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人類アンチ種族神  作者: 緑茶
人類アンチ種族神V
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人類アンチ種族神Ⅴ《ターニングポイント③》

この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは一切関係ありません。

突如UFB研究所に現れた大国タラメアのリーク大佐。恫喝とも取れる情報開示要求に、篠原は応じ、大型モニターにはUFBの情報が映し出された。


AI画像の偽篠原の指示で、「山口」と偽名を使った本物の篠原が、3時間で外部に保存しないと画像が消えてしまう特殊なデジカメをリーク大佐に渡す。


「そのデジカメは研究所用のものです。記録画像は3時間で自動消去されます。モニター情報を撮影したら、手早く本国へ送信されるとよいでしょう」


映し出されたUFBの情報を見て大仲は驚いた。


それは、篠原がその変人たる才能を過分に発揮した詳細のデータではなく、一般的な議員に見せるために作成した表面上の情報であった。


脚力一つとっても、本来は「瞬発力・持久力・機敏性・柔軟性・跳躍力・反転性能・翼との連携機構・最高速度」など細かに分析されていた。 しかし、開示された情報は「脚力・人間の2倍~3倍」これだけである。


しかも、この情報自体も王や女王と言った特異個体には一切言及しておらず、相手の知るはずのない情報は一切出さない。しかし、相手が望んでいる情報は最低限出す。 こんな細かな情報統制は簡単にできるものではなく、タラメアの強行を篠原は「可能性」としてあらかじめ想定していた証拠だった。


リーク大佐が一通り撮り終えると、天井のモニターに映し出されたAI篠原に問いかける。


「おや? R連隊との交戦記録がありませんね? これは困りました。現代兵器との戦力差は外せない情報でーす。なぁ兄弟。隠し事はやめてもらえんか?」


山口に扮した篠原は、誰にも気づかれないように白衣のポケットに手を忍ばせた。指先にあるたった一つのボタンを、カチリと押す。


するとAI篠原が、待ってましたとばかりに答える。


「では次のページに切り替えます。前のページには戻れません。10秒後に切り替えます」


リーク大佐は舐めるように画面をみると、軽くうなずき、最初のページの撮り漏れがないことを確認する。


ページが変わると大佐の表情が一変した。


それは先ほどの「薄い情報」とは対照的な「濃い情報の渦」だった。


「車両101、左側面装甲破損、破損規模12cm、このダメージによる機動力への損壊ナシ、乗務員への被害ナシ」など車両単位に全損壊箇所が事細かに記されていた。


足立と篠原はすぐに気が付いた。「これは嘘だ。ブラックボックスにもこんな詳細な情報は残らない。しかも大破してブラックボックスも回収していない車両についても詳細に記載されている」


仲原三佐が足立に耳打ちした。


「あの変人、さすがですね。残っている車両については正しい報告。大破して確認のしようがない車両のデータはデタラメです」


足立も小声で返す。


「ああ、バレようのないウソを真実に混ぜる。心理的な毒ってことか。怖い怖い…」


仲原三佐もそれに返す。


「ロングレンジレールガン。しれっと『射程不足で支援不能』って書いてありますね。大嘘じゃないですか」


二人とも含み笑いが止まらない。


それに気が付かないリーク大佐は満足げに声を上げる。「ほうほう。対地対空戦闘車両の機銃で多くのUFBを掃討。戦車砲では20体まとめて! いやぁ頼もしい性能だなぁ兄弟!」


しかし笑みはすぐに消え、鋭い眼光がAI篠原に向けられる。


「なぁ兄弟。ちょっと聞きたいんだが‥‥‥これだけ戦っておきながら、なぜR連隊は私有シェルターの救出を断念した? 目と鼻の先まで行ったんだろ?」


タラメアの頭脳。タラメア情報部の大佐は伊達じゃない。情報から戦況を想定し、すぐさま不自然な部分に着目する。


沈黙するAI篠原。実はこのAI篠原は、侵入したリーク大佐に対して即興で作られたAIである。事前に用意していた資料を順に表示することや、決められたセリフを順番に話すことはできても、質問に応答することはできない。


篠原はポケットの中のボタンから指を離し、じっと様子を伺う。これ以上の操作はボロが出る。


「どうした兄弟。無視すんなよぉ。おぃ。なぁ」


口調が荒れるリーク大佐。これをみた大仲が口火を開く。


「それは私の判断です。理解しにくい事象ですので納得できないのはわかります。まず、補給です。大破した車両に補給車も含まれます。これにより弾薬数の懸念がありました。つまり弾薬の不足が想定されました。そして、報道にもありましたが王や女王と呼ばれる強個体。これらの排除に多くのリソースを割きました。自衛隊からは当然シェルター救出続行の声もありましたが、これは私の責任で止めました。被害を拡大させないための政治的判断です」


政治的判断。この言葉は大仲も昔、自衛隊にいたときに何度も聞いた嫌な単語である。


現場にいる兵のリアルな声を聴いておきながら、政治家が自身の損得で判断するときに使われる言葉だ。


当然タラメアの情報部でも同じ有様である。すべてを納得できてしまう魔法の言葉としてそれは機能した。


「ち。これだから政治家は! 篠原ぁあんたも苦労してるなぁ兄弟!」


AI篠原が回答できないことを察した足立がすぐにフォローを入れる。


「リーク大佐。もう1時間経ちますが、デジカメの画像を早く本国に送らないと消えてしまいますが……」


それを聞くや、慌てた大佐は急いで残りの撮影を終え、足早に出ていった。


大仲は見送ると同行し、二人は研究所を後にしたのであった。


研究所の外で大仲が大佐に、今回の暴挙を二度と行わない様に強く要請していると、一人のタラメア兵が駆け寄ってきた。 二人は小声で話した後、慌てて一度太平洋に浮かぶ空母クシャルボコスへ高速ヘリで帰っていった。


大仲は心中で安堵した。そして「電子妨害で安全だった地下に比べ、電子妨害の届かない埼玉はタラメアの脅威が大きくなった」ことを改めて理解したのだった。


だがこの緊急帰還は、大きな試練の幕開けになるのであった。

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