七話 整備と日常
お久しぶりです!!
長らく更新をしておりませんでしたが、また再開します。不定期にはなりますが長くお付き合い頂ければと思います!
-サルベルス帝国 都市バルサム アパート-
時刻は午後2時。
健康的な一般男性ならとっくに起きている時間だが、アッシュは眠っていた。
ここ1週間、フィッシャーとバーで飲んだあの日に誘われた合同任務の準備に駆られ、アッシュはまともな睡眠がとれていなかった。
粗方の準備を終え、あとは細かい調整を残すのみ。4社合同、パワーバランスの関係で4社とは言うが、他の製造企業も参戦している大規模任務まではゆとりがある。
アッシュはこの日、睡眠を長くとると心に決めていたのだ……が
ティロン、と端末から着信音が響く。
【アッシュ、そろそろ起きて下さい。着信が届いていますし、もう昼を過ぎてますよ】
「ん、もうそんな時間か……フェル、着信の内容を教えてくれ」
【まずは顔を洗い、しっかり目を覚ましてください。内容はその後に伝えます】
「……やっぱお前、妙に母親感が有るよな」
アッシュは子に朝の身支度を促す母親の雰囲気を醸し出すフェルに不満気に目を細めた。
【そうでしょうか?貴方のサポートをするに当たって、親が子供を育てる際の情報を取得したこともあります。それが理由だとは思いますよ】
「……出来たら子供扱いは辞めてくれ」
アッシュはフェルが話した理由に不満を覚えながら、言い返しても世の母親のように返されるのだと思うと、あまり強く言い返せなかった。
アッシュは言われた通りに顔を洗い目を覚まし、洗面所から戻った。
「それで、着信の内容はなんだった?」
【ドレイク社からの着信で、内容は大規模任務の部隊編成について…とあります。詳細は直接見た方わかりやすいですね。データを空間投影します】
机の上にホログラムでメッセージの内容と編成の画像が表示される。
「遊撃役としてドレイクの部隊に配属。隊長はベルガー。…っておい、ドレイクの特記戦力じゃないか!」
【『剛将』ベルガー。前回の申請戦争で見た『斬姫』に並ぶ2つ名持ちですか。ドレイク社の少ない特記戦力が投入されていますね】
ベルガー。
サルベルス帝国の元軍人にしてドレイク社が抱える特記戦力『四将』の1人。
軍に10年以上在籍した後、傭兵へと転身した老練の強者だ。
四とつくとおりドレイク社は特記戦力とされる存在が4名しかおらず、 重工やアドバンス社に比べると特記戦力とされる四将の投入には更に慎重なのだが、今回は参戦している。
「最高戦力の1人が味方にいることを喜ぶべきか、それだけの戦闘になる見込みなのを憂うべきか……前者なら良いんだけどなあ」
【状況を考えれば後者が妥当でしょう。今回は申請戦争ではなくテロリストの鎮圧。ルーラーの定めた指定戦域での作戦ではありませんし企業側も徹底殲滅の動きですからね】
ルーラーの定めた戦域であれば戦局が決した時点で戦闘行為が禁止される。万が一禁止された後も戦闘を行えば、ルーラーの『執行隊』が現れ、禁止行為を行った機体を容赦なく破壊する。
それも離脱が間に合わない速度で、だ。
そうした経緯もあり申請戦争では、ルールを守れば必要以上の損害が出ないため、各企業の損害が少ない。
だが今回は指定戦域での申請戦争ではなく、企業合同での『テロリストの鎮圧』。
名分上はルーラーが干渉できない事になるし、ルーラーも今回の鎮圧行為について執行隊は派遣しないと声明を出している。
「部隊分けとしては、ベルガー率いるドレイク部隊が3隊、俺を含めた個人傭兵を主とした遊撃隊が1。それが企業ごとにあって、戦闘区域が違う訳だな」
【企業、ひいては国家協力のもと4箇所の拠点を確認済みですからね。手分けして一斉に叩く算段でしょう】
