2. 再会
「.................」
「ひさしぶりだね!春馬!」
俺は今、雪乃と向かい合って座っていた。
こうなった経緯を説明しよう。
◆ ◆ ◆
ガチャ
「久しぶり春馬!小6ぶりだね!」
「..............雪乃........なのか?」
「そうに決まってるでしょ!もしかして忘れちゃったの?」
疑うのも無理はないと思う。
俺の記憶の中の雪乃は、小学6年生で止まっているのだ。
今の雪乃はあのときとは違い、顔はずいぶんと大人びている。
身長も俺よりは低いがしっかり伸びており、その..........なんというか、他のところもいろいろ成長していた。
でも..........俺には本能的に、感覚的にこのひとが雪乃だとわかった。
「雪乃........雪乃.........」
「どうしたの?春馬。」
「うわあああん!」
「ふぇ!?」
俺は、思わず雪乃に抱きついた。
雪乃は困惑して「ふぇ........うぇ?」とよくわからない声を上げているが、そんな事を気にしている余裕は俺にはなかった。
だって仕方ないだろ?俺はこれまで7年間もこの時を待っていたんだから。
「雪乃雪乃雪乃!どこに行ってたんだよ。ずっと待ってたんだぞ!もっと早く会いに来てくれても良かっただろ!」
「春馬...........。」
「お前との約束を守るために一生懸命勉強して、ずっと準備してきたんだぞ。いつか雪乃が約束を果たしに来ると信じて..........」
「うん」
俺は、雪乃に向かって今までの思いを全てぶつけた。
涙がとめどなく溢れてくる。
雪乃に会えたといううれしさ、そして自分が今までやってきたことが無駄じゃなかったという安心から出た涙だった。
「でも.............会えて良かった。ありがとう。俺にまた会いに来てくれて。約束を覚えててくれて。」
「私こそだよ。春馬。私達の約束。春馬が覚えていてくれて、すごく嬉しかった。」
雪乃のこの言葉だけで、俺の7年の努力が報われた気がした。
胸の奥が熱くなる。
「ごめんな。みっともなく泣いて。立ち話も何だから、部屋に入ってくれ。散らかってるかもだけど。」
「うん。ありがと。」
こうして俺達は、7年ぶりの再開を果たした。
俺は、この出来事に運命を感じずにはいられなかった。
◆ ◆ ◆
こうした経緯を通して、今俺と雪乃は向かい合って座っているわけである。
え?なんで無言なのかって?さっきの行動から冷静になってめちゃくちゃ恥ずいからにきまってんじゃんよ!
ちなみに今日は大学は休むことにしました。
「それで、雪乃は今までどうしてたんだよ?」
雪乃は「よくぞ聞いてくれました!」とばかりに話し始める。
「私ね、春馬と別れてからずっと寂しくて、でも春馬が私のために頑張ってくれているって信じて頑張ったんだよ?一応ちゃんとアイドル候補生になったし、あの日からずっとダンスのレッスンとかしてるし!」
俺は、雪乃のがんばりに驚くとともに、雪乃が俺を信じてくれていたという事実を聞いて、胸が熱くなった。
「ちなみに、どこのアイドル候補生なんだ?」
「それはね〜............」
雪乃はもったいぶるようにためてから、言い放つ。
「なんとあの、Utafanなんだよ!」
「え!?」
Utafan.........だと!?
Utafanといえば、現在日本でも最大のアイドル事務所じゃないか!
俺もアイドルの勉強のために何回もライブに行ったが、Utafanの子は軍を抜いている。
まず当たり前だが容姿。それに歌も全員うまいしダンスに関しても息がピッタリ。まさに才色兼備。
今や日本でUtafanの名前を知らないもののほうが少ないだろう。
「す、すごいじゃないか!」
「うへへ〜。春馬に褒められて嬉しいー。」
くっ。なんて無邪気な笑顔。錯覚で眩しく見えるぜ。
「でも、Utafanの候補生なら俺はいらないな.........」
少し寂しいが、Utafanは日本でも一番のアイドル事務所。
俺よりも優秀なマネージャーなんて5万と在籍しているだろう。
そんな俺が雪乃をプロデュースするなんて..........できるはずないもんな。
「そのことなんだけど.........」
ピンポーン
雪乃がなにか言いかけたときに、俺の家のチャイムが鳴った。
「だれだ?」
「あ、きたきた。ちょうどいいしいっしょに説明しちゃおっか。」
そういって、雪乃は俺を連れて玄関に向かい、扉を開ける。
「こんにちは。Utafanマネージャーの桐原 雫と申します。」
ドアの先にいたのは、黒いスーツを着た女性だった。