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夢と目覚め

来ていただいてありがとうございます!




夢を見てた。たくさんの魔物が襲ってくる夢。私は信頼するあの子と一緒に戦ってる。


ある日の戦い。追い詰められてあの子は傷を負った。どうにかその人の姿をした魔物は退けたけれど、あの子の傷は深くて……。治癒能力を持ってない私は助けられなかった。


悔しい、悔しい、悲しい、悲しい、悲しい…………


出ないはずの涙が零れるの






「ルミリエ?気が付いた?」

「…………ノエル君?ローズちゃん?」

わぁ……目が覚めたのに、目の前がくらくらするわ……。わたしどうしたんだっけ?魔人はやっつけてなかったよね?

「ごめんね、ルミリエ!ちょっとやり過ぎたわ……」

ローズちゃんが珍しくシュンとしてる。ローズちゃんは私の力を引き出してその流れを操作して防御とか色々なことを頑張ってくれてたんだって。でもさすがに使いすぎて私が倒れてしまったみたい。

「ううん。ローズちゃんがいなかったら危なかったよ……。アシスト、ありがとね」

私はゆっくりと起き上がってみた。あ、もう平気みたい。

「ルミリエ、まだ起きては駄目だ!」

「もう平気だよ、ノエル君。心配かけてごめんね。ずっといてくれたの?ありがとう。あれからどうなったの?魔人は?オスカー王子は?みんなは?」

ノエル君は困り顔だったけど起き上がった私を支えてくれた。


「仕方ないな……。とりあえずみんな無事だよ」

「魔人は逃げたわ。まだ見つかってないの」

ノエル君とローズちゃんが説明してくれた。

「オスカーはまだ目覚めてないわ。今はメイベルがずっとついて回復させてるわ」

「シモンはそのクロフォードに付き添ってるよ」

「オスカー王子は危ない状態なの?」

せっかく魔人を追い出したのに……。

「いいえ。少し消耗が激しいだけよ。ずっと魔人の支配と戦ってたからね」

「少し回復に時間がかかってるみたいだ」

ノエル君がお水を注いだグラスを渡してくれた。そういえばすっごく喉乾いてる。一気に飲み干しちゃった。

「ありがとう、ノエル君。他の人達は無事なの?」

大広間にいた人達はだんだんと目覚め始めてるって。国王様も王妃様も目を覚ましてて対応に追われてる。そうだよね、外国からの招待客もたくさんいたんだもの。もしかしてオスカー王子が乱心したように見えてしまってるのかな?


「そんなことより、ルミリエは体、何ともないの?」

「うん。ちょっと疲れただけだよ。それに」

「それに?」

ノエル君とローズちゃんが顔を覗き込んでくる。

「お腹空いちゃった……」

「!」

「あはは、そうね!もう一日近く眠ってたんだものねぇ」

「わかった。今何か持って来てもらうよ」

ノエル君は少し笑った後、立ち上がって部屋を出て行った。我ながら緊張感無いよね。でも目が覚めた時はもうお昼が過ぎて夕方に近かったんだ。本当なら、今頃はもう帰りの馬車に乗って白の王国へ戻ってる頃だったのにね。





私達が事情聴取(?)で灰の王国に留まっている間にオスカー王子は目を覚ました。事情を説明してくれたらしくて、私達は無事に帰国できることになった。どうやら私達が魔人の仲間じゃないかって疑われてたみたい。せっかく頑張ったのに失礼だよね。ちなみにアマーリエ王女殿下とフランシス様は一足先に帰国していたんだ。事件当時、アマーリエ王女殿下はすでに自室へ戻られていて巻き込まれたりはしなかったんだって。お二人が無事で本当に良かった。


帰国の前夜、ノエル君とシモン様、メイベルさんと私はオスカー王子と面会することになったんだ。私はオスカー王子がいわゆる貴族牢みたいなところに閉じ込められてるんじゃないかって心配してたんだけど、そんなことはなかった。ちゃんと王宮の大きなお部屋に通されて、まだベッドの上のオスカー王子と会えた。もちろん、ローズちゃんも一緒。


「この度は迷惑をかけてしまい、大変申し訳なかった」

オスカー王子はベッドの上で頭を下げた。

「おやめください。オスカー王子殿下。今謝罪なさっても我々がそれを受け入れることはできません」

ああ、ノエル君物凄く怒ってるみたい。無表情中の無表情だ。そうだよね、灰の王国だけじゃなくて白の王国も危なかったんだものね。ノエル君が前に言ってた通り、これは国同士の問題だよね。

「十分承知している。だが、僕の好奇心と傲慢のせいで両国を危険に晒してしまったのだから。食い止めてくれた君達には礼を言わせて欲しかったんだ。本当にありがとう」


「貴方について僕達が何かを言う立場にはありません。しかし僕個人としては今回貴方がルミリエを危険に晒したことは絶対に許せません」

え?ノエル君……!それはちょっと……。今回の事件の原因とはいえ、他国の王子様にそんなことを言ったらまずいのでは?ノエル君も白の王国の公爵家の人だけど……。シモン様も焦ったようにノエル君を見てるよ?


「すまなかった。君の大切な人を巻き込んで」

オスカー王子の視線がこちらを向いた。

「メイベル・クロフォード嬢、僕の体を治癒してくれてありがとう。魔人を追い出してくれたのも君だよね」

「いえ、私は指示に従っただけですので……」

メイベルさんは相変わらず、オスカー王子には塩対応だなぁ。

「……ルミリエ嬢」

「は、はい!」

「皆を救ってくれて本当にありがとう。あの時あの場で、温かい力が魔人の力と支配から解き放ってくれたのは覚えてる。小さな精霊殿もありがとう。感謝している。この償いは必ず……」

私はローズちゃんと顔を見合わせた。


「魔物はね、力が強くなればなるほど知恵を持つようになるのよ」

「そうなの?ローズちゃん」

「ええ。だから今後も不用意に近づかないことをお勧めするわ」

そっか、あの夢って……もしかしてローズちゃんの記憶?ローズちゃんは前にも魔物と戦ってたんだ。


「ありがとう。忠告痛み入る」

オスカー王子は痛みをこらえるように目を伏せた。


「オスカー王子殿下の経験はこれからきっと役に立つと思います」

「え?」

「誰にでも初めてのことはありますし、失敗することもありますよ!今回はちょっと良くない方に出ちゃいましたけど」

経験値を稼げたと思えばいいよね。こういう失敗をした人が後で頼もしい仲間になるのはお話でよくあるもの!幸い灰の王国では深刻な被害者は出てないみたいだし。白の王国のメイリリー学園は大変だったけど。


「ほら、失敗は成功の元って言いますし」

「何それ?そんなのあったっけ?」

ノエル君が眉をひそめてる。ああ、しまった……こっちには無い言葉だったかも……!

「そう、だね。ありがとうルミリエ・ネージュ伯爵令嬢」

最後にオスカー王子は眩しそうに私を見て微笑んだ。



それから私達はようやく帰国の途につくことができたの。ああ、くたびれたわ……。














ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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