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煙草を吸わない愛煙家、空を行く②

煙草を吸わない愛煙家、空を行く②






空を飛び始めてはや1週間。王国とのやり取りや生活には今のところ何の支障もなく円滑に行えている。毎日美味しいご飯に毎日最高な巻物。空を飛ぶこの雲の家は誰にも邪魔される事のない理想郷だ。今の所安心安全な空の旅を堪能している。しかし、ここに来て1つの問題が生じた。それは今まで異世界に来た事で一種の興奮状態に入りシラフでもハイな状態が続いていて忘れていた性に対しての認識だった。「鐘」のメンバーは全員女性で構成されていて顔立ちやスタイルも丸でモデル。しかもここは他とは各別した空間で男は俺1人。そしていつも身近には巻物。これは非常に不味い。


「どうしました?ジョウ?」


デリリルが心配気にこちらを覗いてくる。


「ん?いや、ちょっと考え事してた」


「何か心配事でも?」


「べ、別に心配事って訳じゃ」


「そうですか。それならいいのですが」


しかもここ最近何故かみんなよそよそしい。俺の異変を感じ取っているのかはたまた。そうこうしている内に昼食の時間になり呼びだされる。ご飯も基本的にはみんなで食べる様にしているので全員が揃うまで頂かない方式に自然的になってしまった。


「そういえばジョウ。王国の方は大分落ち着いたとの事です。報告によると各国の使者達は続々帰国しているとか」


「マジで?良かった!これで王国にも平穏が戻ったって事よな?」


「はい、そのようです。」


それを聞いて一安心だ。俺のせいで危機に陥り俺のせいで各国の使者が押し寄せてきた。流石に気にしないと言うのは無理がある話だ。だが全員帰った訳では無いと言うことが一つ懸念事項である。そうこうしているうちに食卓の間に着いたので着席し頂く儀式に入る。


「お待たせ!よし、頂くか!今日もありがとう!」


「いえ、これが私めの仕事ですから」


「では改めまして、いただきます!」


「「「「「いただきます」」」」」


みんなで一斉に手を合わせて食事をいただく。この食事のひと時は唯一の落ち着けるひと時である。この時間だけは何も気にせず楽しく食事をし皆んなとの会話を楽しむ。そしてそうこうしている内に食事は終わり皆でご馳走様の挨拶をする。いつものルーティンだがこれが今の俺にとっては安心を与えてくれる。


「じゃ、いつものを」


何処からともなく出てくる巻物はいつもより太く長く出来上がっている。それは正に巻物と言わんばかりで完璧な形状をしている。


「いつもありがとうございますジョウ。これが私たちにとっての楽しみになったのはジョウのお陰です。どうか女神様のご加護が在らんことを」


「どうしたんだよ急に!気にすんなよデリリル!俺もみんなと吸えた方が楽しいんだから!」


長く太く巻かれたそれをゆっくりとじっくりと吸い込み燃やしていく。肺の奥まで入れ溜め込み空に吐き出す。そしてそれを時計回りに続けていく。そして気のせいかもしれないが最近中々この巻物がなくならない。吸っても吸っても何周も回せるのだ。今ではデリリル率いる「鐘」のメンバー全員に回しても余裕なくらいだ。


「最近、この巻物が長くなった様な気がしませんか?ジョウ」


吸い終え隣に回したデリリルが呟く。


「やっぱりデリリルもそう思う?めっちゃ吸えるよな最近」


「はい、それに濃さも増した気がします」


咳き込む「鐘」の面々を見ながら赤く充血し潤んだ瞳でそう言うデリリル。


「確かに言われてみればそんな気がするな。喉に効き方がだんち何だよな。」


「だんち??」


「あ、いや段違いってこと笑」


「成程、覚えておきます。」


「いや、覚えてなくてもええで笑」


デリリルはすごく真面目で謙虚だ。本当に俺の身の回りの世話を全てしてくれているし何より俺の言葉遣いに対しても直ぐに理解を示し覚えてくれる。そうこうしている内に2周目が回ってくる。


吸い終えた俺たちはいつも通りゆっくりと談笑しながら時間を持て余す。最高だ。


「ジョウ様!ジョウ様!私、王国じゃない街を見てみたい!!」


「違う街?」


「はい!!どうせ行くなら楽しい旅がしたい!」


リリルカが大はしゃぎで俺に話しかけてくる。


「確かに。俺もこっちの世界に来て王国以外の国や街を知らんってのは勿体無い思っててんなぁ〜。」


「ですが、それは余りにも危険かと。ジョウが王国から避難してきたのは正体を隠す為ですし。」


「それなら変装とかしたらどう?」


「へ・ん・そ・う!!!!してみたい!!」


「確かに、変装すればジョウ様の顔や身体的特徴は不明な筈なので目立たなければ何の問題はないかと」


ナニエさんがお茶のおかわりを入れ落ち着いた面持ちで賛同してくれる。


「ナニエ、ですが.....」


何かを言いかけてやめたデリリル。その視線はリリルカの方に向いていた。その表情は丸で子供のようで欲しいおもちゃを強請っているみたいだった。


「デリリル様。ジョウ様は言われていた通りこの世界を知りません。しかしこと他国や他大陸については私達も何も知りません。今、王国との連絡が即座にとれるこの状況で情報収集は大事かと。」


「メルシー...。はぁ、分かりました。ですが人数は限定して3〜4人迄とします。」


「やったーー!!!!」


こうして俺たちの旅は新たな展開を迎えていくのだった。


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