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人類アンチ種族神  作者: 緑茶
外伝:駆け抜け!人類アンチ種族神
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駆け抜け!人類アンチ種族神 対決②

※この小説は、連載中の『人類アンチ種族神』のこれまでのあらすじをダイジェスト形式でまとめたものです。

※この小説はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

神災から39日が経過した。


数日前に行われた会議にて、都内に残る私有シェルターに取り残された避難民の「再救出作戦」が決定された。 初戦ではたった2体の怪物(正式呼称UFB)に蹂躙された自衛隊は、規模と装備を格段に増やし、雪辱戦に臨むこととなった。


この作戦には、私有シェルターに残されている財界の重鎮・大荻山氏の救出という、公表できない裏の目的があった。そのため、地方に配備されていた最新鋭のロングレンジレールガンまでもが埼玉戦線に集結し、政府は移動可能な多くの戦力投入し決行を命じた。


動員された自衛隊は1000人規模。呼称「R連隊」は、深夜2時に行動を開始する。


埼玉シェルターを出た先遣隊は、東京と埼玉の県境にある荒川ラインで偵察ドローンを展開した。 前回の教訓から、無線妨害を受けない光ケーブル有線式のドローンが採用され、月明かりの下で蠢く無数のガーゴイルたちを鮮明に映し出した。


先遣隊の中には、連隊長である足立と、副長の仲原の姿もあった。 二人は前回の敗北から、徹底した「超遠距離戦」を立案していた。近接戦闘では生物的なスペック差で勝てないことを、骨の髄まで理解していたからだ。


「攻撃開始」


暗闇に紛れ、夜目が利かないUFBを大量に事前ロックオンすると、一斉にロングレンジレールガンによる面制圧が開始された。


キィィィイン ドン!ドドン!


空気を裂く音と共に放たれたのは、対UFB用に調整された特殊な焼夷弾だ。 空中で炸裂した弾頭は、高温を発しながらゆっくりと落下する「灼熱の傘」となる。上空から高熱で蓋をされたUFBの群れは、逃げ場もなく断末魔を上げながら燃え尽きていった。


「今だ、渡河作戦開始!」


灼熱の雨でドロドロに溶けた地面に、即座に冷却ジェルが散布される。強制冷却された道の上を、最新鋭の兵器群が惜しげもなく投入されていく。


「おい、計器の調子はどうだ?」 「オールグリーンです! 今日は電子妨害が全くありません!」 「よし、油断するなよ!」


兵士たちは計器異常(エーテル干渉)がないことを幸運だと喜び、士気を高めた。それが神の気まぐれによる「ハンデ」だとは知る由もなく。


その戦場の中心に、神の眷属であるベルガンとサーチもいた。


ベルガンは直撃した熱波に焼かれたが、素体の耐熱性能の高さに助けられていた。だが、溶けて泥状になった大地に足を取られ、身動きが取れない。 一方のサーチは、自身の長所である鋭敏な感知能力が仇となった。強烈な閃光と爆音で視覚・聴覚を完全に奪われたのだ。 平衡感覚を失ったサーチは、かろうじてグライダーのように翼を広げ、本拠地であるデスランド方面へ無様に滑空して逃げるしかなかった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


神の居城、デスランド。


眼下の戦場を見下ろしながら、神とヴァロンが会話を交わしていた。


「創造主様。攻撃が始まりました」


ヴァロンが冷静に戦況を分析し、報告する。


神はゆったりと玉座に腰かけ、笑みを浮かべた。 「正常なのはヴァロンだけか。ベルガンは行動不能。サーチは敗走中。……思ったより面白いじゃないか」


「ガーゴイルも随分減りましたな。巻き添えも含めて10万は消えましたか」


必死に攻撃する自衛隊。状況を伝えようと奮闘するレポーター。弾薬の雨に混乱し、熱で霧散していくガーゴイルたち。 そして、少し手間をかけた特殊個体が追い詰められる様。どのシーンも、神の心を心地よく高揚させる。


