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秋 お友達の家訪問①

来ていただいてありがとうございます。




夏休みは自分の家とノエル君の家とお互いの家の領地を行ったり来たりして終わった。


「ちょっと!ノエル様!ルミリエを独り占めしすぎよ!」


リンジー様は最近私を呼び捨てしにてくれることが多い。嬉しい。

「私の事もリンジーでいいわよ」

って言って下さってるんだけど、ちょっと恐れ多くて……。


「仕方がないでしょう。婚約して初めての夏なんですから。親戚への顔見せに挨拶回り……色々忙しかったんですよ」

ノエル君はそう言ってるけど、そこまで忙しくは無かったような……。まったりのんびり二人で過ごすことが多かったよ?


「もうっ!ずるいわよ!ルミリエっ!」

「は、はいっ」

「今度の休みは絶対うちに来てよね?!」

「え、えっと……」

ついノエル君を見てしまう。

「ふう、仕方ないな……。ルミリエが行きたいならいいよ。僕も行くけど」

私はほっと胸を撫で下ろした。実はリンジー様から夏の間に何度もお誘いを受けていたから、お断りするのは心苦しかった。でも、リンジー様のお屋敷のある領地は少し遠いところなので、まだ体力に自信のない私にはノエル君の許可が下りなかった。


「どうせ夏休みだって、ノエル様がルミリエを独占してたいからって離さなかったんでしょう?わかってるんですからね!」

リンジー様は腕組みをしてノエル君を睨んでる。

「…………」

あれ?そうなの?違うよね?

「いえ、ノエル様は私の体調を気遣ってくれていたんです」

「…………」

あれ?ノエル君何で無言なの?



「ノエルってさ、今まで女性に全く興味ない感じだったけど、結構束縛のキツいタイプだったんだね……。驚いたよ」

シモン様が眼鏡を直しながら、驚いた顔をしてる。

「ルミリエ嬢はこれから苦労するかもしれないね」

苦笑いを浮かべるベルナール殿下。


ここは学園のカフェテラス。今日の授業は午後の早い時間で終わったので、ノエル君と一緒にお茶を飲んでいたら、リンジー様、シモン様、そしてベルナール殿下までやって来て同じテーブルに座ったのだ。


リンジー様はあの舞踏会から学園でちょくちょく声をかけてくれている。そのおかげなのか少しづつ私と話してくれるクラスメイトも増えて来て、私はちょっとホッとしていた。お友達って呼べる人はまだなんだけど。


「ええと、ノエル様はとても優しいのでそんなことは無いと思います。大丈夫ですよ、ベルナール殿下」

うん。ノエル君は本当に私の体調を第一に考えてくれてて、多分私の知らないところでも守ったり庇ったりしてくれてると思うんだ。だって、王女殿下とお兄様のことあんなに心配して頑張ってた人だから……。私はノエル君の横顔を見つめた。


「ノエル様はとても綺麗な方なんです。心の中まで……」

あれ?ノエル君少しお顔が赤いですね?大丈夫かな?


「ご馳走様……」

そう言いながら自分のトレーを持って、ベルナール殿下が席を立った。心なしがお顔がひきつってるような……?

