の分のドーナツを、紙で包んで差し出した。
「ありがとう」
ジッと瞳を見詰める。彼はすぐ、視線を外らす。
「神宮寺、どれが良い?」
「え。僕?」
「コーラだけだから、一つ選んで」
「じゃ、じゃあ、、、」
お兄ちゃんは生クリームが入っていて、砂糖の掛かったドーナツを選ぶ。
「それだと思った」
と言って笑う。
「ありがと」
私は二人を見て、倉田さんが欲しくなった。お兄ちゃんを見る彼の瞳が、、、優しかったから。
**********
映画を見に行ってから、神宮寺が少し変だった。
いつも休み時間は俺の席に来て、一緒に勉強したり話しをするのに、机に伏せって寝ている。
最近疲れているのかな?と思っていたけど、どうしたんだろう、、、。
「神宮寺?」
ピクリと反応した。
「大丈夫?」
「、、、大丈夫、、、」
「そっか、、、」
神宮寺の隣の席のヤツが休みだから、椅子を借りて座る。
あんなに、仲が良かったのに、急に一緒に過ごす時間が減った。
映画を見る前はいつもの神宮寺だった。映画を見てから変わった気がする。
俺、何かしたかな?
「この間の映画、つまらなかった?」
むくりと起きた。
「そんな事無いよ?」
「そう?映画の後から様子が変だから、、、。俺、何か嫌な事したかな?」
神宮寺は首を振った。
「最近、家でも勉強頑張ってるから、疲れてるのかも、、、」
「そうなんだ、、、」
もう、高校三年生だもんな、、、。
「次の選択の授業、一緒に行こう」
いつもはわざわざ約束しないのに、聞いてみた。
「あー、、、先に行ってて、ちょっと用事があるから」
「待ってるよ」
選択の授業は、唯一自由席だから隣に座れるんだ。
「先に行って良いよ」
拒否られた?
「じゃあ、席を取っておくよ」
神宮寺は少し考える様に黙り
「ありがとう」
と笑った。
**********
夏休みが終わると、文化祭がある。
毎年、妹は高須先輩と来ていた、、、今年も二人で来るんだろうか、、、。
僕が文化祭の日程を教えなくても、妹は母さんに聞くか、学校のホームページを見て調べるんだろう。
倉田くんも妹が来るのを、楽しみにしてると思う。
*****
「文化祭、一緒に回ろうよ」
倉田くんに誘われた。僕といる方が、妹に会えるチャンスが増えるからかな?
「うん、時間が合ったらね」
時間が合わなければ、一緒に回らないよ?
「あのさ、、、妹さん、彼氏とまだ付き合ってるよね?」
え?、、、
「何で?」そんな事聞くの?
「いや、ちょっと気になって」
別れていたら、付き合いたいのかな?
