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煙草を吸わない愛煙家、王国での生活②

煙草を吸わない愛煙家、王国での生活②






新居を手に入れた俺はこの異世界での生活にも大分慣れ始めデリリル率いる「鐘」の人達や王国騎士団のアルベルトさん達とも大いに親交を深めていた。アルベルトさんに至っては様子見という名目で頻繁に家を出入りしており、その目的は勿論巻き物にある。最初こそ遠慮がちなアルベルトさんだったが「鐘」の人達が皆して俺と一緒に吸ってるのを見てからあまり気にしなくなった。というより俺が気にしないようにさせた。


「いや〜使徒様!毎回毎回ありがとうございます!もう私これが楽しみで楽しみで仕方がないんですよ!」


今日も今日とて様子見に来たアルベルトさんは巻き物を吸いながら満足気な表情で語る。


「アルベルト様、お仕事の方は大丈夫なのでしょうか?」


「デリリル様、これも立派な仕事の1つです!それに皆さんだけいつも狡いですよ!」


「まぁ、いいやんデリリル。俺も嬉しいしさ!」


「ジョウがそう言うなら私共は良いのですが」


因みにこの会話はいつもしている。アルベルトさんが来るとデリリルが仕事は大丈夫かと聞いてそれに答えて俺が割り込む。ここ1週間で何度も同じやり取りをしているので一種のノリになりつつある。


「それより使徒様。お耳に入れておきたいことが」


「ん?どんしたんですか?」


アルベルトさんが巻き物を隣に回すと俺にそう話しかけてきた。


「以前の魔竜の一件で使徒様の事が近隣諸国や他大陸にまで勘づかれてしまったらしく面会希望者が続出。更には国まで赴けという内容の物もございまして、」


どうやら魔竜を倒したのは相当マズかったらしく魔竜の脅威が国間の一種の防波堤になっていたらしい。魔竜が存在する事で争いは起きにくく逆に守られている国まであったとか。大陸によっては神聖視している国もあるらしく魔竜を倒した俺はさながら神殺しの大反逆者との事。


「ですが使徒様は使徒様。今はこの国でお住みになられていますがこの国の人間と言う訳ではありません。ですから無視する事もできます。」


アルベルトさんは異世界人の俺に対して最大限の配慮をいつもしてくれる。今回の件も元々は知らぬ存ぜぬで通していたらしいのだが日に日に書状は多くなり無視もできなくなってきたそうだ。


「正直面倒臭いし今はこの平穏な暮らしを満喫したいですよね」


俺は本心を語った。勿論気持ち良くなっているのもあるがアルベルトさんは前々からこの世界の問題はこの世界の住人の問題だから異世界人の俺が干渉することは極力避けたいと言っていた。魔竜を倒した後でこの話を聞いたので申し訳ないと思っていたがその時は


「使徒様がいなければ我々は死んでいたかもしれません!感謝はしても迷惑になど思う訳ございません!」


と言ってくれた。この人は良い人だ。魔竜を呼び寄せたのも俺かもしれないのに。それでも俺の手を煩わせないように動いてくれている。


「使徒様が望むのならずっとここに居てください!面倒ごとは我々で片付けますので!」


「ジョウ、1つよろしいでしょうか?」


デリリルが俺とアルベルトさんの間に割り込んでくる。会話的にも物理的にもだ。


「どうした?デリリル」


「今回の件でジョウの存在は諸外国並びに各地大陸の猛者や強国等にも知れ渡ったでしょう」


「うん、アルベルトさんが言うてたな」


「つまり刺客や使者が送られてくる可能性があります。この国に。」


「あぁ、なるほど。」


確かにこのまま俺の存在を隠し通せばいずれ必ず何かを起こしてくるだろう。それが俺個人へのアクションならまだいいがこの国の人たちを巻き込む形になれば俺もやるせ無い。しかしこの国の人達ともあまり交流がなく俺が本当に実在しているのかも怪しいと言われているらしい。


「流石に隠し通せないかな?」


「この国でもジョウの存在はアヤフヤなので隠し通すことは簡単だと思います。」


「なるほどね」


隠す事自体は簡単だと。だが各方面のアプローチの仕方次第ではどうなるか分からないといったところか。もしこの国に留まるなら対処法を考えないといけないしこの国を出ていくにしても相応の準備が必要になるしそもそと行く宛てもない。


「どうしたものか〜」


「私はこの国を出るのも1つの手段だと思います。こちらの家屋は既にジョウの所有物になっているのでここを離れても無くなることはごさいません。」


「え!マジで?それって別荘やんやば〜」


「それに、維持・管理は我々「鐘」で行いますので清潔は常に保っておけます。」


「でも行く宛ても無ければこの世界の事1mmも知らんしな〜」


「そこはご安心下さい。私はジョウについて行きます。」


「え?」


「え?」


「いや、なんでそっちが疑問符やねん!笑」


「仰っている意味が分かりません。」


「なんやこいつわ笑。まぁそれは置いといて着いて来てくれるん?デリリルが?」


「はい、勿論でございます。ジョウ行くとこ私ありです。」


「それはめっちゃ嬉しいし助かるんやけど」


「ちょ、ちょっと待ってください!使徒様!デリリル様!」


俺達の怒涛の会話に最初に割って入って来たのはアルベルトさんだった。


「使徒様がここを離れる事とはそもそもないのです!それにデリリル様もそんな勝手について行くなどと!王国の業務はどうなさるおつもりですか!」


「そうです!デリリル様だけ着いて行くなんてズルいです!」


「そうです!...いや、え?」


「そうですよ!!私もジョウ様と行きたいです!」


「それはいけません。」


「もーなんか、収集つかんて〜」


俺達は一旦この話を忘れ先程回していた巻物の行方も露知れず新しい1本に火をつけ再び皆で分かち合うのだった。



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