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人類アンチ種族神 《復讐の合間に》

ーートラックの運転手を望んだ形で始末した。

ーーだが、不思議と満たされた感情は少なかった。


神は玉座でヴァロンを待ちながら考えていた。そこへヴァロンがやってきた。


重い扉を軽々と開けている姿を見ると、人間の姿に近いこのガーゴイルも怪物なのだと思い出す。


「お呼びでしょうか」


ヴァロンが少し怯えたようにうつ向いたまま語りかけ来た。


ーーああ、ヴァロンとはエーテルで通話できるところを直接呼び出したので、何か叱責でもあるのかと

ーー勘違いしているのか。


「ああ、運転手の件はよくやってくれた。数日たってしまったが、まずは直接ねぎらっておこうと思ってな」


ヴァロンの顔がわかりやすく緩む。


「いえいえ、神の命令は我々の存在意義そのものです。褒めていただく必要はございません」


ーーそんな言葉を嬉しそうに言われると、本当に感情のないガーゴイルなのかと思ってしまうな


「うむ。ではもう一つの要件だ。次の標的について、プランを聞きたい」


ヴァロンの顔は再び仕事モードに戻る


「はい。弁護士はポイント227の私設のシェルターに籠城しています。すでに同胞が何匹か突入を試みていますが抵抗され消滅したようです。

 2日前からは完全に扉を閉めています。この扉が頑丈らしく同胞では破壊できないため放置されているようです。」


ーーガーゴイルを倒している?俺は簡単には信じられなかった。雑に作っているとはいえ、体長3mの鋼の肉体を持つ怪物は人間が到底勝てる相手ではない。



「少し調べてみるか」


ーー俺は神。たかだか一人の人間とその周囲を感知することなど少し意識を向ければ造作もない。


「地上3階地下5階の耐熱耐衝撃コンクリートを3重構造にしたシェルターか。ご丁寧に普通のビルとしての偽装まで施している」


ーーこれはドローンや迫撃砲どころではなく、核爆弾まで想定した国家的な建造物。なぜこんなところに。


その答えはすぐにわかった。政治家が2名地下5階に監禁されている。この建造物は彼らの所有物で、どさくさに紛れて入り込んで彼らのSPを買収して乗っ取ったようだ。


ーー入り込んだのなら乗っ取る必要があるのか?俺はさらに意識を向ける。すると、地下2階に彼の妻、娘、愛人が二人、愛人の息子が一人いることに気が付いた。


「なるほど。自分の家族もシェルターに入れるように、施設を奪ったのか」


ーー意識を戻そうとしたときに、シェルターの入り口に重なり合うように死んでいる人々を見つけた。監禁されている政治家の家族のようだ。老婆や幼い子もいる。

ーー死体の額に銃弾?ガーゴイルではなく人に殺された……?。


「邪魔者は追い出したのか。相変わらずクズ野郎で感動するよ」


改めて興味を持った俺は、弁護士の生活を詳しく調べてみた。SPは357マグナムで武装しているが、首に小型の爆弾をつけている。弁護士に逆らえば殺されるらしい。

シェルターで王を気取る弁護士は、家族のほかにも逃げ遅れた一般人を「奴隷」として連れ込んでいるらしい。若い女と体格のいい男が何人か建物を巡回している。

建物の地上部分はSPと一般人の居住スペース。地下1階は応接室と倉庫 兼 拷問部屋だった。ストレス解消に、連れ込んだ一般人をここで痛めつけているようだ。

若い女がいる理由はそういうことだった。


「ガーゴイルが倒されているのは357マグナムを複数被弾したせいだな。素人が撃てば肩を脱臼するような銃だ。至近距離で撃たれればガーゴイルの運動機能を止めることも可能だろう」


俺がヴァロンに答えをおしえてやると、ヴァロンは目線をこちらに向けて言う


「強い銃ですか。電子部品がないのであればエーテルの影響も受けにくいですし、納得です。では、飽和攻撃で弾切れに追い込みますか?」


即座に立案する。やはり知性が高い個体は違う。


「いや、ベルガンに任せよう。所詮は銃だ。銃は、まず相手を認識し、狙いを定め、引き金を引き、弾丸が飛翔して、相手に着弾して初めて効果を発揮する。ベルガンの身体能力なら

 銃口を向けられた時点、平たく言えば狙いをつけている段階でかわしながら距離を詰められるだろう。接近してしまえば人間なんて熟したトマトみたいなもんさ」


俺の言葉に視線を落とヴァロンは数秒ほど検証していた。神の言葉であろうと問題がないか確認するなんてやはり賢い。


「神、その場合は入り口の破壊はどうしましょう。核を想定した扉となるとベルガンでも苦戦するかと、飽和作戦なら物量で破壊できると思いますが」


ーー素晴らしい。問題点を整理して忖度(そんたく)のない意見を述べる。俺はトラックの運転手の死よりも、この創造物(ヴァロン)の出来の良さのほうが嬉しさを実感していた。


「問題ない。実はベルガンには面白い能力を持たせている。名をファイアバレットという」


「火の玉ですか?」


「そうだ。ガーゴイルの炎息ではない。周囲のエーテルを吸収し体内で高温の物質を生成し、吐き出す能力だ。生成に時間がかかるのが難点だが、相手が籠城して出てこないのなら時間はいくらでもある

 威力は小型の隕石の衝突と同等。シェルターごと吹き飛ばさないように手加減させなければならないほどだ」


「では、すぐに実行に移します。」


執務室へ戻ろうとするベルガンに俺は少しひらめいた。


「まて、ここで指揮をとれ、俺も少し遊んでやろう」


即座にサーチとベルガンにヴァロンから命令が飛んだ


<<目標2、ポイント227で籠城中。人間は強力な銃で武装している。サーチは上空から索敵。ベルガンはファイアバレットで入り口を破壊し侵入せよ。>>

<<ベルガンへ補足、籠城している施設ごと吹き飛ばさないよう、威力は調整せよ。また銃の射線上にはいるな>>


ーーさて、第2幕の始まりだ。


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