魔術大会①
来ていただいてありがとうございます!
「わああああっ!!」
歓声が歴史のある重厚な造りのホールに響いた。リンジー様がステージの中央で白いドレスで歌いながら踊ってる。リンジー様の周囲ではリンジー様のご友人のご令嬢方が同じように踊ってる。
風魔法で花びらを散らしたり、光魔法で光を瞬かせたり、春夏秋冬の綺麗な花や景色の歌に合わせて踊りを踊る。それに合わせて私が魔術でステージの風景を変えて、ドレスの色を変えたりした。
今は4つ目。冬の雪の結晶のイメージのドレス!周囲には雪の結晶を降らせる。幻想的なステージになったし、皆さんとても美しくて本当にうっとりしちゃう!惜しむらくはステージを正面で見られないことかな。でも春のピンク色(桜色)、夏の向日葵と青空、秋のオレンジ色……。うーん私の趣味全開!ここ、白の王国は日本より冬が長いんだけど、四季がちゃんとあるんだよね。
さあ、ステージの歌と踊りがクライマックスだ!集中!集中!リンジー様を含めて四人の女の子達それぞれを四季の色に染めていく。ベースは白いドレスだから、それが見えないように動きに合わせて……フィニッシュ!やった!成功!!大歓声だ!!良かった!
ステージの幕が下りると、舞台袖にいた私に向かってリンジー様が駆けてくる。
「やりましたわね!!私達!!大成功よっ!!」
リンジー様が私や他の裏方のご令嬢の手を取って舞台に戻った。もう一度幕が上がりリンジー様達が歓声に応えた。私もお辞儀をして舞台の幕が下りるのを待った。
私の初の魔術大会参加はこうして楽しく終わった。本当に楽しかった!
舞台の後ノエル君とシモン様が労いに来てくれた。ノエル君もシモン様もそれぞれ違うタイプの美形で学園の女子生徒にとても人気がある。楽屋になってる部屋の中にいる女子生徒も、外にいるこれから発表の舞台を控えているグループの女子生徒達もみんなソワソワして二人を見てる。
「美しかったよ!リンジー。素晴らしかった!!」
シモン様はそう言ってリンジー様を抱きしめた。
「もう、お兄様ったら大袈裟よ」
仲良し兄妹、いいな。
「ルミリエ、お疲れ様。体調は?」
ノエル君が声をかけてくれた。
「大丈夫ですよ。ありがとうございます」
「頑張ったね。すごく良い舞台だった。ルミリエを舞台で見られなかったのは残念だったけどね」
ノエル君は私の頭を撫でながら、優しく笑ってくれた。私も嬉しくて笑い返した。
ノエル君が笑うと、近くにいた女の子達から歓声が上がった。ノエル君は綺麗なんだけど、滅多に人前で笑わないんだよね。勿体ないな。
「私は裏方ですから」
ステージに立つなんて無理!絶対!緊張して何も出来ないよ。
私達の発表は三日ある魔術大会の初日だった。だから後はただみんなの出し物を楽しむだけだった。リンジー様とシモン様、ノエル君と私の四人で色々な発表を見て回った。文化祭みたいでとっても楽しい!魔術で作ったお菓子を売ってたり、部屋中に飾られた紙に自動で絵が描かれ続けてたり、学園庭では巨大なゴーレムがドスンドスンとゆっくりと歩いていたりしてる。魔術の発表大会だから不思議な出し物がたくさんある。
学園内には色々な食べ物の屋台も出てるし、学園の外からもお客様がたくさん来てるんだって。そういえば制服を着てる生徒達だけじゃなくて、貴族の方々やその他の方々もたくさん歩いている。私が綺麗な色の飴菓子を見ていたら、ノエル君が一緒に覗き込んで来た。
「ルミリエ、何を見てるの?」
「飴菓子です。綺麗な色なんです。ノエル君の瞳の色みたい」
私が見てたのはガラスの瓶に入った透き通った大きな金平糖みたいな飴菓子だった。
「一つください」
「え?ノエル君!自分で買いますよ!」
「これくらい買わせてよ。はい」
そう言うとノエル君は私の手に水色の星みたいな飴が入った瓶をのせてくれた。
「わあ、ありがとうございます!嬉しいです」
「ルミリエは小さなことでもすごく喜んでくれるから、僕も嬉しいよ」
「私はノエル君と一緒にいられるだけで嬉しいですよ」
「…………」
「こらーそこーっ!私達もいるんだから二人だけの世界を展開しないように!!」
リンジー様が不機嫌そうに腕を組んて睨んでた。
「あ、ごめんなさい。リンジー様」
「そんなにすねないでリンジー。僕が買ってあげるよどれがいい?」
「お兄様っ!そういうことじゃないんですよ?あら?でもこのお菓子、可愛いわね」
リンジー様は怒ってたことも忘れて、お菓子を選び始めた。リンジー様は怒りがあまり持続しないさっぱりとした性格の方だ。私はリンジー様のそういうところが好きだなぁ。結局二人は二人の瞳の色の菫色のお菓子を選んでいた。
「ふふ、お二人は仲良しでいいですね」
「そうだね。そういえば、シモンは今年も氷の彫像を作るのかい?」
「ああ、そうだよノエル!……ふふふ、でもね、今年は動くんだよ!」
シモン様は得意げに眼鏡の位置を直した。シモン様は氷のゴーレムをお一人で作るのかな?凄いなぁ。
「へえ、それはすごいね。楽しみにしてるよ」
ノエル君も感心してる。
「ノエルもまた戦闘の方へ出るんだろ?今年も一回戦負けを狙うの?」
「いや、今年は少し本気出すよ」
「え?!そうなの?珍しいわね」
リンジー様はとても驚いたような声で言った。
「ルミリエのリクエストだからね」
ノエル君は私の肩を抱いた。
「やっぱりそういうことなのね」
「やっぱりそういうことなんだ」
お二人はほぼ同時にため息をついて仰った。さすが双子さんだね。息ピッタリ!
そう!私の一番の楽しみはやっぱりノエル君の魔術戦闘大会への参加だ。明日からその予選が始まる。ノエル君きっとかっこいいんだろうな……。
「明日は絶対応援に行きますね!」
「うん。今年はお姫様のために頑張るよ」
ノエル君は私の手を掴むと指先に口付けて笑った。
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