「いつもと変わらないから、別れて無いと思うけど、、、」
「そっか、、、」
何だか、残念そうだね、、、
**********
あの日、神宮寺の妹のドーナツを一緒に買った。
お金を送金するからと、SNSの連絡先を交換して、すぐにお金は送金された。
それはそれで、ちゃんとした子なんだなって感じだったけど、度々メッセージが届く様になってしまった。
神宮寺の妹だから、無下にも出来ず困っている。まだ彼氏と付き合っているなら、尚更滅入る。
神宮寺に相談しようと思ったけど、彼氏がいるのに俺と連絡を取っているなんて、知りたく無いかも、、、。そう考えたら、相談出来なくなった。
神宮寺の妹は何故、俺にメッセージを送るんだろう、、、。
文化祭当日、神宮寺と全然時間が被らなかった。やっと、同じ時間に休憩に入れると思ったら、彼はもういなかった。
俺は彼を探しながら、あちこち回った。
「倉田さんっ!」
急に腕を組まれて、ギョッとした。神宮寺の妹だった。
「来てたんだ。彼氏は?」
俺はそっと腕を離す。
「今日は一人で来ました」
ニコッと笑う。この子が何を考えているのか、ちょっと分からない。
「お兄ちゃんは?一緒じゃないんですか?」
「うん、タイミングが合わなくて」
「じゃ!心優と回って下さい!倉田さんと一緒なら、お兄ちゃん、直ぐに見つかりそうだし!それに、男の人に声掛けられて、全然回れないの。ね?」
まあ、良いけど、、、
「彼氏はどうしたの?」
「別れました」
「え?」
「あの日の後、別れちゃったんです」
「そうなんだ、、、大変だったね」
「四つも離れてると、私が子供っぽく見えたんだと思います。、、、つまんなかったんじゃ無いかな、、、」
そんな風には見えなかったけど、、、。
「ほらほら、時間、無くなっちゃいますよ!」
俺達は二人で、神宮寺を探してながら回った。
結局、神宮寺は見つからなかった。廊下は人がごった返し、各教室の中も見たけど分からなかった。
**********
ああ、ほらね。
倉田くんが妹と一緒にいる。
やっぱり彼も妹を好きになったんだ。
こうなるのが嫌だった、、、。でも、こうなる気がしていた。
僕は、隠れる様に他の廊下を選び、自分のクラスに戻った。
「休憩行った?」
と聞かれて
「うん」
と答える。
「俺、休憩まだ取れてないんだ、代わって貰っても良いかな?」
「良いよ。ゆっくり行って来なよ」
僕は、特に見に行きたい所も無かったから、担当を代わった。
*****
僕達のクラスは、簡単なゲームが出来る。
輪投げ、射的、ボーリング、ダーツをやって、最後にお菓子を貰えた。僕はお菓子を渡す係だった。
教室の前が騒ついてる。僕が外を見ると妹と倉田くんがいた。
二人が教室に入って来ると、誰かが「神宮寺の妹じゃん」と囁いた。去年も一昨年も注目を集めたから、覚えてたんだ。
「え?倉田と付き合ってるの?」
「マジか」
と話してる。
二人が端からゲームをして行く。仲が良くてイヤだった。妹は倉田くんとの距離が近い。
「あれ?神宮寺、休憩は?」
ゲームを終えた二人は、僕の前に立った。倉田くんはびっくりした様に言った。
「まだ休憩行ってない人がいたから、代わった」
「じゃあ、俺も入るよ」
と言うと、妹に景品を渡して僕の横に立つ。
「神宮寺の妹さん、気を付けて帰ってね」
にっこり手を振る。妹は、「え、、、?」と言う顔をして立ち尽くした。
「あ、何点でしたか?」
と妹の後ろの人に声を掛ける倉田くん。妹は静かに教室を出て行った。
倉田くんは、預かった紙を計算してお菓子を渡す。
それから仕事が忙しくなって、僕達はゆっくり話す時間も無かった。
夕方、1日目が終わり、思った以上に来客が多くて、翌日の景品が足りなくなりそうだった。
「コレ以外に在庫あるの?」
と誰かが言い、文化祭実行委員が在庫を確認した。数は予定数を大幅に超えていて、どう見ても足りなかった。
「俺と神宮寺で買いに行くよ」
倉田くんが言い出した。
景品と言っても駄菓子だから、スーパーやコンビニでも買える。倉田くんは実行委員の子と数量を決め、代替え案も出して貰いながらお金を預かる。
