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静寂が音になるまで  作者: 山さん
四畳半と群青
9/10

変わらない日、変わった音

読んでくださりありがとうございます。

今回は、翔琉の日常が少しだけ変わって見える日です。

いつも通りの景色の中に、“音の違い”が生まれていきます。

朝の駅前。

いつもより人の声が耳に残る。

誰かが笑ってる声や、踏切の音、

カフェのドアが開いてベルが鳴る音まで、

全部が妙にクリアに聞こえた。


「なんかいいことあった?」

**多田仁ただ・じん**が笑いながら肩を叩く。

「え?」

「顔がちょっと違う。寝不足か?」

「いや、まあ……」

ごまかすように笑って自販機のコーヒーを買う。

缶を開けたときの“プシュッ”という音が、

小さく響いた。


教室の窓際、

ノートを取る手が止まる。

昨日、エミが言った言葉が

ふと頭をよぎった。


“音があるってこと自体が、生きてる証拠。”


何気なくポケットを探ると、

折れた名刺の角が指に触れた。

胸の奥が少し温かくなる。


昼休み、

**湯浅広大ゆあさ・こうだい**が「また金貸して」と笑いながら言った。

「今度は三千でいいから」

「……先の分、まだ返ってきてないけど」

「あー、悪い悪い! 次こそ返す」

そう言われても、結局財布を開いてしまう自分がいた。

でも、前よりモヤモヤしなかった。

なんでだろう。

昨日の夜、エミが言った“音量を変えながら生きてる”って言葉が

妙に浮かんで、少しだけ笑えた。


バイトのあと、

ラーメン屋の裏口で煙草を吸う。

遠くの道路から車の音。

ビルの間を抜ける風の音。

どれも昨日と同じなのに、

聞こえ方が違った。


“音があるってことは、生きてる証拠。”


その言葉がまた心の中で鳴った。

そして気づいた。

たぶん俺は、もう一度あの場所に行きたくなってる。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

第八話では、翔琉の中で“音の聞こえ方”が少し変わりました。

エミの言葉が、彼の日常をゆっくりと塗り替え始めます。

次回、彼は再びBAR orbitへ向かいます。

そして、少しだけ踏み込んだ会話を交わすことになります。

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