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家族がいっぱい

来ていただいてありがとうございます!



「もう!ノエルったら独占欲が強すぎるわよ?ルミちゃんを独り占めだなんて!みんなでこのお屋敷で暮らせばいいのに!」


「何を仰ってるんです?母上。その件についてはもう何度も説明したでしょう?僕は公爵家の一員とはいえ三男ですし、自分で身を立てます。もう学園卒業後の進路についても決定してるんですよ」


「ノエルお兄様ズルいわ!」

「そうよ!ズルいですわ!」


ノエル君に抗議するのは二人の妹様達。彼女達は十一歳の双子でノエル君と同じ白い髪、空色の瞳。サラサラストレートのエルシーちゃんとふわふわウエーブのルイーザちゃん。ずいぶん背が伸びてちょっと大人っぽくなって、出会った頃のノエル君を思い起こさせる。ああ!ノエル君の代わりに色々可愛い衣装とか着てもらいたい!着せ替え人形になって欲しいなんて言えないけど……。


「ルミリエは体が弱いんだ。あまり無理をさせられない。静かに生活させてあげたいんだよ」

まだ抗議しようとしてたサフィーリエ公爵夫人とエルシーちゃんとルイーザちゃんもノエル君のこの言葉に黙ってしまう。本当はもう健康体なんだけど対外的にはそうしておくってノエル君と決めたから、心が痛むけど仕方ないんだ。ごめんなさい、サフィーリエ公爵夫人、エルシーちゃん、ルイーザちゃん。


サフィーリエ公爵家に招待された私はそんな会話を聞きながらお茶を飲んでいた。嬉しいけどいたたまれないような気もする。今の会話はノエル君と私の結婚後の新居について説明した後の会話なんだ。王都郊外の少し小さめなお屋敷を譲っていただいて、新生活を始めることになってる。ノエル君はそこからお城に通うんだ。








「それにしても今回は大変だったわね。あんな恐ろしい事件に息子達と娘達が巻き込まれるなんて信じられないわ……」

サフィーリエ公爵夫人は繊細な刺繍の施されたソファのひじ掛けに寄りかかりながら、少し青ざめた顔で額を押さえてる。ちなみに息子達はノエル君と次男のフランシス様。娘達っていうのはフランシス様のご婚約者のアマーリエ王女様と私の事なんだ。正確に言うなら巻き込まれたのはノエル君と私だけなんだけどね。


「母上!そのことは内密にと申し上げたはずですよ!」

ノエル君が嗜めるけど、サフィーリエ公爵夫人は気にした様子が無かった。ちなみに今はお部屋の中にはサフィーリエ公爵夫人とノエル君と私と、公爵家の筆頭執事のロゼフさんしかいない。お茶の時間の後、エルシーちゃんはピアノ、ルイーザちゃんはダンスのレッスンがあるからって退出していった。


「まだ帰らないでくださいね!」

「後で一緒にご本を読みましょう!」


なんて可愛い言葉をかけてくれて嬉しかった……!



「大丈夫よ。誰も聞いていないし、ロゼフは事情を知っているもの。……それに人の口には戸が立てられないものです。いずれは皆が知ることになるわ」

「それは……」

ノエル君は口ごもってしまった。


そう。実は今回の魔人の事件は公にはされてないんだ。私達の住んでる大陸に魔物が出現するようになったのはごく最近の事で、それだけでもみんな不安になってる。それなのにその上にもっと恐ろしい魔人なんてものがいるなんて全然知られてなかったし、その魔人が隣国の王子様を操ったなんて公表できないという事みたい。白の王国の国内での黒い結晶の事件は、今の所は謎の奇病だったということになってる。



「ルミちゃんの元気そうな顔を見られてとても安心したわ」

そう言って微笑みながら私を見つめるサフィーリエ公爵夫人の顔は、私のお母様と同じ顔だった。今日は私を心配して招待してくださったんだね。

「ありがとうございます。ご心配をおかけしました」

本当のお母様と同じように私を心配してくれたんだなぁ。そう思うと胸が温かくなる。

「当り前です。貴女も私の大切な娘ですもの」

そう言って隣に座らせた私の頬を両手で挟んでくれた。ほっぺがあったかい。ノエル君がほっぺを引っ張ってくるのはサフィーリエ公爵夫人の影響かな?


