煙草を吸わない愛煙家、いざ異世界へ①
『今日は良い時間を過ごせました、また機会があれば一緒に吸いましょう。では、貴方の旅がより良いものになるように祈っていますよ。お気をつけて行ってらっしゃい』
そう女神様が告げるとその言葉に返答する暇もなくパァーっと今までよりもさらに激しい光に包まれ俺の意識は遠のいて行くのだった。
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タバコを吸わない愛煙家、いざ異世界へ①
気が付くとそこは先程とは全く違う雰囲気の場所だった。少し見渡せば木々が生い茂る森があり平原ではあるが岩や大きな石もチラホラ見える。
「ここは、もうホントの異世界なんかな、実感が全く...」
いきなりの事で頭の整理がつかず正直混乱していた。やはり、さっきまで居た場所は特別だったようだ。初めて来る場所なのにも関わらず不安感や不信感などは一切なく今思えばどことなく懐かしいような安心するようなそんな空気に包まれていた気がする。だからこそ今目の前にある光景、世界が少し怖く感じるのだ。
「てか、こっからどうしたらいいんかな、一旦街かなんかに行った方がいいんやろうけど、ん?え、なにこれ!」
この先どうすれば良いのかを考えていると脳内に何かが流れこんでくる感覚を覚えた。いや、流れ込んで来るというよりかは思い出した様な不思議な感覚。元々知っていた様な初めての様な。
「古代魔法と神代魔法か。」
それは、女神様が授けてくださった2つの魔法についての情報だった。どんな、魔法が使えるかが瞬時に頭の中を駆け巡ったのだ。
「正直、中々チートやな。でも、この世界に溢れている通常
の魔法は使われへんのか。」
どうやら古代魔法と神代魔法はホントにとてつもないらしい。肌感覚だが情報が流れてきた俺が言うんだから間違いない。例えば古代魔法でいうと物質を全て蒸発させる魔法や火をも燃やす消えない炎...etc規模が大きく扱いが難しそうではあるが超強力だ。神代魔法でいうと欠損部位を修復できる回復魔法に全てを消し去る聖なる光..etcこちらも超強力だ。しかし、普通の魔法が使えないのも中々に不便な気もする。
情報が流れて来た事を整理し、改めて身辺を確認すると腰辺りにポーチ見たいな物が付いていた。大きさで言うと片手に収まる程度のそこまで大きく無い物で今まで気づかなかったぐらいの重量感だ。俺は気になりそのポーチの中身を開いて確認した。
「こ、これは!マジかよ!笑」
中を確認するとそこには大きな緑の塊が3つとスチール見たいな質感の四角い物と長細いボールペン見たいな棒と真緑の液体が入った小さなガラス瓶だった。俺はそれを見た瞬間に驚きと喜びで思わず1人で叫んでいた。
「流石にエグすぎる!これ絶対<実>やん笑こんなんアリなんかよ!」
3つの緑の塊を手に乗せ匂いを嗅ぐ。独特な匂いと嗅いだことのない濃厚な何かが嗅覚を刺激した。
「えっっぐ。なにこれ、こんなん見たことないて」
これは、女神様からの贈り物なのだろうか。流石に待遇が良すぎて逆に不安になるレベル。しかし、やはりスモーカーに悪い人は居ないんだと改めて認識し己を納得させた。
ポーチに入っている他の物も順番に確認していく。スチールみたいな質感の四角いものはケースだった。凄く頑丈そうでしっかりしていてケースの上部分がタバコの箱見たいな感じで開くようになっていた。中身は全て太い巻物だった。恐らく20本は入っているだろう。女神様、流石にやりすぎです。しかし、俺はいくらあっても困らないそれを大いに喜んだ。
そして、最後に黒い棒と真緑のガラス瓶はこの世界には到底アリもしないものだった。これは、黒い棒に真緑のガラス瓶を装着し使う2つで1つのアイテムだ。いわゆる電子タバコみたいなもので<リキッド>と呼ばれるものだ。
ここまでの手厚い対応に俺は心が震えた。そして、有難くケースの中の1本を取り出し俺は口にくわえた。
「てか、火ってどうすんねやろ」
よくよく考えると火が無い。そして、俺はまだ魔法を使った事が無い為どうすれば魔法を使えるのかがあまりよく分からないのだ。
「まぁ、考えてもしょうがないし1回やってみるか」
俺は巻物を口に咥えたまま手を前に突き出して頭に流れ込んできた魔法の情報を頼りに魔法名を口にした。
「古代魔法:ラグナ・マキオン」
すると体の中を何かが駆け巡り向けている手のひらに一瞬にして集まるのを感じた矢先前方に有り得ない火力の獄炎が放たれた。
バァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!
轟音と共に辺りは目が届く範囲の限りを焼け野原にした。
岩や石などチラホラ転がっていたものは無くなっており黒焦げの大地が熱を帯び地表は焼け溶けてしまっている。
「やばいやばいやばいやばい!こんなんエグいってどうしよ...」
俺は目の前の光景にめっちゃくちゃ焦っていた。こんなんじゃこれから先どうゆう風に生活して行けばいいのか、それとこの焼け野原をどうしたものかと。口にくわえていた巻物は幸い無事だったようで万全の状態でいつでも準備okとばかりに勇ましく真っ直ぐであった。
「まぁ、どっかで加減を練習するしかないか」
俺は一旦そう思う事で自分を納得させるのだった。