女の子のお茶会
来ていただいてありがとうございます!
「リンジー様、もう王子妃教育はいいんですか?」
「ええ!元々それらしい勉強をさせられてたのよ。だから新たな勉強というのは少なくて、確認作業が主だったわ。残りはゆっくりやっていけばいいそうなの。だから今後は学園生活を楽しめるわ」
短い冬休みが終わってメイリリー学園の授業が始まった。リンジー様の王子妃教育も一段落したみたいで、放課後のお茶会の時間が復活したんだ。嬉しいな。しかもメンバーが増えた。
「貴女達がジョゼット様とメイベル様ね。ルミリエがお世話になったみたいね。ありがとう」
「お世話だなんてとんでもないです!私の方が助けていただいて……。お、お話しできて光栄です」
ジョゼちゃん、かなり緊張してるみたい。リンジー様は優しくて明るい方だから大丈夫だよって一応事前に話しておいたけどダメだったか。
シモン様は留学中。ノエル君とベルナール殿下はお城でお仕事があるみたいで不参加。今日は女の子達だけでお茶会なんだ。こういうのは久しぶりで嬉しい。前世の放課後を思い出しちゃう。
「当然のことをしたまでです」
良かった。メイベルさんは平気そう。ノエル君や隣国の王子様(今は違うけど)、シモン様と一緒にいた時間が長いもんね。慣れってあるよね。そういえば、メイベルさんはノエル君やベルナール様、オスカー様と同じ所で働くかもしれないんだってノエル君から聞いてる。
私も本当はノエル君のお手伝いがしたいんだけどな……。
今みんなで飲んでるお茶は今日のおすすめのシュネーっていう花の香りのお茶。ミントっぽい香りのハーブティーみたいなお茶。今日のケーキは生チョコのタルト……。もちろん別の名前が付いてるんだけど、このタルトも私が前にいた世界のとそっくりだなぁ。不思議……。懐かしくて美味しくて嬉しいからまあ、いいか。ああ、美味しい、幸せ。
「それで?ルミリエは婚礼衣装のデザインが決まったのよね?それと、あのクロスドレス店で働き始めたのだったわよね?」
「はい。幻影の魔術でドレスのイメージの再現をして、少しお手伝いしてるだけなんですけど」
クロス夫人のデザイン通りのドレスを魔術(魔法)でお客様に着てみてもらうんだ。それで気に入ったらそのままドレスが作られる。思い通りに似合うドレスを作れるって好評みたい。
「え?あのクロス工房で……?!」
ジョゼちゃんが凄く驚いてる。やっぱりクロスご夫妻は有名なんだなぁ。
「でもノエル様がよく許してくれたわね?ノエル様ってルミリエにはかなり過保護じゃない」
「ええ、最初は渋られてましたけど説得しました。とても楽しい仕事で嬉しいんです」
リアル着せ替えごっこだもんね。お客様の似合う色とか素材とか見つけたりするのが楽しいんだ。ノエル君は最初反対したんだけど、月一回一日だけって約束でやらせてもらえることになったお稽古事みたいな感じ?貴族令嬢が働きに出るのはやっぱり珍しいことだから、常勤は厳しいみたい。私はもっとやってみたいんだけど仕方ないかな……。
「学園卒業後にすぐ結婚するのよね?」
「は、はい。その予定です」
改めて言われるとなんか照れちゃう……。
「はあ……。あのノエル様がねぇ……。驚きだわ。そんなに結婚を急ぐなんて。ねえ、そうは思わなくて?ジョゼット様、メイベル様」
リンジー様に問いかけられて、ちょっとビクッとするジョゼちゃんが可愛い。
「は、はい!サフィーリエ様はあまり女性に関心が無いと思っておりました」
「あまり、というか女性には冷たかったとお聞きしております」
そっか、ノエル君てそんな感じだったんだ。メイベルさんの言葉にびっくりしたけど、そういえば最初は私にもそんな感じだったっけ。まあ、私の場合はウサギみたいな姿だったから、不審がられてただけだよね。しかも喋るウサギ。ははは。
「そうだわ!今年の雪灯祭の舞踏会のドレス、私もルミリエにデザインして欲しいわ」
「え?私でいいんですか?是非やらせていただきたいです」
やった!これはお友達の依頼だから仕事じゃない。カウント外だよね?リンジー様は美人だし、色々なドレスを着てもらいたいな。あんなのとか、こんなのとか!
「お願いできる?やったわ。楽しみだわ」
「でも雪灯祭はもうすぐですよね?今からで間に合うのでしょうか」
いくらデザインが決まっても、縫い上げる時間が無いと思うんだ。
「大丈夫よ。うちにはお抱えのお針子さん達がいるからね」
リンジー様はかっこよく片目を瞑って微笑んだ。
「さすがマルクール侯爵家ですね」
ジョゼちゃんもメイベルさんも私も驚いた。ああ、そういえばサフィーリエ公爵家でもそんな話を聞いたような気がする。高位貴族ってやっぱり物凄いお金持ちなんだなぁ……。前世庶民の私にとってはネージュ伯爵家も十分凄いんだけど、上には上があるんだね。
その後も楽しいおしゃべりは続いて、夕暮れになる前にお茶会はお開きになった。リンジー様は一足先に帰って、私とジョゼちゃんとメイベルさんは連れだって廊下を歩いた。
「ルミリエ様、凄いですね。あのクロスドレス店でお仕事をなさってるなんて!」
メイベルさんが食い気味に言ってきた。やっぱりクロスご夫妻って凄い人達みたい。
「そんな……仕事っていっても、本当にほんの少しお手伝いをさせてもらってるだけですから」
「幻影の魔術を使ってらっしゃるんですよね?素晴らしいですわ。特技を生かしたお仕事なんて!素敵です!」
ジョゼちゃんも頬を赤らめて褒めてくれた。嬉しい。
「魔術大会の時も凄かったですわ。あんな美しい光景は見たことがありませんでした」
「お二人の力があったからですよ!それにみんなで何かを作り上げるのは楽しかったですよね」
やっぱり文化祭はみんなでわいわい準備するのが楽しいよね。(文化祭じゃないけど)
「はい!」
「とっても!」
「また今年も一緒にやりたいですよね」
私の言葉にジョゼちゃんとメイベルさんは少し顔を見合わせた。あ、つい勢いで言っちゃった。迷惑だったかな?どうしよ……。
「「是非!」」
ジョゼちゃんとメイベルさんの言葉と笑顔がハモった。
良かったぁ……。迷惑じゃなかったみたい。気を良くした私はもう一言付け加えちゃった。
「今度お二人のドレスもデザインさせてくださいね」
ついでに着せ替えもさせてほしい!
また間が……。ああ!今度こそひかれちゃったかな?
「「是非!」」
二人の言葉と笑顔が再びハモった。
ホッとした私はとっても楽しい気分で帰宅したんだ。
ここまでお読みいただいてありがとうございます!




