人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑮_1/5_舞浜へ》
この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。
大種族神が判決を終えたころ、防雷は東京湾を抜けエーテル圏を離脱していた。
主砲2門を失ったものの、エンジンはダメージを受けておらずクシャルボコスと並走する形で何とか生き延びていた。
やがて無線が回復すると、篠原は安堵した表情も見せず、埼玉の国有シェルターに設置されたR連隊本部に無線を入れる。
表情には出ていないが、無線を握る力に彼女の焦りを感じさせる。
「こちら防雷。R連隊本部、応答を乞う。大仲大臣!プランの状況を教えて下さい!」
しかし、応じる者はいない。
足立が目線を下げながら、静かに状況を分析する。
「本部の全チャンネル、どれも応答なし。この無線は千葉にも、埼玉全域に届いているはずなんだが。本部を移動したとしても応答はあっていい。」
「これはもう……。くそ!俺たちが眠れる竜を起こしてしまったせいだ!」
それを聞いた仲原は、一歩前に出ると、目線を篠原に合わせこれを否定する。
「隊長。今回の作戦は防衛大臣勅命であります。作戦としても有効でした。しかし、竜は想定をはるかに超えていました。これは隊長の責ではありません。」
それを聞いた篠原は、仲原の視線に威嚇で答えると
「では誰の責任だと?私ですかぁ?私が竜を想定したプランを作らなかったからですかぁ?くだらないですねぇ。今は情報の収集が最優先ですぅ。
責任とか後悔とか怒りとかぁ、それは後でやっといてくださぁい」
その言葉に反射的に応戦しようとした仲原を、篠原は遮って無線のチャンネルを変える。AI篠原に声を変更すると大仲へのホットラインチャンネルを叩く。
これを見た足立は察した。
「本部が機能していない!壊滅か退避か……大仲大臣、無事でいてくれ!」
「ザザザザ・・・・」
無線のノイズから声が聞こえてくる。
「こちらは、防衛大臣代行、津田です。手短にお名前とご用件をお願いします」
無線の後ろで自衛隊らしき人々が、何かを誘導したり設営しているような命令・金属音が聞こえてくる。
「津田議員。篠原です。防雷は主力火器90%以上を損失。現在東京湾を離脱しクシャルボコスと北上中です。大仲大臣は千葉ですか?」
「……ああ、君か。そうだ。君のプラン通りに舞浜へ竜の誘導作戦中だ!もう舞浜についているころだろう。すまんが避難民の対応で手いっぱいだ、そちらは足立、いなければ艦長の判断で動いてくれ」
言葉だけ残し、忙しそうに無線は切れた。篠原はチャンネル切り替えクシャルボコスのリーク大佐に連絡する。
「兄弟。舞浜に要救助者がいる。火力が欲しい、一緒に来てくれないか」
即答だった。
「キョウダーイ。それはノーだ。同盟国のギムは果たしたハズでーす」
だが篠原も表情を変えることはない。想定済みといった面持ちだ。
「確かに。だが要救助者は要人です。それもかなりのVIPです。自衛隊のDBから秘匿兵器の情報を消せるかもしれませんよ?」
「ハハハハッ。魅力的な提案だが、やはりノーです。一度公になった情報はすでに無価値でーす。ドラゴン退治とは釣り合いませーん」
それも篠原は淡々と進める。
「つまりタラメアはこれ以上関わらないと。そういえば、白い竜は神奈川へ向かいました。神奈川の民間人の被害を避けつつ撃退するとなると、人の少ない広い土地が必要です。心当たりはありませんか?」
リークが答える前に篠原はたたみかける。
「ああ、たしか神災直後に早々に逃げ出した同盟国の基地がありましたね。最低限の兵はいるようですが民間人ではありませんし、そこへ誘導しましょうか。あの竜は兵器を率先して破壊するようなので、AP-22レーダー。220億円、DD-20,YA-20等の陸戦兵器。
各20億円、ぜーんぶこわされそうですがぁ。関わらないのですから仕方ないですよねぇ。ねぇ兄弟?」
「……。同盟国に対する脅迫か?…オイキョウダイ。オシオキが必要か?」
声のトーンが1つ下がった大佐の言葉に
「いえいえ、自国の民間人を守るのは義務ですので。しかし、同盟国が命を懸けて要人救護に協力してくれるのであれば、恩義に応じて別の候補地を探します。損害金額2000億円以上の決断です。どうする兄弟?」
無線の向こう側で何かを投げつける音が聞こえ、荒々しい返答が返ってきた。
「篠原!キサマッ。5分まて!」
「3分待ちましょう」
ブツリと切れた無線。容易に激昂するリークを想像し、足立と仲原は顔を見合わせた。
「なんであんなに煽るんですか!」
仲原が苛立ちを隠せない。
「えへ!だってリークっちはー、沸点低いでしょー。冷静に考えてぇ半壊の防雷と空母、フリゲート艦だけでぇ竜なんて戦えないですよぉ。だ・か・ら、ちょっと興奮させてぇ、他の海兵が冷静な意見を言いにくくしておきましたぁ」
「では?意図的に?」
仲原の質問を無視して、舞浜への航行ルートを篠原が確認していると、無線がなる。
「いいだろう!クシャルボコスおよび護衛艦は、同盟国の要人救助に加勢する。デカイ見返りがなければ、防雷は不慮の事故で沈む覚悟をシロ!」
一方的に無線がきれると、護衛艦の副砲が防雷に照準を合わせつつも、進路を舞浜に合わせたのだった。




