煙草を吸わない愛煙家、王国での生活③
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煙草を吸わない愛煙家、王国での生活③
あれから何やかんや1週間が経ち俺達はアルベルトさんの話について皆んなで話し合う事になった。最初の方は誰も何も言わず忘れていたかの様に振る舞っていたが3日目を過ぎた頃にリリルカがチルタイムの時に突然その件について触れたのだ。そして日を改めようと俺が言い今に至る。
「今現在も使徒様宛の書状が届いています。それに、この国に居る事が確定と言わんばかりに毎日他国の使者がこの国に訪れたり周辺に野営している様です。」
デリリルが話し始める。俺宛の書状は未だに止む事なく王国に毎日届いている様で他国の使者までもが王国で過ごし俺を探しているらしい。
「このままではジョウの安寧が脅かされかねません。今日この日をもってジョウに着いて行くメンバーを選出し王国を旅立つ手筈です。」
「え、今日出るん?」
「はい。王様にも既に話を通してありますので問題はありません。それと私達「鐘」が改めてジョウ専属のお世話役所謂メイドに任命されましたので一緒について行く事も可能です。」
「マジで!いつの間に。。」
「リリルカに言われたあの日から色々裏で動いていました。」
「ハハ。あの日からか。」
〜4日前〜
「ジョウ様!何時、誰を連れて行くの!」
「え?」
「この前のアルベルトのやつ!あの話!」
「こらリリルカ!!」
リュシカがリリルカを宥める。その日の昼食時にそれは起こったのだ。誰も気にしない様にしていた王国を出るという話にリリルカが触れたのだ。だがそれは決して無視できない問題ではあったので俺は丁度いい機会だと感じた。
「確かに。その話しーひんようにしてたけどそろそろ考えなあかんよな」
「まぁ実際はそうですね。」
「デリリル、あと猶予はどれくらいあるん?」
「猶予で言うと幾らでも作れますが色々加味すると長くて今から1週間ですね。」
「了解。ほな4日後にもう一回話し合いの場作ろや!そこで色々話そ!」
「わかりましたジョウ。その間に色々準備しておきます。」
そして今に至る。色々準備するとは言っていたがまさか今日出発する事になるとは。出発するのは今日中なら何時でも良いとのことなのでメンバー選出に時間を掛けられる。
「さて、では肝心なメンバーですが団体で動くよりは冒険者ギルド等に登録してパーティーとして動く方が色々都合が良いかと思います。」
「たしかにそれは俺も思ったんやけど流石に冒険者ギルドに登録したパーティー調べられるんちゃん?て思ったんやけど」
「たしかに。その可能性は無いとは言いきれませんね。」
「ほんでさ。俺色々考えたんやけど俺の魔法使ったら全員連れて行けるかもしやんねんな。それを試す期間が欲しくてさ。」
「全員?その為の4日だったんですか?ジョウ。」
「そうそう。ほんでその方法がさ。多分他の人に見られたらやばい系やと思うんねんな。やから、どうしようかと今考えてたんやけど。」
「その、方法というのは?」
「この場所ごと浮かせて移動するとかアカンかな?」
「はい??」
「この土地ごと?浮かせて移動できれば皆来れるやんと思って!」
「はい???」
「ん?笑」
「ジョウ様。デリリル様が壊れてしまったようです。代わりに私がお聴きしますがその浮かすという実際可能なのでしょうか?」
「あ、ナニエさん。俺が古代魔法と神代魔法使えるのは前に多分説明したと思うんやけど元々浮遊魔法は使えてたからそれの応用的な?」
「なるほど。では、一旦そーいう事ができると言う認識で考えさせて頂きます。私は国王様にこの家ごと移動する事が可能かと全員連れていくことが可能かを確認してまいります。」
「了解!ありがとう!あ、ちょっと待って!」
「はい、なんでしょう?」
「これも試したかったんだ!これ通ってみてくれやん?」
俺は扉のようなものを出現させた。白く不透明で鏡のようで反射もしない不思議な扉。それは魔力そのものでできている。
「これは?」
「これも合わせ技の1つで王城まで繋がってると思うからそれも確かめるついでにこれで行ってくれやん?」
「本当にジョウ様には言葉もありません。まさか転移魔法とは。」
「いや、転移魔法じゃなくて転送魔法かな?どっちかと言うと」
「はぁ。」