「神宮寺、行こう」
僕は倉田くんを見た。何で僕なんだろう、、、。
、、、ああ、妹の事、何か話したいのか、、、
成程、納得、、、。
僕は諦めて、買い物に付き合った。
*****
商品は明日、学校に持って行けば良い。
僕達は、一番近い商業施設に行った。駄菓子屋があるし、スーパーも入ってるから。
「神宮寺の妹、彼氏と別れたんだって?」
「知らない」
「え?そうなの?君の妹が言ってたよ」
「そうなんだ」
「本当は彼氏と来る予定だったって」
「ふぅ〜ん、、、」
僕達は一階にあるスーパーの、お菓子コーナーに行く。駄菓子を買い物カゴに入れた。数量は、指定された数に足りなかった。一つのお店で買うのが申し訳無くて、駄菓子屋に行く。
僕はただ、倉田くんの後ろを着いて行くだけ。
僕がいない方が動きやすいと思うけど、、、。
駄菓子の数が揃い、僕達の仕事は終わった。
「神宮寺、お腹空かない?」
「、、、」
「ちょっと休憩して行こう」
倉田くんがドーナツ屋に並んだ。
「どれが良い?」
「、、、」
「前に食べたヤツ?」
僕は「うん」と頷いた。
「飲み物はコーラ?」
もう一度頷く。
倉田くんがスマートフォンで支払ってくれた。
一番端の窓際、人が居ない場所を選んだ。
後ろに背の高い観葉植物が置いてあって、ちょっと人目を阻んでくれる。
平日の金曜日、夕方、人は疎だった。
「食べよう」
と、トレーを真ん中に置く。
「お金、幾らだった?」
「いいよ、ご馳走する。今日、無理矢理付き合って貰ったから」
「でも、、、」
「その代わり、どうして急に素っ気無くなったのか教えて」
「、、、」
「食べな」
倉田くんが言う。僕はパクッとドーナツを食べた。
涙が滲む。
疲れた身体に糖分はヤバい、、、。
口を開いたら涙が溢れそうで、ひたすらドーナツを食べた。
僕だって、倉田くんと仲良くしたいんだ、、、。
グラスのコーラを半分飲んで
「僕の妹、可愛いでしょ?」
と聞いた。
**********
妹?何で今、妹の話になるんだろう、、、?
俺は静かに神宮寺が話すのを待った。
「僕の妹はね、いつも僕の大事な友達を盗るんだ」
彼はグラスをクルクル回す。
「始めは小学生の時。一番仲が良くて、いつも遊んでいた大好きな友達。家で遊ぼうって誘ったら、妹が可愛くて、それからその友達は妹の話しばかりする様になった。僕が小学校の高学年で好きになった人は、妹に会った瞬間、やっぱり妹を好きになった、、、。高須先輩も、、、気が付いたら二人は付き合ってたんだ」
俺はチラリと神宮寺を見た。唇をキュッと結び、何かを考えている。
「僕はもう、妹の居ない所に行きたかった。妹は何処に居ても可愛いって言われたし、友達は妹に紹介して貰いたくて仕方が無いみたいだった、、、。だから、偏差値が高くて遠い高校にしたんだ」
神宮寺はコーラを飲んだ。
「、、、君にも会って欲しくなかった。映画を観た日、どうして妹がいるんだろうってびっくりしたんだ、、、。君が妹と一緒にいるのを見て、、、もう妹の事、好きになったんだろうなって思った、、、。連絡先も交換してるみたいだったし、、、」
ん、、、?
「文化祭も二人で回ってたから、連絡を取り合ってるんでしょ?。、、、心優、高須先輩と別れたんだね、、、」
そう言えば、高須さんの事どう思ってるか、聞きたかったんだ。
「あの、、、さ。高須さんの事、神宮寺はどう思ってたの?」
「、、、先輩は、二歳年上で、優しかった。妹の事も聞いて来なかったし、気の合う頼れる先輩」
「好きだった?」
「うん。でも、気が付いたら妹と付き合ってた」
「忘れられない、、、?」
「一年の文化祭で、高須先輩と妹が一緒に来た時は、凄く嫌だった。来て欲しく無いから教えなかったのに、来たんだ。心優が僕の妹だって。みんなに知られるのが嫌だったし、先輩と二人で文化祭に来た事も嫌だった、、、。二年生の時は、思わず隠れてたよ、、、」
「高須さんの事、まだ好きなの?」
神宮寺は首を振った。、、、そうかな?
