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会話

来ていただいてありがとうございます!




「やあ、小さな精霊さん。僕に何か御用?」


灯りを落とした部屋の中、沈み込むほどの柔らかな椅子に腰かけた青年が問いかける。窓を背にしているのでローズからはその表情が見えない。

「あんた、何者?」

「駄目だよ。ボクは灰の王国の王子サマだよ?そんな口のきき方をしては怒られてしまうよ」

「残念ね。私には人間の縄張りなんて関係ないわ」

「なるほど。確かにそうかもね。でも君の飼い主は白の王国の貴族の娘でしょう?」

「私には飼い主なんていないわよ。友達ならいるけどね」

「……それはそれは」

青年は楽しそうに笑った。


「で?あんたは何者で、ここで何をしてるのよ。なんであの黒いのと同じ匂いがするの?」

「さあ?」

そのままだんまりを通すかと思われたが、意外にも青年は話を続けた。



「僕はある日、宝箱を見つけたんだ。その中に入っていたのは血のように赤い小さな小さな宝石達。僕はね置いておいたんだ。彼の帰り道だった。家族が病気で苦しんでいる商人がそれを拾っただけさ。でもその宝石達は価値が付かなかった。だから加工して売ることにしたんだよ。ブレスレットに埋め込んでね」

「あのブレスレットはあんたがこの国にばらまいたのね」

「いや?僕は何もしてないよ。ちょっと人助けをしただけさ。あの宝箱も宝石達も禍々しいオーラを放っていたようだけど、商人は喜んで拾ってくれたんだ」


「あんた、最低ね」

「心外だな。その先で起こったことは僕の預かり知るところではないよ。僕はただ見ていただけ。中々面白いことになったね。そしてとても美しいものを見つけた」

「!」

「美しい白金の光、薄紅色の君そして……あの虹色の光」

夢見るように微笑む青年の瞳には狂喜が浮かぶ。


(こいつは危ない人間……だわ。ルミリエ……。あの子に知らせなきゃ)


「逃がさないよ。ごめんね」





✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧




翌日の朝食後ベルナール殿下とノエル君、シモン様はお城の対策室で話し合っていた。私はその会話を少しぼんやりと聞いていた。気になることがあったからだった。


「整理してみよう。まず奇妙なブレスレットが出回った。魔力量を上げてくれる魔術道具として」

ベルナール殿下が話し始めた。

「次に一度ほぼすべてを回収したブレスレットが再び出回った。学園の生徒達を中心に。出所は不明。そして体調不良者が出始める。おそらく生徒達から動けるくらいの生命力を奪ったんだろう」

ノエル君が引き継ぐ。

「そしてブレスレットを介さなくても所持していた人間から生命力を取り始めた。魔術大会の時にその形が現れ始めた。黒い結晶に対象者を取り込むことで更に成長したと思われる」


「城に現れた理由は、たぶん体の一部が使われたブレスレットが大量に保管されているからだと思う。隣国に保管されている魔物に関する書物を調べさせてもらったら、今回と似たようなケースがあったよ」

シモン様の説明にベルナール殿下はとても驚いていた。


力の強い魔物を討伐する時、完全に消滅させることができないことがあるそうだ。だから、弱らせて何かに封じ込めてしまう方法が考え出された。

「それが今回の魔物だと?」

「書物の記録に残っていたのが今回の魔物かどうかはわからないけれど、今回の魔物はそのパターンに近いと思うよ」



「封じこめる……」

呟いたノエル君と私は顔を見合わせた。私は神様が封印していた魔物の事を思い出していた。神様にだって倒しきれない魔物がいるんだもの、私達にも倒せない魔物だっているよね。怖い……。

「魔物には核というものがあって、それ自体が強い魔力を持っている。でも魔物が力を使うには体が必要なんだ。魔物は元の姿に戻る為に(ブレスレット)の元へ来たんだと思う」

シモン様の説明にベルナール殿下が顔を青くする。

「なんてことだ……。そんな危険なものを城で保管していたなんて」

「すぐに封印を強くして、そうだね、神殿に持っていったほうがいい。元の魔物がどのくらいの強さかはまだ分からないけれど、まだそれ程力を取り戻していない今なら対処が可能だ。急いで魔物の核を探さないと!」


シモン様の提案でブレスレットはすぐに場所を移された。シモン様は魔術大会での出来事を「魔術の研究機関」の方に相談して、急いで帰って来てくれたんだって。封印の道具も持って来てくれたみたい。そこには魔術だけじゃなくて魔物についてもとても詳しい人がいて、様々な文献が揃っているそう。シモン様が留学した先は凄い所だったんだね。



「ルミリエ、大丈夫?今日はちゃんと僕もついて行くから」

ノエル君が私の肩に手を置いた。私とメイベルさんはこれからまた黒い結晶に閉じ込められた生徒の元へ行く予定だ。でも……。

「大丈夫だよ。ローズがどこかへ行くのなんて珍しいことじゃない」

「うん。でも……。何の連絡もなく一晩中離れてたことは無かったから……」

そう、ローズちゃんの姿が見えないんだ。昨日の黒い魔物騒ぎの時から。


いつものように街へ行っているのかもしれないけれど、今朝はなんだか嫌な胸騒ぎがする。


「ローズちゃん、早く帰って来て……」








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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