「もう行かれるのですか?」

シモン様が立ち上がった。

「ああ、これからちょっと城で用事があってね。私はこれで失礼するよ」

みんな、立ち上がって殿下を見送った。


「さあ、僕達も帰ろう。父上が珍しく話があるっていってただろ?リンジー」

シモン様はリンジー様のカップをトレーにのせた。

「えー、もう?……まあいいわ。ルミリエ!明後日は貴方のお家に馬車を寄越すから!」

リンジー様が目を輝かせてる。可愛い方だなぁ……。思わす笑顔になっちゃう。


「それには及ばないよ。僕が迎えに行って一緒に伺うよ」

「…………どれだけ過保護なの?」

「……溺愛……?なのか?」

ノエル君はすましてる。マルク―ル兄妹はちょっと呆れ気味?私は今からわくわくしてる。


「ノエル様と一緒にお友達のお家に行けるなんて嬉しいです」


「「…………」」

「……お友達……」


「あ、申し訳ありません。つい、勝手に……!」

お友達扱いしちゃった……。礼儀知らずだった……。


「と、友達よ!私達はもうっ親友よっ!!」

リンジー様が顔を赤くして力説して下さった。ああ、この方も優しい人なんだなぁ。

「……はい、ありがとうございます」

良かった、怒ってなくて。良かった、いい人で。


「じゃあ、明後日!約束ですからね!!」

そう言いながら、リンジー様とシモン様も帰っていかれた。


「ふう、嵐みたいだったね……」

「楽しくて、明るくて、優しくていい方です、リンジー様」

「ルミリエ、楽しそうだね。夏の間はごめん。リンジーのところへ行かせてあげなくて」

「いいえ!ノエル君とずっと一緒で嬉しかったです!」

「…………そう」

あ、今のノエル君の顔、すごく好きだなぁ。柔らかく小さく笑った顔……。夏の終わりの少しだけ熱の残った風がノエル君の白い髪を優しく揺らしてる。神々しくて思わす拝んじゃったら、ノエル君にほっぺを引っ張られた……。ちょっと痛い……。






お茶を飲んで学園から帰る頃にはもう夕方になっていた。白の王国の夏は短い。今はもう夕方には涼しい風が吹いてきて、空気には秋の気配がある。帰りの馬車に揺られながら私は元の世界の秋の事を考えてた。


「紅葉狩りに体育祭、文化祭かな……」

「モミジガリ?タイイクサイ?ブンカサイ?何それ?」

私は慌てて口を手で押えた。声に出てた!

「教えて。ましろの世界の事?」


何とか説明できた、と思う。文化祭と体育祭はちょっと説明が難しかった。

「ふーん、秋に色づいた木を見ながら、か……。それに学校でそんなお祭りがあるんだね。似たようなのがこの学園にもあるよ。秋の終わりに」

「え?学園でお祭りが?」

「んー、お祭りっていうか、魔術の発表会?技術を競う大会だね」

「魔術の……」

「魔術を使って色々なことをやるんだよ。去年は、そう巨大なゴーレムをつくったチームがあったな」

「ゴ、ゴーレムですか?チームでやるんですね。楽しそうです」

「個人で発表をすることもできるよ。あとは、魔術の戦闘技術を競う大会も催される。僕は毎年こっちかな」


「なんだかとっても楽しそうです!それにまたノエル君のカッコいいところが見られるんですね」

私がうっとりしてると、ノエル君が私のおでこをつついた。

「こら、あの時の僕の事はカウントしないようにね」

「えー、ノエル君の魔法少女は可愛くてカッコ良かったですよ!!……ノエル君、いひゃいでふ」

あまりほっぺを引っ張らないで欲しい……。そのうち戻らなくなりそう……。


「まったく……。それから魔術大会では予選落ちばかりだから、つまらないと思うよ」

「どうしてですか?ノエル君あんなに強いのに……」

「基本、全員参加なんだけど、他の発表だと時間が取られすぎるから面倒で……。その点戦闘技術の大会なら予選で落ちれば一日で終わるから」

「そうなんですか……」

ノエル君は目立つのが好きじゃないみたいだから仕方がないけれど、私はすごく残念だった。


「…………はぁ。今年は少しは頑張ってみるよ……」

「え?」

「一回くらいは勝てるようにね」

「わあ!」

「その代わり、頑張ったら何かご褒美をもらいたいな」

「はい。何でもいいですよ。何が良いですか?またお菓子を焼いてきたらいいですか?」

この前、お菓子を焼いたと言ったら、食べたいって言ってもらえて、食べてもらったことがある。とても喜んでもらえたから、私も嬉しかったんだ。


「ん、それも捨てがたいけど……」

ノエル君はここで言葉を切った。

「まあまだ勝てるかどうかも分からないし、大会までに考えとく」

「はい。わかりました」


リンジー様との約束、魔術の大会、ノエル君の勇姿。楽しみがいっぱいでワクワクします!





ここまでお読みいただいてありがとうございます。

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