「さて、そろそろバランス調整といこうか」


神が生み出した物質「エーテル」は、濃度が上がれば人間の精密機器を狂わせる。 だが神は今回、戦場のエーテル濃度を局所的に下げることで、自衛隊がスペック通りの戦力で戦えるように「盤面」を整えていたのだ。


神は、傷ついたベルガンに回復ポーションを届け修復させると、新たに5万のガーゴイルを統率させて迎撃を命じた。


修復されたベルガンは猛然と反撃を開始する。 しかし、ドローンで厳重な警戒網を敷いていた自衛隊に早々に発見され、再びロングレンジレールガンの飽和攻撃に行く手を阻まれた。


ベルガンは兵を統率し、灼熱の砲弾を回避しながら接近を試みる。だが、その猪突猛進ともいえる戦闘スタイルは、熟練の指揮官である足立と仲原に容易に看破されていた。 動きの癖を読まれ、誘導された先で集中砲火を浴びる。ベルガンは防戦一方の苦戦を強いられた。


その頃、デスランドに戻っていたサーチは神から新しい肉体を与えられ、ベルガンの加勢へと向かっていた。


ヴァロンは神に問う。


「想像以上に自衛隊の指揮官が優秀のようです。ベルガン単独では厳しいのでは?」


神は満面の笑みで答えた。


「ははは。そのようだね。ここで踏みとどまれるか、それとも折れるか。ベルガンの将としての器も楽しみになった」


神にとって、これは戦争ではない。自分の作り出した創造物に成長の余地があるのかを知るための、テストプレイに過ぎないのだ。


ヴァロンは不機嫌そうに眉を寄せる。


「創造主様。あのレールガンは厄介ですな。射程も長く精度も高い。あれだけでも、私が潰してきましょうか?」


神の表情から、スゥ……と感情が消えた。


「つまらないことを言うな」 「……ッ」 「お前はベルガンの矜持を守ってやらないのか? もしスポーツでお前が応援しているチームが負けていたら、お前はフィールドに降りて敵チームに妨害工作をするのか?」


ヴァロンは神の余興に水を差したことに気づき、即座に膝をつく。


「申し訳ありません。私情が入りました」


その様子を見て、神は再び上機嫌に笑った。


「ははは。参謀タイプのヴァロンでも私情が入るか。いいぞ! 俺の希望通りの仕上がりになっている」


ヴァロンの忠誠心もまた、神にとっては創造物の試運転の項目の一つでしかなかった。


やがて、戦場のベルガンは圧倒的劣勢に追い込まれていた。


チェスの盤面で駒が削ぎ落されるように、逃げ場をコントロールされ、ダメージは蓄積していく。強靭な肉体を持って生まれたベルガンでも、戦車や対空砲、自爆ドローンの衝撃を何度も受ければ速度は落ち、動きも雑になる。


