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魔術の合同授業

来ていただいてありがとうございます!




「はあ、いいお天気。なんだか運動会の練習みたいですね」


抜けるような青空、少しだけ汗ばむような陽気の中、メイリリー学園では魔術の戦闘の学年合同実習授業が始まった。昨年の魔物の壺事件を受けて今年度から取り入れられることが決められていた。今日はその初日で二年生全員が学園のグラウンドに集合していた。




「うんどうかい?」

「あ、ノエル様!えっと、体育祭と同じようなもので……」

「こらっ。大きい声で言っちゃダメだよ!」

ノエル君に耳元で小声で窘められた

「あっ」

思わず口を押えた。そうだった、私ってばつい……。前世の事を言ってしまった。

「全く……。合同授業にしておいて良かった……」

「ノエル様、困り顔もかっこいいですね……いひゃいれす」

ほっぺたが伸びちゃうよ、ノエル君。

「それにしても学年合同の授業にしたのはノエル様なのですか?」

「魔術の研究機関が運営してる学園のカリキュラムを取り入れたんだ」


ノエル君が教えてくれた魔術の研究機関っていうのは海を渡った隣国にあるんだ。ノエル君のお兄様のフランシス様が去年まで行ってて、今はシモン様が留学してる場所。



今行われてるのは魔術の的当て。学園のグラウンドに用意されたたくさんの的に各々の得意な魔法を当てていく。

「初歩の初歩だけど、教師達も魔術の戦闘なんて慣れてないからね。この程度から初めて行くことになったんだよ」

「色んな魔法が見られて楽しいです。あ、次私の番ですね!行ってきます!ノエル様」

「うん。頑張って」





********************



ノエル視点


「ずいぶん楽しそうね、ルミリエは」

いつの間にか精霊のローズが僕の顔の近くに浮いていた。

「戻っていたのか、ローズ」

「うん。もうすぐお昼でしょ?」

「…………精霊はそんなにお腹がすくの?」

「お腹はすかないけど、食べ物の味は分かるわよ。それにルミリエが食べてる所を見るのが好きなのよね」

「それは僕も同感だ。幸せそうで、とっても可愛い」

「…………そうね」


僕とローズはルミリエを見つめながら、皆とはやや離れたところで小声で会話していた。学園内にも街にもたくさんの人間がいるというのにローズは他の人間には見えないようだ。学園を飛び回ってるけれど騒ぎになることは無かった。


「シモンからは何かある?」

「いいえ。今のところは何の動きも無いようよ。彼はとても楽しそうに魔術の研究に勤しんでるわ」

「……そう」

ローズにはシモンとの連絡役を担ってもらってる。交換条件は甘い菓子だ。……やっぱりローズ自身も食べるのが好きなんだろうな。




僕のルミリエは幻影の魔法で光の矢を百発百中で的に当てていた。

「うーん、やっぱりルミリエの魔法は精霊魔法に近いわねぇ」

ローズがあごに人差し指を当てて考え込んでる。

「そうなの?まあ、異世界の魔法だからね。可愛いからなんでもいいよ」

「…………」

なにやら呆れたような波動を感じるけど、まあどうでもいいか。


十発目を数えたところで僕は教師の元へ近づいて行った。許可を得てルミリエに話かける。

「ルミリエ、少し顔色が悪いよ」

「え?ノエル様、私は大丈夫で……」

ルミリエが言いかけたところで僕はルミリエを抱き上げた。「キャー!!」という声が上がるが、気にせずにルミリエを校舎の中に連れて行った。


僕はルミリエの魔法の能力を高く評価してるけど、いやそれゆえにルミリエの病弱アピールは忘れない。誰かに目をつけられることは絶対に避けたい。万が一にも以前のように魔物との戦闘なんかに巻き込みたくないからだ。


「過保護ねぇ」

後ろを飛んでついてくるローズの呟きが聞こえる。その顔に呆れたような笑みが浮かぶのが見えたけど、特に気にならなかった。それよりも僕の腕の中で頬を真っ赤にしてるルミリエの顔を見るので忙しかったからだ。かわいい。





********************




合同授業の後、教室に戻った私はメイベルさんに話しかけられた。

「ルミリエ様!授業はどうでしたか?」

「ええ、的当てはちゃんとできたと思います。メイベルさんの方はどうでしたか?」

メイベルさんの得意魔術は治癒魔術なので、私達とは別で教室で座学だったんだ。

「今日は色々な説明を受けただけなんですけど、これからは街の医療施設を回って実習をするみたいです」

「へえ!そうなんですか!」

意外と実践的なんだ。お医者様の研修みたい。あれ?教室の窓辺が騒がしい。クラスの中で割と中心的なグループの女子生徒達がキャーキャーと盛り上がってる。



「ねえ!皆様、お聞きになりまして?」

「まあ、どうなさったの?カトリーヌ様」

「隣国の王子様がこちらの学園へ視察に来られるそうなのよ!」

「ええ?隣国ってどちらの?」

「灰の王国のオスカー第二王子殿下ですわ!!」

「ええ?!あのお美しいと有名な?!」

「まああ!!素敵ですわね!確かご婚約は」

「まだですわ!!」


女子生徒達が色めき立ってる……。そうだよね、王子様が来るならそうなっちゃうよね、女の子なら。うんうん。教室の隅っこで私とメイベルさんはそんな様子を見ていた。



「隣国の王子様がいらっしゃるんですね」

うーん、ベルナール殿下とリンジー様の婚約披露の舞踏会にいらしたような気がするんだけど、覚えてない。あの時はノエル君の横で笑ってるだけで精一杯だったから。私にとっては貴族としての国際交流のある行事はほぼ初めてだったから、挨拶だけでもとても緊張したんだ。……うーん、ダメだ。思い出せないや。

「どちらにせよ、私達にはあまり関係が無さそうですね」

メイベルさんはあまり王子様に興味が無いみたい。私も同じだけど。


そんな事よりもお昼ご飯だ。今日はノエル君と一緒に食べられるんだ!嬉しい。












ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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