「ナニエ、ありがとうございます。国王様の件よろしくお願いします。」
デリリルが何事も無かったかのように俺の横に立ちナニエさんに声を掛ける。
「はい、デリリル様。お任せ下さい。」
何事も無かったかのようにナニエさんも答える。
「そーいう感じね笑。」
「ジョウ、何がですか?」
「いや、何もない笑。ナニエさん、じゃあよろしくお願いします!」
「はい、お任せ下さい。行ってまいります。」
「うん、行ってらっしゃい!」
ナニエさんは俺の作った魔法の扉に向かい歩いていくとそのまま姿が消えていく。
「ジョウ、それでこれは?」
「ああ、そこは聞いてなかったんや」
「???」
俺はデリリルに転送魔法の事を説明した。
「なるほど、前に言ってた古代魔法と神代魔法を合わせるとは。流石ジョウですね。」
「ありがとう!でも、ちゃんと王城と繋がってるか心配なんよな。ナニエさんに頼んだはええけど違うとこに繋がってたりとかしたらヤバイよな。」
「試してないのですか?」
「う、うん。たしかに自分で試してからにしたら良かったな。」
普通に考えれば自分で試してから人に通って貰うべきだった。もし失敗して違う場所、最悪の場合消滅していたりしたら取り返しがつかない。
「心配は無用だったようです。」
「え?」
「ただいま戻りました。ジョウ様。」
「え、はや!お帰りナニエさん!どうやった?ちゃんと行けた?」
「はい、無事王城に繋がっていました。それと国王様にも許可を頂いてきました。ですが、1つお願いがあると」
「繋がってて良かった!マジすいません、今度から自分で1回試してからお願いします。ホンマごめんなさい!」
「?そんな些細な事を気になさっていたのですか?何の問題もありません。ジョウ様、ありがとうございます。」
ナニエさんは俺に何故か少し微笑んだ。
「??まぁ、無事で何よりとして王様のお願いってなんですか?」
「はい、この魔法の扉を繋げたままにしと欲しいとの事で」
「あぁ、なんやそんな事ですか!お安い御用ってやつですよ!それならこのまんまにしておきましょうか!」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、飛び立つ許可も出た事やし準備して、行きますか!」
俺は片手を天に向けて上げた。
「古代魔法:インペィ
神代魔法:アルテミス・セレーネ」
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『インペリアル・セレーネ!!!』
魔力を隠蔽する魔法と魔力がある物全てを防ぐ見えない神の障壁を張る魔法の同時発動。そしてその発動自体の魔力も同時に隠蔽し悟られないようにする。
「こ、これは!」
「まだまだ!!」
そのまま続けて物理障壁魔法と認識阻害魔法を合わせた魔法を発動させ先程の障壁と同じように展開する。
「ジョウ、これは!」
「本番はこっからやで!」
俺は家の敷地内を丸ごと切り取るようにし浮かせていく。深く浮かせ過ぎると元の場所に穴が空いてしまうので表面だけを慎重に浮かせる。
「よしゃ!うまくいきそう!」
敷地の表面を浮かせてドンドン上昇していく。障壁と隠蔽・認識阻害のお陰で周りにはバレる事なく空まで上がれる。
「よし、ここまで上がれば、、」
ある程度の高さまで上ったところで表面部分に神代魔法と古代魔法を合わせて雲を集め大陸のように広く厚く固めていく。
「もうここまで来たら何でもありですね」
デリリルが久し振りに呆れた顔で俺を見る。電子タバコを吸いながら気持ち良さそうに見渡す限りの空を眺めている。
「ジョウ様!って、え?何これ!!ここどこ!」
リリルカが家から出てくると認識阻害の所為で浮いたことに気づいていなかったのか周りが空な事に驚き楽しそうにはしゃいでいる。
「ジョウ。ありがとうございます。」
「うん?」
「私達「鐘」全員を連れて来てくださってありがとうございます」
「ああ、全然!逆に皆んな来てくれて嬉しい!」
「ジョウ様、デリリル様。15時のおやつの時間みたいです。リリルカはそれを知らせに来たみたいです。」
「あ、了解です!まだそんな時間やったか、、、」
「ジョウ行きましょう」
「おん!皆んな呼んでチルしながら状況説明してお菓子食べよ!」
俺達は取り敢えず家の中に入り至福のひと時を過ごす事にしたのだった。