映画を観た日、、、二人は何だか、良い感じだったけど、、、。
「君が妹に夢中になっても、仕方が無いって思ってる。妹は可愛いし、もう、連絡先も交換してるからさ。、、、ただ、君も僕から離れて行くなら、僕の方から離れた方が楽かな、、、って、、、」
「あの日、、、映画を観た日、、、神宮寺の妹が、俺の側にいるのが不思議だった。だって、彼氏がいるのに、変だよね?ドーナツを買いに行って、君の妹も一つ食べたいって言うから、纏めて買ったんだ。その後連絡先を交換して、スマートフォンから送金して貰った。連絡先は直ぐに消そうとしたけど、どうせメッセージとか来ないと思ったし、神宮寺の妹だったから、何と無く拒否設定出来なかったんだ」
「、、、送金する為?」
「細かいお金が無いからって」
二人のグラスは空になっていた。
「あのさ、、、申し訳無いんだけど、神宮寺の妹の連絡、拒否して良い?」
「え?」
「結構メッセージ来るんだけど、、、ちょっと、、、困ってるんだよね、、、」
「困ってる?」
「だって、二個も下の女の子からメッセージ貰ってもさ、、、返事とかどうやって書いたら良いか分からないし、、、結構、面倒、、、」
「え?そうなの?みんな妹と知り合いになりたいのに、、、」
「、、、えっと、、、俺がどんな気持ちで映画誘ったか、考えた事ある?」
「夏休み頑張って勉強したから、息抜き?」
「、、、違ーう!デートに誘ったんだよ!」
いやね、、、前から神宮寺が少し鈍感だとは思っていたよ?、、、。でもさ、ちっとも!全く!1ミリも!俺の気持ちに気付いてい無かったとは、、、。
「あ、、、ぇ、、、え?、、、ええ?!」
「俺ね、、、一年の時から神宮寺が好きだったの」
「えええぇぇぇ、、、?!」
**********
ぎゃーっ!待って!待って!待って!そんな事、急に言わないでー!
僕は思わず耳を塞いで、下を向いた。
「神宮寺?」
倉田くんが僕の腕を掴んで、耳から手を外す。きっと耳まで赤い、、、。
「あの、、、全然気が付かなかった、、、」
「そりゃ、そうだよ。隠してたんだ」
「ご、ごめ、、、ごめんなさい、、、」
倉田くんは、僕の頭をポンポンと叩いて
「もう一杯コーラ買って来るよ」
と席を立った。
窓際で一人になった僕、、、。
倉田くんが僕の事好きだって言ってくれた。
一年生の時からだって、、、。
顔の火照りが収まらない。
「はい」
僕の目の前にコーラを置いた。
「落ち着いた?」
「うん」
「だからね、俺は神宮寺の妹に興味が無いの」
「うん、、、」
「明日の文化祭は一緒に回れる?」
「うん、一緒に回りたい。ありがとう」
倉田くんは僕の背中を摩ってくれた。
僕は彼のこう言う優しい所が、大好きだった。
*****
次の日、倉田くんは僕に合わせて休憩を取った。
何度も目を合わせ、時間を気にしてくれた。
今日は流石に妹も来ないと思う。
僕達は、ゆっくり端から端まで教室を回った。二人で歩きながら、偶にあの告白の返事をしないといけないのかな?って考えた、、、。
でも、いつ、どうやって?
