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色違いの王子様

来ていただいてありがとうございます!

再投稿になります。申し訳ありません。




「オスカー・グレイです。よろしくお願いします」


ベルナール殿下の隣でにっこり笑っているのは、隣国グラオ王国(通称灰の王国)の王子様だった。



木々の葉が落ちて冷たい風が吹き始める頃、ノエル君と私はベルナール殿下に呼ばれて王城へ来たの。お城に到着したらメイベルさんもいて驚いた。紹介したい人がいるっていうお話だったけど、まさか色違いのオスカー王子がそこにいるとは思わなかった。オスカー王子はどんな方法を使ったのか黒髪が金髪に変化してたんだ。毛染め?魔術?どうやったんだろう?瞳の色も灰色から青い色になってるし。この世界カラコンなんて無いよね?やっぱり魔術?


「…………」

「…………」

「…………今回はどういったご用件でこの白の王国へいらしたんですか?」

言葉遣いは丁寧だけど、ノエル君すごく怒ってるみたい。私とメイベルさんは言葉が出ない。私は驚いて。メイベルさんは半眼になってるから呆れてる?「うわぁ……」って呟いてた。ベルナール殿下はノエル君に睨まれて寒い季節なのに汗をかいちゃってる。



私達が通されたのはお城の中でも比較的こじんまりした応接室だった。こじんまりっていってもネージュ家の私の部屋よりも広くて調度品もとても豪華。お城だから当たり前だよね。メイドさんがお茶とお菓子を運んできてくれた後、人払いがされた。


コホン、と一度咳ばらいをしたベルナール殿下が説明を始める。

「今回の魔人の件は周辺各国に情報共有されることになったんだ」

最近、海の向こうの大陸から魔物が侵入してくる事件がぽつぽつと起こり始めてるみたい。一年前も魔物の壺が持ち込まれて大騒ぎになったし、似たような事件が他の国でも起こってるんだね。それで今回の件もその場に居合わせた各国の王族の方々や重鎮の方々が事態を重く見て、灰の王国の責を問わない代わりにみんなで協力して対策を練りましょうってことになった。そうだよね、情報共有した方がまた魔物が侵入した時に対抗しやすいよね。


「それで?オスカー王子殿下もお咎めなしという事ですか?」

ノエル君のオスカー王子をへの視線が氷点下だ……。こ、怖い。

「まさか!きちんと廃嫡されたよ?」

オスカー王子は明るくそう言った。え?廃嫡?聞き間違い?この世界の王族の廃嫡って確か身一つで放り出されるってことだったよね?

「そ、そんな笑って仰ることでは……」

ベルナール殿下の汗が増えた……。

「まあ、当然の処分でしょうね」

ノエル君の冷たい声がそうしてるみたいに、窓のガラスを冷たい風がカタカタ揺らしてる。


「今は王族じゃない、領地も持たないただの名ばかりの公爵なんだ。オスカーって呼んでくださいね」

微笑むオスカー王子……じゃなくてグレイ公爵様は憑き物が落ちたみたいに穏やかな顔をしてる。グレイ公爵……。身分だけは保証されてるってこと?良く分からない。私の隣でノエル君が小さく舌打ちして「極甘処分か……」って呟いた。どうか聞こえてませんように……。


「それでね、グレイ公爵はわが国で魔物、魔人対策を働きながら学ぶことになったんだ」

良かった。ベルナール殿下には聞こえてなかったみたい。

「…………どうしてわが国で?」

ノエル君の声がどんどん低く冷たくなっていく……。


「こちらにはモーネ王国騎士団魔術師特別部隊があるでしょう?魔物との戦闘経験もあるということですし、知識のある人材もいらっしゃる。それを学んでくるようにって。まあ、期間限定の追放みたいなものなんだけどね」

グレイ公爵様はノエル君を見て、メイベルさんを見て、最後に私を見た。「追放」って……なかなかパワーワードだよね。

「だから、我が国に滞在されるという事なんだよ。それで特別部隊に所属するから、顔合わせの前に関係者の君達には説明をって思ってね……。あれ?ノエル?」

ベルナール殿下の言葉の途中でノエル君は立ち上がった。

「失礼します。ベルナール殿下。帰るよ、ルミリエ!」

「え?ノエル様っ!!でも!」

ノエル君に手を引かれて私は応接室を出た。後ろで、「ああ、やっぱり怒らせたか……」ってベルナール殿下の声が聞こえた気がする。いいのかな?



