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合い間の休息

来ていただいてありがとうございます!




「平和ねぇ」

「本当にねぇ」

「ありがたいですよねぇ」


たくさんのケーキを前にしてローズちゃんとメイベルさん、そして私はまったりとお茶を楽しんでいたの。


やっと帰ってきました。白の王国、メイリリー学園。カフェテリアで注文できるスイーツを全て並べてお茶会の真っ最中なんだ。私とメイベルさんは国を離れていた間の補習があるからこの後もまだ授業がある。ちょっと休憩中。ちなみにノエル君はその必要は無いから、今日は私を待っていてくれてるんだ。ちなみにシモン様は一時帰国の期間を終えて留学先へと戻っていったんだ。お世話になったからもっとちゃんとお礼をしたかったな。


隣のテーブルでは甘い匂いを避けるようにノエル君とベルナール殿下が座っている。

「そんなに食べて大丈夫かい?授業中に眠くなってしまいそうだが……」

ベルナール殿下はやや困惑気味に顔を引きつらせてる。

「大丈夫ですよ、殿下。ほぼローズが消費しているので」

「ああ、本当だ……」

ベルナール殿下の目には、大量のケーキが少しづつ消えていってるように見えるんだろうなぁ。


ノエル君はお茶を飲みながら、なにやら書類に書きつけてる。たぶん隣国での事件の報告書だと思う。帰国してから私達はみんな白の王国での簡単な事情聴取も受けたの。ノエル君は魔物対策室に所属してるから、より詳細な説明を求められちゃってるみたい。

「ノエル様、学園に来るのは大変なんじゃ……」

たぶんノエル君は私達の代わりに、報告書を書いてるんだと思うんだ。それなのに一緒に学園に登校してくれて、私の授業が終わるのを待ってくれてる。


「城で仕事する方が能率が下がるから」

ノエル君は言いながらもペンを止めない。

「そうなのかい?ノエル」

「ええ、僕はルミリエの顔を見ていた方が安心して仕事ができますから」

「そうか!なら、ルミリエ嬢も……」

「殿下……」

冷たい声と冷たい視線がベルナール殿下を黙らせてしまった。

「わかった!わかってるから!もう言わないから!」


「何のお話でしょうか?」

私の名前が出てたけど?

「何でしょうねぇ……」

メイベルさんはケーキを食べながら次の補習の教科書をパラパラとめくってる。大変な目に合って更に補習じゃ確かにうんざりするよね。

「過保護よねぇ……」

ローズちゃんはケーキに小さな手をかざして少しずつ吸収しながら呟いた。何のこと?


「そんなことより、灰の王国からの報告はまだなんですか?こちらは被害者なんですが?」

あ、それ、気になる!オスカー王子はどうなってしまったんだろう。

「ああ、まだあちらは混乱中らしいよ。逃げた魔人?の行方は分かってないようだ。オスカー王子が持っていたと思われる魔人のコアの宝石も消えてしまったそうだよ」

ベルナール殿下の説明にノエル君の顔が厳しいものになった。

「それって、もしかしてこちらの王国に魔人が逃げてきてる可能性があるってことですよね?」

メイベルさんが教科書を閉じて、焦ったような声を出した。そうか……そういう可能性もあるんだよね。私のんびりしすぎ?私は慌ててローズちゃんを見た。


「大丈夫でしょ。あれだけ弱らせてやったんだから」

「そうなの?ローズちゃん」

「ええ。基本、魔人は普通の魔物なんか比べ物にならないくらいの強さだけど、あの魔人は昔にかなり弱らせられて、さらに分散されて封じられてたわ」

ローズちゃんはケーキを一つ食べ終わる(?)ともう一つに手を伸ばした。

「うん。これ美味しいわ。ルミリエもメイベルも食べなさいよ」

「あ、そうなの?秋限定のリンゴのタルトだね」

「さっき私もそれ食べましたよ!美味しかったですよ。ルミリエ様!」


「それで?どうして大丈夫なの?」

脱線しかけた話をノエル君が元に戻してくれた。

「今回更に私達が弱らせてやったから、しばらく自分で力をふるえないはずよ。あの時、消滅させられないように自分を遠くに飛ばしてたけど、案外そこで力尽きてるかもね」

「そうなんだ……」

「なら、しばらくは安全ってことなんですね!良かったです」

私とメイベルさんは顔を見合わせて笑いあった。


「どういうことなんだい?」

この中で唯一ローズちゃんが見えないベルナール殿下が戸惑っている。ノエル君がローズちゃんの言葉を説明すると安心したように笑った。

「そうか。魔人の事はひとまずは心配ないようだね。オスカー王子の事だけど、順調に回復しているみたいだよ」

「そうなんですか!良かったです。メイベルさんのおかげですね!」

メイベルさんは世界でも希少で貴重な聖魔術の使い手だもの。オスカー王子が回復したのはメイベルさんが治癒魔術をかけてくれたからだよね。ただベルナール殿下のお話だと、オスカー王子の処遇についてはまだ決まってないみたいだけど、厳しいものになりそうだって。外国のお客様も巻き込まれたからこれは仕方ない事なのかもしれない。


「何をおっしゃってるんですか?ルミリエ様ったら」

「え?」

「ルミリエ様とローズ様がいなかったら、私達全滅でしたよ?オスカー王子殿下が助かったのはお二人のおかげだと思います」

メイベルさんが何を言ってるんだ?みたいな顔で見てくるから困った。ノエル君を見ると書類から顔をあげたノエル君が私を見てる。

「自覚無かったの?」

呆れたように書類の上に頬杖をついた。

「ロ、ローズちゃん……」

「私は今回ルミリエの力を誘導しただけだから。私のちからはほとんど使ってないわよ。普通は契約者の力を増幅するためのものだけど、今回は必要なかったわね」

「ということは、今回はルミリエ様の独力ってことですね!さすがルミリエ様!」

ええ?今回私はローズちゃん任せで、防御してただけだから、疲れたけど何もしてない感じだったんだけど……。


「なんだか、ルミリエ嬢は凄いみたいだね。やっぱり……」

「殿下」

更に氷点下になったノエル君の声と視線に、ベルナール殿下は青い顔をして黙ってしまった。ベルナール殿下は私に何か御用があるのでは?

「二人とも、そろそろ時間じゃない?」

ノエル君に言われて時計を見た。

「大変!早く片付けて教室へ戻らないと!」

「急ぎましょう!ルミリエ様!」

私達は急いで食器を片付け始めた。

「慌ただしいわねぇ。じゃあ私は腹ごなしに街を散歩してこようかしら」

ローズちゃんはそう言ってどこかへ飛んで行ってしまった。



こうして和やかな(?)ティータイムが終わってメイベルさんと私は補習に戻ったんだ。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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