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宇宙のような世界で②

来ていただいてありがとうございます!




「灰の王国での騒ぎは聞いているが、まさか我が国にまで魔人が入り込むなど、由々しき事態だ……」

アッシュベリー様は難しい顔で考え込んでる。ちょっとお芝居みたいな仕草なのが面白い人だ。そしてさすが高位貴族(侯爵家)の情報網。灰の王国での事件の事、公表されてないのにちゃんとご存じだったんだ。


またアッシュベリー様の周囲に精霊達が集まって来た。ん?私の方にも来てる?

「人が物珍しいのかな?」

集まって来た光をつんと指で弾いたら、何だか楽し気な気配が伝わってくる。あれ?どんどん集まってきちゃった。

「話が済んだから近寄ってきたのだろう。精霊がついているのだから自力で帰れるな?では後は頼んだぞ」

翡翠色の大精霊の姿が薄くなっていく。


「ちょっと!まだ話は済んでないわ!どうしてルミリエだけがこの件の対処をしなくちゃならないのですか?」

「別にルミリエ一人でなくともよい。他の人間を使えばよいだろう?」

「使うって……そんな言い方……」

冷たい言い方に少し戸惑ってしまった。この大精霊は時折こういう表情を見せる。

「力ある者が先頭に立って動き、その他の者達はそれに従う。それが効率的だ」


「ちょっと待ってくれ!私達は力無きものだとでもいうのか……!」


「それに関しては同意だけど」

あ、アッシュベリー様の言葉は完全にスルーされちゃった。ローズちゃんと翡翠色の大精霊の会話はそのまま続いた。


「そうではなくて!貴女も協力してくれればいいのでは?力ある大精霊様でしょ?」

「これは人が招いた災いだ。人の力で解決するべきだ」

「でも!仲間が苦しんでいるのに」

ローズちゃんは食い下がった。

「…………私は人が嫌いだ」

なんだかすごく悲しい気持ちになる……。これは嫌いと言われた私の気持ち?それとも……。

「できる限り関わりたくない」

「…………わからないでは無いけれど……」

ローズちゃんと翡翠色の大精霊との間に沈黙が下りる。



「ネージュ伯爵令嬢……、さっきから君の体から虹色の光が……」

無視されて撃沈していじけてたアッシュベリー様が復活しておずおずと話しかけてきた。

「あ、これかな?」

虹色の光を湛えたフローティングロケットをポケットから出した。以前にノエル君から渡されたロケットはお守り代わりにいつも持ち歩いてるんだ。白ちゃんが自分のフローティングロケットを持って見比べてる。

「ニテル」

「うん。お揃いだね」

「オソロイ?」

そこにいるのはかつての私。前世、まだ真白だった頃の。ううん、あの時はもう死んでしまった後だったからちょっと違うのかな。マスコットキャラクターだった私の姿。それが今の白ちゃんにそっくり。


「そうだ!白も働け。白の仲の良い精霊を助けるのだから。ルミリエ、その力少し貸してやったらどうだ?」

翡翠色の大精霊は名案を思い付いたみたいに手をぽんと打った。精霊なのに何だかとっても人間っぽい。

「貸す?」

「そのロケットにルミリエの力を分けてやると良い」

「そんなことできるの?」

「うむ。ルミリエなら可能だろう」

「うーん……」

ちょっと考えて、ロケットとロケットをそっと近づけて虹色の力を注ぎこむイメージを描く。白ちゃんのロケットが淡く虹色に輝き始めた。


「できた!」

「あら!」

「ほう!」

「な、一体今度は何だ?」


「……白ちゃん?」

突然光に包まれた白ウサギの姿が小さな男の子の姿に変わった。真っ白な髪と肌、淡い虹色の瞳。白いチュニック。でもうさ耳はそのまま。なんかすごくかわいい。

「それが本来の姿か」

ほんのり月白に輝く体は何だか少し神々しい感じ。

「白も大精霊だったのだな」

「大精霊、なのかな?よくわからない。ずっと昔にここじゃない森の中で生まれた、と思う」

話し方が流暢になった!