「ノエル様っ、待ってください!」

お城の回廊でやっとノエル君が立ち止まってくれた。中庭は冬の花が咲き始めてる。あ、小さな噴水もあるんだ。可愛いお庭!

「さすがにベルナール殿下達に失礼なのでは?」

お城の中だし、誰が聞いてるか分からないから、丁寧な言葉で令嬢っぽく話しかけた。

「…………ルミリエは怒ってないの?」

「怒る?」

「あんな目に合わされて、ルミリエは一時昏睡状態にまでなったんだ……。正式な謝罪も無く、有耶無耶にしようとしてる」

そっか、ノエル君は私の為に怒ってくれたんだ……。

「ありがとうございます……ノエル様」

私はノエル君の腕に抱き着いた。

「っルミリエ?……はぁ……」

ノエル君のこわばった体から少し力が抜けたみたい。


「ルミリエはオスカーに優しいよね……」

「え?」

そうかな?

「もしかして本当はああいうタイプが好きなの?髪の色も元はルミリエと一緒だし」

「ええ?!違いますよ!タイプと言えばノエル君がバッチリ一番ですから!!出会った頃のノエル君はそれはもう天使みたいで!もちろん今は誰よりもかっこよくてむぐ」

「ルミリエっ、声、大きいよ」

ノエル君に口を塞がれた。そうだった!ここはお城、ここはお城!あ、ノエル君の顔が少し赤い。

「ご、ごめんなさい……」

「全く……。でも嬉しいよ。ちょっと引っかかるところはあったけど」

あれ?なんかおかしなこと言っちゃったかな?でも、少しノエル君の機嫌が直ったみたいで良かった。


「えっと、グレイ公爵様は最初迂闊だっただけで、ほとんどあの魔人に乗っ取られていただけみたいですし、一応あの魔人が大部分悪いかなって思うんです」

「まあ、その初動の部分が最悪だったんだけどね」

「被害にあってしまった人達のことを考えないわけではないんですけど、それでもグレイ公爵様も被害者ですし、そうですね、これからは戦力になってくれるんじゃないかなって思います」

「戦力?ああ、成程ね。魔人が利用するくらいの魔力、またはその器を持ってるから、か」

小説とかでもよくあるよね。一度敵側にいた人が仲間になると強いとか。結構頼もしいんじゃないかな?


「うん。僕もそのつもりでここへ来たんだ」

「グレイ公爵様!」

いつの間に追いかけてきていたのか、グレイ公爵様が近くに来ていて驚いた。

「オスカーでいいのに。……グラオ王国として正式な謝罪と感謝ができなくて本当に申し訳ない」

グレイ公爵様はノエル君と私に深く頭を下げた。

「そ、そんな……やめてください公爵様!」

「元」とはいえ、王子様に頭を下げさせるのは抵抗がある。私は慌てて言ったけど公爵様は頭を上げなかった。


「僕個人としては君達に心から感謝してる。国を守ってくれてありがとう。王国の思惑は色々あるのだろうけど、僕は決して君達の不利益になるような行動はしないと約束する」

「…………」

「すぐに信用してもらえるとは思ってない。けど、これからの行動で示していくよ。じゃあ」

グレイ公爵様は顔を上げると、そう言って立ち去って行った。


「ノエル様……」

「少し様子を見てみるよ。同僚になるみたいだしね」

ため息まじりにそう言ったノエル君の顔は、さっきよりも少しだけ緩んでいるように見えた。








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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