好きと言われたけど、付き合いたいとは言われなかった、、、。
**********
一年生の時、神宮寺と同じクラスだった。
凄く仲が良いとか、犬猿の仲って訳でも無い。普通の同級生。
文化祭の日、神宮寺が当番なのに戻って来なかった。
五分位遅れて現れた彼は、嫌な事でもあったのか、少し俯き気味だった。
「神宮寺!当番だろっ!」
思わずキツく叫んだ。神宮寺は俺の顔を見て、ホッとした顔をした。
その顔が可愛かった。
不安そうな顔が一気に綻び
「ごめんね、お待たせ!」
と言って笑った。
神宮寺は綺麗な顔で、彼を包む周りの空気が柔らかい。人より時間の流れがゆっくりしている様で、ホンワカしている。
感情的に怒るとか、他人の悪口を言わない良い人、、、。それが俺の持つ、彼の印象。
二年でクラスが離れても、がっかりするとか淋しいとは思わなかったけど、廊下ですれ違えば目が追い掛けるし、何か行事が有れば探してしまう。
三年生で同じクラスになった時、最後の年を一緒に過ごせる事が嬉しくて、「神宮寺が好きなんだ」って自覚した。それから、出来るだけ神宮寺の側を選び、いつも一緒にいる様にした。
ま、好きになってくれるかは、分からなかったけど、、、。
夏前には二人で行動する事も増えた。成績が心配だからと一緒に勉強する様になり、夏休み、三年生の為に自習室を開放すると聞いて、神宮寺を誘った。
みんながみんな、自習室を使う訳では無い。塾に通っている人もいれば、自宅近くの図書館で勉強する人もいる。でも、俺達は毎日学校に通った。
お盆の時期は部活も休みで、学校も入れない。
平日だけ朝から夕方まで使えた。
夏の間に更に仲良くなって、俺は夏休みの最後に神宮寺を映画に誘った。
断られるとは思わなかったし、1日一緒に遊べるのが楽しみだった。
それなのに、映画の後、急に彼の態度が変わった。
彼の妹と、高須さんを紹介して貰い、俺が買い物をしている間、神宮寺と高須さんが良い雰囲気になっていた。
神宮寺の妹が
「お兄ちゃんと恭弥さんって、昔から仲が良いんですよね。今も何だか付き合ってるみたい。お兄ちゃん、恭弥さんの事、好きなのかな、、、」
と言った時、そうなのかな?って思って、心配になった。
神宮寺の好きな人?
神宮寺に好きな人がいてもおかしく無いのに、考えた事が無かった、、、。
高須さんの事、どう思ってるのか聞いたら、優しくて頼りになる先輩って言ってたけど、やっぱり今も好きなんじゃ無いかな?
**********
文化祭が終わり、二人で校門を出ると高須先輩からメッセージが届いた。
「あ、、、」
もう何年もメッセージが来なかった人の名前が表示されて、声が出た、、、。
「どうした?」
「えっと、、、高須先輩からメッセージが来た」
「、、、」
「心優と別れたって、、、」
「それで?」
「 ? 、、、それだけ」
僕達はバス停まで歩いて、バスを待った。
「高須さんって格好良いよね」
「まぁ、、、」
「年上だし、頼れるし、、、」
「 ??? 」
「、、、高須さんに告白されたら付き合う?」
「告白なんてされないよ」
バスが来た。遠くに見える。
「仲、良かったんだよね?」
「うん」
「、、、」
僕の身体がビクッと弾けた。
「電話、、、鳴ってる」
今まで電話なんて一度も来なかったのに、、、。
倉田くんがバス停から離れた。バスは、僕達が乗らないと分かり、停車する事無く通り過ぎて行く。
「電話、出ないの?」
僕は倉田くんの顔を見た。正直、出たく無い。妹の事で電話して来たんだ。
「出なよ、、、」
「、、、うん」
通話ボタンに触れる。高須先輩の声で
「神宮寺?」
と呼ばれた。スピーカーになっているらしい。解除の仕方が分からなくて、そのまま返事をした。
「はい」
「俺、心優と別れたよ、、、」
「、、、」
「聞いてる?」
「はい」
「急に別れて欲しいって言われて、理由を聞いても泣いてばかりで、、、。神宮寺、何か知らない?」
「、、、分かりません」
「、、、この間会った倉田くん、元気?」
「え?」
「心優、倉田くんと付き合ってるんじゃない?」
「付き合ってませんっ!
