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人類アンチ種族神  作者: 緑茶
人類アンチ種族神V
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人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント⑫_後編》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

艦長が絞るような声で発言する。


「これはもう艦を放棄するしかないのか。脱出艇も出せないが。エンジンが生きているうちに太平洋のど真ん中でUFBを乗せたままガス欠。これが最善ですかね」


太平洋。この言葉が篠原に刺さる。恐怖でいっぱいだった思考に、ほほの痛みとは別の何かが見える。


ーー神奈川が失敗した場合のプラン。


その思考が走ると篠原の目に力が戻る。


「そうです。太平洋ぉ!そうですぅ!そうですぅ!勝てます!勝てますよぉぉ!」


突然いつもの篠原にもどり驚く一同。


篠原は急いで通信機を取る。これはクシャルボコスとつながっているものだ。


「聞こえますか兄弟」


篠原の呼びかけに応じたのは、撤退したはずのリークだった。


「オソイデスネー マチクタビレマシター ジュンビデキテマス カウント60 ソノゴ 30 オッケー?」


篠原は「ありがとう」と一礼すると、艦長に依頼する。


「60秒以内に防雷をデスランドに向けてください」


瀕死の防雷は一度後退すると、大きく舵を切り、船体をデスランドへ向ける。60秒後、防雷の上に灼熱の花が咲く。


クシャルボコスの焼夷弾だ。花は防雷に取りついてたUFBを次々に溶かしていく。


篠原はいつもの調子で足立に頼む。


「足立たいちょー!30秒後にぃ。可能限りデスランドへ主砲をおねがいしまぁす!」


急な出来事に驚く足立。


「主砲?おいおい立ち直りが速すぎだろ」


無駄口を聞き流し仲原がすぐに動く。自席に戻ると指示を出す。


「使用可能な主砲は射角をUFBの要塞へ向け!20秒後に一斉連射。弾がなくなるまで撃ちまくれ!」


20秒後、クシャルボコスの護衛艦の艦砲射撃がデスランドを揺らす。それに合わせるように防雷の主砲が火を吹いた。


守るもののいないデスランドは瞬く間に砲弾の雨を受ける。いたるところで着弾による爆発が発生し、燃え上がる。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


--僅か1分前のデスランド



ヴァロンが勝ったと油断した瞬間、鉛の船は「まだやれる」と言わんがごとく、歪んで旋回できない主砲を船体ごと回すことでデスランドへ再び砲塔を向ける。


落ち着いてヴァロンは取りついた兵に砲身の破壊を命じる。


その時、あの灼熱の花が、デスランドではなく鉛の船の上空で花開いた。灼熱の花びらが取りついた兵を霧散させていく。


これで1500をほぼ失ったヴァロンは、不敵な笑みを漏らす。


そして、少し離れた位置にいる兵を動員しようとしたとき、強い衝撃がデスランドを襲う。


ーー何事だ!


即座に索敵を開始する。すると、鉛の船の4km後方にタラメアのフリゲート艦を発見する。


「空母の護衛艦か!」


盤外から現れた伏兵に、思考を傾ける。だが、その思考は結果を出さなかった。


防雷の主砲がヴァロンのいる執務室を直撃した。激しい衝撃で廊下に吹き飛ぶヴァロン。すると眼前には、激しい砲撃損傷する城が目に入る。


俯瞰で物を見ていたヴァロンの手の届く範囲は、すでに破壊されていたのだ。


ヴァロンは急いでサーチとベルガンの回収へ向かう。2人とも意識はない。直撃すれば消えてしまう。


硝煙の匂いがデスランドが標的となっていることをヴァロンに告げる。


2人を回収し神の元へ急ぐヴァロン。だが、その後ろに防雷の弾丸が迫る。


一瞬世界が輝いた。サーチのシールドとは異次元の薄く美しいシールドがヴァロン、サーチ、ベルガンを守った。神である。


神は砲撃でヴァロンが傷ついたことを知り駆けつけたのだ。


シールドの中は、驚くほど静寂に満ちていた。何度も砲弾の雨がシールドに触れる。だが砲弾はシールドに触れた瞬間に高熱に達し、赤く染まりドロリと溶け落ちる。シールド内に匂いも煙も入ってこない。衝突した音も衝撃もすべてがかき消され、まるで無音の映画をみているような錯覚に落ちる。


しかし、助けに来る道中で何度か被弾したのだろう。神自身に傷も何もないが、服には黒く焦げたあとが見える。


ヴァロンは神の姿を確認すると、翼の力が抜け、そのまま二人を抱えて仰向けに倒れた。


神のはじっとその様子を見ていた。不思議な感覚だった。この三体は特殊個体。手間をかけたことは事実。だが、それ以上の情はない。ハズだった。


だが、傷ついた3体を見ていると神の中の何かが、次第に熱を帯びていく。


ーーこんな傷は一瞬で治せる。熱くなるなよ俺…


そう言い聞かせる。だが、先ほどまで無駄話をしていた臣下が、地面に伏している状況を見ていると、その熱は冷めることはなく、次第に融点まで登っていく。


神の中にある人の記憶、その中でも自分の大切な何かを壊された記憶が、冷静になろうとする神の精神を強制的に怒りへといざなっていく。


ーーそうだった。人間達は常にそうだ。俺から大切なものを奪う。

ーー大丈夫。今回は失わない。俺は神。もう無力ではない。

ーーだが失わなければいいのか?人間はいつも理不尽に大切なもの傷つける。


神と人の思考が交錯し、神の意識が人間の感情に押し負けていく。

神の周囲で圧縮されたエーテルがパチパチと音を立ててはじけ、一瞬だけ激しく発光する。

やがて発光の間隔が短くなり、数が増える。


「うあああああああああああああああ!!!!!」


ついに人間の感情が神を完全に飲み込み、神は怒りに満たされる。


眼下に横たわる3体の体を宙に浮かせ、瞬く間に再生させる。だがそれでは終わらない。


神から生成され大量のエーテルが洪水のように3体のコアに流れ込む。


ヴァロンが察した。


「神よ!静まり給え!!神よ!あなたは人間の種族神です!!神よ!!」


それにベルガンも続く


「これはダメです!神よ!俺はこんな方法で強くなりたいわけじゃない!神よ!」


サーチは言葉は発しない。しかしサーチの感覚共有が強い悲しみと恐怖を伝播した。


やがて三体は黒・赤・白のエーテルの巨大な球体に包まれた。


それは、大神災の始まりを意味していた。


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