煙草を吸わない愛煙家、いざ異世界へ⑤
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煙草を吸わない愛煙家、いざ異世界へ⑤
ベルシュリカ王国に滞在する事にした俺はアルベルトに連れられ王国の騎士団訓練所にきていた。ここでは騎士達が日々切磋琢磨し己を高めあっている。
俺は訓練所の傍にある一室に入った。アルベルトに勧められるがまま椅子に座る。少し部屋を出てスグ戻ってくるとアルベルトは水晶を持ってきた。
「こんな所まで御足労いただき申し訳ございません。使徒様の魔力を量らせて頂きたいと思いまして、」
「マジすか?それは助かりますね。何にも分からんかったですしそーいうの」
「はい、ではコチラに手を」
そう言われ俺は水晶に手を当てた。
すると、体の内側から熱い何かが身体中を巡り満たしていく。いや、元々そこに有った物を自覚したのだろう。
パキパキパキパキ
水晶が光り出したと思えば急に奇妙な音が響く。
パリィン!
水晶は跡形もなく消え去った。
「使徒様、ま、まさか こ、これほどの魔力とは」
水晶が割れても尚俺の溢れる何かはどうやら魔力らしい。
オーラの様なものを身体中に纏っているのを感じるし分かる。
「この水晶は触れる事で魔力量を確認する事ができます。ここ最近では改良が施され魔導王クラスでさえ壊れずに魔力を量れることができるのですが、まさか、、、」
アルベルトの説明で大体理解した。俺は途方もない魔力を持っているらしい。
「俺も今初めて自分の魔力を自認しました。まさか、ここまでとは」
「え、今自認されたのですか?」
「え、あ はい。昨日までこの感覚は無かったですね。なんか体が暖かいというかオーラみたいなのが見える感じは」
「で、では昨日の爆発などはどのように?」
「え?いや普通に魔法の試し打ちで...」
俺が答えるとアルベルトは愕然とした表情で俺を見た。
「そ、そんな事が可能なのですか?」
「逆に出来ないんですか?」
「いえ、私にも分かりません...」
この世界には魔力や魔法があって当たり前。だから魔力の自己認識なんて息を吸うくらいな感じの常識なのだろう。しかし俺は異世界からこの世界に来たので魔力というのを感じなかった。しかし、水晶を通す事で魔力の流れを感じ今に至るという訳だ。
「少し訓練されて行きますか?」
アルベルトが尋ねてくる。
「え、良いんですか?」
「ええ、私も使徒様の力が気になりますし使徒様自身もどれくらいの力か気になるでしょう。」
「はい、多分昨日より凄い魔法が出せる気がしますし加減できるかどうか知りたいです。」
「では、外に参りましょう」
俺はアルベルトと共に部屋を後にした。
そのまま外に出ると騎士達は居なくなっており訓練所は殺風景になっていた。広々としていて数百人単位が広がって訓練できる程だ。
「ここならある程度は大丈夫でしょう」
アルベルトと訓練所の中央に居る。
「はい、広すぎますよここ!凄いっすね!」
「ははは!気に入って頂けて何よりです!」
「では、早速試してみます!」
俺はゆっくりと魔力を滾らせていく。それは決壊したダムの様に溢れ出し身体中に力が漲る感覚。膨れ上がる魔力は地面を揺らし建物がガタガタと震える。
「し、使徒様!い、1度止めてください!」
俺にその声は届いていなかった。そのまま上空に向かい魔法を使用した。
(「古代魔法:ラグナ・マキオン」)
魔法を思い浮かべるとそのまま手の平から昨日とは比べ物にならない火力の炎が爆音と共に空を焼いた。果てしなく広がる炎は雲を溶かし空を夕焼けのように赤く染めた。
その異常現象はスグ収まる。
「いや、エグイなこれ。どう考えても威力バグってる」
俺はその威力に驚きを隠せない。魔力を自認するだけでここまで人外になるとは。昨日の時点でもバグなのにこれは人類の敵だと思われてもしょうがないレベル。
「こ、これはマズイことに、、」
アルベルトはガクガク震えながら尻もちを着いていた。
「すいません、やり過ぎてしまいました。」
「やり過ぎなんてものじゃないですよ!その魔力量でさえ問題なのにあんな魔法放つなんて...これは大問題になりますよ!」
明らかに狼狽えているアルベルトは顔面蒼白な様子でがくがくと震えていた。
「あの、なんかすいません。」
俺は取り敢えず謝るしかできないのであった。
〜とある場所〜
「なんだ?今の魔力は?感じた事の無い魔力だぞ」
魔物や魔獣が巣食う巨城の王。混沌渦巻くその場所まで彼の魔力は伝わっていた。
そして
「な、なんなんですか!今の魔力は!早急に調べなさい!」
とある場所にて白く輝く金髪の美少女は声を荒らげて部下に指示を出す。そこはある王国の中にある屋敷の一室。彼の魔力は大陸を越えて伝わり少しの間混乱を産むこととなった。しかしそんな事も露知らず...
「取り敢えず今日は一旦休んでくださいって言われたし一服してゆっくりするか〜」
俺は昼過ぎにもかかわらず案内された部屋にて休息をとるのであった。