「ずいぶんぼんやりした性格みたいね」

ローズちゃんが少し呆れたようにため息をついた。精霊にもいろんな性格の子がいるんだね。やっぱり人間と似てる。



「ふふ、小さい子が増えて、なんだか幼稚園の先生になったみたい」

そういえば、小さい頃の将来の夢は幼稚園の先生だったなぁ。

「誰が小さい子よ!」

「ルミリエよりずっと長く生きているのだぞ!」

「幼稚園て何?」

「あはは、ごめんごめん」

二人に食って掛かられて慌てて謝った。

「白ちゃん、幼稚園っていうのはね……」


「おいこらルミリエ!そんな場合じゃないだろう?」

そうだった!呑気に話してる場合じゃなかった!急がないと魔人が復活しちゃう。それに、ノエル君もう帰って来てるかな?もしかしたらもう帰って来てて心配してるかもしれない。まだそんなに時間は経ってないと思うし、早く帰らなきゃ。

「仕方ない。帰りも特別に私が送ってやろう……」

翡翠の大精霊の声が途中から遠くなって……消えた。







風が吹いて、気が付くと私はローズちゃんと白ちゃんと一緒に湖の畔のお屋敷の門の前に立ってた。

「あ、帰って来た……」

「あー!結局ルミリエに丸投げじゃない!!」

「夜……」

白ちゃんは高く昇った月を見上げてる。

「本当だ。こっちも暗いね。もう夜になってる……ええーっ?!こんなに時間が経ってたの?!そんな!」

「あー……精霊界はこっちと時間の流れ方が違うからねぇ」

「そうなの?」

そういう設定ってどこかの小説でもあった気がする。これはまずい……。ノエル君とっくに帰って来てるよね?心配してるよね?ああ、どうしよう……。


「なんでもう夜になっているんだーっ?!さっきまで昼過ぎだったのに!!」

そういえば、アッシュベリー様も一緒に帰って来てたんだ。往来で絶叫しないで欲しいなぁ。

「うるさい……」

「面倒ね……」

白ちゃんとローズちゃんが嫌そうにアッシュベリー様を見てる。

「とにかく!急いでお屋敷へ入ろう!ノエル君きっとすごく心配してるから」


「っルミリエ?!!」


タイミングよくお屋敷の玄関の扉が開いてノエル君が走り出てきた。

「ノエル君……。あれ?それにメイベルさん?オスカー様も?」

どうしてお屋敷からみんなで出てきたの?

「ルミリエ様っ!良かったぁ!!」

メイベルさんに抱きしめられたっ!ああ、いい香りがする。

「それはメイベルじゃなくて、ノエル君の役目でしょ……」

オスカー様が呆れたようにつぶやいた。


「一体どこへ行ってたんだい?今からノエル君がまた君を探しに行こうとしていて、僕達も一緒に行こうと思ってついて来たんだよ」

オスカー様が苦笑しながらノエル君の肩を叩いた。

「ルミリエ!一体……、どこに行ってた?!どうしてそいつ、リチャード・アッシュベリーと一緒なんだっ?それにその子どもはっ!!」

「ええっと、これは……」

ノエル君怒ってる。やっぱりすごく心配かけちゃったんだ。

「ちょっとノエル!そんなにいっぺんに聞かれたら答えられないわよ!」

「ローズ!君がついていながら、どうしてこんなことになってるっ!!」

ノエル君の剣幕に私もローズちゃんも声が出ない。白ちゃんは怯えたように私の後ろに隠れてしまった。


「落ち着きたまえ!サフィーリエ公爵令息ともあろう方が見苦しいですよ」

割って入ってくれたのは以外にもアッシュベリー様だった。

「…………っ」

ノエル君はアッシュベリー様を睨みつけてる。

「私の名誉にかけて誓って申し上げますが、今回の件、私にもネージュ伯爵令嬢にも何の落ち度もありません」

アッシュベリー様は自分の胸に手を当てて説明を始めた。

「…………」

「完全に巻き込まれただけですからね。それにしても珍しいものを見せていただきましたよ。普段は氷のように冷静沈着、無表情の権化たる貴方がここまで感情を表すとは……」

「……」

無言のままノエル君は顔を俯けてしまった。


「私は自分の屋敷へ帰ります。詳しい話はまた明日にでも。色々お聞きしたいこともありますしね。では」

うわあ……アッシュベリー様の視線が怖い……。


「ひとまず、お屋敷に戻らない?家人達も心配してこっちを見てるよ?」

「わかった」

オスカー様の提案に短く答えて屋敷の方へ歩き出すノエル君。

「ノエル君……」

こっちを全然見てくれない。きっとすごく心配をさせちゃったんだよね。謝りたいのに……。



「さあ行きましょう、ルミリエ様。こんなに遅くまで外にいらしてお疲れでしょう?」

「とにかく無事で良かった」

メイベルさんとオスカー様が私を挟んで屋敷まで歩いていく。肩にはローズちゃん。後ろには白ちゃん。みんながいてくれてすごく安心できた。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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