アッシュはメッセージの内容を一通り確認し、ため息をついた
「『デッドフェイスはどの戦域に出現するか不明』か」
【『なんらかの方法を用い転移魔法で出現する可能性が高い』と。確かに、私自身探知が出来ていませんでしたし、その可能性が妥当ですね】
「機体単独での転移……直接戦闘に限らずパイロットが魔法に長けているか」
【バックにそれを可能にする存在がいるか、ですね】
「……嫌な想像ばかり広がるな」
通常の転移魔法は転移元と転移先で情報を送り合う専用の設備が必要だがそうした設備は莫大なエーテルを使用するため、アッシュがヤマトに行く際に利用した施設のようにサイズもかなり大きくなる。
理論上は設備が無くても転移は可能だが、視認できる短距離での行使が現実的な範囲だ。デッドフェイスの現れ方はその現実的な範囲を逸脱している。
「やっぱり『結社』絡みだよなぁ」
【あの転移を可能にするにはそれくらいしか考えられないでしょう。デッドフェイス自体もそうですが、テロリストの他戦力にも結社製の兵器が投入されるかもしれません。アッシュ、今回の準備は入念にしておきましょう】
「そうだな……フェル、出し惜しみ無しで行こう」
【かしこまりました。全力でサポートします』
入念な準備のためアッシュは、ナギのいる傭兵組合に足を運ぶことにした。
-サルベルス帝国 都市バルサム 傭兵組合-
組合の受付やショップには傭兵が溢れていた。大型任務で多数の傭兵が参加するともなれば、組合が賑わうのも当然だ。
「おお〜、アッシュ!あんたも準備かいな?」
「ようナギ、その通りだ」
「アッシュも対テロ任務に参加するんやろ〜?ハードな任務になるってもっぱらの噂やし、本腰入れて整備もさせてもらうで〜!」
本格的な整備に取り掛かる前に必要な弾薬類を購入しインストール。
程なくして空いた整備場で機体をアップロード。デイブレイクを立ち姿勢で固定し、整備点検を開始した。
「う〜ん、タブレットで見る限り大きな損耗は無いみたいやし、デバイス内のエーテル修復で問題なさそうやね。動かしてて気になるとことかある?」
「特に無いな」
「りょ〜かい!」
デイブレイクの状態を手早く丁寧に確認し、ナギは点検項目にチェックを付ける。
ステラ・フレームはエーテルに変換され専用のデバイスに保存されている。
整備点検をする際はアップロードして実体化、端末に反映されるデータに見えない異常がないかを確認すのだ。
そして今回のように大きな損耗が無ければ再度デバイスに戻し専用の機械をデバイスに繋ぎエーテルに変換された機体を修復にかけるのだ。
「よし!一通り見た感じは問題なさそうやね〜。リアクターを出力の高いアドバンス製にして良かったやろ?今のに変える前はスグ消耗し切ってたからな」
「最初はレスポンスに不安を感じてたけど、使ってみれば気にもならなかったしな」
【戦闘データを見ても、今のリアクターが適していることが分かります。流石ですね、ナギ様】
フェルに褒められたナギは頬を掻いた。
ステラ・フレームの主要パーツ、エーテルリアクター。機体を動かすためのエネルギーを生み出す機関だ。
現在のデイブレイクにはアドバンス社製の物が使用されているが、以前は違うものを使用していた。今までのリアクターは『消耗させすぎて』直ぐ故障してしまっていたのだ。
「レスポンスも問題ないならこのままで良さそうやね。激しく動かしとる割には綺麗やし、エーテル修復に繋げて整備点検は終わりやよ」
「整備ありがとな、これからも頼むよ」
【ナギ、ありがとうございます】
「こちらこそ、また頼むな〜」
エーテル修復を完了しアッシュは整備場を後にした。
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