「わっ!!」
いきなり倉田くんが大きな声を出した。
「え?倉田くん、いるの?」
「はい」
「、、、そっか、、、神宮寺、今度会えない?」
僕はチラリと倉田くんを見る。、、、怒ってる?
「えっと、、、えっと、、、」
頭がぐるぐるする。
「ごめんなさいっ!」
通話を切ってしまった。
「じ、神宮寺?」
「だって、、、倉田くん、機嫌が悪い、、、」
「、、、」
倉田くんは、自分の口元を隠して
「ごめん」
と謝った。
「俺が口出す事じゃ無いって分かってるんだけど、、、あの人に会って欲しく無かった。ごめん」
「、、、あのさ、、、駅まで歩かない?」
駅まで歩いたら30分位かな、、、。
バス通りから外れた道を歩いた。
僕から誘ったのに、何を話したら良いか分からなかった。
ヤキモチ、、、?
さっきのはヤキモチなのかな?
「次は体育祭だね」
「え?」
「学校のイベント」
「体育祭か、、、あんまり好きじゃないな。マラソン大会よりは良いけど」
「マラソン大会は走るだけだもんね。神宮寺は、体育祭、何に出たい?」
「うーん、、、綱引きとか」
ぶっ!
「何で?何で笑うの?」
「だって、クラスで一番体重軽そうだから!」
むぅ、、、。
「運動全般苦手なんだよ、、、」
「でも、短距離は得意そうだよ?」
「人並みだよ。100メートル走は全員参加だもんね」
「騎馬戦の上は?」
「嫌だよ、、、。アレって結構高いよ?」
「神宮寺が綱引きなら、俺も綱引きにしようかな」
そう言って倉田くんが笑う。
ただ、それだけなのに、僕はちょっと嬉しくなる。
*****
部屋のドアが鳴った。
「はい」
と言うと
「お兄ちゃん、今、良い?」
と妹の声がした。
「良いよ」
返事をしたら、ドアがそっと開いた。
「どうしたの?」
「あのさ、、、倉田さん、元気?」
「元気だと思うけど」
「メッセージに返事が無いから、具合悪いのかなって」
「え?連絡先交換したの?」
知ってるのに、知らないフリをした。
「うん、前に会った時」
「今日、高須先輩から心優と別れたってメッセージ来たけど、大丈夫?」
「、、、」
妹の機嫌が悪くなった。
「お兄ちゃん、倉田さんって彼女いるかな?」
「いないと思うけど、、、」
「好きな人は?」
、、、僕?、、、
「倉田さん、格好良いよね」
うん、、、格好良い、、、
「お兄ちゃん、私と倉田さんが付き合える様に協力してよ」
「み、心優なら僕の手助けなんて要らないでしょ?」
「でも、、、倉田さん、全然返事くれないから」
「つっ!疲れてるんじゃ無い?!受験生だからさ!」
「そうかな、、、」
「そうだよ。模試もあるし、あんまり勉強の邪魔しない方が良いんじゃ無い?」
「模試って大変?」
「そうだね、外部に行ったり、校内で受けるのもあるんだ。大学受験の目安になるから、、、大切だよね」
僕は自分で言っておきながら、身に染みていた。
僕も倉田くんの勉強を邪魔しない様にしないと、、、。
*****
高須先輩から頻繁にメッセージが届く。
妹と連絡が取れないみたいだった。
そうは言われても、僕にはどうしようも無い。僕自身受験生で、人の恋愛に時間を割いてる暇は無いんだ。
え、、、。
「高須先輩、何やってるんですか?」
マンションの側に立つ電柱の横、少し影になっている場所に人が立っていた。
嫌だな、、、と思いながら近付くと先輩だった。
「神宮寺、、、心優、元気?」
僕はため息が出そうになった。このまま立ち話も何だかな、、、。
「僕、荷物置いて来ますから、ちょっと話しましょうか?」
「ごめん、、、」
「此処で待ってて下さい」
荷物を置きに家に帰った。
妹はもう家にいた。お風呂に入っているみたいで、僕は母さんに声を掛けてから家を出た。
先輩は、さっきの場所にちゃんといた。
「公園で良いですか?」
僕は近くの公園まで歩く。
途中のコンビニでお握りとジュースを買う。先輩の分も買わないといけないかな、、、と悩んでいたら
「俺も何か買うよ」
