煙草を吸わない愛煙家、異世界で生活③
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煙草を吸わない愛煙家、異世界で生活③
魔竜が完全に魔力になるのを見届けた俺はポケットから棒状の電子タバコ見たいな物を取り出し電源を付けた。
カチカチカチ
3回銀の丸ボタンを押し電源をいれる。そしてそのままボタンを親指で押し、そのまま吸口に口をつけ深く深くと
「スゥ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
吸い込んだ。ボタンが点滅した所で口を離し息を止める。肺に溜めるとスグに煙がせりあがってくる。
「ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホッ...!!!!ゴホッ...ヴ...ゲホッゴホッゴホ!」
俺は盛大に咳き込んだ。さっきまでの死にかけた経験や戦いを忘れるかのように咳き込んだ。
ひとしきり咳き込んだ後、俺は王国の方に向き直り飛んで帰るのだった。
「うわ〜めちゃくちゃえぐい事なってるやん」
王国の近くまで来ると人集りが見えてくる。それは正に昔見た映画のあのセリフが似合う程いや、それ以上ともいえる。しかし、住民達に怯えている様子はなく驚きと喜びを混濁させた表情を浮かべていた。
「なんかアレやな、みんな思ったより怖がってないな〜」
近付くにつれ俺が目に入ったのか住民達は歓喜に満ち溢れ大歓声が巻き起こった。まだ、少し離れているのに声が響き渡る程聞こえる。俺は流石に住民達の真ん中に降りる訳にもいかないので元居た宿屋に戻った。
「使徒様!ご無事でしょうか!ま、まさか魔竜を倒されるとは!な、なんという...」
部屋に戻るとアルベルトが一目散に飛んできた。どうやら俺が部屋に戻ってくると想定し急いで戻って来たらしく息を激しくし肩で呼吸していた。
「し、使徒様。お、お帰りなさいませ。」
デリリルは動揺を隠せず驚きで顔がおかしな事になっていた。膝をついてはいるが顔はコチラに向け大きな目をパチクリさせながら信じられないというドン引き顔。
「いや、どーゆう顔!?」
思わずツッコんでしまった。
「あ、いえ。すいません、そんなつもりは。」
デリリルはまた表情を出会った当初の様な無機質風な顔に戻した。
「ところで使徒様。魔竜はどの様に倒さたのですか?」
「まぁ、なんか色々あって魔力になっちゃった」
「ま、まりょくに?え?」
デリリルが再び表情を崩し素っ頓狂な顔で俺の方を見つめた。アルベルトに関しては口を開けたまま動かずに居た。それは時間が停止してしまったのかと思える程だ。
「おーい!アルベルトさん?」
「・・・・・・・」
「おーい!」
「はっ!!」
2度目の呼びかけで我に戻ったアルベルトは何もなかったかのように振る舞った。
「ところで使徒様。魔竜はどの様に倒されたのですか?」
「え?」
俺は何が起きたか分からずデリリルの方に顔を向ける。デリリルは俺と目が合ったのを確認し黙って逸らした。
「使徒様?どうされたのですか?」
「え?あ、いやなんでも」
「はぁ、そうですか。」
俺は取り敢えず例の巻物を1つ取り出して火をつけベットに腰掛けた。
ズィィィィジュュュ
ゆっくりと深呼吸するかの様に息を吸い込む。視線すら気にならない。2つの指でしっかりと根本を挟み込み煙を肺に入れる感覚を堪能する。今この瞬間生きている事に感謝し吸い込んだ煙を天井に向け吐き出す。
ハァァァーーーーーー
「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
盛大に咳き込み体で成分を感じる。何回でも言える女神様最高。こんなにも極上品を実質無限吸い放題で毎日各種選びたい放題。しかも加護までつけてくれている最早出血大サービスとも言える。
「し、使徒様!これは葉巻なのですか?凄く不思議な匂いが」
「まぁ、葉巻見たいなものですね。あ、部屋で吸っても良かったですか?」
アルベルトは匂いを嗅ぎ不思議そうな表情で尋ねてきた。
「あ、はい吸って頂く分には問題ありません。ただ初めて嗅いだ匂いだったので気になって」
「よかったら吸ってみます?女神様からの頂き物なんですよ。」
「え!そ、そんな貴重なもの頂けません!」
「俺もこの世界に来る前に女神様と一緒に回したんできっと女神様も喜んでくれると思うんですけどね」
「な、なんと!め、女神様と!そ、そんな!」
アルベルトは唖然としていてデリリルは最早呆れていた。
「デリリルさん、どうですかご一緒に?」
俺は巻物を持っている手をデリリルさんに伸ばした。デリリルさんは少し驚き考えたが直ぐに手を伸ばし俺の巻物を手に取った。
「折角ですので頂きたいと思います。この様な機会 次いつ訪れるか分かりませんので有り難く頂戴いたします。」
「全然!いつでも一緒に吸いましょ!ハハッ!」
俺は驚きと嬉しさと良い気分が相まって笑いながら応えた。
ズィィィィジュュュ
デリリルはそれは見事に良い吸い込みを見せた。吸い慣れているのか先程のを見て真似たのかゆっくりと深く吸い込んだ。
「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」
デリリルは激しく咳き込んだ。肺に溜める前に吹き出し煙を部屋中に散漫させた。
「初心者にはちょっと極上が過ぎたかも!ごめんデリリルさん!」
「い、いえ、ゴホッ!もう大丈夫そうです。ありがとうございます」
デリリルは俺に巻物を返してくれる。咳は意外とあっさり落ち着きいつもの表情に戻っていた。
「あ、ありがとうございます。」
俺は再び巻物を手に取りまた同じように吸い込んだ。異世界に来て初めてこっちの世界の人と回した。味も最高だし良いものを布教した気分だ。
「どうですかアルベルトさんも!」
俺は再びアルベルトに巻き物を渡そうと試みた。アルベルトはデリリルの方を少し見た。デリリルは俺の方をジーッと見て離さずに居た、丸で石になってしまったかの様に。
「し、使徒様。せ、折角ですので頂いても宜しいでしょうか?」
アルベルトは覚悟を決めた様子で俺からの巻き物を手に取った。
「先ずはゆっくり深呼吸するみたいに少しだけ吸ってください!結構キツめなんで」
俺はデリリルの事を踏まえてアルベルトに先にアドバイスした。
「スゥーーフゥゥーー」
アルベルトは俺の声を聞いてか少し吸い込み煙を吐き出した。
「おぉ!なんという神聖な煙でゴホッ!ゴホッ!凄いですね!使徒様!」
少し吸い込んだだけでも結構咳き込んんでいる所を見ると改めてデリリルはすごいなと感心。しかし、未だに俺の方を見て視線は離さず動かない。
「使徒様!貴重な体験ありがとうございます!」
「あ、デリリルさん!大丈夫ですか?笑取り敢えず吸います?」
アルベルトが俺に巻物を返そうとしてるのを見て俺はデリリルを試しに促してみた。
「あ、はい。頂きます。使徒様、こちら凄いですね。凄く不思議な気分です。とても気持ちいですね」
「ええ!ホントに凄い!一気に目が覚めた気分になりました!葉巻とは格別に違いますね!」
「2人がそんなに喜んでくれると思ってなかったから嬉しいです!これからも良ければ付き合ってくださいよ!」
俺たちは3人で1本の巻物を回したのであった。