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煙草を吸わない愛煙家、王国での生活①

煙草を吸わない愛煙家、王国での生活①






あれから1週間が経ち王様の使いの人達が訪ねてくる。どうやら約束の一軒家が用意できたようだ。特に持っていくものも無いと言うことなのでいつでも行ける。因みにこの1週間でデリリルは完全にスモーカーとなり今では絶対一緒にチルしている。他の「鐘」の人達にも布教した事により今では皆で楽しむ時間も増え親睦も大分深める事ができた。


「ジョウ、新居への移動ですが何時頃になさいますか?」


「うーん。この部屋での生活も意外と慣れてきた所で名残惜しい気持ちもあるけど一軒家も気になるし一服だけしたら行こか」


「承知致しました」


俺とデリリルは年齢が近い事と巻物を回した事が相まって呼び捨てで呼び合う程には仲良くなっていた。デリリルは口調こそ丁寧だが普段からこんな感じらしい。他の「鐘」の人達とも同様で今ではフランクに打ち解けている。


ジュボ


火をつけていつも通り深く吸い込む。俺が着火すると同時にデリリルは隣に座り同時に2回手を叩く。因みにあの日以来デリリルは俺の隣に座るのが当たり前になっている。手を叩くと1秒も経たないうちに部屋にゾロゾロと人が入って来る。今では「鐘」の人達全員で回すのが日課になっていてみんなで朝食やお茶をしたりしてこの1週間過ごしていた。


「ジョウ、毎回部下もよろしいのでか?大変有り難いのですが.....」


「何も問題ないで、毎日貰えるし俺もみんなで吸った方が楽しいから!」

 

「ジョウ様、いつもありがとうございます」


1人スッと前に出て膝をつく「鐘」の女性はデリリルの部下で名前はメルシー。「鐘」もいくつかの部隊に別れているらしくこの人は1番隊の隊長である。よくお茶の時に注いでくれていたのはこの人でそこから俺が誘い今ではデリリルを除いて1番に駆けつけるようになった。


「メルシーさん、全然大丈夫ですよ!みんなで回したほうが楽しいですし何より俺がみんなにあげたいんで」


俺はデリリルに渡した巻物をメルシーさんに渡すように促す。放置しているとずっと吸い込んでいるのでデリリルには注意が必要だ。渋々メルシーに渡すデリリルを他所に俺はもう1本別の巻物を取り出して火をつけた。


すぅぅぅぅぅぅ


「新しい家に行くのは時間掛かりそうやな....」


〜1時間後〜


あれから結局1時間はゆっくりしてしまい新しい家に来る頃には昼前になっていた。陽が昇り頭の上までもう少しの所まで来ている。


「こ、ここが!」


到着した新居はまさに隠居生活にピッタリな大豪邸である。「鐘」の人達が全員住んでも窮屈にならない広さはありそうだ。庭も大きく何より場所が少し都市部より離れていることもあり静かで最高である。


「早速、中に入ってみましょう。」


「せやな!」


〜数分後〜


内見を一通り済ませた俺達は取り敢えず昼食を摂る事にした。昼少し過ぎた頃、天気も雲ひとつ無い快晴なので庭でピクニック風ランチをする事にした。「鐘」の人達が全て準備してくれるので俺は棒状の電子タバコを吸いながらその光景を眺めたいた。この電子タバコは形状や仕組みからしてこの世界には存在しないので最初は隠れて吸っていたが以前まで住んでいた部屋は何せそこまで広く無かったのですぐにバレてしまった。幸い女神様の加護のお陰か全く違和感を持たれる事なくただ隠し事をした事に対して少し怒られたくらいだ(主にデリリルに)


「ジョウ、これはやっぱり不思議な道具ですね。」


隣で一緒に電子タバコを吸いながらランチの準備を眺めているデリリル。あの日以来デリリルにも専用の電子タバコを渡してあるので一緒に吸う時間が更に増えた。ログインボーナスも限りがあるので全ての「鐘」の人達にまで渡すことはできていないがデリリルは特別感が減るのであまり渡さないで欲しいとの事。


