新しくて懐かしい
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「ルミリエ、一緒に帰ろう」
放課後、ノエル君が私の教室まで来てくれてとても驚いた。ちょうどメイベルさん達と新しく増えた魔術の実習の授業の話をしてたところだったんだ。ちなみにローズちゃんはお昼ごはんを一緒に食べた後、街へ行くと言って飛んで行ってしまった。ローズちゃんはよくそうやってあちこち行って楽しんでるみたい。気ままな精霊さんだ。
「ノエル様?今日もお休みだったのでは?」
「うん。なんとかまとめて帰って来た。いつまでも時間を取られるのは御免だからね。さあ、今日はうちでゆっくり過ごそう」
ノエル君がそう言って笑うと周りからざわめきとどよめきが起こった。主に女子生徒達の。
私が驚いてるとメイベルさんがノエル君に近づいた。どうしたんだろう?
「……なに?ああ、君がルミリエと知り合ったっていう……。何か用?」
「あ、あの、父がお世話になっております」
そう言ってメイベルさんは頭を下げた。
「ああ、君の父君にはちょっと魔術道具について話を聞かせてもらっただけだよ。特に世話した覚えはない」
あれ?ノエル君何だか冷たい感じ……?
「そ、それと、私以前にサフィーリエ様に助けていただいていて、その時のお礼を……」
メイベルさんはノエル君と話がしたかったみたいだけど、ノエル君は素っ気なかった。
「悪いけど全く覚えてない。勘違いじゃないの?」
眉をひそめたノエル君は嘘をついてるようには見えない。メイベルさんもそう感じたみたいでちょっとがっかりしたみたいだった。
「……そうですか」
「話は終わり?なら、僕達は失礼させてもらう」
ノエル君は私の手を取って促した。
「あ、じゃあ、メイベルさん、また明日。ごきげんよう」
「はい、ルミリエ様。また明日」
メイベルさん寂しそう。もしかして、メイベルさんって……。私の胸がちくっと傷んだ。
「なあんだ……。サフィーリエ様って相変わらずですのね……」
教室を出る時に女の子達のそんな声が聞こえた。
「ノエル君、いつもあんな感じなんですか?」
馬車に揺られながら気になって聞いてみた。
「ん?あんな感じって?」
「メイベルさんになんだかちょっと素っ気なかった感じがして……」
「そう?普通じゃない?知り合いでも友人でもクラスメイトでもない人だし。おかしいかな?」
そういえばそうかな?メイベルさんはノエル君と知り合いみたいだったけど、ノエル君は覚えが無い。ノエル君は優しいから、無意識にしたことが助けになったとか?だったら知らないのもわかるか、な……?
「おかしくないかも……?」
私は首を捻った。
「でしょ?そんなことより今日はちょっとびっくりさせることがあるんだ。楽しみにしててよね」
ノエル君は一転してとても楽しそうに笑ったから私もつられて笑ってしまう。
「え?なにかな?楽しみ!」
そんな話をしていたら、馬車はサフィーリエ公爵家の王都のお屋敷に到着した。
「今日届いたんだよ」
通されたお部屋の中にあったのは……。見覚えのあるデザインの綺麗なドレスだった。
「ノエル君、これって……魔法少女の時の……」
「そう。思い出して絵に描き起こしてみたんだ」
そう、ノエル君が用意してくれたのは以前ノエル君に魔法少女に変身してもらった時の最初の衣装だった。丈をロングにしたドレスになってるけれど。間違いなく私が考えた魔法少女のコスチューム。
「これ、ノエル君が着てくれるの?……」
「ルミリエの、だからね?」
ああ、残念……。私の言葉に被せるように念を押されてしまった……。きっとノエル君に似合うのに……!
「でもこれは私には……」
「絶対に似合うから。僕なんかよりずっとね」
ノエル君、顔が怖いよ?
「これは僕のデザインっていうより、ほとんどましろの、ルミリエのデザインだね。僕がデザインするって言っちゃったけど決めたのは色だけだな」
ノエル君はそう言って少しだけ笑った。ノエル君が着てたのはミルキーホワイトだったけど、ノエル君が贈ってくれたのはアイボリーのドレスだった。
「あったかい色……」
「ルミリエに似合うよ。あのネックレスもつけてよね。あとこれも」
ノエル君が開けた小箱の中にはやっぱり魔法少女の時のティアラっぽい髪飾りが入ってた。一つだけ違うのはネックレスと同じブルーダイアモンドが一粒あしらわれてるところだった。
「わあ!かわいい……」
自分の考えてたものが現実に現れて私は感動してた。前世の妹にコスプレ衣装を作ってた時は妹の好みに合わせてたから、こういう系統の服は作らなかったんだ。
「似合うかな?」
「うん。絶対似合うよ。絶対」
「ありがとう、ノエル君」
「ルミリエが着たところ早く見たいな」
ノエル君と寄り添ってしばらくの間ドレスを見つめてた。新しいけれど懐かしいドレスを。
穏やかな晩春の宵、ベルナール殿下とリンジー様の婚約お披露目舞踏会が三晩にわたって行われた。諸外国の方々も招待されて、それは華やかで終始和やかな雰囲気で終わった。ノエル君と私は初日だけの参加だった。
私が着ていたドレスはアマーリエ王女殿下とリンジー様にとても気に入られたみたいだった。後日お二人のお茶会に招かれた時に褒めてもらえたんだ。
「そう!ルミリエのドレス、素敵だったわ!!」
「ノエルに聞いたけど、貴女がデザインしたのですって?」
「前に考えてくれたのより良かったわ!」
「諸外国の貴賓の方々も褒めてらしたわよ?」
前にリンジー様や王女殿下のドレスのデザインを考えたことがあったんだけど、その時にはこの国のドレスの形に多少アレンジを加えただけだった。それに比べて今回の私のドレスはベースが異世界(私の世界)の魔法少女用の衣装だから、他の人には目新しく映ったんだろうな。
「今度はもっとルミリエの好きなようにデザインしてみてよ」
「わたくしも見てみたいわ!」
ということで、リンジー様とアマーリエ王女殿下の初夏の舞踏会用のドレスを私一人でデザインすることになってしまった。いいのかな?嬉しい!お二人ともタイプの違う美人さん達だし、思いっきり趣味に走らせてもらっちゃおう!もしかしたら採用されて本当にお二人がドレスを着ているところも見られるかも!楽しみになってきちゃった!
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