その夜はサフィーリエ公爵家に泊まらせてもらうことになって、お城から帰宅した公爵様とアルフレッド様とフランシス様、出かけていらしたアルフレッド様の奥様のシシリー様も加わって賑やかな晩餐になった。そういえばここのお家って大家族だなぁ。私は前世も今も三人家族だから、こんな大人数のご飯って滅多に無かった。賑やかっていってもさすがは大貴族のお家、和やかに食事が進むって感じだけどね。でもみんな仲が良くって私も話の輪に入れてもらえてとても楽しい食事だった。





少し暗い照明。顔が映りそうな大理石(?)のつやつやした廊下。ネージュ家の屋敷も狭くはないけどやっぱり公爵家は廊下も段違いで広い。まるでお城みたい。そんな廊下をノエル君と二人で歩いてる。ノエル君の手には紙袋。


「ルミリエ、大丈夫?疲れてない?」

晩餐が済んだ後も妹ちゃん達と本を読んだり、公爵家の方々と会話が弾んでかなり遅い時間になってしまった。ノエル君は私を部屋まで送るって言ってくれたんだ。ここのお屋敷は大きいから食堂や居間からは結構距離が離れてるんだよね。

「大丈夫。とっても楽しかった!」

「なら良かった……」

「ふふ、やっぱり私、ノエル君と結婚できて嬉しいな」

「え?」

「だって、あんなに素敵な家族が増えるんだもの!ノエル君のおかげだよ」

「ルミリエ……ありがとう」

私に用意された部屋の前でノエル君に抱きしめられた。ノエル君の手に持った紙の袋がカサリと音を立てる。

「でもあんまり可愛い事言わないで。本当に我慢できなくなるから」

「……!」

耳元でささやかれて、足の力が抜けそうになる。

「ノ、ノエル君……」

見つめ合って唇が重なり合う……ことは無かった……。


「ちょっと!私も何か食べたいー!!」

ローズちゃんが閉まった扉をすり抜けて私とノエル君の間に飛んできたから。ローズちゃんはお呼ばれに一緒についてきてくれてお部屋で待っててくれたんだ。

「それに、あの()達の前でそんなことしてていいの?」

「え?」

「ええ?」

ノエル君と二人で振り向くと廊下の曲がり角からエルシーちゃんとルイーザちゃんが顔を覗かせてる。いつの間に?全然気が付かなかった……。


「エルシー!ルイーザ!」

「あ、見つかっちゃった!」

「大丈夫だと思ったのに……」

ローズちゃんは二人には見えないから、二人とも不思議そうな顔をしてる。


「エルシー、ルイーザも。もう休む時間だろう?何でこんな所にいるんだ?」

ノエル君が二人を叱りつけた。

「なによう。ノエルお兄様のエッチ!」

「まだお姉様と遊びたいんだもん。ノエルお兄様、独り占めズルイ……」

「エルシー!ルイーザ!」


「まだルミリエと遊び足りないみたいねぇ」

ローズちゃんが肩をすくめた。二人が仲良くしてくれて嬉しいけど、お部屋を抜け出してきた二人はこのままここにいたらきっとご両親に叱られてしまうよね。

「エルシー様、ルイーザ様、今夜はもう遅い時間になってしまいました。明日の朝、朝食の後にまた遊びましょう?」

「本当?」

「約束……?」

「はい。だから、今夜はもう休みましょうね」

私が笑ってそう言うとエルシーちゃんもルイーザちゃんも納得してくれたみたい。

「分かりました、お姉様。おやすみなさい」

「きっとよ?お姉様。おやすみなさい」


「これ、ローズに」

ノエル君は小さな声でそう言うと私に紙袋を手渡した。そして

「ルミリエは良いお母さんにもなれそうだね」

そう言って私の頬にキスをして二人の手を引いて行ってしまった。



「何が入ってるの?」

サフィーリエ公爵家での自室に入った私は紙袋を開いて中身をローズちゃんに渡してあげた。

「あら!フロリエの期間限定の焼き菓子じゃない!ノエルったら分かってるわね!」

ローズちゃんは嬉しそうにお菓子を食べ始めた。


「お母さん……」

「どうしたの、ルミリエ?顔赤いわよ?」

「な、何でもないよ、ローズちゃん!」

「そう?」


その夜私は勝手に色々想像してしまって、なかなか寝付けなくなっちゃった……。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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