魔術大会 二年生 ①
来ていただいてありがとうございます!
「ジョゼさん、メイベルさんお疲れさまでした」
「ルミリエ様!素敵でしたわ!!」
「上手くいって良かったです」
魔術大会初日の午前中の一回目の上映はとても上手くいった。先生方と何人かの生徒達が見に来てくれたんだけど意外と好評だったみたい。私は試験が終わったような気持ちになってすごくホッとした。午後からはノエル君とお父様とお母様が見に来てくれる。
「メイベルさんの魔術道具、とっても助かりました。とても綺麗な音楽でいい感じの上映会になりました。ジョゼさんの炎の魔術も素敵でした。あの鳥の国でたくさんの鳥の羽が降って来る演出、凄かったです!」
「ありがとうございます。ルミリエ様とご一緒出来て楽しいです」
ジョゼちゃんはそう言ってふわりと笑った。少し打ち解けてくれてるみたいで嬉しい。それに思い悩んでいる顔が多かったからちょっと安心した。
ジョゼちゃんが使ってくれた炎の魔術は極弱い熱もほとんどない光みたいなものだから、何かに燃え移ったりとかはしない。触れれば少しあったかいかなくらいのものだ。もちろん何かを燃やすことができる大きな魔術も使うこともできる。逆にこういう繊細な制御って難しいらしいから、ジョゼちゃんは結構すごい魔術師なんだと思う。
「父に無理を言って商品を借りてきて良かったです!」
「え、それ大丈夫なんですか?」
それは聞き捨てならないよ?メイベルさん。
「はい!壊してないから問題無しです!」
いいのかな、それで……。後でクロフォード様にお礼状を書いておこう。
私達は食堂でテイクアウトしてきたお昼ご飯を一緒に食べた。
「午後から見に来てくださるのは、サフィーリエ様とご両親ですよね!!ご両親かあ。私もっと頑張りますね!!」
メイベルさんの思考の方向性が今イチ良く分からないんだけど、張り切ってくれてるのに水を差したくなくて黙ってた。
「そういえば、ジョゼさんのお友達はまだお休みしてるの?」
「……はい。あのブレスレットは手放してくれたそうなんですけど、体調が戻らないらしくて……」
学園をお休みする人が増えていたのは風邪が流行っているせいじゃなかった。あの怖いブレスレットを身に付け続けて体が弱っていたからだった。ジョゼちゃんのお友達も被害に遭ってしまって魔術大会に参加することが出来なくなってしまった。
「ジョゼット様はあのブレスレットが良くないものだとどうやってお分かりになったんですか?」
メイベルさんがサンドイッチを持って首をかしげてる。
「分かったというか、何となくそう思ったというか。明確な理由は無いんです。昔から勘がいいみたいで、例えばこっちの道を通りたくないなって思って違う道を通ったら、後日そこで馬車の事故が起こっていたことを知ったり、何となく食べたくないなって思って食べなかったら、それを食べた他の子がお腹を壊して寝込んだりとか……。そんな感じなんです」
「へえ、凄いんですね!」
さっきから、オレンジ色の光の球体がジョゼちゃんの周囲を飛び回ってる。多分ジョゼちゃんを守るためにあの精霊がどうやってか伝えてるんだろうな。ローズちゃんが言うには「目覚め」ればジョゼちゃんにも精霊が見えるようになるかもしれないんだって。目覚め方はローズちゃんにも分からないみたい。
そんなローズちゃんは今日は学園内をあっちこっち見て回るって言ってた。私のは見てくれないの?って聞いたら、さんざん練習を見たからもういいんだって。ちょっと寂しい。
そして午後の部開演の時間が近づいて来て、約束通りお父様とお母様が来てくれた。お母様はともかく、お父様は仕事が忙しいから来れないかと思ってた。
「お父様、お母様、今回一緒に発表をしてくださってる、ジョゼット・エマリー様とメイベル・クロフォード様です」
私はお友達を両親に紹介した!……お友達でいいかな?いいよね?
「ルミリエと仲良くしてくださってありがとうね。エマリー様、クロフォード様」
「これからも娘をよろしく」
「「光栄です」」
挨拶の後、私は両親を席に案内して座ってもらった。それに午前中に見に来てくれた人から話を聞いた生徒達が数人見に来てくれて、小さな教室はそれなりに活気づいた。
「ルミリエ、遅くなってごめん」
いよいよ時間という時にノエル君が走って教室に入って来た。
「ノエル様!」
「良かった。間に合って」
「来てくれてありがとうございます!」
ノエル君は私の両親の所へ歩み寄った。
「ご無沙汰しております」
「……ルミリエがいつも世話になっております」
ん?なんかパチッって火花が散ったような気がする……。気のせいかな?
「まあノエル様、最近はお忙しいとお聞きしておりますわ。お体ご自愛下さいませね。ルミリエが心配してますのよ」
「ありがとうございます。ネージュ伯爵夫人」
あ、和やか。さっきのはやっぱり気のせい?
「じゃあ、そろそろ始めます!ノエル様、こちらの席へどうぞ!」
私は空いてる席でなるべくお父様から離れた席にノエル君を案内しておいた。まだ空席はあるけど時間だし。
「じゃあ、ジョゼさん、メイベルさん」
「はい」
「お任せください!」
三人で頷きあって配置についた。
その時、にわかに外の廊下が騒がしくなって女の子達の高い笑い声が響いた。そしてメイベルさんが閉めようとしていたドアから顔を出した人がいる。
「うわっ」
メイベルさんが嫌そうに小さく呟いた。
「やあ、どうやら間に合ったみたいだね。良かった」
隣国灰の王国の第二王子、オスカー殿下がそこにいた。
何故?
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