と買い物カゴを取った。良かった、人に奢る程、財布にお金は入っていない。
買った物を受け取り、コンビニの斜め前にある公園に行く。
ベンチに座り、お握りを開ける。カサカサ言う音で、更にお腹が空いて来た。
パクリと齧り付く。
「上手、、、」
先輩もお握りを食べた。
「上手い、、、」
「疲れてるみたいですね」
と言うと、先輩は
「そうだな、、、」
と笑う。
「妹の事ですよね?」
「うん。心優、倉田くんと付き合ってるらしい、、、」
「えっ?!」
「本人から聞いたから間違いない」
「そ、、、そうなんだ」
「俺の何がいけなかったのかな、、、」
「、、、」
「好きだったのに、、、」
「、、、」
「倉田くんに会わなければ、、、」
「、、、」
「上手く行ってたと思うけど、勘違いだったみたいだ」
こう言う時の励まし方が分からない。
頑張れって変だし、そんな事無いも違う。
倉田くんと付き合ってるのは嘘だと思うけど、妹にその気が無いなら、わざわざ否定しない方が良いかも知れない。
「神宮寺は彼女いるの?」
「いませんよ」
「好きな人は?」
倉田くんを思い出す。
「、、、いるんだ」
「多分、、、」
「多分って、、、」
「自分でもよく分からなくて。友達の延長みたいで、、、。好きだと思うんですけど」
「相手にヤキモチ妬いた事ある?」
「いえ」
アレはヤキモチじゃ無いと思う。
僕達は暫くそうやって、ただ話しをして過ごした。高須先輩も少し落ち着いたのか、家に帰って行った。
僕のスマートフォンには、倉田くんからメッセージが来ていた。
電話を掛けてみる。
「神宮寺?」
あ、この声が好きだな、、、。
「倉田くん、今、高須先輩と会ってたんだけど」
「え?、、、」
「倉田くん、心優と付き合ってるの?」
「なっ?、何で?!付き合って無いよ!ちゃんと拒否設定したんだからっ!」
「本当?先輩が心優から聞いたって言ってたよ?」
「無い無い無い!俺が好きなのは神宮寺だからね?!」
「うん、僕も倉田くんの事好きだよ、、、」
顔が赤くなる、、、
「え、、、。ちょ、もう一回言って!」
「僕も倉田くんの事好きだよ、、、。だから、妹と浮気しないでね」
「しない!しないよ!」
「うん。信じてる」
「明日!一緒に学校行こう!駅の改札で待ってるから!」
「うん、分かった。改札だね。じゃ、明日ね」
僕は通話を切ってから、一人で口元を歪ませた。
本当は、もっとちゃんと自分の気持ちと向き合いたかったけど、倉田くんに好きって言ったら、自分の気持ちに素直になれた。
「好きなのかな、、、」って言う気持ちが、「好きだな」、に変わって、今、ちょっと浮かれている。
「ただいま」
と家に入ると、妹が台所から顔を出して
「何処に行ってたの?」
と聞いて来た。
**********
体育祭の練習とは言え、高校生になると予行練習位だった。大縄とかは、まあ、放課後に練習したけど、綱引きは綱の置かれた位置と入場と退場の流れの確認。
本気で勝ちに行くクラスはネットで、持ち手の順番とか綱を引く時の体勢とか調べてるらしいけど、うちのクラスは適当だった。
体育祭当日、二つ前の競技で呼び出しが掛かり、召集される。俺は神宮寺と離れない、
あの告白の電話から、俺達はいつもと変わらない様で、いつも以上に一緒にいる。側から見たら仲の良い友達。それで良い。
地面に座り、前に並ぶ神宮寺と話しをする。
一つ前の競技が始まり、俺の方を向いていた彼も前を向いた。
小さな背中。肩が丸まってる、、、。襟足の髪がちょっと長い。俺はその髪に触れた。
神宮寺の身体がビクッと弾き、真っ赤な顔をして振り向いた。
「何してんの?!」
俺は顔を近付けて、周りに聞こえない様に
「だって、可愛いんだもん」
と言った。
「かっ!」
更に顔を赤くする神宮寺。ああ、抱き締めたいなぁ、、、。我慢するけど。
前の競技が終わり、入場門から入る。一回戦目の俺達は、そのまま綱の横に立つ。
合図で綱を持つ。交互になる筈が、神宮寺が前にいた。あれ?