「まぁ、見慣れへんやろな〜。この世界には無い技術だしな」


「やはり女神様は凄いですね。その使徒に選ばれたジョウも」


「別に偶々やで。俺もまさかこんな事になるなんて想像もしてなかったし。」


「ジョウ様デリリル様、ご昼食の準備が整いました。」


「ナニエ、ありがとう。さぁジョウお昼ご飯に致しましょう。」


ナニエさんはデリリル唯一の直属部下で実質「鐘」の副隊長に当たる。この人が基本的な段取りを全て行ってくれているのでデリリルは俺の近くを離れずに身の回りのお世話をできるらしく今俺の生活の基盤を支える人なのだ。


「あぁ、そやな。ナニエさんもありがとう!」


「いえ、勿体無いお言葉」


「ジョウ様〜早く食べようよう〜!」


「こら、リリルカ!使徒様に何て口の聞き方を!」


天真爛漫で元気な可愛い子が5番隊隊長リリルカ。「鐘」の中では1番俺に気さくに接してくれるが少々明る過ぎる時もある。そしてそのリリルカを怒っているのがリュシカ。2番隊隊長で礼儀やマナーを重んじる性格をしていて少し嫌な言い方をすると堅物だ。


「ごめんリリルカ、お腹すいたし早よ食べよか!」


「使徒様、リリルカをあまり甘やかさないで下さい。」


「い、いや〜ははは」


庭に用意された大きなレジャーシートに座りその周りを「鐘」の人達が囲う。今日の昼飯はサンドイッチとパンケーキ、それにいつもの美味しい紅茶である。他の準備している人達も次第に落ち着いていき、やがて全員が座る。


「さぁ、頂くその前に...」


ゴソゴソ


ジュボ


「やっぱり食前はこれでしょ!」


「ジョウ、さっき迄吸っていたではありませんか」


「さっきのは電子やん!やっぱ本物は格別よー」


「たしかに、私もこちらの方が好きですね」


「やろ?」


火をつけた巻物は何十人にも時計回りで回っていく。勿論1本でな足りないと分かっているので2本目にも火をつけ反時計回りで回していく。「鐘」の人達もすっかり慣れた手つきで煙を吸い込み吐き出す。


ふぅぅぅ


みんなで巻物を堪能した後ゆっくり深呼吸をする。庭に居ることで感じられる空気を体全身で受け取る。そして俺達は昼飯を食べる。


「いただきます!」


こちらの世界にはいただきますという風習がなく俺が初めてそれをした時のデリリルの表情は凄く面白かった。今ではみんなでいただきますを言うようになった。


「ジョウ、如何でしょうかお味の方は?」


「めちゃんこ美味い!こんなサンドイッチ食うた事ない!」


「お口に合ったようで何よりです。」


「鐘」の人達が作ってくれる料理はどれも格別に美味しい。元いた世界でもそこまで豪華で高級なお店には行った事無いが確実にミシュランレベルだ。正直ミシュランのレベルが判らないから何とも言えないが本当に美味しい。例えば今食べているサンドイッチは主にハムとマヨネーズ、胡瓜などが入っている普通のものだ。だが全ての食材達がお互いを相乗し合ってるかのような見事なマッチング。様々な食材や調味料が本当に1つに融合している様な完璧美食。この美味しさを届けられないのが残念でならない。


「巻物を吸った後だと余計に美味しく感じるな!」


「ええ、我らながら天晴れですね」


リリルカ達も凄く美味しそうにサンドイッチを頬張っている。異世界に来た時はどうしようかと思っていたが思いの外早く馴染めてしまった。今では何十人の人達と食を囲み巻物を回している。たしかに「鐘」の人達はベルシュリカ王国直属の裏組織で王様の命令で俺の護衛兼身の回りのお手伝いをしてくれている。だがデリリル含め巻物のお陰で大分打ち解けられたと思っている。


「ハァァー」


「どうしたのですかジョウ?」


「いや、なんかめちゃ楽しいなと思って」


「溜息では無かったんですね」


「空気吐いただけやて」


みんなで談笑しながら昼飯を食べ新居の庭でくつろぐ。そして改めて実感する。本当に異世界に来てしまったのだと。仕事も行かなくていいし大好きな巻物までいつでも吸い放題なうえ可愛い女の子達とそれを回せる。ここからこの世界での新たな生活が改めて始まるのだ。取り敢えず新居最高。



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