自衛隊の考え抜かれた作戦行動に長所を潰され、自衛隊車両の斉射や自爆ドローン、設置されたTNT爆弾のトラップを踏み抜き、翼は損傷し、片足も吹き飛ばされた。


そしてトドメとばかりに、眼前には20~30機の自爆ドローンがベルガンに向かって殺到していた。


特殊弾を装備した自爆ドローンが直撃すれば、さしものベルガンといえど無事では済まない。 死の群れが迫る状況は、ベルガンに明確な「敗北」を告げていた。


「くそがあああッ!」


最後の力を振り絞り吠えるベルガン。 だが、もはや反撃する体力も、回避する機動力も残されていなかった。


迫る自爆ドローン。その数秒が数分にも感じられ、悔しさ、不甲斐なさ、怒り、様々な感情が渦巻く。


ドローンが2メートルまで接近。


ーー駄目だ。終わる。


ベルガンが諦め、空を見上げたその時。 白い一筋の光が空から降り注いだ。


「――シールド展開!」


エーテルで作られた美しい純白の円形障壁が、瞬時にベルガンと、そのシールドを発生させた本人――サーチを包み込んだ。


「サーチ!」 「話はあとです! この障壁も長くは持ちません!」


幾重もの自爆ドローンが障壁に激突し、激しい轟音と炎が二人を包む。障壁に衝撃波が伝わる。

サーチは自身の長い尻尾をベルガンの目前に突き出した。


「私の尻尾を掴みなさい! 早く!」


ベルガンは咄嗟にその尻尾を強く掴む。 サーチはそれを確認すると、障壁を展開したままジェット噴射のような勢いで一気に上昇し、居城デスランドへの撤退を開始した。


こうしてベルガンとサーチは戦場から離脱。 自衛隊は損耗率70%という壊滅的な損害を出しながらも、神の軍勢を初めて「撃退」することに成功したのだった。


だが、神側の次の攻撃(報復)を警戒した大仲大臣の決断で、本来の目的である私有シェルターの救出は断念。 R連隊は埼玉シェルターへ帰還することとなった。


◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆   ◆◆◆


翌日、埼玉シェルター周辺では凱旋パレードが行われた。


メディアは自衛隊を英雄と称えた。 レポーターのマイクにも、過剰なほどの感情が乗っている。


「私有シェルターの解放には至りませんでしたが、我が国の自衛隊はUFBの王とされる個体をあと一歩まで追い詰め、撃退しました! 今まで一方的に侵略されていた我が国が、侵略者に対して大規模攻勢を成功させたのです! まさに勇者の凱旋です!」


ベルガンはその戦闘力の高さから、今回の神災の首謀者と誤認され「王」と呼ばれていた。


内閣広報室は、治安安定化のため「戦果の要約」のみを公表する方針を決定した。強い情報統制の下で、自衛隊側の甚大な損失は一切報道されない。 事実として多くのUFBを倒したこと、そして「王」と対峙し、撤退させたこと――その輝かしい部分だけが国民に伝えられた。


パレードの車列に、仲原三佐と足立の姿もあった。 二人は傷だらけの装甲車の上で、沿道の歓声に応えている。


「……隊長。これはプロパガンダですよね。実際は、7割を失って敗走に近い状態で帰ったのに」


仲原の脳裏には戦闘で失われた部下の最後が浮かぶ。


「そうだな。だが、これも仕事だ。世論次第では大仲大臣の政治生命も危うい。今は嘘でも希望が必要なんだ。世論を徹底的に味方に付けるぞ」


足立は引きつりそうになる頬を無理やり上げ、仲原の肩を叩く。


「ほら、笑顔笑顔!」


足立はハッチから身を乗り出し、満面の笑みで敬礼して「勝利」をアピールした。 その隣で仲原もまた、血の滲むような思いで作り笑いを浮かべた。


この光景に、SNSの反応は冷ややかで懐疑的だった。


<< ドローン部隊が全然いなくね? >>

<< 大勝利? 結局シェルターには辿り着けなかったんだろ? >>

<< 王を追い払ったのに手ぶらで帰還とか、意味わからん >>


辛辣なコメントがタイムラインに並ぶ。

だが、そのコメントもすぐに、政府が準備した「賞賛チーム」による大量のポジティブコメントで上書きされていく。


<< 自衛隊大勝利!! >>

<< あの総理を説得して作戦を通した大仲大臣すごい! >>

<< 自衛隊ありがとう! 頼もしい! >>

<< 賛否はあるかもだけど、このスピード感は評価できる >>


数日後。 「王」との戦いを分析していたチームから極秘報告が入り、大仲は自身の「深追いせず撤退」という決断が正しかったと確信し、戦慄した。


超高性能偵察ドローンのカメラが、恐ろしいモノを捉えていたのだ。


映像には、女性のような姿をした未知のUFBが映っていた。この個体は高速で上空から白いシールドを展開しつつ「王」に接近し、熱源の尾を残してそのまま王を連れ去っていた。


王のような特殊な個体は、王ひとりではなかったのだ。 しかも、その個体は王を守り、従えているようにも見えた。


その真実は、政府と自衛隊上層部に大きな衝撃を与えた。 誰かが震える声で、この個体をこう呼んだ。


――「女王」。


サーチが人類にとっての新たな脅威として、正式に認識された瞬間だった。

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