神宮寺は気付いていない。まぁ、このままでも良いかと、合図と同時に綱を引く。
イヤ、引き辛いな。足を踏ん張る場所が無い。交互だったら余裕があったんだ。神宮寺の側にいたくて近付いたのも悪かった。
神宮寺は足を滑らせ、後ろに倒れそうになっていた。綱に体重を掛けるから、めちゃくちゃ重い。
パァーンッ!
と言う合図で力を緩める。神宮寺が転びそうになるのを庇いそのまま後ろに倒れ込んだ。うん、役得。
「倉田くん、ごめん」
と起きあがろうとした神宮寺の腹に、つい手を回し抱き締める。
すぐにニ回戦目が始まり、神宮寺はまた俺の目の前で綱を引いた。
三回戦を終え、一度も勝てなかった俺達は
掌を擦りながら退場した。
神宮寺は後ろを振り向きながら
「面白かったね」
と笑う。
*****
「倉田!彼女来てたよ!」
と言われた。
彼女なら横にいるけど、、、。と神宮寺を見ると、表情が強張っている。
「心優だ、、、」
「えー、、、。どうする?」
神宮寺の唇がキュッと締まる。
「逃げちゃおうか」
俺の顔を見た。
「どうせ、約束して無いんでしょ?」
「うん」
「行こう、行こう。当分出番も無いし、休憩しようよ」
俺達は、財布を取りに行くフリをして校舎に入った。
ロッカーから財布を取り出し、ジュースを買いに行く。財布をしまいに戻りながら、階段の窓からグランドを見る。
日陰に人集りが出来ていて、真ん中に女の子がいる。流石に父兄は此処まで来れない。
俺達はジュースを飲みながら、ゆっくり競技を眺めた。
神宮寺が横にいる。それだけで、何だか嬉しかった。
「勉強捗ってる?」
「んー、まぁまぁ」
「また、一緒に勉強しようよ」
手摺に寄り掛かりながら話す。肩が触れ合う。
「良いよ」
「明日から自習室行かない?」
「良いね」
「キスしても良い?」
「い、、、?!」
神宮寺の顔を見る。思った以上に近かった。
「ダメ?」
スルリと腰に手を回す。
「良いけど、、、」
「けど?」
「グランドから見えるんじゃ無い?」
俺は、神宮寺の腰を引き、死角に連れ込むとキスをした。
「此処なら良い?」
「き、、、聞かないで、、、」
下を向きながら、耳まで真っ赤にする。
顎クイって変な言い方だな、、、
と思いながら、そっと上を向かせる。もう一度キスをする。
遠くから足音が聞こえて来る。
俺は、彼の額にキスをして
「好きなのは、神宮寺だけだから」
と言って、階段を降りる。
「僕もっ!」
少し遅れて、追い掛ける様に神宮寺も降りて来た。
「僕も、倉田くんだけが好きだよ!」
人のモノを奪ってはいけません。




